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一般人、道に惑う/異常者、わらう◆GOn9rNo1ts




待ち望んでいたモノは、音も立てず後ろから忍び寄る。


貴方はそれに気付かないし、気付いた時にはもう遅い。


がばっと背後から飛びかかるそれから逃れる術を、貴方は持たないだろう。


気付けば、貴方はほんの少しの動揺と果てしない喜びに埋もれ、沈み、つまらない現実から乖離していく。


最早、逃げ出す術はない。いや、もしかしたら貴方は逃げ出す気など更々ないのかもしれない。


深い深い落とし穴に落ちていくように、どこまでも、どこまでも。


遂に叶った願望を大事そうに抱えたまま。


貴方は、墜ちていくだろう。


底に着く頃に、貴方は一体どうなっているのか。




それは誰にも、分からない。



◇ ◇ ◇



夜だ。深夜だ。つまり、寝る時間だ。
そんなことをぼけっと考えながら、何かを求めるように足を動かす。
行く道を示しているかのように規則正しく並ぶ外灯の光に沿って、道を行く。
外灯のない少し脇に目を逸らすと、そこは見ることが出来ぬ未知の空間だ。
底意地悪いまっくらやみが、黒いベールで世界の大半を覆い隠している。
何があるのか誰が居るのか、全く計り知れない。危険の有無を、測れない。
得体の知れない闇がこちらを手招きしているように感じて、僕、竜ヶ峰帝人はぶるっと身を震わせた。

「これから、どうしよう」


竜ヶ峰帝人は完全無欠、パーフェクトな一般人である。


怪しげな魔法陣により魔神を召還することも出来なければ、一日中消しゴムを見つめ続けても一ミリ動かすことも出来ない。
その腕で机を叩き折ろうとしようものなら、間違いなく自分が病院行きだ。
学校の成績も平凡そのもの。良くもなく、悪くもない。当然、頭脳が他の人間より隔絶して優れているなんて、あり得ない。
唯一誇れることが有れば、ネットを使い己の生活費を稼ぐことが出来るくらいのものだが、そんなことがここで何の自慢になろうか。

竜ヶ峰帝人は考える。
己は、ほぼ100%『狩られる側』だろうと。

「……まあ、当たり前だよね」

自分はどこにだっている普通の高校生だ。
首なしライダーやら自動喧嘩人形やらが闊歩している池袋に住んでいようと、現実に魔術や超能力が使えるわけでもなく。
現代日本の小市民として勉学に励み、将来は社会の歯車となって生きていくべき平凡な人間なのだ。
ダラ-ズの創始者なんて肩書きは、表の社会では当然のこと、この世界でも全く通用しそうになかった。

「はあ……」

気が重い。

報酬は確かに、喉が出るほど欲しい。
お金だって欲しいし、やりたいことは沢山ある。
ダラーズの『正常化』は勿論のこと。
親友、紀田正臣や園原杏里に関することだって、主催者にかかればきっと何とかなるのだろう。



だけど、それでも。

「殺し合いだなんて……」

殺す。死ぬ。いくらなんでも突然だ。
最近は少し危ないことをしたりしているけど、それだって明確な「死」とはほど遠いはずだ。
人を殺す?馬鹿を言え。そんなことをする勇気なんて自分にあるわけがない。
人を殺せば、十中八九警察に捕まるだろう。
警察に捕まる、なんてことになれば人生は終わりだなんて、帝人の頭でも想像が付く。
そして、そこまでしか思考が働かない。そこから先がストップする。
帝人が十数年かけて培ってきた常識は、急激すぎる展開にショート寸前だ。


実感が沸かないのだ。これっぽっちも。


何が起きるのか。自分はどうすればいいのか。
未来のビジョンが不透明で不鮮明で、だから何をするでもなく、ぶらぶら歩いている。
ルールを確認すれば、Isiは二日間生き残るか、Hor、もしくはSetの全滅によって勝利となるらしい。
ならば己がそのグループであることに賭け、二日間ずっと隠れていればいいのではないだろうか。
どこかの建物の中にでも閉じこもり、そこが禁止エリアになれば隣のエリアに行ってまた閉じこもる。
引きこもりのような、二日間。

「それが出来れば、苦労はしないよ……」

だけどそんな可能性は、まず真っ先に頭から消え失せた。
僕には何の『力』もない。だけど確かに『力』を知っているのだ。
『影』を自在に操る、首のないライダーを。
自販機を放り投げ、噂では自動車でサッカーさえする池袋最強を。

「見つかったら、お終いだよね……」

彼らは人を殺すなんてことはしないだろう。
だけど、彼らのような超常の力を持つ参加者が殺し合いに乗っていたら?
特にSetグループ。彼らは二日間の間に、HorそしてIsiグループさえ根絶やしにする可能性を秘めている。
Setの勝利条件を満たさないためにも、Isiグループは格好の餌食となるに違いない。
そんなSetを相手に、建物の中に入ったからと言って大丈夫だと言えるだろうか。
見つかったら即終了の相手に絶対に見つからないと、言い切れるのだろうか。

「やっぱり、Horの人に助けて貰うしかないのかな……」


Horの勝利条件には「Isiグループが二日間生き残る」が含まれている。
彼らならば自分を助け、守ってくれる可能性は十二分にあるだろう。
「力」のない自分と違い、彼らにはきっと「力」があるだろうから。
そうだ、自分は弱い。ただのチンピラにさえ勝てない貧弱な子供だ。
自分一人では何も出来ず、何も成せず、圧倒的な力の前に消えていくしかない。
誰かに頼る。力を借りる。今までだってずっとそうだった。
立ちはだかる『力』の前に自分にやれることは、そのくらいしかないのだから。
それが分かっているからこそ、何も出来ない己の弱さが、嫌になる。
ゲームの中で、一つしか選択肢が存在しない時の諦め、妥協、やりきれなさ。
それにも似たこの気持ちを、現実で味わうのはやはり辛かった。



「僕はここでも、置いて行かれるのかな」



「ふむ、悩み事かね、少年」


心臓が飛び出るかと思った。

考え込んでいた故の隙。致命的なそれに気付きながら、僕は構えることも咄嗟に飛び退くことも出来ない。
そんなことが出来るのは、空想やマンガの中だけだ。現実はそんなに甘くない。
故に思わず、声にならない意味不明な呻きを発して、それで僕の全行動は終わった。
「えっ」とも「ふぇっ」ともつかぬ間抜けな音は果たして、相手の耳に届き。
一瞬の、沈黙。


「ひとまず、食事はいかがかね?」


目の端、声のする方を振り向けば、薄ぼんやりとした光から隠れるように位置するベンチに座る男が見えた。
彼は、頬を緩ませて優雅にこちらを手招いている。


何故かほかほかと湯気を立てている麻婆豆腐を口に含みながら。



食事は、辞退した。



◇ ◇ ◇



「私は言峰綺礼という」

と、神父服に身を包んだ男は名乗った。

「ええと、僕は竜ヶ峰帝人って言います」

何かおかしい。言うべき言葉が間違っているような、違和感。
自分の取っている行動は何処か間違ってはいないか。
今の自分の置かれている状況はなんだ。考えろ。
普段とは違うんだぞ、悠長に自己紹介なんて、まるで。



普通過ぎるじゃないか。



「貴方は、僕を殺しますか」



意味の分からない焦り。混乱する頭。何かを言おうと動く口。
全てが全て混ざり合って、僕は思わず、そんなことを口に出していた。


「…………」


言ってから気付く、己の愚かさ。

「え、ええとすいません!失礼なことを言ってしまったというかなんというか!
ちょっと混乱してて、殺し合いとかHorとかSetとかIsiとか!本当に……」

「君は、私が殺意を抱いている、と思ったのかね」

こちらの謝罪を完全に無視して、言峰さんはそう言った。

「え?ええと、そんなことはありませんけど……」

僕の平平凡凡なボキャブラリーでは、親友のように気の利いたことを言えるわけもなく。
在り来たりな言葉を返し、そこで言葉が窄んでしまう。
当然、この人が殺意を抱いているなんて本当に思えはしなかったけど。
だけど、出会って一瞬で分かった。何故か分かってしまった。



この人は、僕のような普通の人間とは違う何かを孕ませている。

胡散臭い、を通り越した異様さを持ち合わせている。

この人は『普通』じゃない。

そう、直感した。だけど、口に出すことは出来なかった。
口に出してしまえば、己の矮小さが顔を出すような気がして。
醜い劣等感を、剥き出しにしてしまう気がして。

「まあ、良いだろう。それで……」

そんな僕の気持ちを知ってか知らずか、言峰さんは勝手に話を進めてくれた。
悩み事かね、少年と。荘厳さを感じさせる深みのある声が、僕を包み込む。

悩み事は、確かに多くある。
まず、これからどうすればいいのか。
どう動き、何を行い、誰と手を組めばいいのか。
検分はしたものの、結局はデイパックに入れっぱなしの支給品の使い道も。
名簿に載っていた折原臨也さんは大丈夫だろうか、なんてことまで。
頭を抱える悩み事も、早急に考えるべきことも、ありあり尽くしの大バーゲンだ。



だけど。



この人は、言峰綺礼さんは。



その、輝きを失っている瞳が。
その、僅かに歪んだ口元が。
表情そのものが、雰囲気全体が。



「帝人少年。君は、何を望む?」



もっと深いところを。


欲していると、思ってしまった。



胸の高まりは、ずっとずっと残ったままだった。


【(Eー2/一日目・深夜】
 【竜ヶ峰帝人@デュラララ!!】
 [属性]:その他(Isi)
 [状態]:健康(高揚感?)
 [装備]:なし
 [持物]:デイパック、基本支給品、支給品1~3(本人確認済み)
 [方針/目的]
  基本方針:これからどうしよう……
  1:言峰さんと話をする?
 [備考] 少なくとも原作6巻以降のいずれかより参戦



彼は、笑っていた。



それを一般的な「笑み」とカテゴライズすることは出来ないかもしれないが。
言峰綺礼より見れば、竜ヶ峰帝人は笑っているとしか思えなかった。

歩いている時、その悩みの表情の裏に彼は微笑みを滲ませていた。
知らない場所に遠足に出向いた子供が、無邪気に発する喜びのような。
不安と表裏一体となる、無限大の期待を胸に抱いているような。
何より、こちらに気付いた時の竜ヶ峰帝人の顔。
驚愕に見開かれた瞳の奥に宿る喜びを。
半開きになった口から僅かに漏れる笑みを。
その暗い悦びを、言峰綺礼は察していた。
普通人たる仮面の裏に潜む本質を、早く知りたかった。



楽しい愉しい夜に、なりそうだ。



【言峰綺礼@Fate/stay night】
[属性]:悪(set)
[状態]:健康
[装備]:なし
[持物]:デイパック、基本支給品、支給品0~2、激辛麻婆豆腐@現実(?)
[方針/目的]
  基本方針:?????  
  1:竜ヶ峰帝人の話を聞く
 [備考] 出展時期は他の人にお任せ。


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実験開始 竜ヶ峰帝人 運命/不可思議な偽りを
実験開始 言峰綺礼






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