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宣戦布告だ ◆Vj6e1anjAc


 コロッセオ――ローマ帝政期に建造された、巨大な円形闘技場である。
 遠い昔、この石造りの舞台の上で、男達は剣を取り、明日を生きるために戦い続けていた。
 怒号に満ち、剣戟を奏で、歓声の湧き上がるこの場所は、いわば闘争のオーケストラ会場。
 その場所も遥か数百年の時を経た今となっては、戦いの調べを奏でることはなく、ただ静かにその場に現象するのみ。
 役目を終えた闘技場は、その雄大な威容を夜の闇の中に溶け込ませ、悠久の眠りにつくだけである。
「私は怒っている」
 その、はずだった。
 しかしてこの巨大遺跡は、たった今この瞬間は、激動の嵐の渦中にあった。
「怒っているぞ」
 半ば朽ちかけた石壁が、びりびりと振動音を掻き鳴らし。
 戦場に散らばる塵芥が、ごうごうと逆巻く風に舞う。
 突風? 疾風? 否――その威力を言葉にするのならば、烈風とでも言うべきか。
 コロッセオの壁から一歩外に出れば、微風と言っていい程度の風しか吹いていないはずのこのフィールドで、
 しかしこの円形闘技場の内側だけは、さながら無数の大蛇が駆け巡るかのような、激しい風に包まれていた。
 それをただ一言でたとえるのなら、竜巻。
 その雄叫びが石壁を震わせ。
 その爪が大地を抉り砂埃を上げる。
 豪雨を降らし稲妻を引き連れ、怒り荒れ狂う竜神が、風へと化身し舞い降りたかのようだ。
「このような下劣なやり方で、罪もない人々の命を脅かす行為を、私は決して許しはしない!」
 そしてその嵐を引き起こしている元凶は、達人同士の決闘でも、100人の猛者の乱闘でもない。
 コロッセオのど真ん中に、さながら台風の目のごとく立っているのは、たった1人の女だった。
 たった1人の少女の怒りが、闇に沈んだ眠れる舞台を、再び闘争の爆音で満たしていたのだ。
「この私の目の黒いうちは――否! たとえ力尽き白目を剥くことになったとしても! 貴様の思うようにはさせん!」
 女の名は黒神めだか。
 またの名を、完全生徒会長。
 支持率98%という圧倒的数値のもと、箱庭学園生徒会の頂点に君臨する、史上最強の生徒会長である。
 その叡智は全国模試にて偏差値90という記録を叩き出し、数学界最大の難問・ジュグラー定理を難なく証明。
 その豪力はコンクリートの壁を素手で粉砕し、その俊足はフルマラソンを2時間フラットで走破する。
 漆塗りのごとく煌めく黒髪と、はち切れんばかりのバストサイズは、まさに容姿端麗の一言。
 生まれついての王者であり。
 生まれついての覇者である。
 幾多の逸話と神話を築き上げた、存在そのものが生ける伝説とでも言うべき、最大最強の大天才だ。
 その魔人のごとき少女の怒りが、今まさに烈風を轟かせ、天地を鳴動させていた。
「これは宣戦布告だ! このようなふざけた実験は、この黒神めだかが叩き潰す!」
 高らかに宣言した。
 恐らくは今も遥かな高みから、自分達を見下ろしているであろう首謀者へと、挑戦状を叩きつけた。
 生まれながらの王属たるめだかは、しかしその才知に支配され、暴力のままに他者を支配する魔王ではない。
 他者より優れた己の力を、他人を助けるためにこそ振るう、生まれついての聖人君子だ。
 それこそが自らの信条であり、最大の存在意義である彼女にとって、この殺し合いの実験は、到底許容できるものではなかった。
 今まさに叩き潰さんとしていたフラスコ計画同様の、打倒すべき害悪であり、打破すべき邪悪に他ならなかった。
 故に黒神めだかは激怒する。
 故に黒神めだかは宣言する。
 こんな狼藉を許しはしないと。
 こんなふざけた殺し合いは、自らの手で止めてみせると。
「――お、おいちょっとそこの! アンタ、一体何考えてんだよ!」
 そしてその生徒会長の姿を、傍から見ていた者がいた。
「む」
 闘気の暴風の中で微かに響いた、男のものらしき声を聞き、一旦視線だけを向ける。
 顔面に迫る風を両手で防いでいたのは、赤銅色の髪をした少年だ。
 年齢はめだかよりも2つか3つ上といったところか。
 ことさら強靭な体躯というわけではないが、全く鍛えられていないというわけでもない。中肉中骨、といった印象。
「何を考えているとは随分な物言いだな。私はこの実験を潰すことを考えていただけだぞ」
「俺が言いたいのはそうじゃなくて、不用心に大声を上げるなって言ってるんだよ」
 いつしか竜巻は掻き消えていた。
 完全生徒会長の怒りの炎が、この少年の乱入によって、いくらか勢いを弱めたからなのだろうか。
 ここにきてようやく無人のコロッセオは、他の施設と同じような静寂を取り戻していた。
「外まで丸聞こえだったぞ、今の。聞いたのが俺だったからまだよかったけど、殺し合いに乗ってる奴だったらどうするんだ」
「……なるほど、確かにそれもそうだな。どうやら思慮が足りなかったようだ。反省しよう」
 宣戦布告というからには、相手に対する敵意を見せつけるのは当然である。
 しかしながら今の叫びは、いささかそれが度を越してしまっていたようだ。
 大声を張り上げたところを、殺し合いに乗った人間に聞かれて、不意を打たれて殺された、では話にならない。
 そういう不意打ちの怖ろしさは、かの「枯れた樹海(ラストカーペット)」宗像形との邂逅で経験済みだ。
 慎重になり過ぎるのもよくないが、最低限の自制はせねば。そう己を戒めた。
「しかしその言い方からすると、貴様もこの殺し合いには乗っていないようだな」
「ああ、当然だ。こんなふざけた実験で、誰かが犠牲になるなんて間違ってる」
 言葉を交わしているうちに、少年は自分のすぐ目の前まで歩み寄ってきていた。
 一瞬前までのめだか同様、その眉には義憤の皺が浮かび、右手には力強い握り拳が作られている。
「そうか」
 嘘は言っていない――直感的な判断だが、間違いなくそうだと断言できた。
 その眼力は、鋭い。
 強くも弱くもない、という印象の肉体だったが、その瞳には百戦錬磨の強者にも引けを取らない、確固たる意志の炎が燃え滾っている。
 これほど素直に吐き出された正義感が、悪人の演技の産物であるはずがない。
 こうして黒神めだかは、この殺人遊戯の壇上で、しかし目の前の少年を、あっさりと信用することにした。
「嬉しく思うよ――貴様のような強き意志を持った者が、この場にいてくれたことをな」
 ふっ、と口元に笑みを浮かべ、少年の到来を歓迎する。
 ある者がこう言ったことがある。
 めだかちゃんは人を疑うことを知らないのではなく、人を信じることを知っているのだと。
 裏を返せばそれは、人を疑うことも知っているということだ。
 悠然と構えてこそいるものの、彼女はどこかで怖れていた。
 こんなことを考えているのは、自分1人だけではないのかと。
 皆が皆それぞれに事情を抱え、殺し合いに乗ることをよしとし、人間同士で殺し合う可能性もあるのではないかと。
 自分の愛する人間達が、状況に迫られ殺しを受け入れ、互いに潰し合い傷つけ合う――そんな地獄のような光景を、めだかは誰より怖れていた。
「お、おう」
 だが、それもこの瞬間においては、杞憂に終わってくれたらしい。
 目の前で若干たじろいだような姿勢を作っているこの少年は、殺し合いに抗うと宣言してくれた。
 自分が信じてきた人の強さを、その身で証明してくれた。
 大丈夫だ。この場に集められたのは、道を踏み外してしまった者達ばかりではない。
 確固たる意志を持ち、理不尽と戦うことを決意してくれた者もいるのだ。
 ならばこそ、戦える。
 生徒会長黒神めだかは、人間を守るために、どこまでも戦い続けることができる。
「ならば私達は同志も同然だ。共にこの状況を打破し、生きてそれぞれの日常へと帰ろう」
「……そうだな。俺は衛宮士郎だ。よろしく」
 す、と差し伸べられた右手。
 返事に迷うことなどなかった。
 つい先ほどまで正義の怒りに震えていた拳を、力強く握り返した。
「黒神めだかだ。よろしく頼むぞ、衛宮上級生」
「……は? 衛宮、上級生?」
「小柄なようだが、見たところ高1の私よりも年上なのだろう? だから衛宮上級生だよ」
「あ……そう……」


【E-5/コロッセオ:深夜】

【黒神めだか@めだかボックス】
 [属性]:正義(Hor)
 [状態]:健康
 [装備]:
 [道具]:基本支給品、不明支給品1~3
 [思考・状況]
 基本行動方針:殺し合いを止める
 1:衛宮上級生と行動を共にする
 [備考]
 ※第37箱にて、宗像形と別れた直後からの参戦です。

【衛宮士郎@Fate/stay night】
 [属性]:正義(Hor)
 [状態]:健康、若干の困惑
 [装備]:
 [道具]:基本支給品、不明支給品1~3
 [思考・状況]
 基本行動方針:殺し合いを止める
 1:めだかと行動を共にする
 2:黒神って俺よりも年下だったのか……
 [備考]
 ※参戦時期は後続の書き手さんにお任せします。

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実験開始 黒神めだか 「Lights! Camera! Action!」
実験開始 衛宮士郎






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