嵐之夜之夢


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120 嵐之夜之夢 壱 sage 2008/05/13(火) 23:13:44 ID:vknOqU1P

「真九郎くんっ。ご飯、まだかなー?」
 荒れ模様の空で風が音を立てて吹きすさぶ夕暮れどき、ノックもせず遠慮なしに5号室の扉を開けた環を、沈黙が迎えた。
「いない…わけじゃないのか」
 そのとおりだった。電灯もついていない部屋の中に、何かがくろぐろと丸く蹲っている。
「どったの? 具合でも悪いのかな?」
「た…」
 軋るような声に、環は、踏み出しかけた足を止めた。かすかに、その目が眇められる。
「…環…さん…あっち…へ…」
 それは、真九郎の声であり、そうではなかった。単に嗄れて苦しげという以上に、必死に抑えようとして能わない何かが声のあちこちに滲み出ていて、決定的にいつもの少年と違っていた。
「お願い…です」
 その声を追いかけるようにして、颶風が環を襲った。その無防備な上体を薙ぎ払い、旋回して再び部屋の中に蹲る。
「ふーん」
 風の切れ端が舞い散る中、だが環は、何もなかったかのように入り口に立っていた。ただ、その頬に不敵な笑みが刻まれ、全身の力がだらりと抜けているのが、さきほどと異なっている。
「これはこれは」
 面白そうに呟いた環に向かって、ごう、と何かが鳴いた。五月雨荘の安普請が、室内に溜まった空気ごと、圧倒的な迫力をもって震える。常人ならば即座に気死しそうなプレッシャーの中、身を起こしたそれに向かって、環はごくさり気ない口調で云った。
「ここは不戦の地、なんて云っても、ムダかー」
「か…あ」
 それは、真九郎だった。姿かたちだけは。
 だが、その狂気にぎらつき血走った双眸、炎のような息をせわしなく吐きながら歯を剥き出した口、そして何よりも、肘から大きく突き出して狂ったような光彩を放っている角を見て、誰がいつもの穏やかな少年を思い起こすだろう。
 それを見ながら、環はいつものように笑った。
「いいよ。おいで」
 真九郎の影が、伸びた。あまりに迅い跳躍が、そのように見せたのだった。環は臆する様子も見せず、自然な足取りでその懐へ入っていく。
 ぱん、と乾いた音のあと、環の体が軽く吹っ飛び、部屋の奥へ転がった。真九郎の姿をしたものが戸口の近くに鬱蒼と佇み、そちらを見やるなり、がくりと膝と両手を床につく。
「あたー…」
 環が、後頭部に手をやりながら、むくりと起きあがった。真九郎を見ながら苦笑して、
「一応、殺るつもりだったんだけどなー。あたしも、やきが回ったかな」
 その声に、真九郎が顔を上げる。その眼は、紛うことなく闘志と殺意に燃えていた。
「まだ、かー。さすがに甘くないね。崩月か」
 ゆっくりと立ち上がった環は、しかし左腕をだらりと下げている。にも関わらず、その声は歓喜に躍るようだった。
「ほんとは、こんなんじゃなしにマジでやってみたかったけど。ま、いっか」
 片腕の利かない状態でどのような勝算があるというのか、隙だらけとさえ言える自然体からは闘気のかけらも感じられなかったが、その炯々とした瞳は怖れげもなく真九郎の姿を映していた。それに対し、真九郎も全身のばねをたわめ、まさに襲いかかろうとしたとき、
「騒がしいな」
 背後からかけられた穏やかな声を、間髪を入れず跳ね上がった真九郎の後ろ足が、容赦なく下から上へ縦に刈り取った。だが、身を翻した真九郎の真横から続けて、
「問答無用とは、余裕のないことだ」
 少しも動じない口調に何を感じとったか、真九郎は少し飛び退って距離を取る。少しの間、そのまま凝然と動かなかったが、やがて操り糸でも切れたかのように、床の上にくずおれた。
 微かに手足があがき、唸り声があがるところを見ると、意識までは失っていないと見えるが、もはや身体の自由は利かないようだった。そこで初めて、真九郎を沈めた影が人の形を取る。全身黒ずくめの衣装のせいか、闇にその美貌だけが浮かぶようにすら見えた。
「闇絵さん」
 その人物に向かって環が声をかける。闇絵が何をしたのか、環にも見当すらつかなかったが、それでも不満げに云った。
「人の、取らないでくださいよ」
「ああ。済まない」
 真九郎を無表情に見下ろす闇絵の隣に、環も並ぶ。外れた左肩を、軽い音と共にこともなげにはめ、痛ましげな視線を真九郎に投げかけながら、
「これって」
「さあね」
 闇絵の素っ気ない答えの言葉尻を、窓を叩く激しい雨音がかき消した。


121 嵐之夜之夢 弐 sage 2008/05/13(火) 23:15:11 ID:vknOqU1P

 それも、だが、戸外を荒れ狂う風の一瞬の気まぐれにすぎなかったらしい。少し低くなった風雨の響きを背景に、お互いの表情もやや分かりにくくなった薄闇の中で、環は言葉を継いだ。
「闇絵さんでも、分かりませんか」
「裏十三家の秘儀など、わたしが知るはずもなかろう。だが、似たようなものは見たことがある。強すぎるクンダリーニを統御できねば、こうなる」
「はあ」
 不得要領げな環に向かって、闇絵はわずかに笑みをひらめかせた。
「いわば、角に愛されすぎたのさ。よほど適っていたとみえる。だが、このままでは角に弄ばれた挙げ句、周りか自分自身か、でなければ両方を破壊し尽くして終わりだな」
「そりゃ、大変だ」
 環は屈み込み、真九郎の頭を軽く撫でながら、さり気なく訊いた。
「どうします? 夕乃ちゃんとこに」
「このまま長くは保たないよ。そのうち、身体の自由を取り戻す。それに、少年もあちらにはこのことを知られたくないのではないかな」
「じゃあ?」
「本人に害をなすことなく、クンダリーニを抜く術は、わたしも一つしか知らん。その上でうまく手綱を取り直せるかどうかも、少年次第だな」
「あー…」
 環は闇絵を見やり、ぽりぽりと頭を掻いた。闇絵はタバコを取り出して火を点けると、自分でくわえるのではなく、灰皿の上に置き、真九郎の脇に押しやった。
「夕食の義理くらいは、ここで返しておいても悪くはあるまい。無理に付き合えとは言わんよ」
「いやー、そうじゃなくってですね。ここで初物をいただいちゃうと、いろんなとこから恨まれそうかなあ、って」
「ほう」
 闇絵の呟きをどう取ったのか、環は立ち上がった。妙に真剣な声で、
「公平にじゃんけんでもしますか」
「わたしが先になっても構わないのかな」
「あー」
 闇絵の冷静な切り返しに、環の視線が、少しだけ泳ぐ。
「すいません…それはちょっと、ガマンして待ってられないかも」
「では、そういうことだな」
「すんませんね」
「気にするな。正直なのは好きだよ」
 そう云うと、闇絵は数歩退り、暗がりの中に溶け込んでしまった。そこに居ることを知っている環にすら、気配を掴みにくくなる。その空虚に向かって、環は明るく云った。
「あたしで済まなかったら、後はよろしくお願いしますよ」
「承知した」
 感情のこもらなさすぎる声にやや苦笑しながら、環は真九郎の傍らに膝をついた。その肩に手をかけ、上体を仰向かせる。闇絵のいかなる技によるものか、さしたる抵抗もなく真九郎は床の上に横たわった。
「あ…」
 かすかな声がして、そこに正気の徴候を嗅ぎ取った環の頬を少し緩ませる。
「真九郎くん?」
「た…環、さん…俺…」
「ああ、いいのいいの。分かってるから」
「逃げて…俺…だめ、です…今のうちなら…でも、すぐに…」
「んー、そうだねえ」
 せっぱ詰まった真九郎の言葉に適当にあいづちを打ちながら、手早く真九郎の衣服を脱がせてゆく。それを感じ取った真九郎が、訝しげな声を出した。
「環さん…?」
「真九郎くんとは、もっとこう、ろまんちっくにいきたかったんだけどねっ。まあ、これはこれで」
 真九郎のベルトを外し、チャックを下ろしたところで、さすがに真九郎も環の意図を悟ったらしく、懸命に体を起こそうとするのが感じられた。
「たっ…」
「ま、なんちゅーか、手当みたいなもんだからさ。あまり気にしないでよ。犬にでも噛まれたと思ってさ、って、これは立場が逆か」
「な、何を…」
 真九郎の抗議にも構わず、環はズボンとトランクスを一気に引き下ろした。と同時に跳ね上がり、闇の中ですら存在感を周囲に誇示したものに、思わず息を呑む。
「わ…」


122 嵐之夜之夢 参ノ前 sage 2008/05/13(火) 23:19:07 ID:vknOqU1P

 風雨の音がひときわ強まり、一瞬だけ雷が閃いて、室内を照らした。その刹那、真九郎のそそり立つ剛直の姿が、環の眼にも焼き付く。
「これは…すごいわー」
 素直に感嘆の声が出る。環が見慣れている洋物でも、これほどの逸物にはお目にかかったことがなかった。おそらくは、角の力が零れ出てしまっているせいもあるだろうが。
「くく。楽しみー」
 思わず下品な笑いを漏らしてしまいながら、再び暗くなった中で、環は真九郎に手を這わせた。その微かなタッチだけで、いっそうそれは鋭さを増した。
「くっ…、た、環さん…それ…」
 呻く真九郎を、環はしごく優しい口調でたしなめる。
「真九郎くん。こっからは、言葉なんていらないの。おねーさんに、任せなさいって」
 そのまま身を乗り出し、真九郎の分身を完全に掌中におさめた。それだけで我知らず呼吸が上がってしまっていることにふと気づき、と同時に、闇の中に漂う甘ったるい香りがにわかに鼻腔にまとわりつくのが感じられた。少しだけ背後へ視線を飛ばし、にやりと笑う。
(芸の細かいことで)
 闇絵の仕込んでいったタバコの煙のせいらしい。道理で先程から妙に体が熱っぽいと思った、と口の中で呟きつつ、さしあたり有り難い気遣いと思うことにして、手中のものに再度意識を集中する。先端に指を滑らせると、すでに汁が溢れ出ていた。
「うっ…」
 真九郎が呻き、体を少し捩らせる。環も、耐えきれずに熱い吐息を漏らした。まずは一回済ませて落ち着いた方がよかろうと、掌で容赦なく真九郎をしごき上げる。
「くっ、う、ぐ…」
 真九郎は、ひとたまりもなく、盛大に射精した。その白い迸りは闇の中でも目に鮮やかで、真九郎の下半身のみならず、環の手や腕、そして額にも飛沫を飛び散らせた。
「ああ…」
 闇絵のタバコの香りに、今や濃密な雄の匂いが混じり、環の脳髄をじわじわと犯していく。環は熱に浮かされたように、手の動きを続けた。
「う、わ…く、た、たま…」
 真九郎の腰が小さく跳ね、環に翻弄されるがままに、二度、三度と精を放つ。それでも、真九郎は硬さを失わずに屹立し続け、それどころか一層膨脹するかのようだった。その感触が環の手から背筋を伝わり、腰の奥にじわりと熱と湿り気を帯びさせる。
「は、すご…」
 自ら唇が火傷するのではないかと思えるほどの熱気を帯びた囁きを抑えることもできず、環はそっと真九郎のそれに顔を寄せた。皮が剥けて露わになったカリのあたりに、口づける。
「くうっ…」
 真九郎が背中をのけ反らせるのに押されるようにして、環は真九郎を口に含んだ。その全てを味わうことなど到底不可能だったが、出来る限り深くまで頬張り、舌の全体を使って撫で回す。同時に、竿に添えた右手の指で、その下の袋を優しく揉み上げる。


123 嵐之夜之夢 参ノ後 sage 2008/05/13(火) 23:20:23 ID:vknOqU1P

「うおっ」
 真九郎はその刺激だけで、小さく精を漏らした。予期していた環は、ためらわずにそれを嚥下する。喉のあたりが焼け、どんな芳酒でも得られないような酩酊感が、環を襲った。
「ふ…」
 思わず、左手を自らの股間に忍ばせる。そこはすでに、たっぷりと潤っていた。真九郎の剛直に沿って頭を上下させながら、環は無我夢中で自身の秘所の上で指を踊らせた。
「あ、くう…」
 真九郎の腰が強張る。そろそろ限界が近いことを悟り、環はさらに口と舌の動きを加速させた。焦らせてやりたいと思う気持ちもないではなかったが、今回の趣旨とは違うということで思い切る。まあ、それは次回の楽しみに取っておこう。次回があればだが。
 環が敏感な鈴口やカリを舌で激しくなぶり、いきり立った根元を指で揉みほぐすうちに、真九郎の深いところから大きな塊がせり上がってくるのが分かった。とどめとばかりに、思いっきり吸い上げてやりながら、環は少し顔を引き、次に来るものに備えた。
「…っ、く」
 真九郎の腰が大きく持ち上がった。一瞬遅れて、その先端から大量に吐き出されたものが、環の口腔を満たす。
(う、わ)
 その量は、環の予想を超えた。あまりに急に注ぎ込まれたものだから、飲み下すことすら叶わない。幾度にもわたって圧力が加えられ、呼吸すらままならない状態で、それでも環は真九郎の一物を繰り返ししごき上げ続けた。
 何分そんなことが続いたのか、ようやく奔流がおさまったところで、環は顔を上げ、口の中に溜まったものを喉へと流し込んだ。それでも、溢れたものが唇の横から顎へと伝い落ちる。全身が、かっと熱くなった。腰が勝手に動き、環はたまらず背を丸めてのたうつ。
「ん、く、は…ああっ…」
 数瞬だけ頭が真っ白になり、我に返ってから、軽く絶頂に達したことに気付く。それもそのはず、真九郎から放たれたものは単なる精ではなく、生命力そのものだった。今し方飲んだものに体の裡から灼かれるようで、あまりのやるせなさに気が変になりそうだった。
「ふ、は…」
 荒い息をつきながら、体をせり上げ、真九郎の顔を覗き込む。
「し、しん、くろう、くん…?」
 真九郎は朦朧とした目で環を見返す。だが、その白目はまだ真っ赤に染まり、環が目を転じた先でも、肘の角は輝きと大きさを減じておらず、環の下腹部を突き上げる穂先も鋭さを一切失ってはいなかった。
「…そうだよねえ。そうこなくちゃ」
 環は目を細め、いとも楽しそうに云いながら、自らのジャージの上着に手をかける。だが、その強気なセリフのすぐ下から、
「あたし、もつかなー」
 珍しく漏れた弱音は、叩きつける風雨の音に紛れて、どこかへ吸い込まれていった。


124 嵐之夜之夢 肆ノ前後 sage 2008/05/13(火) 23:21:59 ID:vknOqU1P

 環が一切を脱ぎ捨てる衣擦れの音は、五月雨荘全体を叩く雨と風の中、誰の耳にも届かなかった。静寂すら感じながら、環は裸身を真九郎に沿わせる。闇の中で、我ながら自慢のスタイルを隅々まで見てもらえないのが、有り難いような残念なような、妙な気分だった。
 格闘家らしく余分な脂肪のかけらもなく引き締まっている癖に、女性らしい曲線と柔らかさに満ちた環の肢体が、真九郎の堅固な肉体の上で弾む。すでに固く盛り上がった乳房の上で鋭く尖った先端が、真九郎の胸板の上をかすめただけで、環は眉をひそめた。
「ん…は、…っ」
「た…環、さん…」
 真九郎も意識が少しはっきりしてきたのか、少し頭をもたげて環を見た。環は、そちらを上目遣いに見やりながら、
「大丈夫だから、任せなさいって…んっ、は」
「だ、だめ…で…すよ…こ…んな…こと、環、さん…が、しちゃ、あ…」
 真九郎の声はあまりに苦く、それが環の胸をなおさら熱くした。こんな時にまで、こっちのことを気遣うのだ。この頼りない男の子は。環は、頬を真九郎の胸に擦りつける。
「いーのいーのっ。あたしが、したいんだから」
「で、でも…」
「きかないよー」
 一度だけ真九郎の鳩尾に口づけると、環は真九郎の分身に手を添え、すでに準備の整いきった自らの入り口にあてがった。そのまま体を起こしざま、一気に呑み込む。
「う、は、あっ…」
 喘ぎというよりは、押し入ってきたものに、体中の空気が押し出された感じだった。あまりの充実感に、気が遠くなりかける。いきなり一番奥深いところまで貫かれて、身動きすらままならない。環は真九郎の胸板に両手をついて項垂れ、しばらくじっと耐えた。
「た…」
 言いかけた真九郎の唇のあたりに指を当てて黙らせると、深く息を吐いた環は、ゆっくりと腰を揺すり始めた。
「う、んっ…は、ふ…ん…くっ」
 歯を食いしばっても、否応なく嬌声が漏れる。環の中の柔襞の全てが限界まで押し広げられ、その敏感な箇所があますところなく真九郎の前にさらけ出され、抉られ、こすられるようだった。
「は、く、ふ、は…う、ん、んんっ…ん…は…あ、あ、う、や…や、あ…あ…あ、ん、んあ、く、あ、は、は…は、く、…は」
 一旦動き始めると、止めることなどできなかった。環は殆ど我を失うようにして、一気に頂上目指して駆け上がった。
「…く…う、…っ」
 しなやかな腰が、中におさめたものを絞り込むようにしてがくがくと前後する。その締め付けの中で、
「う、くぅっ…」
 真九郎も何度目かの射精をした。それに吹き上げられるようにして、環の桃色に染まった裸体が軽く反り返り、跳ねる。


125 嵐之夜之夢 肆ノ後 sage 2008/05/13(火) 23:23:22 ID:vknOqU1P

「は、あ、はあうっ…」
 何秒かの硬直ののち、環は真九郎の上に崩れ落ちた。呼吸すら思うに任せなかったが、それでも、己を貫くものに持ち上げられるようにして、何とかのろのろと体を起こす。
「ふ、ふっ、は、は…は、ふ…は、あ、く」
 何とか息を整えようとした環が唇をかみしめたのは、一旦放出して衰えかけたかと思えた真九郎が、環の中ですぐに硬さを取り戻し、その一番奥に再び届いたからだった。真九郎にというよりも、際限なく反応してしまいそうな己に恐れをなし、環は軽く腰を浮かせる。
「く、は…は…ふ、あ…は…はん、ん、は」
 にも関わらず、環の蜜壺は、その意志に関係なく緩やかな収縮を繰り返しつつお互いの粘膜を絡み合わせ、真九郎と環自身をやんわりと追い込んでいく。
「た…たまき…」
「ん、く」
 真九郎の感極まったような声をきっかけに、環は思い切って腰を落とした。こうなれば、行けるところまで行くしかなさそうだった。上体を反らせ、背後に回した手を真九郎の腿の上につき、一切をなげうって腰をくねらせる。
「く、ん、あ、く、あ、あ、ん、んっ、あ、は、あ、はあ、は、あう、は、ん…は…お、ん、あ…あ…く…く、う…は、く…うぅっ…っ…っ」
 全身の快楽神経を直接荒々しく爪弾かれているような気さえしながら、環は再び果てた。真九郎の上で、腰がしゃくるようにして二、三度痙攣し、腕が力を失って後ろへ倒れ込みかけたが、
「は、あんっ」
 その自らの動きで敏感な箇所を抉られ、跳ね戻るようにして真九郎の上に俯せに倒れ込もうとする。その腰を、真九郎の手が両側から掴んだ。
「え、あ…?」
 環が潤んだ目をぼんやりと瞠いたのも束の間、逃れようもなく固定された腰が、下から突き上げられた。
「あ、や、や、それ、だめ、だめだめっ、そ、そんなっ、いや、だめえっ」
 平素の闊達さの影すら失せて、ただの女と化して甲高い悲鳴をほとばしらせる環に、しかし真九郎は一切の斟酌をせず、その最深奥を激しく犯し始めた。環は、最初それでも、上半身をくねらせて逃げようとしたが、ほどなく圧倒的な連撃の前に屈する。
「だめ、だめ、や、し、しん、くろう、くんっ、だめ、だめ、イく、だめ、イく、ん、はっ…ん…は、あ、あ、ふ、あ、だめ、や、あ、また、あ、だめ、だめだめだめだめだめええっ…ん、ふ、あ…ゆ、ゆるし、も、だめ、あた、あたし、あ、イ、く…う、う…う…うぅっ」
 真九郎の上につっぷし、繰り返し高みに押し上げられて休むことも許されず、環は忘我の境地にいた。自分がどんな淫らな様をさらし、どんなあられもない声を上げているかすら、分からない。
 実際、あるところから、環は嬌声すら上げられず、ただきつく眉を寄せ瞼を閉じ口を丸く開いて、いつまでも続く衝撃と閃光の中にいた。そんな環の尻を、真九郎の腰がひときわ高く押し上げる。
「う…おおッ」
 獣のような唸り声とともに、止めのように何回かのストロークが環に叩き込まれ、ありったけの精を注ぎ込む。環は、真九郎の胸の上でその全てをなす術もなく受け止め、真っ赤に染まった胸から首にかけて筋が立つほどに強張らせると、全身を小刻みに痙攣させた。
 そして意識まで失ったか、やがて完全に脱力して、真九郎の上から滑り落ちた。


126 嵐之夜之夢 伍 sage 2008/05/13(火) 23:24:41 ID:vknOqU1P

「う…」
 真九郎が、体を起こす。筋肉の一本一本が軋む音が聞こえそうなほどにぎこちない動きだったが、闇絵の技の効力が薄れたのか、身動きもできないというほどではないようだった。そして環との最後の媾いで多少は正気も戻ったのか、ぐったりした環を覗き込む。
「お、俺…な…にを…た…たま…き…さん」
 おずおずと、環の剥き出しの肩に手を掛け、それが緩やかに上下していることに安堵したのか、肩の力を抜く。何かを堪えるように、きつく目を閉じ口を食いしばったが、その歯の間からは、いまだに炎のような吐息が漏れ続けていた。そのまま凝然とする姿に、
「環も、思ったよりは保ったな。大したものだ」
 闇の中から穏やかな声がかけられ、顔を上げた真九郎の前に、青白い裸身が立っていた。
 美しさよりは、まず妖しさを感じさせる光景だった。しみ一つなく滑らかに磨き上げられた肌は、けれど、近寄るもの全てを吸い着かせ溶かしてしまいそうだった。非の打ち所無く均整の取れた肢体は、しかし、触れればやわやわとどうにでも形を変じそうだった。
 さらに奇異なことに、風雨に荒れる窓外の暗黒に支配された室内で、闇絵の体は、それ自身が夜光虫のごとく光を発しでもするのか、しらじらとほの明るくさえ見えた。
 真九郎は、目を離せない。それは、見る者触れる者全てを虜にし狂わせる、魔性の躯だった。
 それなのに、その紅唇から放たれる言葉は、実に無表情で素っ気ない。
「だが、まだ半ばだな。手間のかかることだ」
「や…やみ、え…さん…?」
 唸るような真九郎に、しかし闇絵は怖れる様子もなく、ゆっくりと歩み寄った。その前に跪くと、身を屈め、真九郎の股間で直立するものに白く細い指をあてがう。
「う、くうっ…」
 そこにどんな技巧がこめられていたのか、真九郎はそれだけで、大量に放った。飛び散ったものが、闇絵の顎から喉、胸をしとどに汚す。だが、闇絵の笑みは冷静そのものだった。
「ふ。まだまだか」
 ため息のような呟きと共に、その指が微細にうごめく。その一撫で一さすりの度に、真九郎は腰を震わせ、精気を吐き出し続けた。すでに室内の空気を染め上げていた雄の匂いが、肌触りすら感じさせるほどに濃度を高めてゆく。
 その静かで激しい行為がどれだけ続いたろうか。いつまでも硬度を失わず、無尽蔵とも思える精汁を湧き出させ続ける真九郎を前に、闇絵はふと手を止めた。
 上目遣いに、真九郎の顔を覗き込む。艶やかな黒髪や餅のような柔肌の至るところに真九郎の放ったものをこびりつかせながら細めた瞳の縁が、やや紅に染まっていた。
「埒があかんな。とんでもないものを埋め込んだものだ。埋め込まれた方も、これほどとは。やはり、虎穴に入らざるをえんか」
 苦笑するかのように云う、その息も僅かに熱を帯びていた。そっと膝を進め、真九郎の胸板に伸ばした繊手は、しかしながら途中で押しとどめられる。
「闇…絵、さん」
 真九郎は、微笑っていた。唇の端や頬の微かなひきつりや、肩の小刻みな震えが、そうして微笑むだけのことにいかほどの努力が払われているかを如実に語っていたが、それでも、真九郎は微笑って、云った。
「もう…いい…です。俺…これ以上は…自分で、何とか…闇絵さん、が、こんなこと、だめ…です…こんな…」
「ふん」
 闇絵の軽くあしらうような声は、しかし、その語尾にあえかな優しさを滲ませていた。
「そうはいかないな。だが、わたしが相手では、なかなか素直にその気にはならないか。やむをえん」
「…は…?」
 訝しげな真九郎の顔を、闇絵は両手で挟み込み、引き寄せる。
「少年。君が何を見るのかは知らないが。先に謝っておくよ」
 真九郎がその言葉の意味を理解するいとまもなく、闇絵の黒い瞳がどこまでも深く昏い淵と化し、真九郎の意識を呑み込んだ。




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