『HAPPY(is the)END』

『HAPPY(is the)END』

  • 作者 伊南屋
  • 投下スレ 1スレ
  • レス番 478-482
  • 備考 電波

478 伊南屋 sage 2006/11/11(土) 17:03:53 ID:Sca6bjxO
 幸せを願って。
 その為に努力した。
 そうして私は手に入れた。
 何を?
 ――分からない。
 今この手で掴んだものは。

 本当に“幸せ”なんだろうか。


『HAPPY(is the)END』


 生徒会室。
 一体何度踏み入っただろうか。
 自分は知っている。この中には今、一人しかいない。
 そしてその一人は自分を見て、どこまでも優しい笑みを浮かべ迎え入れるのだろう。
 扉を開く。足を踏み出す。視線は床。それを上げる。映る。少女。同級生の、少女。微笑っている。愛しい者を見る目。
「待ってたわ。柔沢くん」
 初めて会ったときとは違う。それは柔らかい声。蟲惑的な響き。自分の何かを麻痺させる毒。
 綾瀬一子。かつては反目しあい。今は、自分の恋人。
 一子が歩み寄る。ジュウも吸い寄せられるように近付く。
 距離が縮む。やがて零になり、接触。
 胸元に一子が頬を埋めた。柔らかな体温に安堵を感じる。同時に言い知れぬ不安も。
 いつからか繰り返されている逢瀬。その度にこんな気分になる。
 一子は縋るようにジュウを抱き締め、その身全体を擦り寄せる。くねる動き。男の中の獣を誘う動き。
 それに耐える。情欲を抑え込む。彼女はまだ望んでいない。その動きは無意識だ。まだ、抱き締めてはならない。
「今日のお弁当は私の番だね」
 そう言って、一子は二つの布に包まれた箱を取り出した。片方は水色。もう片方は桃色。
 弁当はジュウと一子が交代で作る。そういう約束だ。
「……ありがとう」
 食欲がないとは言えなかった。決して、言ってはいけなかった。
 布を解き、中の弁当箱を取り出し、並んで会議机に腰を下ろす。
 中は可愛らしい。女の子らしい弁当だ。御飯は桜そぼろでハートが描かれ、赤いウィンナーはタコの形。デザートのリンゴはウサギ。
 絵に描いたような弁当。美しいそれはどこか歪んで見えた。
「さ、食べよう?」
 笑顔で一子が促す。ジュウも手を合わせ「いただきます」と口にした。
 口に運んだそれらはどれも美味い。確かに美味いのに。どうしてだろう。吐き気がする。
 それでも全てを嚥下する。時折、互いに食べさせ合いながら。
 誰かが見れば、失笑とともに暖かい目を向けるであろう。幸せな恋人達の姿だったはずだ。
 一足先に弁当箱を空にして、今日の弁当が美味かった事を殊更強調して伝える。
 彼女は満面の笑顔に照れを浮かべ喜んでくれた。



479 伊南屋 sage 2006/11/11(土) 17:06:05 ID:Sca6bjxO
 こんな笑顔を見る度に思う。良かったのだと。これで、間違えていないと。
 ジュウも笑顔を浮かべる。
 浮かべた笑顔は歪になっていなかっただろうか。
 やがて、一子も弁当箱に若干中身を残し完食を告げる。ジュウはその残った分を代わりに食べ、両の弁当箱を空にした。
 暫く、会話に興じる。今日あった事。昨日のテレビ。何気ない世間話。どこまでも普通な会話。
 気が付けば、一子はジュウの手に自らの手を重ねていた。ジュウはその手を握り締めた。
「ねえ、柔沢くん」
 一子がジュウに顔を寄せ、口付ける様な距離で囁く。
「……好きよ」
 囁きながら、一子は自分の席から立ち、ジュウの膝元へ向かい合う形で跨る。
 若干ジュウが見上げる形になりながら、唇を重ねた。
 柔らかい感触がジュウを痺れさせる。粘膜を擦り合わせるようなキス。
 一子の手はジュウの首筋、鎖骨を緩やかに撫で回す。
 閉じられたままの唇が、くすぐったい様な甘い刺激に開かれる。
 一子が間髪入れずに舌を滑り込ませた。
 蕩けるような舌の愛撫。なにもせずとも舌が絡められ、一子の咥内に誘い込まれる。
 温かい。ぬるぬるとした咥内は一子の体温をダイレクトに伝えてくる。
 互いの唾液が溶け合い、舌と唇を伝い行き来する。
 甘いとすら感じるそれは極上の媚薬となってジュウを昂ぶらせる。
 昂ぶりはジュウの下半身を奮い立たせ、制服のズボンに膨らみを作る。
「ふふ、おっきくなったぁ」
 一子がそれを察知する。跨った腰をくねらせ、幾重の布地越しに互いの性器を擦り付ける。
「んっ……」
 一子が甘い吐息を漏らす。押し付けるような腰の動きは更に貪欲に刺激を欲し激しくなる。
 ジュウは下半身への刺激を一子に任せ、両手を一子のセーラー服の内側に潜り込ませた。
 腹、脇腹、あばら骨と指先は撫で上げ、そして胸に辿り着く。
 触れたそこは真っ先に肌の感触を伝えてきた。
「着けてなかったのか」
 問うジュウに、一子は顔を真っ赤にさせ頷く。
「そうか」
 それ以上何を言うでもなくジュウは胸への愛撫を始める。
 指先で捏ね、形を変え弄ぶ。
「ふ、はぁっ」
 一子から洩れる吐息は熱くなり、上半身、下半身それぞれから与えられる刺激に歓喜を示す。
 ジュウの指先はそれを更に引きだそうと、先端を摘み、捻る。
「く……んはぁっ!」
 痛みすら伴う強い刺激に、一子が示したのは快楽の調べだけであった。



480 伊南屋 sage 2006/11/11(土) 17:08:41 ID:Sca6bjxO
 くねる腰も一旦動きを止め。身を仰け反らせ快感に浸る。
 ジュウは掌全体で胸を掴み、ぐにぐにと揉みしだく。
 絶え間なく与えられ、変わり行く刺激に身を震わせて一子は溺れる。
 再び動き出した腰も、先よりも激しく擦り付けてくる。一子の下着を透かし、更に溢れる愛液はジュウの制服を濡らしていた。
 ぐちゅぐちゅと音を立て、ぬめった腰を滑らせ、擦る。
「ん……足りない」
 一子が呟いたかと思うと、彼女の両手は下半身に伸び、鮮やかな手際でジュウの性器を取り出した。
 性器に、それまで同様に腰を擦り付ける。
 幹に伝わるぬめりと布地の摩擦。
 その快感に応えるよう、ジュウは胸元への愛撫を強める。
 唇を片方の突起に近付け、舌先を伸ばし愛撫する。
 強く吸い付き、時に噛みちぎらんばかりに歯を立てる。
 一子の身が震える。
「かっ……あはっ、んぁっ! んはぁぁああ!」
 声を上げ、絶頂に身を戦慄かせる。
 ひくひくと震える体は熱く火照り。下着は更に愛液に濡れた。
 ジュウの下半身には下着越し、ひくつく一子の秘裂が感じられた。
 耐え難い。そう思ったジュウは片手を下半身に向ける。指先は下着。その秘裂を覆う部分に触れ、横へとずらす。
 露わになった秘裂へ、ジュウは自らを突き刺した。
「んはぁあ!」
 絶頂の余韻も覚めやらぬタイミングで貫かれた一子は更に身を仰け反らせる。
 がくがくと体は揺れ、焦点の定まらぬ瞳は天井を見るばかりだ。
 口の端からは涎が垂れ、締まりのない表情を更に際立たせている。
 白痴の様な表情とは裏腹に、下半身はジュウの動きに合わせ、妖しく蠢いていた。
 膣中は深くにジュウを誘う動きを示し、甘く締め付けてくる。
 ジュウはそこから与えられる刺激に耐え、がむしゃらに一子を突き上げる。
 一突きする度に愛液が溢れる飛沫を散らす。
 淫らな水音は大きさを増すばかりだった。
 ただ一心不乱に一子は腰をうねらせる。誘う動き。射精を促す。
 ジュウは耐える。耐えて、一子を翻弄する。跳ねる躯。抑え込み、深く突き刺す。
「あはっ! ひゃうっ、うんんっ!」
 白い喉を震わせ、一子が嬌声を上げる。その声を我慢し、一子が耳元に口を寄せた。
「ん……ふふ、私は幸せ……なのかな?」
 ジュウに何度となく浴びせられた問い。ジュウを責め苛む言葉。
「お前は幸せだよ」
 繰り返す。問われる度に。一子に言い聞かすように。自分に言い聞かすように。



481 伊南屋 sage 2006/11/11(土) 17:11:48 ID:Sca6bjxO
「うん……っ。しあわせ、だよぉっ」
 吐息に声を途切れさせながら。一子は言う。
 ジュウを縛り付ける言葉。
 一子が幸せを願う限り。一子が幸せを感じる限り。ジュウは一子を手放せない。一子もジュウを手放さない。
 絡みつく躯と心。繋がりは深く、致命的。
 ただ、ただ繋がる。それだけが証と信じて。
「あぁ……んっ」
 浴びせられる熱っぽい息は、ジュウの顔をくすぐり撫で、正常な思考を削り取る。
 狂っている。狂ったように踊る。身を重ね、狂楽に耽る。異常な愛情。依存する愛情。
 一つ貫く度に跳ねる一子の身体。肌に指を這わせる。
 柔らかい胸に指先を沈め、感触を楽しむ。
 なのに、その肌がぐずぐずに腐っているように感じた。
 一瞬の腐臭。
 フラッシュバック。
 母親。死体。腐乱。山道。遺棄。共犯。
 浮かぶ映像と単語。
 それらを掻き消す為に、遮二無二腰を打ち付ける。
「あっ! うぁっ……ん。いい、よぉっ。ゴリゴリってぇ!」
 叫ぶ一子の声も聞こえない。思考を停止し、ただ肉欲に堕ちる。
「ゴリゴリしてる。あんっ! ふかい……っよぉ!」
 身を震わせる一子。絶頂しているのだろう。何度も強い収縮を繰り返す。
 ひくつく膣壁は内に在るものから、中のものを差し出せとばかりに絡みついてくる。
 それでも耐える。
「ひゃぁっ! も……だめ、わけわかんないっ……ふぁあん!」
 ジュウの首筋にしがみつく。顔面に押し付けられる乳房に噛み付く。
 歯形を残すほど強く噛み締める。舌は乳首を弾き、潰し、回す。
「はぁぁああん!」
 痛いはず。なのに漏れるのは歓喜の声ばかり。
 そうだろう。彼女は思い込めばそれが全て。与えられるねは快感だけと思えば、痛みなど感じない。
 全ては思い込み。
 それを知ってなお、ジュウは快感を与える事に従事する。
 強く、強く打ち付ける。叩きつけられる恥骨が僅かに痛む。構わない。更にぶつけるように突く。
 激しく痙攣は止まない。与えられる刺激は強く。恐らくもう長くは持たない。
「そろそろイク。良いか?」
 問うのは義務感から。答えはいつも決まっている。
「あぁっ……いいよ。来て、中に……あはっ! 膣中に、出して。全部出してよ……んはぁっ! あんっ、わたしの中。いっぱいにして。白いので、ぜんぶっ! ひうっ! あくっぅ……。出して! 出して、出して、出してだしてだしてぇ!!」
 分かっている。


482 伊南屋 sage 2006/11/11(土) 17:13:32 ID:Sca6bjxO
 ジュウは応えるようにラストスパートをかける。激しく打ち合う腰は水気のある破裂音を響かせる。その間にも一子は何度目だろう。絶頂に達し、ジュウを甘く、甘く締め付ける。
「くっ……!」
 限界、刹那に溢れ出す精液。どくどくと一子の膣中に溢れる。一番深く。子宮口のその向こう。
 一子の痙攣する膣中も、精液を奥へ運ぶための蠢きを見せる。
「あはっ……いっぱぁい」
 一子は自らを満たす感覚に笑った。
 ジュウは知っている。一子が自分との子供を望んでいると。その為に膣中に射精させるのだと。
 なぜなら。子供が出来るというのは、分かりやすい幸せの形だから。幸せに貪欲な一子はそれを望んでいる。
 高校生だから等関係無く。幸せの形を手に入れたがっている。
 しばらく、繋がったまま一子は自らの下腹部を撫でていた。祈るように。まだ見ぬ子供を幻視して。
 一子の瞳は、慈母のように穏やかだった。
 穏やかに、狂った輝きを放っていた。

 きっといつか。自分達の子供が出来るだろう。一子はそれまで諦めない。
 そうして自分は、柔沢ジュウという人間は綾瀬一子の描く幸せの部品として消耗される。
 パズルの一ピースのように。全体のたった一ピース。
 それで良い。そう思い込む事にしたのだ。一子のように。
 ただ目の前のものを即物的に選んでいく。
 それが幸せだと信じて。
 幸せだと思い込んで。
「大好きよ。私の、私だけの柔沢くん」
 一子が呟いた。

「――幸せにしてね?」


fin.

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最終更新:2007年06月29日 12:48
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