新刊発売記念(夕乃編)


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新刊発売記念(夕乃編 )
  • 作者 2スレ489
  • 投下スレ 2スレ
  • レス番 489-491
  • 備考 紅

489 新刊発売記念(夕乃編 1/3) sage 2007/11/24(土) 06:18:11 ID:lx/GpHDU
 一気に引き寄せられて、あらがう暇もなかった。気づいたときには、固く抱きしめられていた。外見は細いくせに鋼のように逞しい腕と、引き締まった胸板の感触が、衣服ごしであるにもかかわらず、生々しく伝わってくる。
「は、あ」
 喘ぐように声を上げるのが、精一杯だった。自分の身に起こっていることが、信じられなかった。こんな。こんな。崩月夕乃ともあろう者が。
「夕乃さん」
 聞き慣れた優しい声に耳元で囁かれて、体からいっさいの力が抜けた。おののきながら、全てを相手に委ねて、目を閉じる。
「夕乃さんがいれば他には何もいらないよ」
 世界がとろけた。とろけて、暗転して。
 そして、崩月夕乃は再び目を見開いた。
 ひとりきりで。相手のぬくもりも失せて。見慣れた天井を見上げながら。
 夢。
 なんて夢。
「ふふ」
 思わず、笑いが漏れる。あまりに幸せすぎて。あまりに滑稽すぎて。
「わたしもです。真九郎さん」
 せめてもの呟きが、やっぱりむなしく虚空に散じてしまうのを見届けてから、夕乃は自分の体の異変に気づいた。半ばまさかと思いながら、股間に右手を入れてみる。抜き出した人差し指と中指の間には、きらきらと光る粘液の橋がかかっていた。
(わたし)
 恥ずかしさに耳まで赤くなりながら、再び秘所に指を舞い戻らせる衝動に、夕乃は勝てなかった。そうすることだけでかろうじて、さっきの夢を、確かなものとして自分の体に刻み込めるように思えた。
(ああ)
 濡れて冷たくなったショーツの中に指を滑らせるだけで、夕乃はきれいな顎をわずかにのけぞらせた。真九郎を想って自分を慰めるのは初めてではないが、今日はいつにもまして自分の体が敏感になっているのが分かる。
(しん、くろう、さん)
 右手の動きがつい激しくなってしまうのを何とか堪えつつ、左手もパジャマの中に差し入れ、ブラジャーの中に這わせた。
(んんっ)
 固くなった乳首を指先でもてあそびながら、脳裏に想い人の顔を描く。夕乃の想像の中で、その少年は言った。
『夕乃さん。こんなになってる』
(やあっ)
 夕乃は枕の上で首を左右に打ち振った。
(だって。だって。真九郎さんっ)
『ほら、ここも』
 指が秘裂を押し広げ、肉芽をなぶる。背中が反り返った。
「あんっ。あっ」
『そんな声出したら、聞こえちゃうよ』
(やっ)
 夕乃は眉根を寄せながら、それでも歯を食いしばった。乳首が優しくさすられ、乳房が激しく揉みしだかれ、クリトリスが柔らかく揉み潰され、蜜壺の中が荒々しくかき回される。間断なく与えられる快感に、必死に耐えた。
『すごいよ。夕乃さん』
(あんっ。いじめ、ちゃ、やあっ。あうっ。あっ)
『そんなこと、しないよ』
 少年はあくまでも笑顔で、しかし容赦はしてくれない。夕乃の体の全てを知り尽くした上で、じんわりと着実に絶頂へと追いつめてゆく。



490 新刊発売記念(夕乃編 2/3) sage 2007/11/24(土) 06:21:07 ID:lx/GpHDU
(真九郎さんっ。お、お願いっ)
 何を頼んでいるのか、夕乃の理性はすでに白濁してしまっていたが、少年は夕乃の望みを知っていた。
『俺、夕乃さんのこと好きだよ』
 それは、少年が実際に口にした言葉。夕乃の記憶の中でいつでも鮮明によみがえる、とても大切な宝物。
(わ。わたし。わたし、もっ)
 少年と出会ってから八年。最初は弟のように思っていた相手に、どうしようもなく魅了されてしまっていることに気づいたのは、いつごろだったろう。
 暖かな家族の愛情に育まれた、優しさと素直さ、気弱さと幼さ。
 深い絶望のゆえに、自分など無価値だと思いこんでいる、危うさと脆さ。
 それでも、あまりに過酷な世界になんとか抗おうと足掻く、意志と願い。
 その全てが愛おしい。あまりに愛おしすぎて、怖いくらいだった。
 物心がついて以来、自分には人並みな幸せなど無理だ、と思っていた。
 <崩月>の血。人殺しの血。暴力と破壊を渇望する血。
 その血を継ぐ身とあっては、人に愛される資格など、生まれつきありはしない。たしかに母は父を得たが、それは万に一つの奇蹟のようなもので、自分にもそんな幸運が訪れるとは、あまり思えなかった。
 とはいえ、それでも諦めきれず、せめてものこと、他人から好意くらいは持ってもらえる存在になろうと努めた。容儀ふるまいに気を配り、人のためになることを心がけ、明るくしっかりした娘さん、と評判になった。ただ、その裏ではいつも、諦めと怯えをかみ殺していた。
 だが、真九郎に出会ってはじめて、本当の答えを知った。必要なのは、人に愛されるのではなく、人を愛することだった。
 真九郎を想うこと。真九郎を守ること。真九郎を導くこと。真九郎と共に生きてゆくこと。それこそが、崩月夕乃がこの世に生を享けた理由だった。迷いも不安も、全ては消え失せた。
『夕乃さんのこと好きだよ』
 ふたたび響く、少年の優しい声。暖かな笑顔。
(も、もう。わ、た、し。しん、くろう、さん)
 もはや、何も分からなかった。ただ、荒々しい呼吸と動きのなかにいた。きつく閉じた瞼の裏で、光が散った。
(す、き)
 全てが真っ白だった。自分の体が硬直し、それからがくがくと震える感覚が、とても遠かった。
(あ、あ)
 指の動きは、それでも止まらない。休む間もなく夕乃を次の高みへと押し上げる。そして次。またしても。
(ゆ、ゆるし、て。も、もう。わた、し)
 それが何度繰り返されたのか、夕乃には分からない。かつてない極みに達して身も心もばらばらになってから、ようやくにして解放されたとき、少年がもう一度、好きだよ、と言ってくれたような気がした。夕乃はその言葉の残響の中で、ゆるやかに奈落へと滑り落ちていった。



491 新刊発売記念(夕乃編 3/3) sage 2007/11/24(土) 06:26:16 ID:lx/GpHDU
 ゆっくりと感覚が戻ってくる。弓なりになっていた背中が緩んで布団の上に落ち、不足気味の酸素を吸い込み、全身の力が抜けていく。
(真九郎さん。わたし)
 自己嫌悪はない。いつかは、想像ではなく現実で、真九郎とこうなるはずだから。それは夕乃にとっては、ごくごく自然ななりゆきだった。
 夕乃にとっては。
(でも)
 夕乃は唇を噛んだ。あれほど鮮明だった夢の記憶が、快感とともに否応なく薄れてゆくというのに、なす術もなかったからだった。
 そう。真九郎は、遠い。触れた、と思った瞬間に、そこには居ない。夕乃がいくらあからさまに好意をぶつけても、そして、
真九郎も夕乃に対して人並み以上に好意を持ってくれていることは明らかなのに、真九郎との距離は、肝腎なところで一向に縮まらない。
 夕乃には解る。真九郎は、昔の夕乃と同じだ。自分が人から愛されることなどありえないと、思っている。もし他人から好かれていると感じても、
そんなものは錯覚か、でなければかりそめのものにすぎない、と。そんなものに期待したり執着したりしてはいけないのだ、と。
 夕乃は、ため息をついた。
 ただ、そんな真九郎も、最近はずいぶん変わってきた。理由は、分かっている。
 九鳳院紫。あの少女を守ると決めたとき、生来の優しさと、修羅場をくぐり抜けてきた毅い意志とが、ようやく真九郎の中でうまくかみ合って処を得たようで、
そんな少年に夕乃はあらためて惚れ直したものだった。他人と向き合うことに、以前ほど躊躇しなくなってきているのも、なかなかによい傾向である。
 とはいえ、つい先日、学校の廊下ですれちがっても挨拶一つしてくれなかったことを思い出してしまって、夕乃は落ち込んだ。
(真九郎さんの、ばか)
 それにクリスマスも近いというのに、まだ何も言ってくれない。こちらは、何十という誘いをことごとく振って、ただ一人からの言葉を一日千秋の思いで待っているというのに。
 一緒に住んでいるうちは、年末年始を共に過ごすのはごく当たり前のことだったが、真九郎が独り暮らしを始めた今となっては、
もうそんなこともないのかもしれない。その可能性に思い当たったとき、夕乃は愕然とした。
 あの無邪気で押しが強くてわがままな九鳳院紫や、厚かましくもくっつき回る根暗な村上銀子あたりと、ひょっとするとすでに何か約束しているのかもしれない。
だから、こちらには何も言ってくれないのかもしれない。
(んもうっ)
 夕乃は勢いよく跳ね起きた。ぐずぐず悩んでいても仕方ない。ここはいつもどおり、こちらから打って出る場面だった。
 なんだかんだいって、真九郎は夕乃には逆らえないのだから。
「ふふふふふ。真九郎さん。待ってなさい」
 表御三家のお嬢様が何だ。長い付き合いの幼馴染みが何だ。そんなものは蹴散らかして、崩月夕乃は紅真九郎と末永く添い遂げるのだ。
 今年は秘密兵器もちゃんと準備した。そろそろ、積年の努力と想いが報われてもよいはずだ。いや、報われさせてみせる。この崩月夕乃が。
 真九郎を捕まえるのには、学校がよいか(会えるのは確実だが周囲の目もあるし時間もとりにくい)、それとも放課後の方がよいか
(会えるかどうかは不確実だが、時間はたっぷり取れる)思案をめぐらせ始めた夕乃は、そこではじめて、人の視線に気付いた。
 扉が、少し開いている。その向こうからこちらを覗き込んでいるのは、
「…ちち散鶴」
「お姉ちゃん。大丈夫?」
「はははい?」
「だって。苦しそうな声がしたし。汗びっしょりだし。ふふふふふ、とか変に笑ったり」
「え。いいいやこれは。そそそそれにあなた、いいいつからそこに」
「お母さん、呼んでくる!」
「え、あ。待っ」
 あわてて手を伸ばしたが、遅かった。人見知りなくせに身内だけのところでは妙に活発な妹は、くるりと身を翻して、ばたばたと階下へ降りていった。
「お母さんお母さん、お姉ちゃんがお兄ちゃんの名前呼びながらふうふう言って、汗びっしょりなの!」「あらあらまあまあ」という会話を遠くに聞きながら、
夕乃は腕を上げた姿勢のままで、布団の上に上体ごと倒れ伏した。
 その後の夕乃の苦労について、多くは語るまい。朝食の間中、冥理の生温い視線に耐えたり、汚れた下着を母親から隠し通して丑三つ時に泣きながらこっそり洗ったり、まあ、そういったことだ。
 それもこれも、みんな誰かさんのせいだった。
「くすん。真九郎さん。許しません。会ったらおしおきです。うふうふうふふふ」








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