4スレ 49

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49 :名無しさん@ピンキー:2009/05/27(水) 21:07:44 ID:lh6PzRGo 絶 奈:「おひさしぶり、紅くん」 真九郎:「星噛絶奈……。なんの用だ?」 絶 奈:「そう身構えないでよ。今日は戦り合うつもりはないから。     クリスマスの時のお詫びに、プレゼントを持って来たの」 真九郎:「いらないから、さっさと帰ってくれ」 絶 奈:「ふふふ。コレを見ても同じことが言えるかしら? ジャジャーン!」 真九郎:「自分で効果音出してるし……。なんだ、コレ? バイブ?」 絶 奈:「そんな陳腐なモノと一緒にしないでほしいわね。      レは悪宇商会が自信をもっておすすめする夏の新作!     星噛家が総力をあげてつくりあげた究極にして至高の男根!     星噛製閨戦壱式百八号、名付けて『無敵砲台』!」 真九郎:「悪宇商会も星噛家もなにやってんだーー!?」 絶 奈:「コレさえあれば、夜の揉め事は万事解決! 包茎早漏短小とは永遠におさらば!      外見だけじゃなく、持続力だってモンスター級の超優れモノよ!     感想は?」 真九郎:「…………すごく、大きいです」 絶 奈:「気にいってくれたようでなによりだわ。     それじゃあ早速、君の股間の貧相なものと交換しちゃいましょう」 真九郎:「え、ちょっと? どこを握って……、なっ? ぎゃぁぁぁあああッツツツ!!??」 絶 奈:「そうそう。言い忘れたけど、『無敵砲台』は強力過ぎて、並の女のアソコには     入れられないのよ。受け入れられるとしたら、それは『孤人要塞』たる私だけ。     もう君は私から離れられない――って、気絶してるじゃない。だらしないわね。     ……ま、いいか。起きた時には、新しい世界が君を待っているわよ、紅真九郎くん」 54 :49:2009/05/30(土) 01:49:23 ID:7keyS6MB  天国であり、地獄であった。  それが星噛絶奈との睦み合いを終えた紅真九郎の正直な感想だった。  二人で繰り広げた物理的かつ性的な応酬については、殆ど記憶していない。  気がつけば、豪奢な寝台に仰向けに転がり天井を見上げていた。かたわらには一糸まとわぬ絶奈の姿が。  むせかえるほどに濃厚な性臭と、全身に広がる粘っこい倦怠感。  真九郎は理解した。自分が新しい世界へと足を踏み入れてしまったことを。  はたして、これは哀しむべきことなのだろうか。それとも、喜ぶべきことなのだろうか。  少年の思考は自問の迷宮を彷徨う。  不意に、絶奈が真九郎の胸板についと指を滑らせた。  酒を飲んだわけでもないのに、彼女の頬は朱に染まっている。先程までの情交の残り火だ。  鉄板をも貫く凶器と同義の指先が、文字を書くように、または蜘蛛が這うように動く。 「本当に素敵だったわ、紅くん。ね、もう一回シよ?」 「……勘弁してくれ」  普段の絶奈からは想像できない、とろけるような甘い声音。だが、真九郎はにべもなく断った。 「ええー? 私はまだ満足してないわよ。あと一回だけでいいからがんばってよ。  ほら、口ではそういっても股間の大砲はビッキビキじゃない」 「……無理なものは無理だ。いくらモノが勃っても、体力がもう限界なんだよ」  喉奥から搾り出された拒絶は、もはや哀願に近かった。  星噛製の男性器の威力は確かに凄まじい。コレで貫かれれば、貞淑な修道女さえも淫奔な娼婦に変えてしまうだろう。  しかし、それだけのモノを使いこなすには、真九郎の経験値があまりにも不足しているのだ。  崩月で鍛えた体は決して脆弱ではない。それでも、根こそぎの体力気力を持っていかれた。  たとえるなら、原付の免許をとったばかりの人間が、いきなりF1マシンを操縦させられたようなものだ。 「ふ~ん。そうなの」  興醒めだといわんばかりの絶奈の口ぶりだが、今の真九郎にそれを気にかける余裕はない。 「……とにかく、今は休ませてくれよ」  もそもそと穴兎のように布団にもぐりこむ真九郎。今日は色々なことがありすぎた。心身ともに休息を欲している。  だが、「はい、そうですか」とそれを認める星噛絶奈ではない。 「こうなったらあとはもう、逆レイプしかないわね」 「なんでそうなる!?」  真九郎が抵抗する暇もあればこそ。  がばっと一息に毛布を剥いだ絶奈は、次の瞬間には真九郎の上に馬乗りになっていた。 「私は和姦のほうが好きなんだけど、こっちのほうが君の好みだっていうんなら、お応えするのもやぶさかではないわ」 「そんなわけないだろ、バカ野郎!」  なけなしの体力を振り絞った真九郎の抵抗をものともせず、絶奈は易々と少年の四肢を布団に縫い留めた。  もはや真九郎に為す術はない。ただ蹂躙される時を待つだけの哀れな犠牲獣。  絶奈は怯える真九郎に猫科の肉食獣のような笑みを浴びせると、ゆっくり自分の腰を移動させた。  散々に男の精を貪った後でありながら、彼女の性器はいささかの形崩れも見せていない。  割り開かれた陰唇が、真九郎の逸物を咥え込まんと厳かに花開く。  淫靡に蠢く肉襞が、すっかり観念して大人しくなった真九郎のモノの先端に触れた刹那、 「真九郎さん、無事ですかッ!?」  非自然的な轟音と共に寝室の扉が爆砕され、立ち上る粉塵の中から一人の女が姿を現した。 55 :49:2009/05/30(土) 01:50:09 ID:7keyS6MB 「なッ!? 核爆発にも耐える超合金製の扉が」 「ひょっとして……」 「崩月夕乃、推して参りました!」  黒曜石よりも黒く輝く長い髪。服の上からでもはっきりとわかるたわわに実った乳房。  他の追随を許さない圧倒的なまでに美しい白皙の顔貌。双眸に宿す紅蓮の業火。  間違いなく、裏十三家が一、崩月家の現当主崩月法泉の孫娘、崩月夕乃その人であった。 「夕乃さん!」  これで助かると喜色満面に姉弟子の名を叫ぶ真九郎。応えてにっこりと微笑む夕乃。ただし、目は笑っていなかった。  真九郎の頬がわずかに引き攣った。 「いろいろと聞きたいことも言いたいこともありますが、とりあえず後回しにしてあげます。  今はそこの淫売さんから真九郎さんを取り戻すことが最優先です」  敢然と夕乃は絶奈と相対する。流麗な立ち姿には、なんの気負いも不安も感じ取れない。  対する、絶奈の表情は険しい。  ここは悪宇商会のセーフハウスの一つ。登記簿に載らず、警察も手が出せない闇の聖域。  それがこうも早く発見された上、突破されてしまったとあっては、最高顧問として腹立たしいことこの上なかった。  見れば、粉塵の向こうでは警護の任に当てていた黒服の男たちが、ダース単位で地に伏し呻いている。  男たちは皆、有能な戦闘屋だった。裏十三家の人間が相手でなければという但し書きはつくが。  もっとも、絶奈にとって彼らはいくらでも替えのきく駒。信頼を置くに値しない。  彼女が真に信頼し、自分の寝室を預けていたのは同じく裏十三家の―― 「切彦はどうしたのかしら? あとで紅くんを貸してあげるって条件で見張りにつかせていたはずだけど」 「切彦? なんです、それ? 美味しいんですか?  ――ああ。そういえば、途中で刃物を振り回す狂犬と逢ったので、ちょっと躾てあげましたっけ」  しれっと言い放つ夕乃。ますます顔をしかめる絶奈。 「さて、星噛さん。うちの真九郎さんを返してもらいましょうか」  もちろん、そのあとは全殺しです。そういって、夕乃は悠然とした足取りで寝台へと歩を進めた。  絶奈は忌々しそうに舌打ちをする。  崩月の戦鬼。比類なき暴力の具現。その猛威はキリングフロアで身をもって味わった。  生まれついての戦鬼ではない真九郎でさえ、あそこまで絶奈を追い込んだのだ。  ならば、純血の戦鬼たる崩月夕乃の戦闘力はどれほどのものか。  状況を打破すべく思索をめぐらせていた絶奈は、ややあってなにかを思いついたようににやりと笑った。 「無駄よ、崩月の」  夕乃の足が止まった。
49 :名無しさん@ピンキー:2009/05/27(水) 21:07:44 ID:lh6PzRGo 絶 奈:「おひさしぶり、紅くん」 真九郎:「星噛絶奈……。なんの用だ?」 絶 奈:「そう身構えないでよ。今日は戦り合うつもりはないから。     クリスマスの時のお詫びに、プレゼントを持って来たの」 真九郎:「いらないから、さっさと帰ってくれ」 絶 奈:「ふふふ。コレを見ても同じことが言えるかしら? ジャジャーン!」 真九郎:「自分で効果音出してるし……。なんだ、コレ? バイブ?」 絶 奈:「そんな陳腐なモノと一緒にしないでほしいわね。      レは悪宇商会が自信をもっておすすめする夏の新作!     星噛家が総力をあげてつくりあげた究極にして至高の男根!     星噛製閨戦壱式百八号、名付けて『無敵砲台』!」 真九郎:「悪宇商会も星噛家もなにやってんだーー!?」 絶 奈:「コレさえあれば、夜の揉め事は万事解決! 包茎早漏短小とは永遠におさらば!      外見だけじゃなく、持続力だってモンスター級の超優れモノよ!     感想は?」 真九郎:「…………すごく、大きいです」 絶 奈:「気にいってくれたようでなによりだわ。     それじゃあ早速、君の股間の貧相なものと交換しちゃいましょう」 真九郎:「え、ちょっと? どこを握って……、なっ? ぎゃぁぁぁあああッツツツ!!??」 絶 奈:「そうそう。言い忘れたけど、『無敵砲台』は強力過ぎて、並の女のアソコには     入れられないのよ。受け入れられるとしたら、それは『孤人要塞』たる私だけ。     もう君は私から離れられない――って、気絶してるじゃない。だらしないわね。     ……ま、いいか。起きた時には、新しい世界が君を待っているわよ、紅真九郎くん」 54 :49:2009/05/30(土) 01:49:23 ID:7keyS6MB  天国であり、地獄であった。  それが星噛絶奈との睦み合いを終えた紅真九郎の正直な感想だった。  二人で繰り広げた物理的かつ性的な応酬については、殆ど記憶していない。  気がつけば、豪奢な寝台に仰向けに転がり天井を見上げていた。かたわらには一糸まとわぬ絶奈の姿が。  むせかえるほどに濃厚な性臭と、全身に広がる粘っこい倦怠感。  真九郎は理解した。自分が新しい世界へと足を踏み入れてしまったことを。  はたして、これは哀しむべきことなのだろうか。それとも、喜ぶべきことなのだろうか。  少年の思考は自問の迷宮を彷徨う。  不意に、絶奈が真九郎の胸板についと指を滑らせた。  酒を飲んだわけでもないのに、彼女の頬は朱に染まっている。先程までの情交の残り火だ。  鉄板をも貫く凶器と同義の指先が、文字を書くように、または蜘蛛が這うように動く。 「本当に素敵だったわ、紅くん。ね、もう一回シよ?」 「……勘弁してくれ」  普段の絶奈からは想像できない、とろけるような甘い声音。だが、真九郎はにべもなく断った。 「ええー? 私はまだ満足してないわよ。あと一回だけでいいからがんばってよ。  ほら、口ではそういっても股間の大砲はビッキビキじゃない」 「……無理なものは無理だ。いくらモノが勃っても、体力がもう限界なんだよ」  喉奥から搾り出された拒絶は、もはや哀願に近かった。  星噛製の男性器の威力は確かに凄まじい。コレで貫かれれば、貞淑な修道女さえも淫奔な娼婦に変えてしまうだろう。  しかし、それだけのモノを使いこなすには、真九郎の経験値があまりにも不足しているのだ。  崩月で鍛えた体は決して脆弱ではない。それでも、根こそぎの体力気力を持っていかれた。  たとえるなら、原付の免許をとったばかりの人間が、いきなりF1マシンを操縦させられたようなものだ。 「ふ~ん。そうなの」  興醒めだといわんばかりの絶奈の口ぶりだが、今の真九郎にそれを気にかける余裕はない。 「……とにかく、今は休ませてくれよ」  もそもそと穴兎のように布団にもぐりこむ真九郎。今日は色々なことがありすぎた。心身ともに休息を欲している。  だが、「はい、そうですか」とそれを認める星噛絶奈ではない。 「こうなったらあとはもう、逆レイプしかないわね」 「なんでそうなる!?」  真九郎が抵抗する暇もあればこそ。  がばっと一息に毛布を剥いだ絶奈は、次の瞬間には真九郎の上に馬乗りになっていた。 「私は和姦のほうが好きなんだけど、こっちのほうが君の好みだっていうんなら、お応えするのもやぶさかではないわ」 「そんなわけないだろ、バカ野郎!」  なけなしの体力を振り絞った真九郎の抵抗をものともせず、絶奈は易々と少年の四肢を布団に縫い留めた。  もはや真九郎に為す術はない。ただ蹂躙される時を待つだけの哀れな犠牲獣。  絶奈は怯える真九郎に猫科の肉食獣のような笑みを浴びせると、ゆっくり自分の腰を移動させた。  散々に男の精を貪った後でありながら、彼女の性器はいささかの形崩れも見せていない。  割り開かれた陰唇が、真九郎の逸物を咥え込まんと厳かに花開く。  淫靡に蠢く肉襞が、すっかり観念して大人しくなった真九郎のモノの先端に触れた刹那、 「真九郎さん、無事ですかッ!?」  非自然的な轟音と共に寝室の扉が爆砕され、立ち上る粉塵の中から一人の女が姿を現した。 55 :49:2009/05/30(土) 01:50:09 ID:7keyS6MB 「なッ!? 核爆発にも耐える超合金製の扉が」 「ひょっとして……」 「崩月夕乃、推して参りました!」  黒曜石よりも黒く輝く長い髪。服の上からでもはっきりとわかるたわわに実った乳房。  他の追随を許さない圧倒的なまでに美しい白皙の顔貌。双眸に宿す紅蓮の業火。  間違いなく、裏十三家が一、崩月家の現当主崩月法泉の孫娘、崩月夕乃その人であった。 「夕乃さん!」  これで助かると喜色満面に姉弟子の名を叫ぶ真九郎。応えてにっこりと微笑む夕乃。ただし、目は笑っていなかった。  真九郎の頬がわずかに引き攣った。 「いろいろと聞きたいことも言いたいこともありますが、とりあえず後回しにしてあげます。  今はそこの淫売さんから真九郎さんを取り戻すことが最優先です」  敢然と夕乃は絶奈と相対する。流麗な立ち姿には、なんの気負いも不安も感じ取れない。  対する、絶奈の表情は険しい。  ここは悪宇商会のセーフハウスの一つ。登記簿に載らず、警察も手が出せない闇の聖域。  それがこうも早く発見された上、突破されてしまったとあっては、最高顧問として腹立たしいことこの上なかった。  見れば、粉塵の向こうでは警護の任に当てていた黒服の男たちが、ダース単位で地に伏し呻いている。  男たちは皆、有能な戦闘屋だった。裏十三家の人間が相手でなければという但し書きはつくが。  もっとも、絶奈にとって彼らはいくらでも替えのきく駒。信頼を置くに値しない。  彼女が真に信頼し、自分の寝室を預けていたのは同じく裏十三家の―― 「切彦はどうしたのかしら? あとで紅くんを貸してあげるって条件で見張りにつかせていたはずだけど」 「切彦? なんです、それ? 美味しいんですか?  ――ああ。そういえば、途中で刃物を振り回す狂犬と逢ったので、ちょっと躾てあげましたっけ」  しれっと言い放つ夕乃。ますます顔をしかめる絶奈。 「さて、星噛さん。うちの真九郎さんを返してもらいましょうか」  もちろん、そのあとは全殺しです。そういって、夕乃は悠然とした足取りで寝台へと歩を進めた。  絶奈は忌々しそうに舌打ちをする。  崩月の戦鬼。比類なき暴力の具現。その猛威はキリングフロアで身をもって味わった。  生まれついての戦鬼ではない真九郎でさえ、あそこまで絶奈を追い込んだのだ。  ならば、純血の戦鬼たる崩月夕乃の戦闘力はどれほどのものか。  状況を打破すべく思索をめぐらせていた絶奈は、ややあってなにかを思いついたようににやりと笑った。 「無駄よ、崩月の」  夕乃の足が止まった。 64 :49:2009/06/04(木) 02:31:27 ID:y/Tt28BK 「紅くんはあなたたちのところへは帰らないわ。私と一緒に悪宇商会で人でなしな日々を送るんだから」 「は? え? ちょっと? せめて人間らしく……」  絶奈の言葉に、夕乃よりも早く真九郎が反応した。  このサイボーグ娘はいったいなにを血迷ったことを言っているのか。  駆け出しとはいえ、紅真九郎は揉め事処理屋。悪宇商会とは敵対することこそあれ、手を組むことなどありない。  商会の所業や構成員には少なからず含むところもある。所属するなど言語道断だ。  それについては夕乃も同意見だったようで、 「なにを言い出すかと思えば、そのような世迷言を。  いいですか? 真九郎さんは高校を卒業したら、私と結婚して崩月流を継ぐんです。  悪宇商会に与するなど、断じてありえません!」 「もしもし、夕乃さん? 前半おかしくない? そんなの初耳なんだけど……」  訂正。どうやら、夕乃と真九郎とでは、その考えに大きな隔たりがあったようだ。  夕乃の力説を受けても、絶奈はどこ吹く風と不敵な笑みを崩さない。  二人の美少女の視線が中空で衝突する。間に光った稲妻は真九郎が見た幻影だったか。  睨み合うこと十数秒。先に相手から目線を切ったのは意外にも絶奈だった。 「もう一度言うわ、崩月の。耳穴かっぽじってよく聞きなさい。  紅くんは、帰らない」  幼い子どもを諭すような、ゆっくりとした口調。 「ふざけるのも大概にしなさい!」  夕乃の一喝は真九郎を萎縮させただけに終わり、絶奈の毛筋一本揺らすことができなかった。  絶奈は不気味なほど優しい笑みを浮かべると、持ち上げた真九郎の右掌をそっと己の下腹部に押し当て、 「紅くんは帰らない。だって、私のお腹には紅くんの赤ちゃんがいるんだもの!」  爆弾を投下した。  今この場において、その台詞は爆弾発言どころの騒ぎではなかった。正真正銘、爆弾そのもの。  広い室内からあらゆる音源が消滅し、絶対の静寂が空間を満たす。  まるで、この部屋だけ世界の理から弾き出されたようだった。それほどのデッドサイレンス。  そして、きっかり一分が経過したところで、 「なんだってぇぇええッツ!?」  真九郎が絶叫した。間髪入れず夕乃が続く。 「ど、どういうことですか、真九郎さん!? 赤ちゃんってなんですか、ベイビーですか!?  一昨日、『オレが好きなのは夕乃さんだけ。夕乃さん以外の女なんてメスブタも同然だ』って言ってくれたじゃないですか!」 「落ち着いて、夕乃さん! オレはそんなこと言ってないよ!  おい、アンタ! 赤ちゃんってどういうことだ!?」  くつくつと笑いを零しながら絶奈が答えた。 「あら? あれだけ膣内に射精しておいて、覚えがないとは言わせないわよ。  君も知ってのとおり、星噛の人工臓器は超高性能。妊娠や出産もできるし、受精したらすぐにわかる機能もついているの。  君のおちんちんも星噛製でしょう? 抜群に相性がよかったみたいでね。当たっちゃったってわけ。  やだ、思い出したら、また濡れてきちゃった」  真九郎がうっと呻く。  ノイズ混じりだが、確かに記憶がある。  もぎとられた逸物。嗤う絶奈。覚醒する意識。異形の男根。にじり寄る豊満な肢体。昂る欲求。吹き飛ぶ理性。味わった至上の肉悦。  間違いなく、真九郎は絶奈を抱いた。ならば、行為の先に妊娠という結果があるのは当然のこと。 「…………やっちまった」  油断した自分が間抜けだった。避妊を忘れていた自分が愚かだった。  どんなに後悔してももはや手遅れ。純然たる事実を覆すことなど、神ならぬ人の身でできようはずもない。  これから先、紅真九郎の人生は大幅な制約を課されることだろう。星噛絶奈の望むままに。  突きつけられたあまりにも衝撃的な事実に、真九郎の意識が肉体から乖離しかける。  だが、蛇のように絡みついてきた絶奈の体の感触がそれを阻んだ。 「ねえ、紅くん。これからは家族三人で悪事に邁進しましょうね。  そういうわけだから、崩月の。紅くんのことは、きれいさっぱり諦めてちょうだい」 「あ、あああ、そんな、まさか……。嘘です、真九郎さんが…………」  絶奈の声が耳に入っていないのか、夕乃は呆けたように意味のないことをぶつぶつと呟いている。  常の大和撫子然とした彼女からは、遠くかけ離れた姿だった。 65 :49:2009/06/04(木) 02:31:58 ID:y/Tt28BK  真九郎から見えない位置で、絶奈はしてやったりとほくそ笑んだ。  実のところ、絶奈は妊娠などしていない。  ≪星噛製陸戦壱式百四号≫の子宮には特殊な仕掛けがある。それは望まぬ妊娠を避けるための防御装置。  絶奈自身の意志でそれを解除しない限り、受精確率は絶無である。  正攻法では怒れる夕乃に抗し切れないと踏んだ絶奈は、弁舌の刃で活路を開こうとしたのだ。  正面から勝てない相手には搦め手を用いるのが定石。  少しばかり希望的観測も入っていたが、結果として絶奈の狙いは的中した。  真九郎は沈黙。夕乃は自失。絶奈の一人勝ち。  真九郎が手玉に取りやすいことは既知だったが、あの崩月の娘までこうも呆気ないとは、正直言って拍子抜けだった。  裏を返せば、崩月夕乃にとって紅真九郎がそこまでの存在だったということか。  こんな戦鬼化以外になんの取り得もないような少年が。 「真九郎さん…………。うちの真九郎さん、私の真九郎さん……」  夕乃はまだ立ち直っていない。この隙に痛撃を加えて、とっとと姿を消すのが上策。  ちらりと絶奈が夕乃に目を向ける。その目には多分に侮蔑の感情が含まれていた。  裏十三家の次期当主ともあろう者が、男一人のことで醜態をさらすな。  だが、夕乃の姿を視界に捕らえた途端、絶奈の顔色が変わった。全身の産毛がぞわりと逆立つ。  目に映るのは先程までと変わらぬ茫然となった女の姿。だというのに、この違和感はなんだ。  アレは危険。極めて危険。  数多の修羅場を潜り抜けてきた絶奈の第六感が、大音量で警鐘を鳴らしていた。 「夕乃、さん……?」  絶奈に遅れること暫し。真九郎も姉弟子が纏う空気の変質に気がついたようだ。  直後、爆音が響く。  それまで夕乃が立っていた床が醜くひしゃげる。  なにが起きたか、真九郎と絶奈が理解するよりも速く寝台を衝撃が襲う。続く、ぼふっというくぐもった音。  衝撃と音の正体は確認するまでもなく崩月夕乃。  黒真珠のような夕乃の瞳が真九郎の顔を覗き込んだ。 「真九郎さん」  優しい声だった。八年に渡って、真九郎を叱咤激励してきた少女の声。  夕乃は崇高な聖母のごとく慈愛に満ちた笑みをつくると、 「私も真九郎さんの赤ちゃんを妊娠します!」  断固たる決意でそう宣言した。 「「――――は?」」  真九郎と絶奈の声が重なる。 66 :49:2009/06/04(木) 02:32:32 ID:y/Tt28BK 「嗚呼。なんて可哀想な、真九郎さん。  私がえっちなことをさせてあげなかったから、こんな女の姦計に嵌ってしまったんですね。  でも、もう安心してください。すぐにお姉さんが可愛がってあげますから」  あまりに飛躍しすぎている夕乃の論理。真九郎は咄嗟に言葉が出ない。 「ちょ、ちょっと待ちなさいよ、崩月の!」  どうにか正気を取り戻した絶奈が夕乃に食ってかかった。 「なんですか、お妾さん」 「は? 妾ってなによ?」 「私が真九郎さんの奥さんで、あなたはお妾さんです。  本当はすぐにでもぶち殺してあげたいんですけど、お腹の赤ちゃんに罪はありませんから。  まるで生きるに値しない外道が母親だとしても。  あ、ちゃんとお手当ては出してあげますから安心してくださいね」 「…………いい度胸してるわね、妄想電波女」  静かなる殺気をこめた絶奈の視線を、夕乃は涼やかな笑顔で受け流す。  その笑顔がたまらなく癇に障った。  と同時に、冷静さを取り戻す。敵のペースに飲まれるな。戦うのは常に自分の土俵で。  二人の決定的な差を見せつけてやる必要があった。絶奈はなにを思ったか、自身の淫唇をくぱあと広げ、 「これを見なさい、崩月の。  私のココは星噛の技術を駆使して珠玉の一品に仕立ててあるのよ。ミミズ千匹にして数の子天井。  この味を知ってしまった紅くんが、あなたの貧弱なマンコで満足できると思って?」  自信満々の絶奈に向けて、夕乃は誰が見てもそれとわかる嘲笑を口元に浮かべた。 「愛液のかわりに機械油を垂れ流すようなそそで真九郎さんが満足できるわけありません。  私の綺麗で未使用な天然モノでこそ、真九郎さんは本当の快楽を得られるんです。  それこそが私と真九郎さんの愛の力!  わかったら、さっさと消えなさい、淫乱ポンコツガラクタ痴女」  怒りと屈辱のあまり、絶奈の顔面がその頭髪よりも赤くなる。  二人が放つ殺気は瘴気へと変じ、室内を隙間なく満たした。それにあてられた真九郎は息をするのがやっとだった。 「ここまでコケにされたのは、紅くんに強奪戦を申し込まれて以来よ。  あなたといい、柔沢紅香といい、紅くんの周りにはこういう女が集るフェロモンでも出ているのかしら。  いいわ。そこまで言うんなら、一つ勝負といこうじゃない」 「勝負、ですか?」 「そう。私とあなた、どっちが紅くんを気持ちよくしてあげられるかの勝負。  あなたが言う愛の力が勝つか。それともやっぱり、私のこの体が勝つか。白黒つけましょう」  絶奈はどかっと真九郎の左側に腰を下ろす。 「望むところです! その勝負、受けて立ちましょう」  夕乃は流れるような動きで真九郎の右側に陣取る。  髪の色から生き方まで、全てが正反対の二人の美少女が、真九郎を挟んで相対した。

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