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「第弐拾四夜 極悪の華」(2011/09/15 (木) 20:11:55) の最新版変更点
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「このくらいにしましょう」
先輩のその声を聞き、体から力が抜ける。
「いよいよ本番は明日ね。気を抜かないでいきましょう」
そう、いよいよタッグデュエルは明日。
僕と先輩は最後のデッキ調整とデュエルをしていた。
「ふぅ・・・疲れた」
ここ数日のデッキ調整で、大分チームワークがよくなったと思う。
それに、デッキも比較的安定してきた。
ただ、この間の制限改定はちょっと予想外だったけど…。
「流石に暑いわね…。一樹君、ちょっとジュース買ってきて頂戴」
そう言って、DP(電子マネー)を渡される。
このDPは基本的に所属のクラスとデュエルの勝利でもらえる学園限定の
お金なのだが…同じレッドなのに、先輩のDPは多すぎるように思う。
それにしても…正直面倒だなぁ。自分で行けば良いのに。
「私はアイスコーヒーを飲みたい気分ね。ついでに一樹君の
飲み物も奢ってあげるから、好きなのを一本買って来なさい」
「急いで行ってきます(キリッ」
先輩はとっても優しい、まるで天使みたいだ。
僕は駆け足で自動販売機へと向かって行った。
こんな暑い中なのに、自然と足が軽快なステップを刻む。
・・・いやいや、断じて僕の飲み物の為じゃないですよ?
あくまで、僕は先輩の飲み物をですね…。
と、そのとき。
ドンッ!
「うわっ」
前をよく見てなかったからか、人にぶつかってしまう。
「っと…すいません」
即座に謝り、後ろを振り向く。
そこには…すごく柄の悪い大男が立っていた。
背中には大きく『剛瑠怒』の文字が刻まれている。
なんだろう、よく分からないけどすごい嫌な予感がする…。
「おいおい…今のでオレ様の腕の骨が折れちまったじゃねぇか。
オマエ、責任持ってこの腕の治療費払ってもらおうか、あぁ!?」
なんて古典的なやり口なんだ!
こんな手口を使うのは、二次元の住人だけかと思ってたよ!
でも…こんな体格のヤツからは逃げられそうにない…。
「お、DP持ってるみたいじゃねぇか…よこせよ」
「い、いやです」
抵抗の意思を見せるが、屈強な腕で無理矢理DPカードを奪われてしまう。
「おぉ!コイツはすげぇ…半年遊んで暮らせるぐらいはあるじゃねぇか!」
「か、返してください!」
必死に手を伸ばすが、まるで届かない。
「おら!どけ!」
それどころか、地面に叩きつけられてしまう。
「返して、下さい・・・!」
「ちっ、しつけぇ小僧だ」
そう言って、僕から少し距離をとる。
男は僕にやや挑発的な目を向けて、
「そうだな…ならチャンスをやろう。
オマエもデュエリストなら、勝って取り返してみろ」
そう言った。
チャンスもなにも…と言おうと思ったが、どうせ聞き入れるはずがない。
それなら、大人しく従うべきか…。
「分かりました・・・」
それに、勝てばいいんだ。
ここ最近はずっと特訓してたし、負けない!
僕らはデュエルディスクを構えた―。
「・・・で、瞬殺されたのね?」
「はい…」
あの後、僕はソイツに呆気なく瞬殺されてしまった。
しかもDPだけでなく、デッキまで取られてしまったのだ。
どうしよう…もう大会は明日なのに…。
「DPまで奪われて、ホントにすいません!」
「そのことは、別にいいわ」
あっさりそう告げる先輩に、少し拍子抜けする。
「で、でもデッキも奪われて」
「朝頃には退屈して、その辺にでも捨てるんじゃないかしら」
なんだかむちゃくちゃなことを言われる。
そんな投げ槍なことを言うなんて、先輩らしくない。
「とにかく、今日は寮に戻りなさい。私はDホイールの最終調整があるの」
「え、ちょ、ちょっと・・・」
次の言葉を繋ごうとするも、先輩の有無を言わせないような
空気に威圧され、結局なにも言えなくなってしまう。
僕はそのまま先輩が去っていくのを眺めるだけだった。
―同日深夜 学園内廃屋―
暗い夜、静まり返った学園の廃屋…
「剛瑠怒の兄貴~、その大量のDPどうしたんですかい?」
そこには、邪鬼威 剛瑠怒(じゃきい ごるど)率いる、不良グループが集まっていた。
「あぁ、コイツか…大金持ってる小僧がいたんでな、奪ったまでよ」
「おぉ、流石兄貴!弱い者にも容赦しない!そこにシビれるぅ!憧れるぅ!」
どこがで聞いたような台詞で子分が称える。
「へっ、そう褒めるなよ。オレ様の実力なら当然だ。
しかしあの小僧、大したこと無い割には良いカードを持ってるじゃねぇか」
そう言う剛瑠怒の手には、昼間一樹から奪ったカードとDPカードがあった。
「これだけあれば、しばらくは遊んで暮らせますぜ!」
「ひゃっほう!最高だぜ兄貴!」
「すごいぞ兄貴!カッコイイぞ兄貴!」
子分たちが次々に褒めちぎり、廃屋は騒々しいムードに包まれる。
今夜は楽しい夜会、このまま騒いで一夜が明けると、誰もが思っていた。
ガシャアン!
突如、廃屋の窓ガラスにDホイールが飛び込んで来た。
「な、なんだなんだ!?」
「Dホイールが突っ込んできただと!?」
「な、ななななんだってんだぁ!?」
子分たちが慌てふためく。
そんな中、運転手は音も立てず降り立ちヘルメットを外す。
「御機嫌よう。楽しそうで何よりね」
そこには、月明かりに照らされた赤髪の女が立っていた。
その姿は美しくも、見たものに恐怖を与えるようだった。
「おいテメェ・・・こんな時間に、一体何の用だ?
Dホイールで突っ込んできて…覚悟はできてるんだろうな、あぁ!?」
「いえ、大したことじゃないのよ」
そう否定の言葉を並べ、
「ただ、鬼ごっこがしたくなっただけよ」
そう告げた。
その顔は―まるで見るものを凍てつかせるような笑顔だった。
国体等が重なり、更新が遅れて申し訳ないです。
恐らく、更新のペースが遅くなると思われます。
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