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馬物語 ◆L5dAG.5wZE





Dr.テンマ、天馬賢三は医者である。



彼が治療したヨハン・リーベルトは、人の命を無造作に奪う怪物である。



Dr.テンマは、人々を守るためにヨハンを抹殺するのだ!


   ◆


市街地で、二人の男が偶然に遭遇した。

共に東洋人。
片やくたびれたコートをまとい、伸びた髪を左右に流す無精ひげの男。
片やシルクハットとスーツ、全身を黒色で固めた男。

無精ひげの男の手には無骨な拳銃が握られている。
銃口は地面を向いているものの、その気になれば一瞬でスーツの男を狙えるように構えられていた。
スーツの男は苦笑し、両手を挙げ降参のポーズを取り口を開く。

「おいおい、物騒だな。あんたもしかしてSetグループ――殺し合いに乗ったクチかい?」
「自分がどのグループに属しているかなどわかりはしない。だが、私は人を殺すつもりなど無いよ」
「武器を構えてそんなこと言われてもなぁ。俺もそんな気はないからさ、とりあえずそれ、しまっちゃくれないか?」
「殺す気はないが殺される気も無い。まず君が危険では無いと証明してもらえるだろうか?」
「証明……ね。これでいいかい?」

スーツの男が、持っていたバッグを無精ひげの男の前に蹴り出す。
無精ひげの男は足に当たったバッグには全く視線を動かさずスーツの男を睨んでいる。

「おや、まだ不満かい? 疑り深いねえ」

スーツの男が上着を脱ぎ、ひらひらと振る。
それだけでなく爪先を立てて軽くターン。どこにも武器が無いことをアピールした。
無精ひげの男はしばし考え込み、得心したか銃を懐に戻す。
そしてバックパックを拾い、スーツの男に投げ返す。

「済まない、少し過敏になっていたようだ」
「なに、こんな状況じゃ疑って当然だ。すぐに信用するほうがむしろ怪しいってもんさ」

上着を着直し、スーツの男が朗らかに笑う。

「ああ、そうそう。まだ名乗ってなかったな。俺は天……いや、杳馬だ。悪いな、苗字は聞かないでくれ」
「ヨウマ? やはり日本人か」
「ああ、と言ってももうあそこを出てから大分経つがね。そういうあんたは?」
「日本人だ。名は天馬賢三、ドイツで医師をしている」

無精ひげの男――テンマの言葉に、スーツの男――杳馬は破顔した。

「テンマ? あんたもテンマと言うのか。こりゃ面白いな」
「あんたも……ということは、君は名簿にあったもう一人のテンマの関係者か?」
「おう、俺の息子さ。あんたと一緒だな、Dr.テンマ!」

杳馬は気安くテンマの肩を叩く。
その表情には不可解な状況に対する怯え、戸惑いが全くない。

「息子……それは気の毒だな。親子でこんな事件に巻き込まれるとは」
「いやいや、ある意味運が良かったかもよ。少なくとも俺の眼の届くところにいるわけだからな」
「心配じゃないのか?」
「あいつももうガキじゃないし、そもそも親父だなんて言ってもほとんど話したことも無いからな。自分のことは自分で何とかするだろうさ」
「そういうものなのか?」

故郷を飛び出し、遠くドイツで子を持たずに日々を過ごしていたテンマだ。
親の気持ちなど理解できないので、違和感を感じながらもそれ以上は踏み込まなかった。

「ドクター、こんな往来じゃ目立ってしょうがない。とりあえずどこかの店にでも入らないか?」
「あ……うん、そうだな。行こう」

近くにあった喫茶店へと場所を移す。
無人の店内。
テンマが淹れたコーヒーを啜り、互いに情報を交換していく。

杳馬の知り合いは息子であるテンマだけだという。
テンマの知り合いはニナ・フォルトナーという女学生、ハインリッヒ・ルンゲ警部、フリージャーナリストのヴォルフガング・グリマー。
そして。

「……一つ訂正だ。一人だけ、私が殺さなければならない人間がいた」
「ん?」
「ヨハン・リーベルト。彼は……怪物だ」

俯くテンマの顔は、ひどく思い詰めていて――対照的に杳馬は眼を輝かせた。
やがてテンマが顔を上げたとき、その光はすでに消え去っていたが。

「そうだな、私も運が良いのかもしれない。ヨハンがこんなにも近くにいるというのは」
「Dr.テンマ、あんたとそのヨハンって奴の間には何か事情がありそうだな。良かったら話してくれないか?」
「む……だが、君はヨハンとは関わらないほうがいい」
「あんたが怪物って言うくらいだ、危険な奴なんだろう? 俺はともかくテンマ――俺の息子の方な。あいつの安全のためにも知っておきたいんだよ」

杳馬は食い下がる。テンマにしてみても、ヨハンの危険性を広めておくに越したことはない。
あらかじめ危険とわかっていれば、それを避けることもできる『かもしれない』――相手がヨハンであれば断定できないのが辛い所だが。
ヨハンが行動に移してからでは遅いのだ。遠く離れた地で惨劇が起こっても、テンマには止められないどころか知る術も無い。
この手で救える命は限られている。

「……わかった、話すよ。長くなるがいいかい?」
「ああ、どの道テンマがどこにいるかわからないんだ。だったら少しでも情報はあった方がいい」

杳馬の熱意に負け、テンマは自身とヨハンを巡る数奇な運命を語り出す。
スーツの男が息子の心配など欠片もしていないことになど、気付く由も無い。


   ◆


「――大体、こんなところだ。おそらくこの場でもヨハンは惨劇を生み出すだろう。だから私が止めねばならない……」
「済まなかったな、ドクター。辛い記憶を思い出させてしまって」
「いいさ。元をただせば私が元凶なんだからな

話し疲れたテンマが冷めたコーヒーを喉に流し込む。
テンマは人を殺せる人間ではない、というのが杳馬の感想だった。ヨハンに対する殺意こそあれど、彼の本質は医者、人を救う者だ。
その気質は彼が語ったいくつかのエピソードからも推して知れる。ヨハンの手がかりを前にして災厄に見舞われたトルコ人街を優先したことなどがいい証左だ。
人を救う医者が人を殺そうとするなど滑稽な話だが、彼はその矛盾を抱えたまま生きている。

「ドクター、俺は息子を助けたい。あんたはヨハンって奴を殺してそれ以外を救いたい。なら、俺達は協力できるんじゃないか?」
「君と?」
「ああ。俺はニナって娘とルンゲ、グリマーという男を捜す。あんたは俺の息子を捜す。二手に分かれたほうが効率は良いだろ」
「私にとってはありがたい話だが……」
「俺を信用できないかい?」
「……いや、最初から疑ってかかっては何も得られない。君を信じるよ」

テンマはしばらく思い悩んでいたが、やがて杳馬へと右手を差し出す。
だが杳馬はその手を取らず、代わりに自分が身に着けていた腕時計を外しテンマの手へと押し込んだ。

「これは?」
「プレゼントさ。会ったばかりじゃし信用できないのが当たり前、だからそいつが俺からあんたへの信頼の証だと思ってくれ」
「腕時計が何の役に立つと……ん? 何か入ってるな」

杳馬が身を乗り出して腕時計を弄る。
腕時計の内部には僅かなスペース。そこにあったのは小さな紙片だ。

「何だこれは?」
「あんたの拳銃と同じように、俺に支給されたスペシャルなアイテムさ。デスノート、と言うらしい」
「デスノート?」
「何でも、そこに殺したい奴の名前を書くとそれだけで首輪を爆発させられるらしい。中々便利な物もあったもんだな?」
「……ッ!?」

耳元で囁かれた言葉に、テンマは腕時計を放り出した。
床に落ちた腕時計を杳馬が拾い、再度テンマへと手渡そうとする。

「おいおいドクター、大事にしてくれよ。こいつがあんたの命を救うかもしれないんだぜ?」
「わ、私にそんな物は必要ない! 首輪を爆発させると言うことは、誰かを殺すってことだろう!」
「おいおい。あんたの銃だって撃たれりゃ人は死ぬぜ? その銃とこいつと、どこが違うってんだ?」
「それは……」
「これなら誰が相手だろうと関係ない。誰だって殺せる、ただの人間のあんたでもな。
 わかるか? こいつは武器なんだよ。あんたが死なないための、あるいはヨハンを殺すためのな」
「ヨハン……そうか、ならこれを使えばヨハンも!」
「おっと、済まないが今は無理だ。いくつか制約がある」

気色ばんだテンマがペンを取り出そうとして、杳馬が水を差す。
殺す対象が使用者の近くにいなければ、名前を書いても何も起こらない。それがルール。
つまりこれを使うならば死の瞬間を目撃しなければならないわけだ。
杳馬が渡してきたデスノートの説明書きを読み、テンマは落胆する。

「期待させたのに済まないな。だがとにかく、そいつは使える物だってわかったろう?」
「ああ……これは本物なんだろう。できれば使いたくはないが」
「これであんたは絶対に勝てる鬼札を手に入れたってわけだ。使いどころを間違えるなよ」

杳馬の言うとおり、これは強力な武器になる。
だが、杳馬はあえてそれを誰に使うのかとは聞かなかった。どうせそのときになれば嫌でも直面する問題だ。

「その説明書きは処分したほうがいい。万一誰かに奪われたら事だからな。頭にルールを刻み付けておくんだ」
「そうだな……できれば使わないまま終わらせたいが」

ぼんやりとメモを読み込んでいくテンマを眺め、杳馬は胸の内でほくそ笑む。
出会い頭のアクシデントや一発だけなら誤射かもしれない拳銃とは違う。
デスノートを使用するということは、明確な殺意を以て誰かを殺すということだ。

もし自分の命が、あるいは仲間の命が殺人者に脅かされれば、彼はどうするだろう。
その人物を殺すのだろうか。ヨハンでなくとも、自らの意思で殺せるのだろうか?

見たい――とても、見てみたい。
テンマが選択する道を、変わってしまう彼の心を。
苦悩する医師を、メフィストフェレスはさぞ楽しげに見詰めていた。



「――じゃあ、私はまず病院に向かう。君はどうする?」
「あんたが西に行くなら俺は東かな。そうだな、大体二度目の放送を目処に合流しようか」
「場所は……そこのテレビ局でいいか。ここが禁止エリアというのに設定されたら、東のカジノ。そこもダメなら南の劇場で」
「了解、ドクター。死なないでくれよ?」
「君もな。息子さんと無事に会えることを祈っているよ」
「ありがたいね。なら俺もあんたがヨハンを仕留められるよう祈っておくよ」

立ち去っていくテンマの背中を見送る杳馬。
やがて、テンマの影が小さくなって消えたところで――堪え切れず、彼は笑い転げた。

「クク……ハハハハハ、いいねいいねいいね! テンマ、Dr.テンマ! 運命ってのは皮肉なもんだ!
 初めて会った奴が俺のガキと同じ名前で、そんでもってあんなに観察し甲斐のある奴だとはな!」

派手に転がっているのに、スーツには埃一つ付かない。
それもそのはず、彼の身体は重力の頚木から解き放たれ、宙へと舞い上がっているのだ。
メフィストフェレス。地獄の大公の一人、空飛ぶ魔神。
その悪魔の名に恥じることない漆黒の翼を羽撃かせ、杳馬は空を駆けていく。

「さて、Dr.テンマを追うのもいいがヨハンって奴にも興味が出てきたな。どうすっかなぁ~」

テンマとした約束は最初から守る気など無かった。テンマを追い彼の顛末をこっそりと見届けるのはとても面白そうだ。
が、彼があそこまで警戒するヨハンという怪物にも興味が出てきた。
どちらを優先するか。
悩むその顔は新しい遊びを覚えた子供のように生き生きと輝いていた。


   ◆


どうすれば楽しめるか。杳馬の行動原理はただその一点に尽きる。
聖戦やハーデスのことも気に懸からないわけではないが、テンマとパンドラ、それに自分すらも気付かせずに拉致してきたのだ。
おそらくこの状況はハーデスも合意の上なのだろう。ならば杳馬としては思い切り遊び回るだけだ。

テンマにパンドラの名を教えなかったのは、杳馬の人となりを暴露されては困るからだ。
まあばれてもさほど問題があるわけではないが、興醒めすることは確実。
情報のないままパンドラと遭遇すれば一方的にテンマが殺されるだけだろうが……そのときは、あのノートが役に立ってくれるかもしれない。

全ての中心にいながら全てを傍観し、嘲笑する男。
それが天魁星メフィストフェレスの杳馬。史上最悪の愉快犯なのである。



【H-4/市街地:深夜】

【天馬賢三@MONSTER】
 [属性]:正義(Hor)
 [状態]:健康
 [装備]:コルトガバメントM1911A1(7/7)、予備弾倉4つ
 [道具]:基本支給品、不明支給品1~2、月の腕時計@DEATH NOTE
 [思考・状況]
 基本行動方針:ヨハンの抹殺。負傷している者がいれば治療する。
 1:病院へ向かう。
 2:ニナ、テンマを探す。
 3:いずれ杳馬と合流する。

【杳馬@聖闘士星矢 冥王神話】
 [属性]:悪(Set)
 [状態]:健康
 [装備]:
 [道具]:基本支給品、不明支給品1~2
 [思考・状況]
 基本行動方針:殺し合いというマーブル模様の渦が作り出すサプライズを見たい!
 1:面白そうなやつがいれば「闇の一滴」を植えつける。
 2:Dr.テンマが執着するヨハンに会ってみたい。



※コルトガバメントM1911A1

Q.どういう銃?

A.『フィーディングランプが鏡のように磨き上げてある。給弾不良を起こすことはまずないだろう。
  スライドは強化スライドに交換してある。スライドとフレームの紙あわせにもガタつきが全くない。
  フレームに鉄を溶接しては削る作業を繰り返して徹底的に精度を上げてあるんだ。
  フレームのフロントストラップ部分にはチェッカリングが施してある、手に食いつくようだ。これなら滑ることは無いだろう。
  サイトシステムもオリジナルだ。3ドットタイプだな。フロントサイトは大型で、視認性が非常に高い。
  ハンマーもリングハンマーに替えてある。コッキングの操作性を上げ、ハンマーダウンの速度も確保するためだ。
  グリップセイフティもリングハンマーに合わせて加工してある。グリップセイフティの機能はキャンセルしてあるようだ。プロ仕様だな。
  サムセイフティ、スライドストップも延長してある、確実な操作が可能だ。
  トリガーガードの付け根を削りこんであるからハイグリップで握りこめる。
  トリガーは指をかけやすいロングタイプだ。トリガープルは3.5ポンド程度だな。通常よりも1.5ポンドほど軽い。
  マガジン導入部もマガジンが入れやすいよう広げられている。マガジンキャッチボタンも低く切り落としてあるから誤動作も起こしにくいだろう。
  メインスプリングハウジングも、より握りこむためにフラットタイプにしてある。
  更に射撃時の反動で滑らないようステッピングが施してある。
  その上、スライド前部にもコッキングセレーションを追加してある。緊急時の装弾、排莢をより確実に行うことが出切るはずだ。
  全て熟練した職人の仕事だ。レストマシンでの射撃なら25ヤード、ワンホールも狙えるに違いない』

 ・つまり性能の良いただの拳銃です。


※月の腕時計

  デスノートの切れ端が一枚収められている。
  使用方法に一部変更あり。
   ・名前は名簿に書かれている名前で構わない。
   ・殺害対象を視界に入れていることが条件。
   ・名前を書き込んでから効果発動までに1分のタイムラグがある。
    その間に使用者が殺害される、あるいは殺害対象と距離が開くと効果は発動しない。この場合ノートは白紙化し、再度使用できる。
   ・殺害方法は首輪爆破で固定。
   ・使用回数は一度のみ。効果発動後は灰になる。

  以上はテンマが記憶しているのみで、説明書きは処分されました。


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