現時点で考えている切り口、方向性など:
研究よりの方だと、お会いしたことはないのですが、桜木晃彦さんと言う東京大学理学部卒・医学博士の方で人骨の形態の3次元解析が専門。「CGクリエーターのための人体解剖学」や、日本でただ1冊しかない、メディカルイラストレーションの専門書「メディカルイラストレーションハンドブック」の翻訳監修などを手がけた方がいらっしゃいます。
もっと一般的な方面で行きますと、学術をわかりやすく一般の人たちに認知してもらうという点ではNHKの制作サイドの方や、東大でも行われている「科学コミュニケータ養成講座」の先生の中からお一人呼ぶと面白いと思います。
それから、これは僕が最近始めたことなのですが、これから始まる裁判員制度で、本物の写真などを裁判員に見せるのは無理だろうと言うことで、現在僕が法医学教室で、鑑定書の3Dイラスト・アニメーション化を行っています。この成果は10月2日の夜9時からNHKのニュースウォッチ9内の特集でも放送され、今後注目されると思います。
この点では、法医学教室の吉田謙一先生をコーディネータ、或いはゲストの先生とするのも面白いかもしれません。
解剖学、組織学について新潟大学名誉教授藤田恒夫先生や順天堂大坂井建雄先生のお話が聞けたらと思います。
栗原先生より(9/25)
面白い切り口ですが、へたをすると学問的に底の浅いものになるリスクが最もあるように思います。高校生向けの模擬講義みたいにならないように。視覚化の新しいツールによって一般人の啓蒙だけでなく、先端的な研究がどのように進んでいるかという視点を忘れないで下さい(細胞レベルでは飯野先生、河西先生の研究など)。コーディネーターについては、ミーティングで廣川先生の名前を出しましたが、名前を挙げてくれた吉田先生、あるいは前のお二人の先生もいいかも知れません。誰にお願いするか、もう一度相談してくれますか?
担当学生:
瀬尾、只左、秋山
コーディネータ:
岡部繁男教授(神経細胞生物学)
講師:
- 一番遅れている「見る」ですが、方針をまとめたので掲載しておきます。近々動きがあるので、またご報告します。
「見る」ことは、医学研究のあらゆる分野で最も基本的な手段です。例えば、初期の医学研究である解剖学は、まさに注意深く「見る」ことで人体の神秘を次々に明らかにしていきました。ところが現在の医学研究では、ことさら数値データが重要視されることが多く、肉眼観察の地位が低くなりつつあります。もちろん、データによる理論だった研究はこれからの医療には欠かせないものであり、これからますます重要性を帯びていくでしょう。しかし考えてみてください。「見る」ことによる理解は、数値や言語では表現できない数多くのことを含みます。「見る」ことが理論構築の手助けになることも多々あります。データから予想した構造や動きも、最終的には「見る」ことによって証明するのが最も望ましい姿です。電子顕微鏡で繊毛の存在を確かめたり、氷結パッチ法で分泌顆粒の姿を捉えたり…
そこで本講義では、敢えて解剖学や組織学・美術解剖など、現在では主流とは言えないが、それでも医学の原点にある分野を中心に、最新の「見る」研究にも触れることで、研究の基本である「見る」と言う「視点」をもう一度認識する良い機会になればと思います。 -- 瀬尾 (2007-11-04 22:57:50)
- コーディネーターの先生を、神経細胞生物学教授の岡部繁男先生にお願いすることになりました。今年から東京大学にいらっしゃった先生で、昨年までは東京医科歯科大学の教授でした。 -- 瀬尾 (2007-11-05 16:15:06)
- 岡部先生と話し合った結果をまとめておきます。
現在の基礎医学研究では「形と機能と分子との関係」を知ることが求められています。
まずは分子。これはDNA解析などにより、ほぼ分かったといってよいでしょう。「アミノ酸配列がわかる=分子がわかる」ですからね。
次に機能。これはまだまだ全部が分かったとはいえませんが、それでもノックアウトマウスの作成によって、だいぶ分かってきました。~遺伝子をノックアウトしたら○○になったから、この分子の機能は□□だったんだ、みたいな。
ですが、最後の「形」についてはまだほとんど分かっていません。最近の研究でようやく、分子イメージングをしたり、生体内で血管だけを蛍光染色して、血管の発生の動きを見たり、あるいはイオンチャネルの形と分子の形がどう組み合わさって分子がチャネル内を移動するか、などの研究がなされ始めたところです。
研究にとって「見る」というのは絶対に欠かせない要素です。そこで、解剖学から始まって最新の研究まで、それぞれの立場から、あるいはそれらを統合した立場から、「見る」ことの重要性についての講義をしようと思います。 -- 瀬尾 (2007-11-05 16:22:42)
- 現時点で考えているのは、解剖学・分子構造・視覚の研究・CG関連の研究・動物の縞模様の研究・脳MRI関連の研究の方々を1名ずつお呼びして、3人くらいで1グループになっていただき、それぞれ簡単に講義した後でディスカッションをしようと考えています。
普段の授業のように各先生ごとに1時間半程度で区切ってしまうと、先生方がただ自分の専門を語るだけになってしまう可能性があるので、講義の時間を少なくし、ディスカッションを通してそれぞれの専門分野の領域を超えて「見る」ことの重要性について私たち学生にメッセージを与えてくれるように運んでいくつもりです。
分野を超える話のほうが、私たちの将来にとって有意義な話になる、と考えました。
以下、それぞれの分野の先生の候補や簡単な説明を書いておきます。
・解剖 順天堂大学 酒井建夫先生
解剖学は「見る」研究の原点とも言えます。生理学も発生学も、解剖学の肉眼的な知識がなければ始まりません。解剖学の歴史も含め、
「肉眼解剖にとって『見る』とは?」
について語っていただこうと思います。
・分子構造 京都大学 藤吉好則先生
膜タンパクの構造解析では、現在世界一の先生です。話も強烈だそうです。笑。これからの医学に欠かせないであろう分子レベルでの「構造」に関して
「分子にとって『見る』とは?」
について語っていただこうと思います。
・視覚の研究 東京大学認知脳科学 村上郁也先生
駒場キャンパスの超人気の先生。ものごとを「見る」ためには、「見る」本人の存在も必要です。視覚については不思議なことがたくさんあります。生理学で習う眼とも、眼科で習う眼とも違う視点で、視覚の専門の先生をお呼びし
「そもそも『見る』とは?」
について語っていただこうと思います。
・CG関係 先生検討中
CGは、この世に存在するものをコンピュータ上で再現するだけでなく、この世に存在しないものを生み出すことができる強力なツールです。これから医学研究に限らず、あらゆる研究分野でCGは必須のものとなっていくでしょう。そこでここでは、本来存在しないものを見る研究をしている先生をお呼びしたいと思います。もっとも身近な例で言えば心電図。電気の流れは本来見えるものではありません。そのままでは見えないものを見えるようにしたのが心電図です。見えないものを見えるようにしたことで、私たちは多くの情報を得ることができます。データとしてしか存在しないものを視覚で表す研究をしている方をお呼びし、
「見えないものを『見る』とは?」
について語っていただこうと思います。
・動物の縞模様 名古屋大学 近藤滋先生
キリンやエンゼルフィッシュなどに見られる独特の繰り返し模様は、実は理論で説明できてしまいます。自然界を注意深く見ることによって、すばらしい理論の発見につながる事だってあるのです。たかが「見る」、されど「見る」。見ることから多くのことが導かれるのです。
「自然の姿を『見る』とは?」
について語っていただこうと思います。
・脳MRI関連 先生検討中
臨床分野におけるMRIの力は計り知れません。現代の高度な技術と医療との融合により、今まで見えなかったものが見えるようになってきました。臨床の世界でも、見ることは絶対的に大切なことです。
「臨床にとって『見る』とは?」
について語っていただこうと思います。
・まとめ 新潟大学 藤田恒夫先生
「標準組織学」の、あのお方です。見ることに関しては日本一です。上記の先生たちのお話を踏まえて、広い視点から
「『見る』とは?」
について語っていただこうと思います。 -- 瀬尾 (2007-11-05 16:56:12)
- 上記のことはあくまで現時点での構想です。先生もまだ決定というわけではありません。
どなたかオススメの先生や、別の視点があればぜひ教えてください。
また、上記の文章は多少僕の勝手な意見や希望も含まれていることをあらかじめご了承ください。笑。 -- 瀬尾 (2007-11-05 16:57:34)
- 岡部先生から、何人かの先生をご紹介して頂きました。
以下、岡部先生からのメールより。
話し合いの後、少し調査をしてみました。縞模様の研究者は近藤滋さんという方で、
名古屋大におられます。ホームページは
http://www.bio.nagoya-u.ac.jp/~z3/newHP/index.html
です。それから「見る」側の研究をしている生理学者として、大阪大学の藤田一郎先
生が思い浮かびました。
http://www2.bpe.es.osaka-u.ac.jp/
を見て下さい。「見るとはどういうことか」という本を最近出版されているので、今
回の企画には適任かもしれません。
また追加の情報です。医学とCGという方面で誰かいないか、捜してみたのですが、科
学未来館の中でCyber Humanという展示があり、その監修をしているのが慈恵医大の
鈴木直樹先生という方です(以下のURLを参照してください)。
http://www.miraikan.jst.go.jp/j/exhibition/d_theater_ch.html
Computer-assisted surgeryについても仕事をされているようですので、来ていただ
ければ面白い話が聞けるかもしれません。
とのことです。 -- 瀬尾 (2007-11-07 19:15:10)
最終更新:2007年11月07日 19:15