ジュウ×円 1

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-作者 497 -投下スレ 1スレ -レス番 496-497 538-539 546-548 566-568 -備考 電波 496 名無しさん@ピンキー sage 2006/11/19(日) 22:40:02 ID:vPfD2N43 いい加減なシチュでジュウ×円を書いてみる  ジュウがその日、全く無目的に立寄った公園でたまたまそんな状況に遭ったのは全く偶然であった。  すなわち、彼の「友達」の一人である円堂円が所謂不良の集団に絡まれているという全く既視感を覚えるような 状況であり、むしろそこから二人で共闘して哀れな獲物たちを完膚なきまでに叩きのめした所まで含めてお約束 と言えるかもしれない。  しかしながら往々にしてイレギュラーとは起きる物であって。  「捕まえたぞ!」  「っ!」  自分の担当側の最後の一人を倒した所で、突如背後から聞こえた叫びに振り返ると、先程自分が倒した一人が 何時の間にか起き上がって、鼻血を垂らしながらも円を背後から羽交い絞めにしている所だった。加減しすぎたか 、とジュウは舌打しながら駆け出す。  もがく円だが、流石に組み付かれると体格差のせいで動きが封じられてしまっているようだ。  と、その前でフラフラと立ち上がる円に腹を打たれ蹲っていた男。その目は怒りに燃えて血走り、そしてその右手 には特殊警棒。それが大きく頭上へと振り上がり、そして……激突!  間一髪、円を背後の男ごと突き飛ばして割り込んだジュウは、その瞬間、頭部への衝撃と同時に目の前に火花が 明滅し、意識が暗くなりかけたが、何とかこらえて手を泳がせ、とりあえずそれに当った物を掴んで踏み止まった。 頭を一つ振って未だチカチカとする視界に自分の手を捉えてみれば、その掴んでいるものは正しく今自分の脳天へ と振り下ろされた凶器と、それを掴む男の手。それをゆっくりと上へ辿ると、やがて呆然とした男の顔に行き当たった。  ニヤ、と凶暴な笑みを浮かべる。  今度こそ男の顔が恐怖に歪むのを確認する暇もあらばこそ、ジュウの全力を込めた拳は、確かに歯を砕く感触と 共にその真ん中へと叩き込まれていた。  そしてそのまま、ガクリ、と前のめりに膝をついた。背後からは、倒れて体制が崩れたのを利用して戒めを解いた のだろう円が、自分の名を呼びながら駆け寄ってきていた。  「なあ、もう大丈夫だって」  「いいからじっとしていなさい」  “下から見上げながら”抗議するジュウにも構わず、円はそう言ってそっと彼の額に手を当てた。そのひんやりとした 感触が心地よくて、思わずジュウは目を閉じた。  あれから、円はジュウに肩を貸して、先程の場所から少し離れたこの小さな公園にやって来た。そして自分のハンカチ を水で濡らしてジュウの頭の血を拭いてくれたのだが……。  「あなたが丈夫なのは知ってたけど、特殊警棒で殴られてこの程度の怪我で済むなんてね」  「だからもういいって。もう血も止まってるし」  前には金属バットでぶん殴られた事だってあるしな、とは流石に言わなかったが。  「頭部への怪我は一見大丈夫に見えても後でどうなるのか分からないのよ。きちんと病院へ行って検査しなさい。代金 はこっちで出すから」  からかいではなく真剣な面持ちで諭す円に気圧されながらも、ジュウは費用については丁重に断る。が、円は何故か頑 として譲らない。なんとなく、自分に借りを作っておきたくないのだろうか、と判断して、少し寂しいような気持ちになりながら もジュウは引き下がった。  「……」  「なあ」  不意に落ちた沈黙になんとなく話題を探したジュウは、とりあえずさっきからの疑問を口に出した。  「なんで膝枕なんだ?」 497 名無しさん@ピンキー sage 2006/11/19(日) 22:41:09 ID:vPfD2N43  「嫌だった?」  照いも無く、平然とこちらを見下ろしながら聞く円に、なんと答えればいいのやら、ジュウは口篭もる。いきなり力ずくで 頭をベンチに座ったそのしなやかな太腿の上まで持っていかれた時に感じた気持ちや、今こうして存外に柔らかいその 感触を感じているのは正直嫌な気分とは程遠かったけれど。  「まあ、私みたいな男嫌いの空手女よりは雪姫や雨に膝枕された方が柔沢君もそりゃ嬉しいだろうけど。無いものねだ りは良くないわ」  「いや、ねだってねえよ」  なんだかコイツは一体自分をどういう目で見ているのだろう、と心中不安に感じながら、人が通らないかを気にしてみる 。幸いここは表の通りからは奥まった所にあって、入り口の木と藪で視界も遮られてあるので、この状況を他人に見られ る心配はあまりないようだ。  とりあえず忠告を聞いて大人しくしておくか、と思い直し、何とは無くぼんやりと円の顔を見上げた。改めて見ると、綺麗 な顔をしているんだな、と思う。冷気すら漂わすような整った面長の顔。鋭く、深い輝きを放つ切れ長の黒い瞳。短く整え た髪型のせいで一見すると美少年にも見えがちで、しかし柔らかな晩夏の木漏れ日を浴びてそっと目を閉じた彼女は まるで白石の彫刻の様な女性的な美を感じさせた。  思わず見とれていたジュウの視線を感じたのか、円が瞼を上げた。ハッとして、ジュウはつい目を逸らす。  「どうかしたの?」  「いや、なんでもない」  気恥ずかしくて顔も見れないまま、ジュウは答えた。いつも開けっ広げで大胆な雪姫などとは違い、氷のような円に「女」 を感じてしまった事で、妙に恥ずかしさが湧き上がってきて、そうなると何かもうこの状況が一刻も耐えられないような気持 ちになってきて、  「あの、もう、ホントに大丈夫だから、もういいぞ」  「そう」  今度は存外に素直にそっと手をどけた彼女に不審がる余裕も無く、ジュウは身を起こすと手早く立ち上がった。  「じゃあ、とっとと病院行くか」  「そうね。家の関係の所なら安く済むし、色々と話が付けやすいから案内するわ」  「ああ、すまねえな」  「私の方から言い出した事よ」  こちらを一顧だにせずにそう言い置いてサッサと先に立ち歩き出す円は、既にすっかりいつもの彼女だった。 今日はここまで。続きはまた今度。 538 497 sage 2006/12/03(日) 23:28:08 ID:HXPs6qsf >>497の続きを一つ  「意外と片付いてるのね」  というのが、まず自分の部屋に入った彼女の第一声であった。そしてジュウはそれに対して沈黙をもって答えた…… と言うよりはまだ事態の展開に頭がついて行かなかったのだが。  とりあえず落ち着こう、とジュウは微妙なムズ痒さを感じさせる頭の包帯を手の平で擦りながら軽く目を閉じた。  今日あった事を思い返す。円&不良達との遭遇。乱闘。一撃。出血。ハンカチ。膝枕。仄かに香る優しい匂い。 美しい顔……。  (違う違う)  脇道に逸れそうになった思考に、思わず首を左右に振る。まとまらない思考に、不意に外界からの声が割り込んだ。  「どうしたの?」  思わず目を開けると目の前に円がいて、そっとこちらの額に細く白い指を当てる所だった。  「まだ痛い?」  「いや、ちょっと痒くて」  「そう。だからって掻いちゃダメよ」  へどもどするジュウに対して円の方は平然としてそう言い置くと、  「お茶、いただくわね」  返事も待たずに冷蔵庫から麦茶を、水屋から白いコップを取り出すと悠然と喉を潤した。  半ば呆然と意識を飛ばしながらその様を見つつ、ジュウの脳裏には先程の事が蘇っていた。  すなわち病院へと二人揃って入り、何やらお偉い方に直接話をしたらしい円に紹介された篤実そうな中年の医師から 丁寧な検査を受け、一先ず何事も無く治療を終えた後に連れ立って院外へ出ると、折しも晴れ渡っていた空の向うから 一面雲涌き立って天上を覆わんと近付きつつあった。それを見たジュウは、とりあえず舌打しながら家に向かって走ろ うという決意を固めたのだが、そこで円が自分の折り畳み傘ならば二人入っていける、と言い出したのだ。それでは相々 傘ではないか、とジュウは固辞したが、とりあえずジュウの家まで送ると言う円に遂に押し切られ、今又何故か家の中まで 済し崩しに進入を許したのは全く激しい夕立に後押しされた勢いの為としか言い様が無い。  だがそもそもあの円が膝枕をしたり、相々傘を勧めたり、ましてやこうして自分の……男の家に自ら上がり込んだりする 等とはそもどうした事か、という事にジュウは今更ながら大いなる違和感と疑問を抱かざるを得なかった。その違和感を どのように伝えれば良いものか、と考える内にこのような事態にまで至った事は最早どう思っても詮無い事ではあるが さて事ここに至っても彼女の目的がイマイチよく判らない。  よってこれからどう対応すれば良いのやら、困り果てて見つめた円の横顔には、何も浮かんではいない。  感情も表情も、ただ無機質な仮面の内側へと押し込めてまるで何かを待ってるような表情で、じっと窓の向こうを見て いる。何故かその姿に訳の分からない悪寒を感じて、一つ身を震わせる。 539 497 sage 2006/12/03(日) 23:29:30 ID:HXPs6qsf  「これじゃあ帰れないわね」  「……通り雨だろ。すぐ止むさ」  二人の間の沈黙に、ざあざあと壁一枚向うの雨音が侘しさを添える。  もし二人の関係がもっと違うものならば、これもまた別の感慨をもった沈黙となるのだろうか、と益体も無い事を考え ながらしかしこれ以上気の無い息苦しいような受け答えを続けるのは御免蒙りたかったので、ジュウはシャワーを浴びる 事にした。  円が濡れないように、と気を使って傘を相手側に傾けていた為、ジュウの肩は一方だけとは言えかなり雨を被ってしま っていた。濡れて肌に張り付くシャツが気持ち悪い。着替えを取って浴室へ向かいながら、雨が止んだら勝手に帰って くれていい、と円に向かって言う。  彼女は、どこか霞でもかかった様な曖昧な瞳で、こちらを見るとも無く見ると、こっくりと頷いた。  それでジュウは安心したのだが。  蛇口を捻ると冷たい水が噴射される。時間をおいて徐々に温もるのを待って、ジュウはそれを肩から浴びた。汗と、雨と 重苦しい空気すらもかけ流して、冷えた身体の内側まで染透っていくような熱にほうっと溜め息をついて、ジュウは頭から それを浴びたくなったが、生憎とまだ包帯は巻かれたままだ。勝手に取ると円が怒るだろうな、と思って、苦笑した。  今日の“らしくない”彼女には戸惑ったが、なんだかんだと言っても、自分の身体を心配してくれているのだからやはり いい奴だな、と思う。男嫌いだと言うし、実際自分に対する普段の態度も冷淡極まりないが、それでもただの嫌な奴では ない。むしろ自分よりも余程上等な人間だろう。強くて、聡明で、やや鋭利過ぎるものの凛とした美貌は男女問わずに誰 の目をも引く。雪姫にせよ雨にせよそうだが、何故そんな彼女等が何故自分といるのか、ジュウにはどうにも理解し難か った。他人を惹き付ける魅力、そういった物が自分にあるとすればそれはなんだろう?  「馬鹿馬鹿しい」  再び苦笑。そんな物はある訳が無い。雨は妙な妄想からくる思い込みが高じての事だろうし、雪姫はただの面白半分だ ろう。いずれは消えてなくなるものなのだ。では円は?彼女とはより何も無いようにしか思えない。二人に対する付き合い の内なのだろうか?  「柔沢君」  陰鬱な思考を切り裂くような鋭い、しかし平静な声が浴室の扉の向うから響いてきた。  「円堂、雨止んだのか?勝手に帰ってくれて構わないって言ったのに」  模糊の海から意識が突如引きずり出され、ジュウはハッと我に返って問い返したが、続く言葉に絶句した。  「私も一緒に入っていい?」  唖然としたジュウの眼前で、濡れた扉が開き、そして止める暇もあらばこそ。  漂う湯煙の中に、白い裸身が浮かび上がり、こちらに一歩を踏み出した。 <続く> 546 497 sage 2006/12/07(木) 19:21:54 ID:H3JPZtxU どうも、また半端な所で切れてしまいますが、次回こそは多分終わりですんで。 それでは本編をどうぞ↓  視覚情報が脳に伝わってからジュウが行動に至るまでに一瞬ならず間があったのは単純に驚きのためかと言われ れば、そうとばかりも言い切れない。つまりは、眼前にたおやかな裸身を晒す円に慌てて背を向けたジュウの視界には その直前まで確かにその全てが捉えられていた。見とれていた、と言い換えてもいい。  白く、内側から自ら輝きを放つような瑞々しい肌。あの強烈な蹴りを放つそれと同じとは思えないように、スラリと伸び た長く細い脚。長身痩躯、とは言っても、骨の浮き出るようなという程ではなく、また逆に見るからに筋肉質という事でも ない、むしろ女性らしい丸みを胸や、腰から下に帯びさせたままでその他無駄な肉を一片までも削ぎ落としたような、 芸術的なまでに完成度の高い姿態は、胸の先の薄桃色や品良く黒々と生え揃った下腹部の茂みも含めてジュウの目 にしかと焼き付いていた。  目を閉じてもその映像はより鮮明に蘇り、鼓動を五月蝿いほどに高め、また息は情けないまでに乱れた。あるいは昼 間に頭部に喰らった衝撃よりも強烈かも知れないインパクトが、舌をも縺れさせる。  「なっ……、どっ……、おま・・・・・・!?」  「もうちょっと落ち着いたら?何言ってるか分からないわよ」  むしろなんでお前はこの状況でそんなに冷静なんだ、とジュウは悲鳴を上げたかったが、生憎と声にはなってくれ ない。とりあえず搾り出した言葉は  「……なな、何を?」  という全く意味する所の汲み取れないものだったが、円は理解したらしく事も無げに言う。  「私もシャワー借りたくなったの」  「俺が出るまで待てよ!」  「一緒に入った方が節約になるわ」  至極当然のように答えると、二の句の継げないジュウを尻目に悠々とシャワーを浴び始める。  浴室はそれ程狭くはないが、二人で入っても十分なほどに広くもない。よってジュウの背にも時折円の身体が僅かに 触れることになる。ジュウはその度にビクリと大袈裟なほどに身を竦ませて、なおも混乱を深くした。  なんだこれは、なんでこんな事を。俺に見られる事は何とも思ってないのか。答えの出ない自問はひたすらに堂堂 巡り。そんなジュウに  「早く体洗ったら?」  円が呆れたように言う。その言葉に、彼女が今自分の裸の背を見ているのだと思い至って、突如堤防の決壊するよう にこの状況がどうにもたまらなくなったジュウは、円の方に顔を向けないようにしながら  「お、俺、もう出るから」  ドアノブに伸ばしたジュウの腕を、横から伸びた手が押さえた。  思わず振り向いてしまったジュウの目の前に、自分とあまり変わらない身長の円の顔があった。  「ダメよ」 547 497 sage 2006/12/07(木) 19:22:55 ID:H3JPZtxU  幸いにもと言うべきか、近すぎて見ようと思わなければその顔以外の部分は視界の外にあったが、こんな間近で全裸 の円に見つめられる、という状況自体がもうジュウの羞恥心に対する負荷の限界を超えている。目を逸らす事も出来な いままに、後ずさりつつ何とか言い訳を試みる。  「いや、お前が出た後でもっぺん入る事にするから……」  「そんな事してたら風邪ひくわよ」  ジリ、と腕を掴んだまま円もこちらへと近付く。  「い、いやあの……」  また一歩を下がり……と、そこでタイルに足が滑る。  「おわっ!」  「……っ!」  仰向けに倒れるジュウを追うように、その腕につられて円も倒れかかる。咄嗟にジュウは、自分の体を下敷きにする ように彼女の体を引き寄せた。一瞬の浮遊感の後、背と後頭部とが床と壁に打ち付けられる。  「痛う……」  「大丈夫?」  心配そうに声をかける円に、ああ、と返そうとして思わずジュウは固まった。  上半身を起こしてジュウの頭部にそっと繊手を這わす円。彼女は包帯の巻かれたそこを気遣っての事だろうが、二人 の現在の体勢・位置的に、頭だけを起こしたジュウの目の前には、大きくはないが形良く整った二つの白い膨らみが 迫って見える。腹には重みと共に、水分を含んでしっとりとした柔らかな太腿と、くすぐったいような恥毛の感触。  「少しこぶが出来てるわね。血は・……どうしたの?」  ジュウの態度を不審げに見て取って尋ねた円は、そこで初めて彼の目線の先に気付いたらしくそっと体をジュウの 上からどけると  「あ、いや。これは……」  「柔沢君」  何やら真っ赤な顔で言い訳を始めようとしたジュウを冷然とした一言で押さえ、すっと視線を横に滑らした。  「立ってる」  隠すものとて無い全裸で横たわったジュウの体の一部は、あまりにも明らかな自己主張をしていた。無理も無い。 ジュウとて健全なる青少年である。今までは驚きと混乱が先に立って気にしている余裕など無かったのだが、それが こうして円と密着してしまった事でその感触に反応してしまったものと見える。  理屈はともあれ、思わず隠す事すらも忘れてジュウは半ば絶望的なうめきを漏らした。終わった。何の事かは知れず、 とにかく自分は最早終わった。そんな感慨が浮かんできて、もうどうにでもしてくれ、という気分だ。  「柔沢君」  円が再び自分の名を呼ぶ。その顔はいつもと同じく冷静だが、頭から全身湯に濡れて光る姿は何か艶然とした物を 感じさせずにはいられない。そしてその姿で円は言う。  「私と……したいの?」  「え?」  その意味を理解できずにいる間に、返事も聞かず彼女はジュウの体へと覆い被さってきた。 548 497 sage 2006/12/07(木) 19:23:25 ID:H3JPZtxU  「なっ……ちょ、ちょっと待て!」  恐慌に近い反応を示す示すジュウにも構わず、円はどうやったのか体重をかけて彼の動きを抑えると、そっと耳に 舌を這わせた。熱くぬめる感触が、弾けるような水音とともに脳の中へと入り込むような快感をジュウに与えてくる。  「あぅ……んっっぐ、あ、や、止め……」  ぞくぞく、と全身を震わせる快感に、抵抗の気力も体力も萎えていくのを感じたジュウは  (拙い……このままじゃ……)  そんな事を考えながら朦朧となる意識を必死に繋ぎ止めようとしたが遂に空しく、見る見る死んだように脱力し、荒い 息を吐くしか出来なくなった彼の首筋へと円の舌は下りていく。  「う……ぁああ」  そこから胸へ、そして腹へ、更に股間を迂回して足へと続く円の奉仕――それは正しく王に傅く奴隷の奉仕さながら だった。ただ当のジュウからしてみれば拷問に近かったろうが。あまりの快感に、ジュウは危うく触れられてもいない 股間から放出しそうになった。だがその度に円は絶妙な加減でそれを到達させずに止めてしまう。  「円堂……も、もう」  「我慢できない?」  こくり、と必死の思いで頷くジュウを流石に少し熱っぽく潤んだ目で見た円は、屹立した怒張にそっと根元から舌を伝 わせる。  「うぁっ」  それだけでジュウの身体はビクリと跳ねた。円は更に柔らかな手でそのものを掴むと、ゆっくりと上下させ、先を舌で チロチロとくすぐる。熱を受けた蝋細工のように、自分の物がドロドロと芯から溶けていくような恐怖と相半ばする快感に のたうち、最早息も絶え絶えになりながら、ふとジュウはかつて何とはなしに聞いた雪姫の言葉を思い出した。  『ちなみにね、フフ、この三人の中に処女は三人います。さて誰でしょう?』  そうだ。あの時雪姫は確かに円も処女である、という意味の事を言っていた筈なのだ。なのに、この手慣れたような 愛撫はどういう事だろう。雪姫が嘘を吐いた?いや、そんな意味の無い事をする彼女ではない。ならば円がそもそも雪 姫に嘘を吐いていたのだろうか。それも考えられない。意味が無い。そもそも何故円が自分にこんな事をするのだろう か。いったい彼女は男嫌いだった筈ではないのか。  分からない。何も分からない。  「ん……ぷ、んぅ」  やおら、円がジュウの物を口に含む。それだけで全身を快感が苛み、思考は千々に乱れた。ジュウの悲鳴に近い声 を聞いているのかいないのか、円はその染み一つ無い雪白の顔をゆっくりと上下させる。  「はぷ……ん、ぅっ、ふぅっ」  うっとりとした声を漏らし、目を閉じたまま自分の行為に没頭しているらしい円の横顔は、ぞっとする程に美しい“女”の 顔だった。だが、ジュウはそんな感想を述べるどころではない。先程にも倍するような快感。肉棒を苛む円の口中の蠢き は、ジュウの弱点を全て知り尽くしたかのように的確で、苛烈だ。  「円堂……も、もう……っ!」  切羽詰った声を上げるジュウの声を切欠にしたように、円は口に含んだものを、より深く、根元までくわえ込んだ。喉の 奥まで突っ込まれた肉棒は、舌で、頬の粘膜で、嬲られ、捻られ、引き絞られる。最早ジュウに耐えられる筈も無かった。  「あああっ!あぐっ、ん、うあぁ!」  「んぅっ!んっ、んン……」  爆発するような勢いで溜め込んだ欲望の塊を解き放つ。腰が抜けるかと思う程の、初めての他者の手による絶頂の 快感に放心状態のジュウの放出を全て受け止めたらしい円は、何度か喉を鳴らしていたが、ややあってゆっくりと顔を 上げた。今の手際にも似ず、やはりまた同じく惚けたような顔で座り込んだまま、呆然としている。  荒い息を吐く二人の体を、シャワーの飛沫が叩いていた。 <続く> 566 497 sage 2006/12/10(日) 20:36:07 ID:cVAdv5FO  ……室内には出しっぱなしの放水の音が雨のように満ち、その合間に二人分の荒い呼吸音が混じる。ジュウはやや あって、むっくりと身を起こした。体全体にまだ痺れるような快感の余韻が残っていたが、それが疲労感よりもむしろ己 が獣欲を掻きたてるのを彼は感じていた。その視線の向ける先は、いまだ稀にも見ぬような白痴のごとき顔で座り込む 少女、円。その、頼りなげに見えるほどの細身を、匂い立つような女の身体を、滅茶苦茶にしてやりたいと、彼の本能 からの叫びはそう言っていた。  蒼白いほどの手首を掴むと、びく、と一つ震えてゆっくりとこちらを見る、その瞳。いつもはまるで鋼のような冷たく鋭い 輝きをもってこちらを射るそれは、いまや確かな熱を湛えて揺れている。それを見た瞬間にもうジュウは堪らなくなり、 そのまま円に覆い被さっていった。そしてそのまま床に組み敷いた円の柔らかい身体の、二つの丘陵へと己が指を……  「や……」  ほんの微かな、聞き逃してしまっても可笑しくないような声だったが、それは確かにジュウの耳へと届いた。頼りなげな 、儚い声。視線を上らして円の顔を見て、ジュウは頭から湯ではなく水を浴びた思いになった。  円が、怯えていた。  目を両手で隠して、瞑った口元は僅かに戦慄き、ギュッと身体を縮こまらせている。あの、円が。その様はどこか、叱 られた幼子をすら思わせるほどに弱弱しかった。  みるみると、猛る性欲は己が分身と共に萎え、代わりに言い様の無い罪悪感が襲い掛かってくる。それはまるで信仰 する偶像を自ら汚したかのような、心深くまで突き刺さるような痛みであった。  黙ったままで、身を起こし、背を向ける。気配で、背後の円が自分を見るのが分かった。どういう目で見つめているのか 、想像したくなくて、ジュウはただ、すまん、と一言だけを残して浴室を出た。  着替えて自室に戻ったジュウは、ベッドに腰を下ろした。そしてそのまま、俯き、じっと動かない。電気も点けず、薄暗い 部屋の中でなお判るほど悄然たる顔で、ジュウはただひたすらに後悔と自己嫌悪に金縛りにあったように身動きも取れ ず固まっていた。  馬鹿野郎、何をやってる、なんで俺はあんな事を。何が王だ、何が騎士だ。ほんの僅かにあったはずの信頼を自ら踏み 躙るようなただのスケベでバカな猿じゃないか。救えねえよ、死んじまえ。  ……冷静に考えればジュウが悪い訳は無く、普通に考えても全くしようの無い事だったのだが、円に酷い事をした、と いう思いは、一切の理屈をも飛び越えてジュウの心をギリギリと締め付け、軋みを上げさせた。恐らくは良くも悪くもそう いう部分こそがジュウのジュウたる所以なのだろうが。  「……柔沢君」  何時の間にか部屋の仕切りが僅かに開いて、逆行と共に円の顔が覗いていた。黒く影になってその表情はよく見えない が、その声は微かに震えを帯びて、か細い。その声を聞き、恐る恐るといった様子で彼女が部屋に足を踏み入れた途端 、ジュウは立ち上がると頭を下げた。  「すまんっ!」  「え?」  唖然とした呟きも耳に入らぬまま、ジュウは続ける。  「謝って、済む事じゃないのは解ってる。お前の言う通りだ。俺は、お前や、雨達と付き合っていて良いような、そんな 人間じゃない。勘違いしてたよ。居心地が良くて、もしかしたらずっとこんな生活が続いていけるのかも知れない、なんて そんな馬鹿な期待をさ……」  「ちょっと待ちなさい」 567 497 sage 2006/12/10(日) 20:36:48 ID:cVAdv5FO  何時の間にか、目の前まで近付いてきていた円が、呆れ返った声で遮ると、グイ、とジュウの肩を押して顔を上げさせ る。薄ぼんやりとした明かりの中、ジュウのそれと相対した瞳は、既にいつもの冷たい輝きに戻っていた。いや、いつも よりはよく見れば幾分か柔かい物を感じさせる。  「おかしいでしょう。何故あなたが謝るのよ」  「え、いや、だってお前の事を襲おうとして……」  「わたしが誘惑して、先にあんな事までしたのよ」  「……ああ」  そう言えばそうだった、と今更ながらに思って、ジュウはようやくそれだけを口に出した。円は、何やらもう色々と馬鹿 馬鹿しくなった、とばかりに大仰な溜め息を一つ吐いた。  さて、そうして、二人で暗室の中で二人して言うべき事が途切れて、しばし沈黙の帳が下りた。  何か緊張のようなものを孕んだそれを破ったのは、ジュウの一言だった。  「なあ」  「なに?」  「『誘惑して』って、今言ったよな」  「ええ」  円の声は、挨拶でもするように普段と変わらない。ジュウの声は、訝しげにくぐもっていた。  「なんで、だ?男嫌いのお前が、なんで?」  円は、しばし黙してから、皮肉気に笑いを刻んで答えた。  「聞いたら軽蔑するわよ?」  黙りこむジュウの反応をどう見たのか、そのまま続ける。  「あなたをね、公園で膝枕してた時。あなた、私の事を“女”として見たでしょう?」  ぎくり、と実際に音にも出そうなほどにジュウの心臓が跳ねた。バレていたのか、と今更ながらに頬に血が上る。部屋 の暗いのがせめてもの幸いだった。  「その時にね、ふと思ったのよ」  目を伏せる。  「あなたを誘惑して、そしてあなたが私の物になったのなら、雨は、雪姫は、あなたから離れるんじゃないかって……」  「な……」  それきりジュウは絶句した。円が、彼女がそこまで自分の事を嫌っていたのか、という思いよりも、むしろ彼女がそんな 下劣とも言えるような発想を抱くとは信じられなくて、だ。  「あなたの事は……少なくとも以前ほど、他の男ほどには嫌いじゃあないわ」  相手の反応など気にも止めないように円の口は言葉を紡ぐ。  「でも、あなたは危険。あなた自身の事だけではなく、周りの事が」  それはいつかも聞いた言葉。  「あなたは、人の内側まで、自身でも気付かないうちに入り込みすぎる。そのくせ、相手を自分の内側までなかなか受け 入れたがらない。だから、雨も、雪姫も」  そこで少し口篭もって  「そして多分、光も、皆何時の間にかあなたに近付きたいと思う。そうなってしまう」  「そんな……」 568 497 sage 2006/12/10(日) 20:37:25 ID:cVAdv5FO  ジュウの言葉を遮って円の言葉は続く。  「だから、これ以上皆があなたに近付く前に、って、そうすれば……」  「待てよ」  堪りかねてジュウは言った。かつて雨との関係について『二人の問題』だと言ったのは円ではないか。それを何故今 頃になって……と捲し立て、なおも言い募ろうと肩に手を置いて、ふと気付いた。首を垂れて俯いた円の肩は、僅かに 震えていた。  「そうね……なんでかしら。自分でもよく解らない」  寂しそうな笑いを含ませた声で、そう言った。  「あなたに偉そうな事を言えるような人間じゃなかった、って事ね、私こそが。あの子達に相応しくないのは、私の方 だわ。馬鹿馬鹿しい。最低ね……」  それだけ言って、黙り込む。ジュウは、そこで初めて掴んでいる肩の華奢さを意識し、そうして悄然とした円のその消え 入りそうな姿に言葉を失った。円堂円は、もっと強くて、自分など及びもつかないような自制心を持っている少女だと 思っていた。でも、それは間違いだったのか。彼女もまた葛藤し、迷い、悩み、時に間違うのか。いや、人間ならば、や はりそれが正しいのだろうか。  ふと、ジュウの心に一つの疑問が涌いた。  「なあ、円堂」  「……なに?」  既に気死したかのような声でそう問う円に、ジュウは疑問をぶつけた。  「だったら、なんでさっき俺に『先に自分が誘惑した』なんて言ったんだ?」  「え?」  予想もしていなかった事を言われた、という顔で円が振り仰ぐ。  「お前の考えとは違ったけれど、俺は自分からあいつ等と離れようとした。だったら、お前の目的通りじゃないか。なんで わざわざ否定するような事を言ったんだ?」  「……なんで、かしら」  本当に分からない様子で、円は視線を彷徨わせた。ジュウは続けた。  「俺が警棒で殴られて怪我した時に手当てして、膝枕してくれたのはなんでだ?」  「分から、ない……」  首を横に振る。イヤイヤをするような仕草だった。  「なんで、今そんな、言わなくてもいいような告白を、俺にしてるんだ?」  「……」  祈るように、ギュッと胸の前で手を組んだまま、円は沈黙する。  「なあ円堂、俺は、弱い人間だ。今までだって色んな事件に遭うたび、いつも途中で投げ出そうと、逃げ出そうとした」  円は黙っている。  「でも、雨が、雪姫が、光が……お前がいてくれたから、俺はそうしなかった。一人じゃ何にも出来やしねえけど、誰かが 助けてくれたから、支えてくれたから闘えた。こんな情けない俺でも」  円の顔を覗き込むようにしてジュウは続けた。真剣な顔で。  「お前は、強くて、賢くて、カッコ良くて……でも、一人じゃ寂しいんだよな。俺も雨に言われたよ。強いってのと寂しい のは違う、って」  何となく力を入れるのが癖になっている眉間を緩める。  「だから、アイツらの事もう少し頼ってやれ。言いたい事はもっと言えばいい。そんで、頼りないかもしれないけど、お前 を悩ませるだけかもしれないけど……もし良ければ俺の事も頼ってくれ」  ほんの10cm程の距離で、二人の視線が交わった。  「お前は俺の事どうでもいいって思ってるかも知れないけど、俺はお前がいい奴だって知ってるし、お前の事が好きだ」  円の目から微かな灯りを反射して雫が滑り落ち、僅かにカーペットを濡らした。  「ごめん、ごめんなさい……」  堪え切れない嗚咽を漏らして、円はジュウの肩に顔を伏せた。そこから温かい染みが広がるのを感じながら、ジュウは その合間の一言を確かに聞いた。  「……ありがとう」 <続く>

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