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48 名無しさん@ピンキー sage 2007/03/01(木) 23:30:48 ID:6jRTzXFJ
体が重い……
ジュウは目を覚ましつつ体を起こすと、いつもとは違う感覚を体に纏っていた。
それは物理的な重さではなく、体の中が重いという感覚だ。
「あ~結構辛いな……」
ジュウの声は風邪特有のガラ声になっていた。
「……風邪か、ばかは風邪ひかなかったはずだが」
自分で言って可笑しくなる。まぁ、誰でも風邪くらいはひくか、とジュウは思った。
「それにしても、寒いな」
それもそのはず、昨夜は暖房が冷房になっていたのだ。タイマーをセットしてつけたはいいが
冷房では全く効果がない、逆効果もいい所だった。
この寒い12月、朝は氷点下に近い温度だ。冷房のせいでジュウの部屋は氷点下になっていた。
「ぅえっくしゅ!」
今日が日曜日でよかった、さすがに学校には行きたくはない、とジュウは思っていた。
ジュウはベッドから降り、部屋の電気をつけてカーテンを開ける。
朝日の真っ赤な光と部屋にある蛍光灯の淡い光がジュウを明るく照らす。
ジュウは思わず目を離す。
空はまぶしいほどの静寂。雲一つない快晴だった。
「……これで体が健康なら言うことなしなんだが」
49 名無しさん@ピンキー sage 2007/03/01(木) 23:31:32 ID:6jRTzXFJ
時刻はすっかり昼時。ジュウはお腹がすいていた。朝は食欲がなかったので摂ってなかった。
しっかり薬だけはあったので白湯で風邪薬を飲む。龍角散喉飴を舐めるとガラ声は治った。
紅香はもちろん不在。頼れるのは自分のみ。冷蔵庫は空っぽ。あるのは薬だけ。
「しょうがねぇ、買い物に行くか……」
渋々立ち上がると、ジュウは部屋に戻り着替え始めた。防寒対策にぴったりな服装だ。
インナーは長身で首の長いジュウにぴったりな紫のタートルネックに黒のカーディガン、
アウターにはファー付きのコートでしめる。
パンツは足の形がわかるほどのタイトな物。白いベルトを装着して、ほぼ完成だ。
首には使いやすいボーダーのマフラー。髪が跳ねていたので、ハンチングで隠す。
全体のバランスがとれるように調整。持ち物は財布と携帯をポケットに突っ込んで終わり。
バッグは持たない。
「まっ、こんなもんか」
靴を履き、鍵を閉めて玄関をでる。風がジュウの頬をたたきつけるように吹く。
しかし、タートルネックにマフラーをつけているジュウにはそれほど寒さを感じなかった。
あるのは倦怠感と熱。それだけだ――
50 名無しさん@ピンキー sage 2007/03/01(木) 23:35:19 ID:6jRTzXFJ
――商店街にいき、街で一番大きいデパートに入っていった。
今日の献立は決まっていた。
ジュウは栄養満点の鍋物を作ろうと考えていた。
「ヤサイからだな……」
ヤサイを無作為に籠に入れていき、しらたき、豆腐、肉団子、卵
などを籠に放りこんでいた時。
「ぅああ~~ん!」
幼い女の子が泣いていた。しかも、ジュウの方向に向かって来ていた。
名も知らない女の子が泣きながら
「おかぁさーん!お姉ちゃーん!」
必死に叫んでいた。
ジュウは昔、似たような事があったなと思い出していた。
それはジュウが5歳の時、ジュウはこの女の子と同じように紅香と買い物にきた時、
はぐれてしまった。周りには知らない大人達がいっぱいいて、泣いていたら
邪魔物を見るような目でみられた。孤独だった。さみしかった。紅香を必死に探した。
探したが見つからない。世界に一人、取り残された気分だった。自分は捨てられたんじゃないか?
とさえ思っていた。結局紅香が見つからないのでデパートを出た。
入り口の所で紅香が煙草を吸って待っていた。
紅香を見つけた時、安心感でまた泣いてしまった。泣いていたら紅香に殴られた。
「この程度の事で泣くな。もっと強くなれ、自分ひとりでも大丈夫なように」
紅香はスパルタ教育だ。そんな事言われてもまだ5歳だ。泣くなという方が無理だった。
「ったく、嫌な事思い出しちまった」
女の子は相変わらず泣いたままだった。周りに助けてくれそうな大人はいない。
ジュウは迷わずに近づいてきた女の子に目線を同じ高さにしてやさしく声をかけた。
「どうした?」
女の子はやさしいジュウの声を聞き、自分に向けられている物だと自然に理解していった。
不思議と女の子は泣き止んでいた。安心したのか、落ち着きを取り戻していた。冷静になる。
ぽつぽつと女の子はジュウに話を始めていた。
「迷子・・になった。何処へ行けばいいか……わからない」
女の子の口から直接迷子という言葉を聴いて、苦い思いが一つ浮かんでいた。
鏡味桜のことであった。えぐり魔から助けることが出来なかった。救ってやりたかった。
あの時交番に届けてやれば愚か者も思い直してくれたかもしれなかったのだ。
今度はこの子の親が見つかるまでいてあげよう、とジュウは思っていた。
「親、一緒に探すか?」
「いいの?」
「あぁ、一人じゃ心細いだろ」
「ありがとう」
女の子は嬉しそうにジュウに抱きついた。