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4/理想『正義の味方』


 ―――踏み込んだ。

 身体能力で衛宮士郎は黒神めだかに敵わない。それを承知で地面を蹴った。
 勝算はある。
 黒神は俺を殺さない。
 彼女が不殺を謳う以上、どれだけ攻撃を受けようと、死ぬことはあり得ない。
 後はただ、俺の体が動く内に黒神の隙を見つけ、渾身の一撃を炸裂させるだけだ。


 打ち下ろす陰剣莫耶。
 その白刃の刃に必殺の意思を籠めて叩き込む。

 ―――だが。

 渾身の力で繰り出された短剣は、
 渾身の力で止められた。

「……なんで避けようとしない」
 何を思ったのか、黒神は両腕をだらりと下げている。
 攻撃も、防御も、回避すらもする様子がない。
 俺が剣を止めなければ、彼女は確実に首を断ち切られていただろう。

「――――あなたから、攻撃を受ける理由がありません。故に、避ける理由がありません」

 黒髪めだかはそう答えた。
 そのまま右手の剣を手放す。
 手放された剣は、容易く床へと突き刺さる。
 そしてカラになった右手を、俺へと差し出してきた。

「衛宮士郎。確かに私には、あなたの絶望も、覚悟も、その理想にかけた意志の重さも、真に理解することは出来ないでしょう。
 けど、今ならまだ間に合うはずだ。あなたの本当の願いを取り戻せるはずだ」
「……………………」
「あなた一人の力で足りないのなら、私が力を貸します。
 あなたが味方を出来なかった人は、私が味方になって救います。
 私が手伝います。誰も傷つかないように。誰も悲しまないように。誰もが幸せになれるように。
 ……あなたの夢が叶うように。
 だから――――」

 戻って来い、と。
 手を伸ばしている。
 名前を呼んでいる。

 孤独の道を歩もうとする俺を、
 黒神めだかは、今なお救おうとしていた。



 貫いた。
 躊躇わず、微塵も情を零さず、黒神の体に短剣を突き刺した。

 抵抗はなかった。
 きっかりと一撃で、黒神の体を貫いた。

「――――――――、―――」

 思い出があった。
 ちゃんと、今でも生きている感情があった。
 忘れようのない、彼女との日々がすぐ近くにあってくれた。

 あの手を取れば、あの優しかった日常に戻れたのかもしれない。
 この剣を下せば、かつての自分に戻れたのかもしれない。
 全てを救うのだと、幼い夢を懐いてたあの頃に。
 だが………それだけは出来ない。


 ――――そんな事は、絶対に許されない。


 俺はこの道を選んだ。
 より多くを救うために彼女を殺した。
 愛した人を、最期まで俺を想ってくれた少女を、理想のために切り捨てた。

 間桐桜。

 俺が、誰よりも救いたいと願った、
 俺には、決して救うことの出来なかった、
 ―――誰よりも、衛宮士郎の近くにいた少女。

 ―――その死を。
 無意味なモノにすることだけは、してはならない。

「――――けど、黒神」

 切り捨てたものに見合うだけの人々を、一生涯救い続ける。
 矛盾は捻じれていく一方で、いつか破綻するのは目に見えている。

 それでも――――みっともなく、滑稽で無価値なまま、奪った責任を果たしてみせる。

 結末はきっと、幸福には終わらない。
 ただ、この理想が報われないとしても、立ち止まる事だけはしないと誓う。

「――――ありがとう。お前のようなやつがいてくれて、本当によかった」

 ……剣から伝わる意思が消える。
 黒神めだかは最期までその手を伸ばし、俺の名を口にしながら、その瞳を閉じていった。




 短剣から手を放し、黒神の体を横たえる。
 その様子を見ていた男が口を開いた。

「いいのかい? 彼女、まだ生きてるよ」
「ああ、そうだな」
「止めは刺さないんだ。優しいんだね」
「違うな。これはただの甘さだ」
 そう、甘さだ。
 もし彼女が生き残れば、確実に俺の障害になると判っている。
 判っているのに俺は、彼女に生きていて欲しいと思っていた。


 床に突き立った黄金の剣を引き抜く。それと同時に、その剣の情報が流れ込んできた。

 ―――“約束された勝利の剣(エクスカリバー)”。

 かのアーサー王が担い、そして湖の妖精へと返却されたはずの、最強の聖剣。
 いかなる理由でこれが此処にあるのかは判らない。
 だがこの剣を手にした瞬間。俺の内にある何かが、共鳴するように熱くなったのを感じた。


 聖剣を構える。
 黄金の光を放つ刀身は、俺の心を映すかのように、その輝きを鈍らせている。

「Dr.天馬やニナじゃないのが残念だけど、あなたの様な人に殺されるのなら、ぼくとしては上等な方かな」
 お互いに、語り合う言葉はもうない。だからそれは、何の意味もない独り言だ。
 微塵の躊躇も、一切の容赦もなく、聖剣を振り上げる。
 同時に男が、右手の人差し指を眉間に当てた。


「――――あなたには見える……“終わりの風景”が……」

 ――――瞬間、一面の赤い荒野を幻視した。


 赤錆びの様な大地。
 舞い上がる火の粉。
 空では巨大な歯車が軋みを上げ、
 辺りには無限にも等しい数の剣が乱立している。

 それは男が見続けていたモノとは違ったが、間違いなく、一つの“終わりの風景”だった。


 肩からわき腹までを一気に切り裂く。
 せめて苦しまぬようにと、一撃で息の根を止める。

 男はそれを、何の抵抗もなく受けいれた。
 自らを“怪物”と言った男は、どこかあっけなく、その命を終わらせた。
 最期に見たその死に顔は、なぜか、揺り篭で眠る子供のように見えた。




 男のデイバックを拾い、中身を確認して背負う。
 それに散らばった、まだ使える支給品を納めていく。
 当然干将も男の死体から抜き取り、デイバックへと納める。

 そこでふと重要な事に思い至り、聖剣で男の首を刎ねて首輪を取り外す。
 この殺し合いを終わらせるだけでなく、主催者も倒すのであれば、首輪の解除は絶対条件だ。
 今は調べる事が出来なくても、いずれ必ず必要になるだろう。


 最後に一目、黒神を見る。
 黒神は出血が酷く、突き刺さった短剣を抜けば、すぐに出血死するだろう。
 今も息は絶え絶えで、もう長くはないことが容易に理解できる。

 だが、もし生き延びる事が出来たのなら、その道を選べなかった俺の代わりに、その道を歩いて欲しいと思った。
 だから彼女に突き刺さった短剣はそのままに。彼女のデイバックにも手を出さないでいた。



 カフェから外へ出る。
 空へと昇っていく太陽が。否。視界に映る世界全てが、どこか色褪せて見えた。

 今後の行動方針としては、まずは可能な限り労力を少なく、ジョーカーを殺せる手段を見つけ出す。
 ライフル系の銃か、なければ弓でもいい。狙撃の出来るモノが望ましい。
 聖剣の真名を解放すれば確実だが、それでは後が続かない。
 この殺し合いに加担する人物がどれだけいるか判らない以上、そんな無駄は出来ない。
 ましてや上には主催者もいる。使うべき時は厳選しなければ。

 デイバックからビートチェイサー2000を取り出し、エンジンをかける。
 説明書によれば、未確認生命体第4号専用に開発されたモンスターバイクらしい。
 だが藤村組にある大型バイクに比べれば、倒れても自力で起こせる分扱いは容易い。
 ……もっとも。その性能を限界まで引き出せるかは、また別の話なのだが。


 アクセルターンで車体を回し、くすんだ太陽に背を向ける。
 ――――さあ、行こう。もう後戻りはできない。



【ヨハン・リーベルト@MONSTR 死亡】

【E-6/市街・南西部:朝】

【衛宮士郎@Fate/stay night】
 [属性]:正義(Hor)
 [状態]:健康、魔力消費(小)、鉄の決意
 [装備]:エクスカリバー@Fate/stay night、ビートチェイサー2000@仮面ライダークウガ
 [道具]:基本支給品、干将@Fate/stay night、S&W/M37チーフス スペシャル(1/5)@未来日記、ヨハン・リーベルトの首輪、不明支給品(確認済み)0?2
 [思考・状況]
 基本行動方針:“正義の味方”として、あらゆる手段を使って殺し合いを止める。
 1:ジョーカーを確実に殺せる手段を探す。
 2:ジョーカーのような悪人は殺す。
 3:バットマンを探す。
 4:昆虫男と少年のその後が気になる。
 5:エクスカリバーは滅多な事では使えない。だが、必要とあらば………
 6:もし黒神が生きていたら――――
[備考]
 ※参戦時期はBADEND【30】『正義の味方』END後です。
 ※干将と莫耶は引き合っています。


【干将・莫耶@Fate/stay night】
衛宮士郎に支給。
陰陽二振りの夫婦剣。黒い方が陽剣・干将、白い方が陰剣・莫耶。
磁石の様に互いに引き合う性質を持ち、二つ揃いで装備すると対魔力・対物理が上昇する。

【エクスカリバー@Fate/stay night】
夜神粧裕に支給。
“約束された勝利の剣”。聖剣というカテゴリーの中で頂点に位置する伝説の剣。
所有者の魔力を光に変換、集束・加速させることで運動量を増大させ、光によって形成された“断層”を、全てを切断する“究極の斬撃”として放つ。指向性エネルギー兵器とも言える。
伝承にある湖の妖精と同様、善と悪両方の属性を有するため、所有者の属性によってその姿を変える(善は黄金、悪は漆黒、中庸は不明)。

【ビートチェイサー2000@仮面ライダークウガ】
衛宮士郎に支給。
未確認生命体第4号(クウガ)専用に開発したバイク。
最高時速420kmを誇るが、最高時速は制限によって半減されており、
また100km/h を超えると30秒で急停止し、30分間起動不能となる。
始動キーは取り外し可能な右レバー「トライアクセラー」。
これは警棒の代わりとしても使用できる。





5/約束『めだかボックス』


 ――――――――気がつけば。

 どこか見覚えのある、けれど箱庭学園のものとは違う教室に居た。
 ついでに言えば、今着ている制服も箱庭学園の物ではない。

「………わたしは―――」
 なぜこんな所にいるのか。そう考えて、考えるまでもない事に思い至った。
 そう、考えるまでもない。なぜなら――――

「そうだったな。私は、死んだのだったな」
 出来れば否定したい答えを口にする。
 今見ている光景は、今際の際の夢のような物なのだろう。
 だとすれば、ここが死後の世界の様なモノなのかと納得して、

「いやいや、そんな訳ないだろ。相変わらずだな、めだかちゃん」

 不意に聞こえた声に、体が跳ね上がった。
 声の方向に振り返り見えた姿に、思わず視界が滲んだ。
 振りかえった先には、

「…………善吉」
「よ、こんな所でどうしたんだ? めだかちゃん」

 当たり前の様に、手を上げて挨拶をする善吉の姿があった。
 それを見て、自分はやっぱり死んだのだと確信した。

「いいや。めだかちゃんは死んでねえぜ」
 だがそれを、善吉は笑って否定した。
 驚いた。どうやら私はまだ死んでなかったらしい。

「なら、どうしてここに?」
「それはな、めだかちゃんがあまりにも落ち込んでいたから、元気づけようと思ったんだ。
 つっても、何言ったらいいか分かんねえんだけどな」
 そう言うと善吉は、私の前の席へと座りこんだ。

「…………ああ、そうだ。
 なあ、めだかちゃん。俺からの相談、受け付けてくれるか?」
「………え?」
「“24時間365日、誰からの相談でも受け付けるし、どんな気持ちでも受け止める”。それが、生徒会会長就任の時の公約だったよな。
 なら、今この時だって有効だぜ」
 私を真っ直ぐに見据えて言う。

「めだかちゃん、このくだらねぇ殺し合いを終わらせてくれ。
 何の後腐れもなく。二度と同じ事が出来ないように。当然、問答無用のハッピーエンドでな」
「――――――――」
「こんな悲しみしか生まないような実験なんかブチ壊しちまってくれ。
 俺はもう死んじまったから無理だけど、お前はまだ生きてるからな。
 それに俺は、お前がこんな所で諦める奴じゃねえって信じてる」

 その言葉が胸を打つ。
 善吉は、私が立ち上がる理由を次々と積み上げてくれた。
 黒神めだかは、まだ終わっていないのだと教えてくれた。

「俺はな、お前はみんなを幸せにするために生まれてきたんだって信じてんだ。初めて会った時からずっと。今も馬鹿みたいにな」

 それは十三年前、彼が教えてくれた、私の生きる意味だった。
 その言葉があったから、私は私になったのだ。

「だからと言って衛宮士郎みたいに、自分を犠牲にする様な事は止めてくれよ。
 みんなを幸せにするために、お前が傷ついたり、痛い思いをしたり、泣いたりする事はね~んだよ。
 その“みんな”の中には、お前もちゃんと入ってるんだから、みんなを幸せにするためには、まずはお前が幸せにならなきゃな」
「……………………」

 善吉はずっと私を心配してくれていた。
 その意味を、私はずっと勘違いしていたらしい。

 ずっと誰かを幸せにするために頑張ってきた。そのために今まで生きていた。
 その中で、自分の幸せなど考えた事もなかった。そんな事よりも、誰かを幸せにできる事の方が嬉しかった。
 そんな自分を顧みない私を、善吉は心配してくれたのだ。


「………ああ、そうだな。その通りだ」
 座りっぱなしだった席から立ち上がる。
 私はまだ生きていて、挫けていた心も起き上がって、生徒からの相談も受けた。
 ここに居る理由は、もうどこにもない。

「手数をかけたな、善吉」
「はあ? いつもの事だよ、めだかちゃん。
 けどまあ、こんなんで元気を出してくれたんなら、それでよかったぜ」

 いつものような、呆れた声。
 それだけのことが、この上ない程嬉しかった。

 人吉善吉は私にとって必要な人間だ。
 今までずっとそうだったし、これからもずっとそうだろう。
 その事実が変わる事は、きっとない。

 けれどこの先の未来に、善吉はいない。
 それだけが、どうしようもなく悲しかった。


「けど、自分で言っておいてなんだけどよ……大丈夫か、めだかちゃん?」
「大丈夫だ、善吉。出来ない事は、やらない理由にはならない。
 1%の可能性さえなくとも。たとえ成功率がマイナスだろうと、私は絶対に諦めない」
「そっか」
 なら大丈夫だと、安堵の表情を見せる。
 心配していないのではない。信用しているのだ。
 黒神めだかはもう、精神的に負ける事はないと確信しているのだ。



 教室の出入り口。開け放たれた扉の前へと立つ。
 そこに廊下はなく、ただ暗闇があるだけだ。
 ここから出れば、夢から覚めるのだろう。

「ところでめだかちゃん。お前は何のために生まれてきた?」
「むろん、見知らぬ他人の役に立つため」

 唐突な質問に、迷うことなく凛と答える。
 生徒会長だからでも、善吉にそう言われたからでもなく、私がそうしたいから。
 他の誰かの為でなく、私自身の幸せのためにそうするのだと、臆面もなく胸を張る。

「みんなと一緒に! 私も幸せになる!!」

 あなたも私も、みんなが幸せでありますように。
 そんな、子供のような願い。叶うはずのない夢物語を叶えに行く。

 その様はまさに威風堂々。先ほどまであった陰りはもう微塵も感じられなかった。


「――――――――」
「……………………」
 互いに言葉は尽きた。語るべき事はもうない。
 後はただ、戦いの場に舞い戻るだけだ。
 だがその前に―――

「善吉。一つ、言って欲しい事がある」
「ん? 何を言って欲しんだ? 何でも言ってやるぜ」
「がんばれと、言って欲しい」
 その一言があれば、この先二度と善吉に会えなくても、がんばることが出来るだろう。

 善吉は少しだけ目を見開き、今までで一番の笑顔を見せた。

「がんばれ、めだかちゃん」
「うん、がんばる」
 強く、一歩を踏み出す。
 同時に視界が白く染まり、体が浮き上がる様な感覚を覚えた。
 その中で、

「じゃあな。――――好きだぜ、めだかちゃん」

 そんな、大切な言葉を聞いた。




 目が覚めた。
 寝ぼけた頭のまま体を起こそうとして、腹部に走った激痛で一気に覚醒した。
 同時に、瞬時に周囲の状況を把握する。

 周囲は赤く染まり、ガラクタになった支給品ガ散乱している。
 その奥には首の跳ねられた死体が一つ。それが誰のものかは確認するまでもない。

「……衛宮、士郎」
 無意識に彼の名を呟いていた。
 彼は、“怪物”になろうとしているのだ。“セイギノミカタ”という名の、怪物に―――

 彼の理想(プラス)はオーバーフローし、彼自身の願いさえ飲み込んでいる。
 そして器から零れた水は、いつか器そのものを壊してしまう。
 それはもはや過負荷(マイナス)と同じだ。

 だがそれでもまだ取り返しは付く。
 それはまだ私が生きている事が証拠だ。

 本当に彼が手段を選ばないなら、障害となるだろう私の息の根を完全に止めていたはずだ。
 なのに彼は、私の腹部に突き刺さった短剣も、私のデイバックにも手を付けずに去っていった。
 きっと彼は、彼本人にもわからない所でまだ躊躇っている。今もまだ、誰も殺したくないのだと願っているのだろう。
 彼はまだ取り返しがつく。きっと改心させる事が出来るだろう。
 だから――――問題なのは私の方。

 あの時、私は挿げ替えたのだ。
 善吉が死んだという放送を聞いて、心の折れていた私は、目の前の現実に逃避した。
 今までの方針を盾にして、善吉が死んだという言葉から目を背けて、衛宮士郎へと縋っていたのだ。

 そんな言葉が、心を鉄にした衛宮士郎に届くはずがなかった。

 そう、衛宮士郎が強かったのではない。
 そんな、理由を他人に求めた私の心が弱かった。
 つまるところ私は、戦う前から負けていたのだ。

 彼はきっと、私以上の苦しみを背負って、あの結論へと至った。
 ならば彼と対等になるには、私も善吉の死を受け入れなければならないのだ。

「ッ――、―――――、―――ッッ!!!」

 そう考えただけで、胃液が喉元までせり上がり、腸がねじ切られる様に苦しみ、涙が止め処なく眼球を濡らす。
 けれど、これを受け入れなければ衛宮士郎は説得できない。
 これを受け入れなければ、私はもう、一歩も立ち行かない。


 けれど―――立ち止まる事も、もう出来ない。


 がんばる、と誓った。
 あれがただの夢でも、偽物であっても変らない。
 黒神めだかは、人吉善吉にがんばると言ったのだ。
 だからもう、決して立ち止まる事はしない。



 傷が広がらない様に、テーブルを支えにして慎重に体を起こし、壁伝いに台所へと向かう。
 何よりもまず、腹部に刺さった短剣が危険だ。なにしろ傷が深い。
 これが刺さったままではまともに動く事が出来ず、だが下手に抜けば大出血して死に至るだろう。
 だからと言って、このままでいるわけにもいかない。今すぐにでも傷を塞ぐ必要がある。

 台所で止血の準備を整えた後、慎重に上着を脱ぎ、腹部に突き刺さった短剣に手を掛ける。
 出血して死ぬのなら、それより先に傷を塞げばいいだけの話だ。

「……………………。
 ッ――――――――!」
 深呼吸を一つ。
 それで覚悟を決め、一気に腹部の短剣を引き抜く。直後、傷口から血が噴き出す。
 だがすぐに腹筋に渾身の力を籠め、その筋力で一時的に止血する。
 そこにコンロで熱しておいた包丁を当て、傷を焼く。

「ギィッ――――、ッ――――ッ!」
 歯を食いしばって声を抑える。
 あまりの熱さに、もはや痛みしか感じない。
 それによって視界が明滅し、意識が飛びそうになる。

「グゥッ――――――――ッ!」
 それを耐える。
 傷が完全に塞がるか、包丁の熱が冷めるまで、焼けた鉄を傷口に当て続ける。
 その後にしっかりと濡らして冷やしたタオルで応急手当をする。

「はあ――――はあ――――はあ――――」
 荒い息を吐く。額からは汗がだらだらと流れている。
 だが、これで傷は塞がった。よほどの無茶をしない限り、傷は開かないだろう。


 デイバックから全身を覆う黒タイツを取り出し、服の下に着込む。
 この黒衣はあらゆる環境に耐えられる性能を持つらしい。
 全身を覆い隠すような服は好みではないが、贅沢は言っていられない。

 武器となるのは、衛宮士郎が残していった短剣だけ。
 大概の相手なら素手でもどうにかできる自信はあるが、この殺し合いを止めるというのが無理難題である以上、万全の対策を取る必要がある。

 他にデイバックに入っていたのは、自分の携帯だけ。
 電波はなぜか三本立っているが、この会場の外に繋がるとも思えない。
 おそらくは、ハズレに分類される支給品なのだろう。


 カフェから外へ出る。
 周囲に人影は見えず、また気配もない。
 それを解った上で、決意を新たに声を上げる。

「衛宮士郎。貴様がそのやり方で殺し合いを止めると言うのなら、ああ、それで良い。
 ならば私も、私のやり方でこの殺し合いを、ひいては貴様を止めてみせる!

 ――――箱庭学園生徒会会長、黒神めだか。これより、生徒会を執行する!!!」

 黒神めだかは凛と胸を張り、燦然と輝く太陽へと向かって歩き出した。



【E-6/市街・北東部:朝】

【黒神めだか@めだかボックス】
 [属性]:正義(Hor)
 [状態]:腹部に深い刺し傷(焼いて止血済み)、強い決意、深い喪失感
 [装備]:莫耶@Fate/stay night、黒鬼@めだかボックス
 [道具]:基本支給品、黒神めだかの携帯電話@めだかボックス
 [思考・状況]
 基本行動方針:誰も死なせずに殺し合いを止める
 1:衛宮士郎を止める。誰も殺させない
 2:バットマンを探す
 3:衛宮士郎に強い共感と不快感
 4:昆虫男と少年のその後が気になる。
 [備考]
 ※第37箱にて、宗像形と別れた直後からの参戦です。
 ※ジョーカーの持つ装置により、「ロックオン」されているため、現在地他多くの情報が筒抜けになっていますが、本人は気付いていません。
 ※ジョーカーの持つ装置により、「ロックオン」されているため、1kmの範囲内では、ジョーカーによって電撃、または首輪の爆発をさせられる、と聞かされています。
 ※干将と莫耶は引き合っています。


【黒神めだかの携帯電話@めだかボックス】
黒神めだかに支給。
第73箱で黒神めだかが使用していた携帯電話。

【全方位型実験服『黒鬼(ブラックオウガ)』@めだかボックス】
黒神めだかに支給。
白衣ならぬ黒衣。低温にも高温にも低湿度にも高湿度にも、北極だろうと南極だろうと砂漠だろうと高山だろうと、ありとあらゆる環境に耐えうる性能を持つ。
カミソリ程度の切れ味の刃物なら、余裕で防げる防刃能力もある。



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投下順で読む



ほほえみの爆弾 黒神めだか [[]]
衛宮士郎 [[]]
ヨハン・リーベルト 死亡






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