3スレ443


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443 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/09/14(日) 23:09:59 ID:/nyksp/R

虚ろな瞳が、窓から差し込む僅かな月明かりに反射して鈍く光っていた。
暗い部屋に一人の女が床に座っていた。その目は空虚に濁り僅かな感情さえも写すことはない。
女はただ無感情だった。
女はポケットに手を入れる。部屋に光るものがもう一つ増えた。それは銀色に鈍く光り、月明かりを反射して女の顔を照らす。
女は眼鏡をかけていた。レンズ越しに見える瞳は海の底より、夜の闇より深く暗かった。感情はやはり無い。
女は手首に、鈍色のものを押し当てる。
村上銀子はゆっくりと、そして強く剃刀を引いた。
バッ、と暗闇に真っ赤な花が咲いた。
赤い花が咲き狂う。部屋一杯にその紅の花びらを満たして。
「真九郎………」
銀子の顔に始めて感情の色が見えた。それは苦痛でも、もうすぐ訪れるであろう死の恐怖でも無かった。
それは安らぎ。
死へ。絶対の安息へ。
ようやく楽になれると。愛する人と同じ所へ行けると。
瞬間、真紅の花びらが一斉に散り落ちた。
銀子は自らの血液を一身に浴びる。
「しん…くろう………」
愛した人と同じ、紅に染まりながら銀子は目を閉じる。その目は永遠に開く事は無い。
血にまみれた銀色の刃を銀子は最期まで離すことは無かった。






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