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510に捧ぐ
-作者 2スレ518
-投下スレ 2スレ
-レス番 518-519
-備考 紅 小ネタ
518 >>510に捧ぐ sage 2007/12/08(土) 02:24:30 ID:tltBfoMC
――ああ、久しぶりだ、こういう感覚は
私は鏡の前に立って、そう呟いた。
今の私の格好は慣れないエプロン姿。この姿を見た息子はどんな反応をするだろう。
照れながらも嬉しそうにしてくれるだろうか、それとも捻くれた表情で嘲笑するだろうか。
息子なら後者に近いだろうな、と確信してはいるが。前者は自分で考えておいてなんだが、ありえない。
しかし、想像すると不安と期待で胸がドキドキする。と、そんなことを考えた自分に苦笑する。
普段は母親らしいことなど全くしていないというのに……いや、だからか。
くるっと一回転してみる。回転でエプロンがふわりと舞い上がった。
改めてエプロンを凝視してみる。フリルのついた可愛らしいエプロン。
自分の私服にはこんな可愛らしいものはない。昔、まだこの家にいたころ買ったものだ。
当時の息子がお母さん、可愛いねと評してくれたのを思い出した。思わず顔がにやけそうになる。
いかんいかん、こんな顔を息子には見せられない。
視線を鏡に戻し、再び鏡に映っている自分の全体を見てみる。
くくっ、と苦笑いしか出てこなかった。まるでメイドかどこぞの新妻ではないか。
しばらくは鏡の前で笑いが止まらなかった。
冷蔵庫には既にお手製の料理が入っている。
昼過ぎには家に帰り、準備を始めていたのだ。急いで『仕事』を片付けられたのは幸い。
メニューはクリームシチューだ。これなら冷蔵庫で冷やしても問題は無い。
冷蔵庫でシチューを発見したときの息子の顔が楽しみだ。
見つけたときは色々言うのだが、結局、ぶつくさ言いながらも食べるのだ、私の息子は。
百パーセントに近い確信があった。なぜならいつもそうだからだ。
たまに帰ってきて料理を作り、それを息子が発見したとき、息子は嬉しさと寂しさが入り混じった複雑な表情をする。
見つけたときは嬉しいのだろうが、いつも私に対して持っている複雑な感情が寂しさという色を加えるのだと思う。
しかし、私には分かる。食べているときの息子の微妙な表情の変化を。
普段から仏頂面の多い息子だが、食べているときは少しだけ嬉しそうな表情になる。
そんな顔を見るのが私は好きなのだ。
いつもは見れない貴重さからか、それともその表情を私が見ているという独占欲からか、それは私自身にもわからない。
だが、最近は息子にも表情の変化が多くなっている。特に堕花雨とかいう少女と知り合ってから息子は変わった。
いつも何かを諦めて、何にも関わらず、何かをしようともしなかった息子。まるでそれが自分の生き方とでもいうかのように。
が、堕花雨という少女と知り合って息子は積極的にではないが動き始めている。恐らくそれは息子自身も自覚しているだろう。
それが良いことなのか悪いことなのか私には判断はできない。
息子は弱い。いや、今も弱くなっているといったほうが正しいのか。人とのつながりは息子にとって重しになる。
それは息子自身が一番自覚している事実。大切なものがあればあるほど、息子みたいな『弱い人間』は生き辛くなる。
それが事実。不可避の事実。
息子は弱い。だから私は……
ガチャガチャと玄関のほうから音がした。恐らく息子が帰ってきたのだ。
鍵を開けている途中なのだろう。
私は急いで玄関に向かった。可愛い息子を出迎えるために。
「おっかえりなさーい!」
――どうか、息子だけは……せめて、『普通』に生きれますように
519 名無しさん@ピンキー sage 2007/12/08(土) 02:31:07 ID:tltBfoMC
オマケ
ジュウ「文句があるなら食うなよ」
紅香(・・・気づかなかったのか)
紅香 ショボーン(´・ω・`)
原作をこう解釈すると幸せになれるかもしれないぜ!
妄想してみよう!
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