3スレ624


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624 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/22(月) 22:19:34 ID:xDrp4X6w
 そこには何の音もなく、あるのは澄んだ空気だけ。
 崩月の道場である。
 今、そこに踏み入る二人の影があった。
 「夕乃さん、俺、何かした?」
 「いいえ?何も」
 何もしていない、ということが『しでかした』のだと気づけない真九郎には分からなかった。
 夕乃が、並々ならぬ決意でここにいるということに。

 真九郎は夕乃とクリスマス・イヴに夕食の予定を立てた。夕乃は喜んだ。とても喜んだ。
 しかしその夕食は五月雨荘で鍋。しかも五月雨荘の住民プラス銀子だった。
 夕乃はショックだった。
 二人っきりのディナーじゃなくて、仲のいい知り合いの一人でしかないパーティーだったことに。
 それでも夕乃は思った。思い込もうとした。真九郎さんと一緒に過ごせるなら・・・と。
 なのに真九郎は、皆が酔いつぶれた後、銀子といちゃつきだしたのだ。
 (真九郎さんの膝枕に飽き足らず、く、く、唇まで・・・)
 夕乃は思った。未だ真九郎とキスしていないのは、自分だけだと。
 このままでは、自分は『幼馴染のお姉さん』から抜け出せない、と。

 そんな夕乃が行動を起こしたのは一月一日、崩月の家に挨拶にきた真九郎を捕まえて、道場に引っ張ってきた。
 今までに何度もこうやって呼び出された真九郎は、この後何が起こるかを知っている。
 組み手という名の、私刑だ。
 きっと、新年そうそう浮かれていた自分に怒ったのだろうな、と半ば諦念と共に考えていた真九郎とは対照的に、夕乃は真剣だった。
 というか、緊張していた。
 (こんなことして、もし真九郎さんに嫌われたら・・・)
 だがもう道場に入ってしまっている。それに真九郎は既に軽くストレッチも始めてしまった。
 今更何もしない訳にはいかない。それに自分は現状に耐えられないからここにいるのだ。
 あとはもう、進むだけ。
 「真九郎さん?」
 「は、はい」
 「思う存分、打ってきてください」
 夕乃は思う。
 (これで真九郎さんが突っ込んできてくれれば、こちらの勝ちです)



625 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/12/22(月) 22:22:13 ID:xDrp4X6w
 「思う存分、打ってきて下さい」
 真九郎は焦った。今回は本気だと。
 こちらに全力を要求するということは、あちらが全力を出したいということだ。
 つまり、格下の自分はもはや為すすべもない。ならばあとは遅いか早いかだ。
 精一杯しごかれよう。真九郎は、床板を踏みしめ、夕乃へと跳んだ。

 (来た・・・!)
 こちらの思い通りに真九郎は真正面から向かってきた。
 真九郎の右手が上がる。こちらの顔を狙った掌底だ。
 夕乃は腰を低く落とし、重心を前に傾ける。
 至近距離でのタックルを成功させるのは、足腰の瞬発力ではない。
 重力を利用した重心移動と、それを可能とする関節の柔らかさだ。
 真九郎の掌底は夕乃の頭上を空振り、夕乃は腰に組みつこうとする。
 だがそれは真九郎も読んでいた。奥足である右膝を振り上げ、カウンターを狙う。
 しかし膝は空を切る。
 (もっと低く・・・)
 夕乃の顔は真九郎の膝と同じ高さにあった。当然、振り上げる膝が当たるはずがない。
 しかも、夕乃は真九郎に向かって右、左足を取りに行っていたため、左足が邪魔で夕乃を狙えないのだ。
 結果として真九郎の膝は空振り、全体重を支えた左足を夕乃は掴んだ。

 真九郎にわかったのは、膝蹴りを空振ってしまったことと、自分が今床に倒れているということだけだった。
 反射的に自分の状況を確かめる真九郎。これも崩月での修業の成果だ。
 現状は、夕乃がいわゆるハーフガード、真九郎の腰に覆いかぶさるような形になっていた。
 崩月流では、相手に倒されることを良しとしない。何故なら一対多数を主軸に置いているからだ。
 なので倒された時点で負け。一度離れて夕乃の説教をもらい、仕切り直しで続行なのだが・・・夕乃は動かない。
 「・・・夕乃さん?」
 夕乃は組みついたまま顔を伏せて言った。
 「今日は寝技の稽古をしましょう」
 「え?でも崩月流に寝技なんてないはずじゃ」
 「実はあったんです」
 「・・・崩月流は力の制御、それを生かせない寝技なんて習うだけ無駄だ、っていったのは夕乃さんじゃ」
 「方針が変わったんです」
 「・・・どういう方針に?」


力尽きた。それと>>515の流れを使わせてもらった。
そしてこのまま>>613のネタに・・・行きたかったが筆が止まった。スマソ。


641 名前:エロ版鋭意執筆中1/2[sage] 投稿日:2008/12/29(月) 18:34:52 ID:SVjc3Xes
「・・・どういう方針に?」
 それを聞いた夕乃は顔をあげた。そして真九郎は驚いた。その顔が今までに見たことがないものだったからだ。
 真九郎の中の夕乃はいつでも穏やかで、見守ってくれて、自分をただしてくれる・・・そんな存在だった。
 しかし今の夕乃は、目を潤ませ、息を荒く、真九郎にしなだれかかっている。先ほどの質問も耳に届いていたのかどうか分からないほどだ。
 そして、いくら女性の機微に疎い真九郎でも、ここまでされているのにこれが寝技の訓練などと思えるはずがない。
 だがそこは真九郎、混乱で「じゃあ何をするのか」ということまで頭が回らなかった。
 今の状況に理解が追い付いていない真九郎を、火照った顔で見つめる夕乃。そのやわらかな唇が動く。
 「もう、耐えられないんです。だから・・・こんなことしかできないんです・・・」
 言い終えると同時に、夕乃は体を這い上がっていく。
 「え、ちょ、夕乃さん!?いったい何を」
 その先を真九郎が口に出すことはなかった。何故なら口をふさがれたからだ。夕乃の唇で。
 唇が触れた瞬間、真九郎は硬直した。そしてまるで自分が唇になったかのように、その感触に囚われた。夕乃の唇をはむ甘くとろけた声も、胸板に潰れるたわわな二つの肉も意識の外。
 むしろ入ってくる情報が多すぎて認識できない。
 口づけをしたまま、真九郎の首に腕を回す夕乃だが、夕乃も夕乃で真九郎の唇に囚われていた。
 しかし彼女は真九郎とは逆に、その感触を貪欲に求めていった。
 「あむ・・・っん」
 触れるだけのキスは最初の一瞬。すぐに深いものになり、夕乃は舌を絡めた。
 真九郎の舌を捉え、くわえ、吸いつき、歯列にまで舌を伸ばす。
 ひとしきり愉しんだのち、やっと夕乃は口づけを終えた。



642 名前:エロ版鋭意執筆中2/2[sage] 投稿日:2008/12/29(月) 18:35:42 ID:SVjc3Xes
 「どうでした?」
 そう夕乃は聞くが、真九郎に返事をする余裕はない。夕乃は唇を尖らせ、
 「これでもファーストキスだったのに・・・」
 といじけてみせる。それがよく見る態度だったので、真九郎は現実に戻ってきた。
 「ファーストキス・・・って!そんな・・・いやそもそも何でこんなことを!?」
 今更こんなことを言い出す真九郎に夕乃は呆れた。
 まあ自分から襲ったのが、ムードも何もあったものじゃない。でも、逆にそんなところが『まだ染まってない』とも思えた。それならむしろ自分達のこれからにはプラスになるだろう。
 なら良し。夕乃は、とりあえず真九郎の質問に答えることにした。
 「大好きだからです。むしろ愛してます。真九郎さんが欲しいです。あ、逆に私を貰ってくれても構いませんけど・・・」
 どっちにします?と首を傾げる夕乃。
 「そ、そんなことをいきなり言われても答えられませんよ!」
 「でも真九郎さん抵抗しなかったじゃないですか。それに、あんなに激しく私の唇を求めて・・・」
 もちろん、真九郎の意識が飛んでいことを夕乃は分かっている。激しいキスの余韻だけが残っている真九郎が、勘違いをすることまで読んだ上での確信犯だ。
 そしてその読みは的中する。真九郎が唇を指で触れつつ赤面したのだ。
 「それは・・・その、気持ちよくって、つい・・・」
 むしろそれは夕乃のセリフなのだが、それを真九郎が知るはずがない。
 いつの間にか加害者になっている真九郎を、ここぞとばかりに夕乃は攻め立てる。
 「真九郎さんは、私のこと嫌いですか?キスして、嫌でしたか?」
 「そんなことないよ!夕乃さんのことは好きだし、キスも、まあその、」
 「もう一回したいと思いました?」
 「いや、それは」
 「も う 一 回 し た い と 思 い ま し た よ ね ?」
 「・・・はい」
 落ちた。夕乃は心でガッツポーズを決めた。だがそんなことはおくびにも出さず、夕乃は少し恥じらうふりをする。
 「じゃあ、真九郎さん、私を恋人にしてくれませんか?」
 いつも(あくまで姉のように)慕っていた女性が自分のことを好きだと言ってくれて、しかもその人の唇を奪って(いると思わされて)しまい、かつそれが(彼女曰く)ファーストキス。さらに自分も彼女を求めている(と、夕乃に誘導されている)なら、真九郎の答えは一つしかない。
 「わかった、夕乃さん。大切にするよ」
 その言葉を聞いた時、自分がどうやってその言葉を引き出したのかも忘れ、夕乃は視界が滲むのを感じていた。
 想いが通じた。それがこんなに私の心をいっぱいにするなんて。夕乃は今、幸せに充ち満ちていた。
 目じりに溜まる涙を拭い、夕乃は咲いた笑顔で言う。
 「よろしくお願いしますね、真九郎さん!」










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