『レディオ・ヘッド リンカーネイション』ⅩⅡ-


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『レディオ・ヘッド リンカーネイション』

  • 作者 伊南屋
  • 投下スレ 1スレ
  • レス番 733-736 754-757
  • 備考 雨が語った前世の話という設定

733 伊南屋 ◆WsILX6i4pM sage 2007/01/29(月) 20:09:50 ID:+32Vm2VX
『レディオ・ヘッド リンカーネイション』
ⅩⅡ―“斬劇”

 閃くは剣刃。ただ殺意を成すために、全ての刃を死神の鎌へと変える一族が衝突する。
「ぅらぁぁあああ!」
 裂帛。そう言うにはあまりに獣じみた咆吼を上げ、切彦が鋸を振るう。
 一見すれば素人の動き。勢いに任せただけの突撃だが、事実は違う。
 最短距離を最速で駆ける。命を刈り取る為に、最も効率的な攻撃。
 剣士の敵と揶揄される斬島。武道とは懸け離れた殺人術の発露。
 しかし、雪姫も斬島である。故に、その動きは予想の範囲である。
 雪姫は庭に立つ石灯籠を盾にするように後退した。
「邪ぁ魔ぁぁあああ!」
 再び咆吼。鋸が石灯籠に激突する。
 普通ならば、それで止まるはずだった。
 異常だから、それで止められなかった。
 鋸が、激しい火花を散らし、削擦音を立て、振り抜かれた。
 斬島とは刃を扱うのがただ上手い。それだけの血族である。だが、それだけの事を異端となりえるまでに高めれば、どうなるか。
 その一つの解答がこれであった。
 何の変哲もない。工具の鋸で、石灯籠を一刀両断する。
 削り斬られた断面は美しいまでに平坦。辺りに粉塵を巻き上げ、分かたれた灯籠が落下した。
「……化物が」
 その光景に雪姫が忌々しげな声を上げる。
 これが、斬島の正統の力。ただ殺す為に、壊すために刃を振るう者の姿。
 戦慄が背筋を駆ける。
 しかし、雪姫は気圧されず、凛と立つ。
 刹那、前進。自らの最速をもって、距離を零に。
 闇に銀の光が疾る。
 高く澄んだ音を響かせ、刃が交錯した。
 数瞬と置かず、再度銀閃が交わる。
 一合、二合、三合。
 神速で閃く刃は激しく打ち合う。
 雪姫が大上段から振り下ろせば、それを切彦が下から弾き上げる。
 切彦が返す刃で横抜きに刃を迸らせれば、雪姫の倭刀が辛うじてそれを受ける。
 押し合い、弾き合う。
 開く距離は、互いにとって未だ間合い。
 雪姫が、切彦が駆ける。交錯する刃は紫電の如く火花を散らした。
「ははっ! 良いねぇ。そう易々とは斬られてくれねぇか」
 切彦が哄笑に口端を歪ませる。それを見て雪姫は苦い表情を浮かべる。
 ――強い。
 例え態度は巫山戯ていようと、その実力は本物。油断など微塵も出来ない。
 それでも、雪姫は負ける事は考えていなかった。



734 伊南屋 ◆WsILX6i4pM sage 2007/01/29(月) 20:11:40 ID:+32Vm2VX
 それは、自分の強さを信じてではない。詰まる所は“斬島”の血が成せる業。
 一度刃を持てば、斬り刻む事しか考えない狂戦士となる。
 狂気をもって凶器を振るう。唯それだけだ。
 雪姫の切先が躍る。狙うは切彦の首。弧を描き刃が迫る。
 それを、切彦は上体を反らすだけで躱した。体制を崩しながら、刀を振り抜き隙の出来た雪姫の胴に、鋸で斬りつける。
 回避。しかし切彦の刃は恐るべき鋭さで、雪姫の服を掠めた。
 それだけならまだしも、直接刃が触れていない肌を、剣風で薄く裂いていた。
「くっ……」
 思わず雪姫は呻きを漏らした。
 痛手ではない。しかし、不安定な体勢から繰り出された剣戟でこの威力。
 直接身に受ければ容易く両断されるであろう。
 冷汗が背を伝う。
「ははっ!」
 切彦が跳躍する。背を反らし、力を溜める。
 それを見上げ、雪姫は構える。
 空中では、刃から逃れる術はない。身を塞ぐものも、躱す為の足場もない。
 明らかな無謀。しかし、切彦は哄笑っていた。どうしようもない愉悦に、酔っていた。
 戦う事の歓びに、口端を亀裂のように歪ませていた。
 瞬間。切彦は反らした背を弾けさせる。バネの様に弾けた躯は、満身を持って刃を降らす。
 直下。炸裂する刃はまさしく、断頭台の如く。
「う、うぁぁあああ!」
 切彦は躱すつもりも、防ぐつもりもなかった。ただ、刃を振るう為だけに、その身を使った。
 雪姫は倭刀を頭上に掲げ、振り降ろされた刃を受ける。
 刃金が打ち合う音が鳴り渡る。
「くぁ……っ」
 凄まじい衝撃が雪姫を襲う。受けた両腕が痺れていた。
 そして、雪姫の命を守った刃。倭刀が、半ば近くから断たれていた。
 刃を振るう限り、全てを切り裂く。例えそれが刃でも。
 鈴のような音を立て、断たれた切っ先が地に落ちた。
「はんっ……ギリギリ生きてやがる」
 必殺のつもりだったのであろう。切彦は忌々しげに吐き捨てた。
「まあ、その得物じゃあもうケリは着いたようなもんだな」
 言って、鋸を雪姫に向ける。
 半ばまでの倭刀では、それまで保たれた均衡は続かない。
 リーチの差。それは、たった一寸でさえ絶望的な差であった。
 そして、その差はそのまま勝敗の、或いは生死の差であった。
 雪姫もそれは悟っていた。
「そんじゃま。――仕舞だ」
 軽い足取りで切彦が駆ける。それは一瞬で神速に達し、ただ命を奪う軌道を辿る。



735 伊南屋 ◆WsILX6i4pM sage 2007/01/29(月) 20:12:54 ID:+32Vm2VX
 雪姫は、勝機はないと理解している。
 しかし、敗北はないと信仰している。
 斬島だからではない。
 “雪姫”と言う少女として、自身を信じている。
「はぁあっ!」
 水平に跳ぶように疾駆する。地を踏みしめ、欠けた刃を前に、暴風の如く、目掛けるは、切彦。
 己が総身を一刃に変え、雪姫は極限の刺突を繰り出す。
 刹那に被我の距離差は零に。
 剣戟が激突する。
 未だ腕は痺れている。それでも構わない。この一撃だけ、柄を握っていられればいい。
「やぁああああ!!」

 ――切彦に失策があるとするならば、認識の欠如であろう。
 切彦も、雪姫も、斬島の天才と言われる存在である。
 殺人術に長け、刃を殺人の為に使う。
 効率よく、失敗なく。
 切彦も、雪姫も、それは同じであった。
 しかし、それが全てではない。
 切彦は、雪姫を斬島と見ていた。
 故に、雪姫の最後の一撃の意図に気付けなかった。

 鋸が、根元から折れた。切彦の目の前で。

「え?」
 驚愕に、気の抜けた声を漏らす。
 切彦の認識の欠如。
 それは、雪姫が斬島の異端児であるという事実。
 目の前の斬島は、唯の斬島では、無い。
「なん……で」

「なんで“あたしの命”を狙わなかった!」
「――刃を砕くため」

 雪姫の一撃。それは、斬島ならしない、“命を狙わない”攻撃だった。
 斬島は刃を振るい命を刈り取る。
 ならば、刃がなければどうか。
 論ずるまでもない。
 そんなものは所詮、爪も牙も無い獣も同然だ。
 雪姫の刺突は、切彦の鋸の根元を突いていた。
 それにより、元来武器としての強度は無い鋸は折れる。
「――あ」
 切彦の身から溢れんばかりの殺気が霧散する。
 そこには、ただ呆然と一人の少女が佇むだけだった。
「……負けた」
「……引き分けだよ」
 悔しげに言った雪姫の倭刀。それも、刃を失っていた。
 切彦の一撃でダメージを受けた刀身は、先の一撃に耐えることしか出来なかった。
 雪姫の身からも殺意は消えていた。
 かくて、二人の斬島は同時に刃を失う。
 ただ、二人の少女が立ち竦むだけだった。
「もう、私は戦えませんね……」
 獰猛だった面影はなく、切彦が胡乱に呟く。
「……じゃあね」
 雪姫は踵を返す。
 向かうは主の元へ。
 いつの間にか大分離れてしまっていた。
「……止め、刺さないんですか」
「刺せないからね」



736 伊南屋 ◆WsILX6i4pM sage 2007/01/29(月) 20:13:56 ID:+32Vm2VX
 刃もなく、戦えはしない。まして痺れた腕では殴る事すらままならない。
「そうですか。――ではいずれ生きている限り、また戦う事になるかも知れませんね」
「――その時は勝つよ。きっとね」
「楽しみにしてます」
 最後に、あの獰猛な気配を垣間見せ、しかしそれは直ぐに幻の様に消え去り、切彦も踵を返した。
「……しーゆーあげいん」
「……さよなら」
 まるで、何事も無かったかのように切彦は闇に溶け、何処へかと去っていく。
 雪姫はそれを追わない。
 ただ、脚を主の元へと歩ませる。
 二人の斬島は背を向け合い離れていく。
「きっと勝つよ。――きっと」
 もう一度強く呟き、雪姫は屋敷の中へと駆けていった。
 再び、刃交える時を想いながら。少女は、ただ駆ける――。

 続

754 伊南屋 ◆WsILX6i4pM sage 2007/02/05(月) 00:07:11 ID:lE7sV37g
『レディオ・ヘッド リンカーネイション』
ⅩⅡ―“撃滅”

 《鉄腕》ダニエル=ブランチャードは考える。
 ――坊ちゃんにも困ったもんだ。
 自分に護衛を任せた癖に、いざその時になれば勝手に《ビッグフット》に付いて行く。
 あの巨漢は繊細な行動は出来るが、繊細な思考は出来ない。
 無論、護りながら戦う事など考えもしないし、当然の如く出来はしまい。
 別に《鉄腕》は、九鳳院竜二に忠誠を誓っている訳ではない。
 今こうして彼の身を案じているのも、単に依頼主に何かがあって報酬の支払いに問題が発生しては困るからだ。
 ――全く、こっちの身にもなって欲しいもんだ。
 内心で嘆息する。
 とりあえず今は目の前の敵。障害を排除しなくては。それから竜二を追い掛ける。
 ――しかし。
 《鉄腕》ダニエル=ブランチャードは考える。
 ――まさか獣王が出張っているとは。
 今、最も勢いがあるであろう国の王。それがこうして、目の前に立ちはだかっている。
 噂では自ら前線で剣を振るう王との事らしいが、成る程。その噂は真実と見える。
 油断は、出来ない。
 その気迫は本物だ。
 《鉄腕》は、柔沢ジュウを戦士であると、己が敵足り得ると認識する。
 プロとして驕らず、ただ眼前の敵を刈り取る。
 なればこそ――。
 《鉄腕》ダニエル=ブランチャードは、自らの二つ名を示す、その義腕を、全力で振るった。

 ***

 地が爆砕する。
 まるで大金槌が穿ったような衝撃に土が捲れ、粉塵を撒き散らす。
 局地的に地面が揺れるほどの拳撃。
 それは、《鉄腕》の放った一撃であった。
 《鉄腕》の手甲は尋常の物ではない。超重量を持ち、腕の骨格すら鋼に変えた義腕にして一つの武器である。
 《鉄腕》の只ならぬ筋力により振るわれるそれは、常人が受ければ総身の骨を粉微塵に砕き、潰す程の威力がある。
 その必殺の一撃を、ジュウは後方に飛び退り躱していた。
 朦々と立ち込める土煙の中、そこに立つ《鉄腕》に、ジュウが反撃する。
 地に着いた脚を踏ん張り、両手で握った大剣を、全身で使い、振るう。
 風圧を纏った斬戟が、《鉄腕》に襲い掛かる。
「はああぁぁっ!」
 裂帛の気合い。こちらもやはり常人ならば骨肉纏めて断ち斬る刃。
 持てる最大の胆力でもって疾らせた大剣による一撃。
 それを――
「ふんっ!!」
 ――《鉄腕》は両腕で受ける。



755 伊南屋 ◆WsILX6i4pM sage 2007/02/05(月) 00:08:39 ID:KoEzCqF9
 鋼同士が撃ち合う衝突音が響き渡る。 鮮やかな残響を残し、ジュウの渾身の一撃は《鉄腕》に止められた。
「なかなかの攻撃だ」
 せりあう拳と剣。
 それを視界に捉えながら《鉄腕》が口角を吊り上げ笑みを象る。
「むん!」
 腕に力を込め、大剣を弾いた。
「こっちの番だ!」
 刹那、《鉄腕》の右腕がジュウを襲う。ジュウは大剣の腹でそれを防御。
 しかし《鉄腕》の剛力に、大剣毎吹き飛ばされる。
 庭を囲う塀に叩きつけられ、背後に罅を造りながら、ジュウは壁に埋もれる様にして止まった。
「どすこい!」
 《鉄腕》の追撃。身を低く、突進する。ジュウは立ち上がる事すら儘ならぬ内に《鉄腕》の巨体と塀に挟まれる。
 巨大な鉄塊が、岩盤を打ち砕くのにも似た轟音が上がり、塀は蜘蛛の巣状の罅を更に広げる。
 《鉄腕》の体当たりを受け、身が軋む激痛に声すら上げられず、ジュウは膝から崩折れた。
「まあ、こんなもんか」
 常人ならば骨が砕け、肉が潰れているだろう。
 まず死んでいるだろうし、よしんば生き残っていたとしても身体は機能せずいずれ死ぬ。
 即死か、いずれ死ぬか。どちらにせよ命は無い。
 《鉄腕》は自らを遮った障害の排除を確信すると、踵を返し、屋敷の中に居るであろう竜二を追おうとした。
 追おうとして、立ち止まる。
「……っ痛ぇな、コンチクショウ」
 カラカラと、乾いた音を立て塀が欠片を落とす。
「……なに?」
 背後の呟きに、《鉄腕》は疑問を浮かべる。
 確かに、全力で当たった。ミンチになってもおかしくない衝撃だったはずだ。
 それなのに――
「まあ、クソババアに殴られるよりはマシか」
 ――何故、立ち上がる。
「何勝手に終わりにしてんだよ。それとも降参って事か?」
 ――何故、笑っている。
「ほら、続きしようぜ? ニガー(黒人兵)」
 ――何故、俺が恐れる。
「おぉぉっ!」
 咆吼。《鉄腕》が、巨体を砲弾の如く炸裂させる。
 ジュウは、大剣を大きく後ろに降りかぶる。
「っだらぁぁあああ!!」
 豪快なスウィングで大剣が降り抜かれる。《鉄腕》は突進の勢いはそのまま、拳を大剣に叩きつける。
 激突、紫電、軋み、歪み、鋼が裂ける。
 それはジュウの大剣か、或いは《鉄腕》の義手か。
 二人は同時に、反動に吹き飛ばされる。
 しばしの静寂。立ち上がったのは、両者同時。
「ぐっ……う」



756 伊南屋 ◆WsILX6i4pM sage 2007/02/05(月) 00:10:27 ID:KoEzCqF9
 まさか、自分の突進すら利用されるとは。《鉄腕》は己の勢いも乗せられた一撃を受け、そのダメージによろめく。
 ――しかし、それは相手も同じ。ただでは済んでいないはず。
 ならば、今が好機。先に仕掛けた方が圧倒的有利だ。
 《鉄腕》は腕を降りかぶり――それが出来なかった。
「なにぃ!?」
 鋼の義手は、今や無様なブリキ細工の如くひしゃげていた。
 先の一撃に耐えきれなかったらしく、関節部を中心に、大破している。
 ――バカな。
 《鉄腕》が、破られた。その事実に驚愕を抑え切れず呻く。
「なんなんだ、貴様ぁっ!」
 有り得ない。
 自分の攻撃に耐え、あまつさえ《鉄腕》を砕く。
 戦闘屋でもなければ、生粋の戦士ですらない。
 その気迫は本物なれど、詰まるところは一人の国主。戦いが本業ではない。
 では何故、戦闘屋の自分が追い詰められるのか。
 有り得ない。有り得ない。有り得ない。
 ぐるぐると混乱する思考。恐怖に囚われたそれは冷静を欠く。
「お、うぉおっ!」
 腕は動かない。《鉄腕》はショルダータックルをかます。
 しかし――
「ぅらあっ!」
 ジュウは、それをタックルで迎え撃った。
 投げ出された大剣は、先の激突の影響だろう。所々刃こぼれしていた。
 肉体と肉体が激突する。
 根本的な質量の違いに、ジュウは弾かれそうになるも、脚を踏ん張り耐える。
 地を抉り、ジュウの足元が沈む。
 ぎりぎりとせめぎ合う両者は互いに一歩も退かない。
「ふんっ!」
「おぉっ!」
 力比べ。まるで極東の格闘技“相撲”の様に、二人は押し合う。
 均衡は《鉄腕》から崩れた。
「はぁっ!」
 四つに組んだ体を離し、脚を蹴り上げる。ジュウは側頭部を強打され、よろめく。
 再びタックル。ジュウの体が、今度は弾き飛ばされる。
 地を転がり、止まる。
 ――今度はどうだ。
 頭部への打撃。それは致命傷になりうる必殺の一撃だった。
 そのはずなのに――
「何故、立ち上がる……」
 ――金髪の少年は不適な笑みを浮かべ、ゆっくりと立ち上がる。
「何故、立ち上がる貴様ぁっ!」

「寝てる理由が無いからな」

 血を流し、泥に塗れても。それでも少年は立ち上がる。
「……っ死ねぇ!」
 絶叫。《鉄腕》が、再度ジュウに突撃する。
 だが、それは届くことはなかった。
「がっ……!」
 《鉄腕》がくぐもった悲鳴を上げる。その胸に咲くは、一輪の紅い花。



757 伊南屋 ◆WsILX6i4pM sage 2007/02/05(月) 00:11:33 ID:KoEzCqF9
 鮮血が、大輪を咲かせた。
 《鉄腕》が、地に倒れ伏せる。
 それの傍らには、いつからか小さな影。
 小さな影は、怜悧な声音で言い放った。
「付け足すならば――」
 その声は、少女。
「立ち続ける事は条件だからです。如何なる戦いにあっても勝利し続け、最後まで立ち続けた者を指して人はこう言うのですから――」

「――即ち、“王者”と」

 血を払い、剣を鞘に収めるその姿は、獣王の、柔沢ジュウの従者。
 百戦錬磨の大強者――堕花雨。
「お迎えに上がりました、ジュウ様」
「……結局、来るのかよ」
「主君をお迎えするのもまた、従者の仕事ですので」
「……まあ、礼は言おう」
「お気になさらず」
 あくまでも普段通り。戦場であっても、それは変わらない。
「事態は粗方把握しています。どうやら屋敷内に侵入を許したようですね」
「何?」
「ジュウ様のせいではありません。あれの侵入を止められる者などそう居ませんから」
 ――いずれにせよ危機である事に変わりはない。
「更に、屋敷内には敵の首領も居るようです。決着を付けるにはお誂え向きかと」
 成る程。重要人物は揃っている。クライマックスには相応しいだろう。
 ジュウは踵を返す。向かうは屋敷内。真九郎と紫の元だ。
「――終わらせるぞ。付いて来い」
「御心の儘に」
 従者を得て、少年は王者となる。
 今もまた。
 獣王が、戦場を歩む。その傍らに騎士を従えて――。

 続
ツールボックス

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