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AN INNOCENT PEOPLE(後編) ◆KKid85tGwY




     ◇


照明も付いていないファーストフード店の中は薄暗く
それはなのはの気持ちまで暗くするようだった。
なのははテーブル席に腰掛け、長いスカートを捲くり怪我をしている膝に核金を押し当てる。
こうすることで怪我が治り、体力まで回復するそうだ
実際怪我の痛みが薄れ、疲労も取れていっているのが分かる。
逆に言えば、なのははそれだけ疲れていたということ。
なのはは小学3年生の標準から見ても、体力に劣る。
それだけに森の中を歩いたのは、今にして思えば負担があった。

しかし意外だったのは、そんな中でも自分を支えようとしてくれた月に対しての行動。
セットアップの掛け声すらなく、瞬時にデバイスを起動してバリアジャケットを展開した。
運動が苦手なはずの自分が、年長の人が驚くほど素早く構えを取った。
超音速の領域で繰り広げられる魔導師の戦いを潜り抜けてきたことで
なのはには異能とさえ言えるレベルでの戦闘技能が身に付いていたのだ。
そしてとっさにそんな行動を取った自分は
根底では殺し合いの危険性を自覚し、必要以上に恐怖さえしていたことも。

核金の効果は予想以上で、いつの間にか怪我は完全に癒え、疲労もほとんど抜けていた。
まるで治癒魔法のようだ。
こうしてS2Uを持ちながら片手間に回復をしていると、ユーノやクロノを思い出さずには居られない。

(ユーノくん……クロノくん……リンディさん……エイミィさん…………フェイトちゃん…………
 みんな心配してるかな…………)

なのはのこれまでの激闘は、多くの者の協力無しではありえない。
魔法による援護や情報解析などの、様々なバックアップ。
そして応援や助言による心理的なケア。
それら有形無形の支えがあればこそ、なのはは戦えて来たのだ。
しかしこの実験では、なのはを支えてくれた人々はどこにも居ない。
実験が始まった当初は眼中に無かった事実が
実験の恐ろしさを身を持って知った今となっては、大きく圧し掛かる。
いや、それだけではない。今はこの事件の中で出会った心強い味方、Vもイカ娘も居ない。
もし誰かに襲われでもしたら、なのは1人の力で対処しなければならない。


劇場で間桐慎二に襲われたときのことを思い出す。
それだけで身体が震えそうだが、今はデバイスがあると自分を鼓舞する。
今はなのは1人だけでなく、高遠の命も預かっているのだ。
その高遠はなのはとテーブルを挟んで席に座り、何やら思案げな表情で手帳を読んでいる。
なのはの高遠に対する印象は“非常に落ち着いていて頭も良い人”と言ったところ。
頭脳労働に関しては頼りになるかもしれないが、戦闘となれば当てにはできないだろう。
自分が守らなくてはならないのだ。

(…………すずかちゃんとアリサちゃんはどうしてるんだろ…………)

そしてここには居ない、しかし守らなくてはならない相手も思い出す。
2人はなのはにとって小学校に上がる前からの友人だった。
何度か衝突したこともあったが、それらを乗り越えて友情を育んできた。
その2人もまた、この実験に連れられてきている。
2人は魔法を使うことはできない、普通の小学生だ。
殺し合いの中では、自分の身を守ることさえ難しい。
もし危険人物に襲われたらと想像しただけで、自分が襲われた時を思い出す以上にぞっとする。
一刻も早く合流したいと願うが、それは叶いそうにない。
せめて頼りになる人と一緒であれば良いのだけど。
早く2人に会いたい。
早く皆の所に帰りたい。
昨日までもそんな風に思ったことは、何度もあった。
しかし今は切迫感がまるで違う。
ここは殺し合い。
今まで自分が経験してきたことのない、決定的な別れが訪れるかもしれないのだから……。

(……また会えるよね…………)

なのはは自分の中で押し殺すように、その可能性を否定する。
可能性が存在することは理解できていた。
しかし近しい人や自分自身の死の可能性を完全に割り切って、それでも前に進むには幼すぎた。
なのはにできるのは、まるでその可能性に気付いていないふりを自分にするだけだ。

「なのは君、ちょっとよろしいでしょうか?」
「……ふぇ!?」

不意に高遠から声を掛けられ、思わず返事に詰まる。
一体何事かと、緊張に身を固くする。

「実は今から貴女にいくつか質疑したいと思うのです。……我々の相互理解のために」
「相互理解……ですか?」

高遠の言葉が上手く飲み込めず、さらに緊張感が強まる。
しかし高遠はそんななのはの様子を見て、柔和な笑顔を浮かべた。

「フフフ。そう、大袈裟に受け取らなくても結構ですよ。ただ貴女は我々3人の集団に、後から頼み込んで入ってきましたよね。
 そのことに不満は無いのですが、我々は貴女がどういった人物で何を目的としているのかよく知らないわけです。
 そこで私としては貴女をより深く理解するために、いくつか質問をしたいのです」

「……わ、私のことがちゃんと分かってもらってないんですか?」
「端的に言えばそうなります。……質問に答えていただけるでしょうか?」
「……あ、はい」

了承すると、高遠が僅かに口角を釣り上げた。
なぜかその笑みに、言いようのない不穏な物を感じる。
危害を加えられる。と言うことではない。
もっと得体の知れない奈落を覗いた気分だった。

「では、まず確認の方から。貴女のお友達がこの実験に参加していると?」
「はい……」

よく理解していたはずのことだが、人の口から確認すると
その事実がまた重みを増す。

「そして貴女はそのお友達を捜していらっしゃる」
「はい」
「何故です?」
「……え?」
「貴女にどのような理由があって、お友達を捜していらっしゃるのでしょうか?」

質問の意味が分からなくて、思わず聞き返してしまった。
いや、意味は分かる。
でもこの人は、なんでそんな分かりきったことを聞くんだろう?

「そ、それは心配だから……」
「お友達の身、生命に危険が及ぶことがですか?」
「そうです」
「つまり貴女はそれほどまでに、お友達に死んで欲しくないと仰るわけですね?」
「あ、当たり前……だと思います」

相手が年長の人だということも忘れて、激昂しそうになる。
こんなことも、言わなければ理解して貰えてなかったなんて。

「しかし、そうなると不可解です……」
「……何かおかしいんですか?」

まだ疑問の余地があるらしい。
当たり前のことのはずが、世界の共通了解とならない。
それだけで、なのはの心で不安が大きくなる。

「ええ、非常におかしいですね。
 貴女がそれほど強くお友達を案じていらっしゃるのなら――――何故、私たちは貴女に殺されていないんでしょうか?」
「え……!?」

今度は純粋に意味が分からない。
そして、戸惑いの気持ちが大きい。
どうしたら自分が人を殺すなんて、とんでもない話が出て来るのだろう。
まるで世界が少しずつ歪んでいくようだ。

「支給された手帳は御覧になりましたよね?」
「……はい」


「この中で“三人の被験者を排除した場合に、特別な報酬を得る権利を与えられる”とありますね。
 “報酬には、怪我の治療、物資の補給等の他、他の被験者に危害を加えたり、実験を棄権したりする以外の事が出来る”とも。
 こういった報酬の場合、他の参加者の位置や状態などの情報は、かなり需要が大きいと考えられます。
 実際、貴女も他の参加者を捜していますしね。では当然報酬として、主催者もそれを提供する公算が大きい」
「…………だ、だから私が高遠さんたちを……殺すって言うんですか!?」
「貴女の目的から推測していけば、自然に到達する結論だと思いますが」
「そんなこと、考えもしなかったです!」

まさかそんなことを疑われているなんて、想像もしていなかった。
なのはにとって、すずかとアリサは何としても助けたい。
しかしそのために他の人を犠牲にすることがゆるされるわけではない。

「考えもしなかったと……フフフ、なるほど。それでは私たち3人……私と月君とイカ娘君ですが
 一体、貴女に何を協力すればよろしいのでしょうか?」
「…………えーっ、と……」
「貴女は『一緒に、友達を探してくれませんか?』と、私たちに協力を要請してきました。
 しかし貴女は魔法を使える。私たちが居なくても自分の身は自分で守る力がお有りになる。
 しかも貴女自身から聞いた話によれば、空を飛べるそうじゃありませんか。
 ではデバイス、ですか? それを手に入れた以上、貴女に我々と同行するメリットは無い。
 さっさと飛んで、お友達を捜しに行けば良いでしょう?」
「そ、それは……そうかも知れないけど…………」

高遠の疑問に答えを見出せない。
たしかになのはなら集団で歩くより、1人で捜索した方が効率的だろう。
戦力の低い高遠と月が居るため、手分けして捜すというわけにも行かない。
今は一刻も早く、友達に会いに行きたい。
そのはずなのに――――何故、自分はこの集団に居るのだろう?

「それは、貴女がお友達を本気で捜すつもりが無いからですよ」

なのはに分からなかった、答えが返ってきた。
それを問うたはずの高遠から。
しかしなのはの意識が奪われたのはその理不尽より、答え自体の不条理。
世界の足場が崩れていく。

「な、私は本気で捜すつもりです!」
「それならさっきも説明したとおり、こんな所でのんびりとしているはずが無いんですよ。
 貴女に本当に友を想い、それを助けたい気持ちがあるのなら
 1人で空を飛んで捜して回っている……いえ、私たちを殺して、お友達の居場所を聞いているはずです」
「だけど……そんなこと絶対できません!! 私が誰かを殺してでも助けるなんてすずかちゃんもアリサちゃんも……」
「望んでいないと? これは驚いた! 貴女は強い人だ。そしてそれゆえに、残酷だ」
「……残酷……?」

なのはは高遠の言いたいことが、未だに分からない。
だが、今行われていることは漠然とだが察知していた。
これは裁判だ。世界が自分の罪と業を明らかにするための。

「貴女はこの実験が始まってすぐに、あの間桐慎二に襲われた。彼の悪意に、欲望に晒され、命の危険すら感じ取っていた。
 そしてそこをVに助けられた。彼が現れなければ、貴女がどんな恐ろしい目にあったか想像もできない。
 しかし、もしその時Vが貴女を助けるためにその手を汚したとしたら、それを絶対に許さない、認めないと仰る?」


「……そ、そんなこと言ってない…………」
「間桐慎二の欲望によってどれほど汚され、蹂躙され、殺されたとしても。
 あの仮面の騎士の手が汚れていたとしたら、その助けを拒絶できたと仰るわけですね?
 なんと言う高潔で強靭な精神でしょう! 私は貴女に敬意を覚えます」

なのはは間桐慎二に襲われた時のことを思い出していた。
得体の知れない欲望に晒され、未知の恐怖のあまり抵抗すらできなかった時のことを。
もしVが助けに来なければと思うと、未だに身震いする。
しかしそれが、Vが誰かを殺すことによって為したとしたら?
あるいはその時、Vが間桐慎二を殺していたら?
それは過ちだと言えるだろうか?
自問する。答えは否定的だった。

「……」
「まさか貴女は自分が助けられる場合は良しとして、友を助ける場合は罪とするのですか?
 貴女は殺し合いの中で何の力も無い少女が、友にどんな手段を使っても良いから助けて欲しいと
 ただ、そう心の中で願うことさえ許さないと仰るわけですね? それは非常に興味深い考え方です」

そこでなのはは、すずかとアリサは自分と違い
魔法の力を持っているわけでも、修羅場を潜ったわけでも無い
平凡な小学生であるという意味を、失念していたのに気付いた。
全く何の力も無い女の子が、殺し合いに置き去りにされる。それはどれほどの恐怖だろう。
でも、だからといって、誰かを殺してまで捜すなんて……

「…………それでも誰かを殺してまで、捜しに行くなんて……絶対に間違っていると思います!」

それでもなのはは強く言い切る。
本当はそこまで強い確信なんて、何も無くても。
しかし世界の追求は止まらない。

「では、仮に貴女がお友達と上手く合流できたとしましょう。その後、どうなさるおつもりなんですか?」
「…………」
「実験のルールはご存知ですよね。それが完遂されれば、少なくとも1つ以上のグループは全滅する。
 そして実験が終わらない限り殺し合い、多くの犠牲が出るでしょう。
 貴女はそれらを無視して、ただ友を守ることに執心されるおつもりですか?
 たとえそれが上手く果たせたとしても、グループによっては結局お友達は亡くなられるのですよ?」

知っていたことだった。
すずかとアリサにあったところで問題が解決しないことは。
そして無意識に避けていた問題。
それでも、人は答えを出して進まなければならない。

「……みんなと力を合わせてここを脱出します」


「具体的には、どうやって?」
「…………」
「どうしました? 『みんなと力を合わせてここを脱出』、そう提案したのは貴女です。
 ならば貴女に具体的な方策を示して頂かないと困ります」

無意識に避けていたというのは、本当は答えなんて存在しないから。
そして何より、そこには恐るべき淵があるから。
脱出する具体的な方法は無い。
すなわちそれは、殺し合いを完遂しなければ実験からは抜け出せないということ。
殺し合いを完遂しても、グループによっては
すずかもアリサもなのは自身も死ぬということ。

「どうしました? 質問に答えて頂かないと困りますね。
 まさか無いんですか? これはこれは……失望しましたよ、なのは君。
 貴女が出来もしない夢想で偽りの希望を持たせて、人の心を弄ぶような人物だったとは」
「…………ご……ごめんなさい……」

いつの間にかなのはは俯き、肩が震えていた。
忘れていた。否、忘れた振りをしていた恐怖と絶望が顔を見せる。
世界の足場が崩れ、底の無い深淵が口を開ける。

「……では、私がご教授しましょうか? 貴女と貴女のお友達を――――この実験から救い出す方策を」
「……?」

逃れられない暗黒へ足を踏み入れようとしていたなのはに、突如希望の光が差し込んだ。
この実験から抜け出せる?
しかもなのはだけではなく、すずかもアリサも一緒に?
そんな物が本当にあるのだろうか?

「ほ、本当にそんな方法があるんですか!?」
「ええ。と言っても、簡単な話ですが。
 先ほど説明しましたよね。3人の参加者を排除した場合の報酬。
 それで他の参加者の情報が得られる公算が極めて大きいと?」

話がまた不穏な方向に向かっている。
それでもなのはは、話の続きを聞きたいという欲求を抑えることができない。
暗黒に溺れる者は、罠と分かっていても
救いの糸に縋るしかないのだ。

「後は本当に簡単です。3人を殺した報酬で、自分とお友達の所属するグループを知り
 もしHorが居なければ、他の参加者を手当たり次第に殺して実験を終わらせれば良いんですよ」

それきり2人の間には長い沈黙が流れる。


なのはは、何かを言わなければならないと思う。
そんな方法は認められないと、否定の言葉を。
しかし、それはどうしても口をついて出てこない。
何故ならそれは、やっと掴んだ希望を自ら殺す行為だから。

「……………………た、高遠さんは私にそうして欲しいんですか?」

消え入りそうな声でやっと口に出たのが、そんな言葉。
それを聞いて、高遠は優しく微笑む。
本当に優しい微笑みだとなのはは思った。

「貴女がそれを望むのなら、私はこの命を差し上げましょう」

高遠は立ち上がってなのはに近寄り、待機状態のS2Uをもつなのはの右手を握って
自分の首輪に当てた。
なのははやっと、顔を上げる。
核金で体力は回復したはずなのに、青ざめた顔を。

「……な、何をしてるんですか?」
「さあ。これで報酬に、実験の終わりに一歩近付く」
「そ、そんなことできないよ!」
「何故です? 貴女の魔法なら、私を殺すことは容易いはずだ」
「だ、だって…………私の魔法には……非殺傷設定が掛かってて……」

なのはは最早、自分が何を言いたいのかよく分かっていない。
自分が本当は何を望んでいるのかも。

「非殺傷設定? それはそれは……しかしそれは貴女の任意で解除できるんじゃないですか?」
「……………………」
「そうなんですね? さあ――――貴女の望みを阻む物はもう有りませんよ?」

ずっと望んでいた。
大切な友達に会いたいと。
生きて帰りたいと。
そして今、そのための道は開かれた。
いや、本当は最初から開かれていた。
ずっとそれが見えない振りをしていただけなのだ。
しかしもう、見ない振りはできない。
友を救済するため、修羅の道を行くか否か?
選択の時を迎え――――



――――そして終わりを迎えた。







「2人とも、一体何をやっているでゲソー!?」

いつの間にか店内に入っていたイカ娘の声が鳴り響いた。
その後に居る月も、険しい表情をしている。

「これはこれは、予想外に早く帰ってきましたね。2人とも、ご無事なようで何よりです」

高遠はなのはの右手を離し、何事も無かったかのように振り返る。
なのはの手が力なく落ちた。

「ええ、お陰さまで。……それで、何をしていたんです?」

月は冷たい視線を向けるが、高遠は意の介した様子もない。

「実はなのは君が“悪いイカ”である可能性を考慮して、ぶしつけながらその人格を少しだけテストしたいと思いましてね。
 2人が不在の間になのは君が私に殺意を向けるかどうか、色々試したのですよ。
 で、その結果……」

高遠はなのはの肩に手を置いた。

「合格です。大変失礼しました。今度こそ貴女を心から歓迎しますよ、なのは君」

なのはは俯いたままだ。

「はっはっは! 遙一もまだまだでゲソ! なのはが悪いイカのわけ無いでゲソ!」
「フフフ。まったく、今にして思えば愚かな懸念でした」

なのはの隣に座って、胸を張り豪快に笑うイカ娘は
なのはを露ほども疑っていない様子だった。

「分かりました。そういう事情でしたか。……じゃあ、偵察で得た情報を報告します」
「ええ、よろしくお願いします」







月、高遠、イカ娘、なのはの4人は現在同じテーブルを囲むように座っていた。
高遠と話しながら、月はなのはの様子を見る。
自分が偵察に行く前とは、明らかに気配が違う。

(『少しだけテストした』? “テスト”以上のこと、なのはちゃんに仕掛けたのは明らかだ。
 ……まあ良い。これで高遠の尻尾は掴むことができた)

月は高遠を最初から信用に足る人物だとは考えては居なかったが
ワカメ海人……慎二に対する拷問の時から、より明確な不審感を抱いていた。
高遠は単純に殺し合いに乗っているわけではないだろう。
しかし高遠には何か人の精神に働きかける、しかも不穏な方向に向かわせる志向があるのではないかと考えていた。
そしてそのことを確認するため、故意になのはと2人きりになるよう仕向けたのだ。
狙い通り、月は高遠の本性を確認できた。

慎二に対する拷問自体は、必要なことかも知れない。
だからそれを行うこと自体に異論は無い。
しかしイカ娘やなのはの純粋さを汚そうとするのなら
それは新世界という理想を志す月と、真っ向から対立する志向だ。
そして同時に、そんな人物は殺し合いを生き残るさいの不穏分子でもある。

(『我々は自分と、仲間の安全を守る義務がある』とか言っていたか、高遠? まったくその通りだよ。
 そしてそのためには、獅子身中の毒虫は排除するのは当然だな)

月が高遠に向ける視線には、確かな敵意がこもっていた。







高遠は月の話を聞いて、それを分析していた。
テレビ局には、人の立ち寄った形跡があったそうだ。
ならば中に人が居ると想定して、テレビ局に入るべきだろう。
特別な準備はできないが、予めその蓋然性が高いと知っているのは大きい。
偵察の意味もあったということだ。
もっとも、月の目的はそれだけでは無かったであろうが。

(早い段階から感づかれていたと見るべきでしょうね…………私の本性に)

それならばそれで構わない。
誰に感づかれてどれほどの邪魔が存在しようが、自分は自分であるしかないのだ。
人の悪意を嗅ぎ付け、増幅し、殺人へと促す
――――地獄の傀儡師であることしか。

たしかに地獄の傀儡師の眼鏡にかなう者は少ない。
間桐慎二はその選別からもれた。
Vはその悪意の高を計る間も与えられなかった。
高遠の求めに応じられるほど悪意を抱えながら
高遠の人形になれるほど都合の良い人間などほとんど居ない。

しかし殺人者として産まれついた者も居なければ
絶対に悪意を持たない人間も居ないのだ。
これまで高遠の人形になった者も、何らかの事情があればこそ殺人という方法を選んだのだ。
ならば作り出すこともできるはずだ。
充分な悪意を持ち、高遠の良いように操れる殺人人形を。

だがそれも手近な人間から、吟味して選ぶ必要がある。
月はその内に闇を抱えている節はあるが、知略に長けすぎている。
高遠の操り人形とするのは至難。
イカ娘は純粋だが、殺し合いの状況にも危機感が薄く
悪意を植えつけるのには、時間が掛かりそうだ。
しかし、なのはならどうか。
彼女は、たしかに人を殺すことを良しとする人間ではない。
だが、それ以上に恐怖と言う闇を抱え
そして魔法と言う、強大な力を持っている。
本人の話と些細な挙動から伺えるに、戦闘に関しても類稀な才能を持っていることも見て取れた。
しかしその精神は、普通の小学生からかけ離れたものでは無い。
試しに少し揺さぶりを掛けただけで、あっさり動揺を見せた。

なのは小学生としては、強い意志を持っているだろう。
だがその思考や判断には、一貫性や論理性が薄いのだ。
自分の倫理や行動模範を論理的に反省したような形跡は欠片も見受けられない。
あるのはただ感情に基づいた恣意的な判断。
そこにあるのは“子供じみた正義”ですらない、“子供の正義感”なのだ。
それを正義と呼ぶなど、かの名探偵に失礼なほどだ。

彼女の心から闇を暴き、引きずり出し、そして壊してしまえば
あるいはかつてないほど面白い殺人人形、いや殺戮人形が産まれるかもしれない。

高遠はなのはに向ける視線には、深い闇があった。







なのはは月が帰って来て以来、俯いて黙ったままだ。
その眼に何を映しているのか
その心は何を思っているのか
外面からは推し量ることはできない。
強大な力を秘めた魔法少女は、ただ沈黙を守っている。

余談となるが、なのははある事実の誤認をしていた。
なのはの使うミッドチルダ式の魔法は、肉体的な損傷は伴わず
魔力ダメージのみを敵に与える、非殺傷設定が可能なのだ。
当然なのははこの実験の中でも、その非殺傷設定で魔法を行使するつもりだった。
しかし主催者は、それがどういった意図に基づくものかは不明だが
ある能力制限を、なのはに課していた。
それは『非殺傷設定の不可』。
なのはの扱う魔法はいかなる方法でも、非殺傷設定が掛けられない。
すなわち、なのはの放つほとんどの魔法は
容易に人の身を引き裂き、肉を焼き、骨を砕き、内臓を潰す
強大な兵器としかなり得ないのだ。
しかしなのはは、その事実を知らない。
ストレージデバイスであるS2Uもまた、ただ沈黙を守っている。

そしてもし、なのはが自分の愛用していたデバイス『レイジングハート』を入手したら
あるいはその時こそ、この実験の中でもっとも恐るべき怪物の産まれる瞬間かも知れない。

なのはの友、アリサ・バニングスの死が告げられる放送の時は近い。


【H-4/ファーストフード店内 早朝】

【イカ娘@侵略!イカ娘】
 [属性]:その他(Isi)
 [状態]:健康
 [装備]:風紀委員会特服『白虎』Sサイズ@めだかボックス
 [道具]:基本支給品一式、海の家グルメセット@侵略!イカ娘
 [思考・状況]
  1:とりあえず月と高遠に付いていく
  2:栄子、タケルがなにをしているのか気になる

【夜神月@DEATH NOTE】
 [属性]:悪(set)
 [状態]:健康
 [装備]:ニューナンブM60(残弾1/5、予備弾数30)
 [道具]:基本支給品一式、不明支給品0~1
 [思考・状況]
  1:イカ娘を利用した、スタンス判別方の模索と情報収集のための集団の結成
  2:「悪意」を持った者が取る行動とは……?
  3:自身の関係者との接触
  4:高遠に警戒
  5:イカ娘の純粋さを気に入っています
 [備考]
 ※参戦時期は第一部。Lと共にキラ対策本部で活動している間。

【高町なのは@魔法少女リリカルなのはシリーズ】
 [属性]:正義(Hor)
 [状態]:健康
 [装備]:聖祥大附属小学校制服、S2U@魔法少女リリカルなのはシリーズ、核金(シリアルナンバーLXI)@武装錬金
 [道具]:基本支給品一式
 [思考・状況]
 基本行動方針:アリサ、すずかとの合流と、この場所からの脱出
1:?????。
【備考】
※「魔法少女リリカルなのはA's」、あるいはその前後の時期からの参戦。
※魔法の非殺傷設定はできません。
※核金@武装錬金は武藤カズキと蝶野攻爵しか武装錬金にできません。

【高遠遙一@金田一少年の事件簿】
 [属性]:悪(set)
 [状態]:健康
 [装備]:カリバーン@Fate/stay night
 [道具]:基本支給品一式、不明支給品0~1、サンジェルマンの紙袋@ジョジョの奇妙な冒険
 [思考・状況] 今まで通りの「高遠遥一」として、芸術犯罪を行う。
  1:なのはを人形に仕立てる。
  2:「人形」を作るのであれば人選、状況は慎重に選ぶ。
  3:Vに多大な興味



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淫妖烏 賊(前編) イカ娘 禁忌惹厄アフター・ラジオ(前編)
夜神月
高遠遙一
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