闇絵さんと猫

「闇絵さんと猫」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

闇絵さんと猫」(2008/01/01 (火) 01:50:40) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

闇絵さんと晩ご飯 -作者 2スレ550 -投下スレ 2スレ -レス番 587-589 -備考 紅 小ネタ 587 闇絵さんと猫 1/3 sage 2007/12/30(日) 22:37:45 ID:pvi76xr4  ダビデというのは妙な猫で、いつも闇絵と一緒にいる。  猫なのだから、たまには自由気ままに出歩いていても良さそうなものなのに、真九郎の知る限り、闇絵の側にはいつもダビデがいるし、ダビデの側にはいつも闇絵がいる。五月雨荘以外の場所でダビデを見かけた記憶もない。  といって、べったり闇絵に甘えているというのでもなかった。闇絵の膝の上で丸くなっているときも、そんな雰囲気を微塵も感じさせることはなく、端然とした寝姿を崩さない。  そんな落ち着いた関係が、真九郎にしてみると、ちょっと羨ましかったのかもしれない。自分はといえば、しきりにまとわりついてくる七歳の女の子との距離感すら、実のところ測りかねているのだから。  そんなわけで、ある午後のこと、いつものように大木の枝の上にいる一人と一匹に、真九郎はつい尋ねてしまったのだった。 「いつも仲いいですよね。ダビデと。何か、猫を飼うコツってあったりするんですか」  闇絵は、無表情に真九郎を見下ろす。そのまま沈黙が続き、真九郎がさすがにいささか気詰まりになったころ、闇絵はやっと口を開いた。 「面白いことを言うな。少年」 「え…面白いですか」 「どうしてまた、わたしがダビデを飼っているなどと思うのかね。もしかすると、ダビデがわたしを飼っているのかもしれないぞ」 「いや…それはないでしょう、さすがに」  人をからかうのもたいがいにしてほしい、と闇絵を睨み付けてはみるのだが、闇絵がいたって真面目くさった顔をしているものだから、何となくそんなことがあってもおかしくないような気までしてきた。そんなタイミングを見計らったわけではないだろうが、 「冗談だよ。少年」 「はあ…」  真九郎はどっと疲れた声を出した。闇絵は構わず、淡々と続ける。 「そうだな。強いて言うなら、気の置けない友人といったところかな」 「友人…ですか」 「ああ。わたしもダビデも、今のところは、お互いが近くにいても気にならない。そういったところだ」 「はあ。なるほど」  その物言いは、多少突っ込みどころがあるような気もしたが、それなりに説得力もあった。何となく微笑ましくなって、 「それにしても、闇絵さんに猫って、すごく似合いますよね」 「ほう。もしかするとそれは、わたしも猫のようだという意味なのかな。少年」  闇絵のさりげない一言に、真九郎の笑顔はなぜか途中で凍り付いた。 588 闇絵さんと猫 2/3 sage 2007/12/30(日) 22:38:44 ID:pvi76xr4  もっとも、闇絵の視線には何の感情もこめられておらず、面白がっているのかはたまは怒っているのか、真九郎などには見当もつかない。ただ、一つだけ確かなことは、その視線を振り切ってこの場を去るという選択肢だけは与えられていない、ということだった。  真九郎はしどろもどろになって、 「いや猫も悪くないというか…特にあまり深い意味は」 「ふむ。少年。往々にして、とっさの場合の反応にこそ、その人間の真実が多く含まれるものだ。君がたった今何を言い、何を言わなかったかは、非常に興味深いな」 「はあ…」  闇絵が何を言わんとしているのか、正直なところ真九郎にはさっぱりだったが、この場を丸くおさめられそうなセリフを必死で探す。 「ええと…俺、好きですよ。猫」  そう言った瞬間、不思議と、少しだけ呼吸が楽になった気がした。ほっとして、もう少し続けてみる。 「好きというよりは、憧れるというか…猫みたいに超然として独立独歩でいられるほど、自分に自信が持てたらいいな、とか思いますね。まあ、ペットとして飼うなら、犬の方が懐いてくれていいのかもしれませんけど」 「犬かね」 「…闇絵さんは、あんまり好きじゃないみたいですね?」 「はっきり言えば、嫌いだな。概して、飼い主に媚び諂い、強いものには絶対服従するくせに、弱いものにはとことん居丈高だ。生き様として美しいとは言い難い」 「はあ…」  真九郎は曖昧に笑う。別に意外な言い草ではなかったが、そこまで言うこともあるまいにという気もした。ただ思ってもみないことに、闇絵は少し考えてから、こう付け加える。 「もっとも、犬にもよるがね。わたしも最近分かってきたのだが、犬も色々なのがいるようだ」 「へえ…」 「中には、誰かに飼われることを潔しとせず、どういうわけだか好んで独りきりでいるくせに、何かを命がけで守ってみたり、弱いものには優しくせずにはいられないような、変わった犬もいてね。それもまた愚かであるには違いないが、どうしてだか嫌いにはなれないな」 「はあ…そんなこともあるんですか。俺には、あまり良く分かりませんけど」 「そうだろうな」  闇絵は、うっすらと頬笑んだ。 「君には、分かるまいよ。少年」 589 闇絵さんと猫 3/3 sage 2007/12/30(日) 22:39:47 ID:pvi76xr4  それは確かに、闇絵の言うとおり真九郎にはちょっと理解が及ばないのかもしれないのだが、とはいえ真九郎としては、そんな闇絵の言い方に少なからずへこみもしたのだ。まあ、自分でよく分からないことについては、やはり他人の知恵を借りるに限る。 「…どう思います? 環さん」 「んー。そりゃあ、真九郎くんには分かんないだろうなー。むしろ、その場で分かってもらっちゃ困るっていうかさー。しかし闇絵さんも、あたしの目のないとこで、なかなかやってくれるじゃないですかうふふふふふふふふ」 「はあ…?」 「いーのいーの。そのまま、いつまでも純真なあたしの真九郎くんでいてねっ」 「ひょっとして俺バカにされてますか? それに何ですかそのあたしのってのは」 「うーん情ないなあ。でも、そんなとこがまたステキっ」 「ええとですから抱きつかないでください胸を押しつけないでください人の体を撫で回さないでくださいっつかそっちもじっと見てばっかりいないで助けてくれっ」 「…待て環。真九郎の膝に乗るのはわたしと決まっている」 「…真九郎さん。あとで道場に来なさい。いいですね」 「…やらしい」 .

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示:
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。