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悲秘喜奇交交イン・ホスピタル  ◆GOn9rNo1ts



名探偵の孫である名探偵。
暗き望みを中に秘める腹黒神父。
不安がりながらも非日常に微笑む一般人。
素敵で無敵(笑)な情報屋。
そして、指名手配された医者。

病院に集う男達は、各々の心に様々なものを抱いていた。

全ての謎をさらけ出し、この巫山戯た催しを止めようとする義心。
ただひたすら他人の苦痛を求め、悲劇を求めようとする快楽。
日常からの脱却を願い、非日常のために足掻き続ける、終わり無き夢。
天国の実在を証明せんと、戦争を引き起こそうとする野望。
そして、己が生かしてしまった「かいぶつ」を殺そうとする大志。

思想も違い立場も違い、能力もピンからキリまで。
そんな不確定原子達が出会った結果、一体如何なる化学反応が引き起こされるのだろうか?
混ざり合うのか、上や下、左や右に分かれるのか、それとも……爆発するのか。
解答の一部が、ここにある。



それでは、物語を始めよう。



◇ ◇ ◇



『名探偵、憂う』



「ふう……」

待合室のソファーに寝転び、溜息を一つ。
金田一一(はじめ)は、先程の情報交換を思い返し、一人で物思いに耽っていた。

彼がママチャリをひいこら漕ぎつつ病院に辿り着く頃には、既に午前5時を回るところだった。
誰もいない町中は、基本的に光源に乏しい。
奇襲を恐れランプをつけずに病院を目指したは良いものの、1エリア分離れただけの病院に至るまでどれほどの苦労があったか。
白ばみ始めた空によって、漸くお目当ての病院を見つけることが出来たというわけだ。
しかし、今の金田一の疲労は、それだけによるものではない。

「状況を、整理しないとな」

まず、彼より先に病院にいた天馬賢三、折原臨也。殺し合いには、乗っていない。
二人は手を組み、これから信頼の置ける仲間を捜しに救急車で外に出発する予定だったらしい。
金田一が病院に辿り着いたのは正に間一髪だったということだ。

『俺をすぐに信頼できないのは分かる、だけど、どうか頼む。俺の話を聞いてくれ!』

ママチャリのサドルにまたがったまま、息を切らし必死にそう説得する姿に憐憫を覚えたのか、彼らは金田一との接触を良しとしてくれた。
知り合いでない者を信用するか否か、殺し合いという極限状況の中では人により意見が分かれるだろう。
もしも相手が殺し合いに乗っていたら。隙を突き、隠し持った武器で皆殺しにされる可能性だってある。
零時スタートで五時になったのに未だ一人でいる人間ならば尚更、警戒すべきだろう。
そういった意味で、彼らが自分を受け入れてくれて助かった、と金田一は何度も頭を下げた。

そんな時、更に二人の参加者が病院にやって来た。
言峰綺礼、竜ヶ峰帝人。殺し合いには、乗っていない。
幸い、帝人と臨也は知り合いだったらしく、すんなりと三人と二人は五人になった。

さて、ここまでは良い。
問題は、ここからだ。

『少し、俺の話……いや、推理を聞いてくれませんか』

これから協力関係を築いていく仲だ、己の推理を聞いて貰い、判断を仰ぐのも良いだろう。
金田一は、己の考えが絶対的に正しいと信じられるほど自信家でもなければ、傲慢でもない。
他の人間の意見も聞きつつ、有用なものは取り入れて推理を展開しなければ。
まずは、事情聴取と言う名の情報交換。お互いの目的、これまで何をしていたかなどを簡単に説明し合った。
幸い、今のところ危険な人物に遭遇した者はいないようで、金田一はほっと胸を撫で下ろす。
その事実がイコール今は安全だということには結びつかないが、やはり危険人物の存在は神経を磨り減らす。
少しだけの安寧を得ながら、金田一は次の段階に移行する。
即ち、ここに呼ばれている彼らの関係者についてだ。

今までの推理はあくまでも『金田一一』の周辺の人物のみを対象とした場合だ。
もしも残りの三人の知り合いが、悉くHorに位置するような人格者ばかりだとしたら?
Setに位置するような人間が高遠以外に存在しないとしたら?
勿論、全ての参加者の情報を得て判断すべきだろうが、まずは目先の情報でも掻き集め、推理を補強、若しくは修正すべきだと考えたのだ。

折原臨也と竜ヶ峰帝人は、他に知り合いがいないと断言した。
もし仮に彼らが嘘をついたとしても、病院に辿り着いた順番からして事前に口裏を合わせる時間など無かったはず。
折原臨也は『やり手』な人間に思えたが、竜ヶ峰帝人は、本当に何処にでもいる学生に見える。
それとなく観察はしてみたが、挙動不審なところなど一切無い。
事実を淡々と言っているだけで、後ろめたいことなどこれっぽちもなさそうだ。

次に、言峰綺礼。
ここで、金田一は壁にぶち当たる。

『私の関係者の話をする前に、少し別件で話したいことがあるのだが良いかね。
彼らと私の関係を語る上で、どうしても必要なことなのでな』

魔術師、教会、聖杯戦争、マスター、サーヴァント、監視役。
俄には、信じがたい。マジックではないマジカルの存在など、金田一が知るはずもない。
しかし、言峰綺礼はすらすらとそれらのトンデモ設定を述べ続けた。
多少気になることがあって突っ込んでも難なく補足説明を加えたいと、単なる作り話にしては手が込みすぎている。

「……認めろっていうのかよ、そんな物の存在を」

確かに、突然拉致されたり、瞬時に会場に移されたりと、今回の事件は、初めから些か科学では説明しづらいところがあった。
催眠術をかけられただとかで、説明のしようはある。そう自分に言い聞かせてはいた。
それでは、自分たち以外が存在しないこの町については?
マップを見るにかなり大きいこの会場を、主催者はどうやって用意することが出来たのか。
魔法。魔術。確かに、そういう非現実的な存在を認めれば、こういう超常的な出来事にも納得出来る。
しかしそれは、果たして金田一の力でこの事件を解決できるのかどうか、と言う底知れぬ不安を同時にもたらした。
自分の知らない技術がある。それだけで、考えなければならぬ事は膨れあがる。
もしも主催者が魔法で会場全体を見張っていたら?首輪解除など出来るはずもない。
もしも主催者が一言呪文を唱えるだけで殺人を冒せるのならば?主催に刃向かうなど夢のまた夢だ。

『勿論、魔術などと言っても無制限に使える物ではない』

言峰はそう言っていたが、それでも、得体のしれない主催者が更に強大な敵に見える。
無論、諦めなどしない。絶対に事件を解決する、その意志は固きままだ。
それでも、指針はブレる。Setの人間がそんな技術を持っている可能性があるなら、なおさらだ。
金田一は今まで、高遠のような人物への対処のみを念頭に置いて対策を考えていた。
人が集まれば情報も集まる。今回のような場でそれらを擦り合わせ、Setの人間を特定し、上手く拘束すればそれで済む物だとばかり考えていた。
しかし、魔術などの存在はその前提条件を容易に覆す。
そのような未知の技術を使う彼ら――総称して『魔法使い』としよう――を取り押さえることが出来るのか。
また、後述のサーヴァントのような肉体的に人を超えた人――仮に『超人』と呼ぶ――に、どうやって対処すればよいのか。
彼らを止める術は、存在するのか。手錠など彼らに効くのだろうか。
どうしようもなくなったならば、その時は…………。

「殺すなんて……駄目に決まってる。そんなことをしたら俺はじっちゃんに顔向けできねえ」

当然、そのような危険人物も何らかの手段できちんと『殺せる』ように出来ているのだろう。
そうでなければ、実験の意味がない。ここまで用意周到に事を進めてきた主催者がバランスのことを考えないなどとは考えづらい。
だが、そうだからといって敵対者を殺すのは、それこそ主催者の思う壺だ。
金田一は殺させないし、殺さない。そのスタンスを貫いてこそ、本当の勝利があると信じている。
そのために何とかして、『魔法使い』や『超人』を無力化できる方法を探さなければ。

さて、ここで少し頭の小休止。言峰の情報から、変わり風な話についてもちょっとだけ考えてみよう。

『聖杯戦争』

言峰の話の中でも中核に存在する、魔術師同士の戦い。
七組の中、最後まで生き残ったマスターとサーヴァントが、何でも望みを叶えられるという。
中国に伝わる蠱術。虫を食い合わせ、最後に残った虫を呪いに使用する、という儀式の近似系だと金田一は思った。
そこだけ聞くと、今回の、『箱の中での殺し合い』のケースに似ている、と言えなくもない。

だが。

『これが聖杯戦争に準ずるものであるという可能性は低いだろうな』

魔術という不可思議なの存在を知ったとはいえ、言峰が言うとおり金田一もその可能性は無いだろうと考えた。
聖杯戦争や蠱術とは違い、今回は条件を満たせば複数の参加者の生還が認められている。
何人死に、何人生きるか分からない。このルールでは、肝心の生け贄という要素が不確定すぎて安定しない。
また、それぞれのグループもSet以外は殺し合いに消極的でも生き残れるようなルールであり、バンバン殺せ的な意図はあまり感じられない。

やはり、主催者の言うとおりこれは何らかの『実験』なのだろう。
グループ分けにも何らかの意味がある。わざわざHorやらIsiやら使うのはヒントのつもりだろうか。
現段階での考察がどこまで正しいかは分からないが、その線で推理を進めていくことに間違いはなさそうだ。

「……っとと、そろそろ話を戻すか」

回り回って、言峰綺礼の知り合いの話に戻ろう。
言峰綺礼曰く、知り合いは三人。いずれも聖杯戦争において関わった者達だという。
衛宮士郎。最優のサーヴァント、セイバーのマスターであり、正義感溢れる好青年らしい。
言峰綺礼は士郎がマスターになった晩以来の接触はないそうだが、少なくとも殺し合いをするような人間ではないと、言峰は語った。
次に、アーチャー。その名の通り弓兵のサーヴァントであり、言峰の弟弟子、遠阪凜をマスターとしている。
言峰はアーチャーと直接の接触はないため、殺し合いに乗るかどうかは分からない。
ただ、もしも乗ったとしたら、ここにいる人間を一分で全員細切れに出来るだろう、と言峰は述べた。
最後に、間桐慎二。彼も衛宮士郎と同じく聖杯戦争のマスターだったらしい。

「こいつが、Set候補」

言峰の話によると、慎二は魔力を得るために彼の通う学校中の生徒を犠牲にしようとしていたらしい。
間違いなく、悪。そう断言しても良い。
しかし、本人は魔術も使えぬ普通の人間に過ぎないためそこまで危険度はない、と言峰は付け加えた。
『魔法使い』や『超人』ではないならば、事件解決までの拘束は出来なくもなさそうだ。

さて、最後に天馬賢三の知り合いについてだが……。

「かいぶつ、か」

やはり、目をひくのはヨハン・リーベルト。『なまえのないかいぶつ』についてだろう。
彼も『魔法使い』や『超人』とは違うらしいが、それでも間桐慎二との危険度とはレベルが違う。
高遠遙一、あの地獄の傀儡師と同タイプ、一の推理が当たっていれば間違いなくSet側の人間だ。
過去に何十人以上もの人間を殺害し、それらの罪を他人に擦り付けながら生きていく外道。
彼を崇拝する協力者も多くいるらしく、正しく悪のカリスマと呼べるような人間らしい。

「早く見つけてとっ捕まえないと、こっちが不利になる一方だな……」

ヨハンも、恐らく高遠も、馬鹿正直に殺人を犯さず仮初めの仲間を得ているに違いない。
このような場では知り合い、仲間の数が多いほど彼らにとっては好都合だ。
弾避け、もしかすると既に何人かを自由自在に使える手駒にしている可能性も、無いとは言えない。
殺し合いという環境で、人は容易に倫理観をなくす。高遠やヨハンにとっては絶好のフィールドだろう。

生憎、この場に呼ばれた他の知り合いは殺し合いに乗るような者ではないらしく、金田一は胸を撫で下ろした。
この場で出会った杳馬という紳士風の男も、天馬と別口で殺し合いを打破するつもりらしい。
いずれは彼、そして息子の天馬(医者にあらず)とも合流し、情報交換をしたいものだ。   



問題は、天馬自身の目的についてなのだが…………。



「ひとまず、これで全員か」


金田一、折原と竜ヶ峰、言峰、そして天馬。
これまでに出てきた登場人物は彼ら本人と金田一の知り合いを含め17人。
そのうちSet候補は言峰のよく知らぬアーチャーも含め4人。大体4分の一がSetということになる。

「バランス的に妥当な線……なのか?」

Isiに無力な人間も含まれているとするなら、恐らくバランスはHor:Isi:Set=1:2:1ほどだろう。
どちらかが極端に多いだとか少ないだとかはあり得ない……と、思いたい。
勿論、断言は出来ない。
アーチャーに関しては情報が少なすぎるし、まだ全体の4分の1しか情報は集まっていないのだ。
今後も多くの参加者と接触し、情報を集めていくべきだろう。


しかし。


「考えたくはない、だけど」


軽い自己紹介、経歴を聞いてみると、ただの学生である竜ヶ峰帝人と情報屋という仕事をしている折原臨也は守られるべきIsi。
社会の影に潜み化け物退治(はじめは冗談かと思ったが、事実らしい)などを行ってきた言峰綺礼はHor。
ヨハンを命がけで追う天馬賢三は、HorもしくはIsi側の人間であると考えて良いだろう。

しかし、今までの情報は、全て『彼らが嘘をついていない場合』に依るものだ。
折原と帝人は、もしかしたら知り合い同士の凄腕の詐欺師で、打ち合わせもせずに金田一の目を欺いたのかもしれない。
実は、言峰本人が学校で儀式を執り行った本人で、その罪を間桐慎二に押しつけているのかもしれない。
天馬の話が全て妄言で、彼自身が恐るべき殺人鬼なのかもしれない。
金田一は今まで、数々の事件で意外な犯人達を暴き出してきた。
その例に当てはめるのならば、無害な彼らが実は悪人だったという可能性は、十分すぎるほどあり得るのだ。
どんな人物だろうと、犯人である可能性はある。『あの人は良い人そうだから犯人候補から外そう』などと言えるわけもない。
もしも彼らのうちの一人がSet、犯人側の人間だったならば、金田一は何にも気付けないまま『被害者』になる可能性だってある。
その事実が、金田一の心に凍ったナイフのように突き刺さる。

何か事件が起こった訳ではない。誰一人として死んでいないし、殺してもいない。
だが、金田一の推理が正しければ、間違いなく悪人は参加者の中にいる。
Setはどのように動き、どのように考え……どのように潜んでいるのかさえ、はっきりと分からないのだ。

「……くそ!」

今、金田一は矛盾に取り込まれている。
『仲間を守るため仲間を疑わなければいけない』という、どうしようもない矛盾に。
今は誰もが免許証も取り上げられ、警察の助けも期待できず、身元確認さえままならない。
そもそも、彼らが本当に本名を名乗っているかさえ分からない。そこから疑う必要は果たしてあるのかも、分からない。
情報。推理の根底にあるべきものが、圧倒的に不足している。
四人の中の一人が指名手配中の凶悪犯であったとしても、金田一にそれを知る術は一切無いのだ。
全てが全て、疑い放題。絶対に信用できることなど、己や己の知り合いくらいだろう。

頭が良いから、推理する。
推理した結果、相応数の悪人がいるという結論に辿り着く。
すると、仲間が悪人かどうか疑わなければ行けなくなる。

「はあ……」

名探偵は、憂いを抱えたままソファーを立った。
疑うべき仲間達の元へ、戻るために。



◇ ◇ ◇



『大人と子供、群れる』



「何をやってるんだろう、あの人は……」
「どうした、帝人君?」
「いえ、臨也さんは相変わらず臨也さんだなぁと思って、安心しただけですよ」
「これは……やけに、なんというか、女の子らしいが……これを、本当にあの折原が?」
「ネカマなんです、あの人」
「ネカマ……?」

病院の待合室。
軽い話し合いを終え、竜ヶ峰帝人と天馬賢三は休息をとっていた。
ブラックなコーヒーを口に含み、安らぎの一時。
そんな天馬を、帝人は何か言いたそうにちらちらと横目で伺う。

「どうしたかな、帝人君。私の顔に何か……?」
「あ、すいません。そう言うんじゃなくて、さっきのお話が気になって」
「ああ、その話か……」

天馬賢三の話。
ヨハン・リーベルトを中心とした彼と知り合い達との関係は、言峰の話とは別の意味で奇想天外なものだった。
子供の手によって引き起こされた連続殺人。ヨハン・リーベルトの恐ろしさ。
かいぶつを助けてしまった天馬。指名手配され、警察から逃げ回りながらのヨハン追跡劇。
天馬を追う凄腕の警部、ハインリッヒ・ルンゲとの奇妙な関係。
ヨハンの妹、ニナ・フォルトナー。ヨハンについての鍵を握る少女。
ヴォルフガング・グリマー。天馬を助けてくれた謎多き人物。

ここに呼ばれた参加者に関することだけでも、耳を疑うしかない。
しかも、言峰とは違い天馬の話は「絶対にあり得ないとは言えない」話だ。
限りなく日常とは遠く、それでいて現実的と言う二面性を持ったストーリー。
有り体に言えば、良くできたサスペンスドラマのような天馬の話に、帝人は強く関心を持った。
好奇心という名の輝きを瞳に抱く少年に、天馬は語る。

「正直、今でも迷っているんだ」
「何を、ですか?」
「私が君たちと共に行動しても良いか、ということにだよ」

目を丸くする帝人に、天馬は言葉を続ける。
眉に皺を寄せ目を細くする彼の顔に浮かぶのは、苦悩。

「君も薄々分かってはいるかもしれないが、私はヨハンを追う上で多くの被害者を見てきた。
口封じのため、資金作りのため、或いは理由も分からず、多くの人間がヨハンの犠牲になった」
帝人は、何も言わない。言えない。
ドラマではなく現実の人間が、己のせいで積み重なる「死」というものに苦悩している。
その事実に口出しできるほど、彼は出しゃばりでもなければ、体の良い慰めをするセンスもない。

「私はこの場でもヨハンを追う。彼を殺す。それが私に課せられた使命だ」

しかし、と。

「君からすれば、私は主催者の言うとおりに殺人を犯そうとする愚か者に見えるだろう。
誰が好きこのんでそんな奴と行動したいと思う?」
「そっ、そんなことは……」
「それに、今言ったようにヨハンは残虐で容赦がない。己の障害は眉一つ動かさず殺し尽くす。
それは帝人君、君だって例外ではない。やつはハエを殺すように、君を殺してしまうかもしれない」
「で、でも…………」
「君は、そんな奴に会いたいと思うか?身の危険を顧みず危険人物を追って殺しに行きたいと思うか?」
「…………」
「私と共に行動すると言うことは、そういうことだ。君たちまで私の自己満足に付き合うことはない」

実際、天馬の語った目的に、金田一は眉を潜め『そんなことは許されない』と発言した。
金田一も天馬もいざこざを起こすのは嫌ったため大事にはならなかったが、それでも二人の間には確かな溝がある。

『君たちに協力しない、という訳ではない。金田一君や言峰さんの知り合いを捜すということにも異論はない。
だが、私の目的はヨハンを殺すことだ。それを取り上げられるのならば、君たちと共にはいられない』

金田一はその一言に酷く難しい顔をしたが、天馬もその一点だけは譲れない。
今、この会場の何処かにヨハンがいる。手がかりどころか、本人がいる。
今までの捜索範囲に比べれば屁でもない狭さのフィールドに、確かに『なまえのないかいぶつ』は存在する。
それを知っただけで、自然と腕に力が籠もり足に活が入る。

「本当のことを言えば、私は今すぐにでも奴を探しに行きたい。
我が儘だと言われるかもしれない。自分勝手もいい加減にしろと罵倒されても仕方がない。
だが、それでも私は、このチャンスを逃す気はないんだ」

一歩間違えれば、執拗な殺人鬼だと言われてもおかしくない。実際、天馬からは執念というものさえ感じ取れる。
天馬賢三はそのことを自覚しつつも、事実を隠すことはしなかった。
嘘がばれると後々厄介だという打算も、確かに有った。
彼の知り合いとの関係を語る上で、グリマー以外の人間とは確実にヨハンが間に入る。
それを隠し通せば、知り合いと合流した際に間違いなくボロが出てしまう。
一度失った信頼は、取り戻すことが如何に困難か。天馬はそれを嫌なほど知っている。
それに、事情を知らぬ者からすれば、天馬がヨハンを殺そうとする図を見れば間違いなく天馬が金田一の言うSetグループだと思うだろう。
殺人犯として追われるという経験上、この閉鎖的な空間で味方を減らすことは避けたい。

しかし、そんな考え以上に、彼は他人に嘘をつきたくない善人だったのだ。
天馬賢三は世渡りも上手くできないほど、どうしようもなく嘘をつくのが下手で。
出世や金よりも、今助けられる命を救うことだけを考える不器用の塊で。
だからこそ患者から、仲間から、信頼される男だった。

「私は、ヨハンを殺す。私が、殺さなければいけないんだ」

それを聞く帝人にも、天馬の想いは、覚悟は伝わった。
こうやって二人きりで話すと、天馬の気持ちは痛いほど伝播する。
罪の意識に苛まれながら、己の不始末を命がけで片付けようと奮闘する男の姿を見て。

「僕は……」

帝人は、五人の中で殺し合いや死とは最もほど遠い位置に存在する少年は。

「貴方が間違っているとは、思えません」


はっきりと、殺人を認可したのだった。


「僕も、人を傷つけたことがあります」

訥々と、帝人は己の過去、そして『今』を語り出す。

「僕の身を守るため」

愛に溺れた女性を『集会』で追い詰めた。

「組織を立て直すため」

青葉とその仲間を利用し、ダラーズに不要な人間を『粛正』している。

「友達を助けるため」

人懐っこい笑顔の少年と、気弱そうに微笑む少女の姿を脳裏に思い浮かべ。

「僕も、自分の手を汚しています」

殺してなどいないけれど。間違いなく、己の意志で他者を傷つけ人生を転落させている。
必要なことだと割り切っている。己がやらなければ行けないことだと、腹も括っている。
だから、天馬賢三の気持ちが、痛いほど分かる。分かってしまう。
例え間違っているようでも、強い意志そのものを誤りだと認めるのは、許されない。
同じような境遇の身として、その覚悟を尊重したいと竜ヶ峰帝人は思った。

そして。

「この場でも……僕はそうする覚悟がある」

四人と話をして、竜ヶ峰帝人は覚悟を決めていた。
自分と同じくらいの歳にも関わらず、怯むことなく怯えることなく正面から実験に向き合う金田一一に、感化された部分もあった。
知り合いである折原臨也から『覚悟を決めろ』との手厳しいエールも、貰った。
言峰綺礼は相変わらず意味ありげな顔をしてこちらを覗き込んでいたが、構うものか。
天馬賢三の強い『覚悟』に同調するように、竜ヶ峰帝人も『覚悟を決める』
危険な人物が確かにいるこの場で、逃げることなど許されない。
そんな者達と戦うことなど、化け物のような相手に立ち向かうことなど、夢物語だと分かってはいる。
それでも。
ただ流されるのは、嫌だから。この場で出会った強い彼らに追いつきたいと、帝人は思う。

そして。

「この場でも……僕はそうする覚悟がある」

四人と話をして、竜ヶ峰帝人は覚悟を決めていた。
自分と同じくらいの歳にも関わらず、怯むことなく怯えることなく正面から実験に向き合う金田一一に、感化された部分もあった。
知り合いである折原臨也から『覚悟を決めろ』との手厳しいエールも、貰った。
言峰綺礼は相変わらず意味ありげな顔をしてこちらを覗き込んでいたが、構うものか。
天馬賢三の強い『覚悟』に同調するように、竜ヶ峰帝人も『覚悟を決める』
危険な人物が確かにいるこの場で、逃げることなど許されない。
そんな者達と戦うことなど、化け物のような相手に立ち向かうことなど、夢物語だと分かってはいる。
それでも。
ただ流されるのは、嫌だから。この場で出会った強い彼らに追いつきたいと、帝人は思う。

「君は……いや、私のような人間から言えることなど、無いだろうな」

天馬賢三は大人として、そんな竜ヶ峰帝人を危ういと感じ取った。
未来有る少年が手を出してはいけない領域にまで帝人は至っていると、直感した。
出来れば、年相応に学業に励み、友人と楽しく過ごす生活を送って欲しい。心からそう思う。
だが、己を肯定してくれた少年を偉そうに諭すことなど、天馬賢三には出来そうになかった。
天馬の優しさが、気弱そうな少年の見せる確かな覚悟を潰すことを恐れていた。

「ありがとう、帝人君」

只そう答え、天馬賢三は沈黙する。
竜ヶ峰帝人も、何を言うこともなく、再びパソコンを弄り出す。
素っ気ない会話の途切れは、何かを分かり合った者同士の信頼を静かに表していた。

子供と大人は互いに寄り添いながら、仲間として、共犯者として、群れる。
一人きりの孤独を和らげるように。心の奥底で望んでいる『理解』を得るために。
心地良い沈黙の中、仲間達の帰還を二人は待つ。


そして。



竜ヶ峰帝人は、ヨハン・リーベルトという『非日常』の脅威に身を震わせ――笑っていた。



◇ ◇ ◇



『悪者達、連れる』



「多少主観は入ってる、と最後に言っておくけれど」
「…………」
「……以上が、竜ヶ峰帝人について俺が知る全ての情報だ」
「なるほど、確かに情報屋を自称するだけは有る。個人情報など何処噴く風、と言ったところか」
「褒めないでよ、照れちゃうじゃない」
「あの微笑み、その中に潜む闇を垣間見ることが私では精一杯だったものでな。余計な手間をかけずに済んだ。礼を言おう」
「それはそれはどーも。それでさ」
「分かっている。それ相応の代価……この場合は情報を払おう」
「話が早くて助かるよ、言峰さん」
「最も、私が語れることなどそう多くはないのだがな」

病院内、男子トイレ。
二人の男が、所謂連れションをしていた。

「へえ、サーヴァントってのはどいつもこいつも化け物なんだねえ」
「アーチャーに限らず、サーヴァントは規格外の力を持ち得ている。この場にセイバーが呼ばれなかったことは僥倖だ」
「俺は会ってみたかった気もするけどね、昔の英雄にもさ」
「ふっ、あの頭の良い少年の話を聞いてなお『敵対者』の増加を望むか、折原」
「酷いなあ、俺が高遠とか言う連続殺人犯と同じグループだって思ってるのかい」
「貴様も、私をそうだと思って話を持ちかけたのだろうよ。お互い様だ」

勿論、折原臨也と言峰綺礼の連れションが単なる連れションに終わるはずはなく。

「貴様は、これからどうするつもりだ。金田一一を……」
「まさかぁ。殺すのは最後の手段だよ。俺だって帝人君の信頼を失うような危険は冒したくないしねえ」
「私も余計な殺生は望むところではない。これでも神に仕える身として、な」
「死んじゃったら悲しむ姿とかが見れないからだろ、全く性格の悪い……」
「私が何を望むか予測した上で、知り合いの情報を売り飛ばす貴様には負ける」
「あっ、言っとくけど帝人君は殺しちゃ駄目だからね、俺がこの後に使わなきゃいけないんだし」
「殺し合いの場で殺すな、か。ふむ、まあ努力はしよう。私も、あの少年の行き着く先が見たいものでな」
「行き着いた先が断崖絶壁だったらどうするつもり?」
「その時は……その時だ。そうならないことを祈っている」
「そういうのを望んでるくせに、よく言うよあんたは」

世間話をするように。
二人のSetは愉し気に、秘密の会話を繰り広げる。

「さあて、流石に時間をとりすぎたかな。そろそろ皆の所に戻ろうか」
「最後に一つ聞いておこう。折原……貴様はこの殺し合いで何を望む?」
「俺が望むのは『生き残る』ことだけだよ、それだけ。生きていればそれで良い」
「そのためには他者を犠牲にすることもやむなし、か」
「そうそう、言峰さんも一緒に頑張って生き残ろうよ、Horの人達を皆殺しにしてでもさ」
「ふっ、殺し合いを加速させるためそうやって他の人間にも火をつけるか」
「まあ、戦争の予行練習をしたいってのも本音ではあるんだけどねぇ。あくまでもばれないように、ばれないように……ね」
「戦いを望みながら己は傍観者足らんとする、そう上手くいくとは思えんがな」
「あんたが協力してくれれば上手くいく可能性はぐんと高まる。信頼してるんだよ、言峰綺礼?」
「この私を協力者として扱うとはな……足下を掬われても化けて出るのは勘弁、といったところだ」

絡み合う視線。互いを突き刺すように睨み合った後。

「……あははははっ」
「……くくくくく」
「「断言しよう」」
「俺はあんたの願いを叶えられる」
「私は貴様の望みを叶えられる」

苦しみを願う神父。
戦いを望む情報屋。
似たもの通しの黒尽くめは、手を組んだ。


言峰綺礼は上機嫌でスキップする折原臨也を見て、何故か不快感を感じなかった。
不思議に思ったが、眉を潜めて少し考えた後、言峰は気付く。

(この男の喜びは、他者への苦しみに塗り替えられる)

なんとも分かりやすい『苦しみ』の配達人だ。同類ながら反吐が出る。
彼と自分はマッチポンプのような関係を持つことが出来るだろう。そう考えるとつい笑いが零れてしまう。
そして同時に、彼を観察して気付く。折原臨也は純粋たる悪意の塊であると。
悪を知り、善を知り、それでいて、己のためだけに悪を為す。
そこに反省など微塵もない。矯正不可能な歪みを抱え、それでも折原は楽しそうに生きている。
膨れあがる好奇心と己の保身だけが、彼の生きていく原動力となっているのだ。
他者など知らぬ。存ぜぬ。考えぬ。言峰さえも、折原は目的のために捨て駒にするだろう。
正しく、究極のエゴイスト。絶対的自己中心主義者。酷く心地良いフレーズではないか。
何とも切符の良い『破綻者』であると、言峰綺礼は折原臨也に好意を抱く。
勿論、己の障害となる場合は容赦なく排除するが。


折原臨也は黒幕面をする言峰を見て、何故か対抗心を燃やさなかった。
どうしたことだろうと頭を捻って見ると、何となくその理由を発見した。

(彼は、俺と立ち位置が違いすぎる)

言峰と臨也は、言うならば制作者と使用者のような関係だ。
言峰は『作品』を創り出すことで満足し、臨也はそれを使うことで己の目的を果たそうとする。
言峰は他者の苦しみを糧として、臨也は他者の苦しみを利用する。
臨也にとって必要なのは苦しみそのものではなく、苦しんだ結果なのだ。
彼が求めるモノは人間が様々な経過の果てにどんなことをするのか、である。感情そのものではない。
苦しみも悲しみも、彼の心を満たすものではない。それは飽くまでも行為の付随物にすぎないからだ。
似通うようで、言峰と臨也は違う。芯の部分でどうしようもなく、違う。
必要なモノは一緒でも、欲しいモノは違う。奪い合うことなく、共存して生きていける。
だから臨也は、言峰を素晴らしい協力者だと思った。彼の存在そのものに、深く感謝した。
だからといって、言峰を守ったりするつもりなど毛頭無かったが。邪魔になったら切り捨てるだけだ。

「良いパートナーになれるんじゃないかな、俺たち」
「これからもよろしく、といったところか」

二人の外道は、底知れぬ暗闇を我が物顔で進んでいく。連んでいく。
愛すべき仲間達の元へ、戻るために。

「あっ、そう言えばさ、こんな電池みたいなのデイパックに入ってなかった?」
「……これのことかね?Setという記号が彫り込まれているが、生憎説明書はついていなくてな」
「ああ、やっぱりあんたは最高の協力者だよ!」
「事態が飲み込めんな。どういうことか話してみろ」
「実はこれは……」

反吐が出る悪者達の暗躍は止まらない。止まらない。止まらない。



【G-2:病院:一日目・早朝】


【金田一一@金田一少年の事件簿】
 [属性]:正義(Hor)
 [状態]:健康
 [装備]:なし
 [持物]:デイパック、基本支給品、レイジングハート(スタンバイモード) 、風紀委員の自転車@めだかボックス
 [方針/目的]
  基本方針:自分の信じる正義の下、謎を解き明かす。
  0:自分をHorと推測し、それを前提とし行動する。
  1:他の者と今後の行動方針について話し合う。
  2:海の家、テレビ局周辺施設と調べながら女神像を目指したい。
  3:Isiと合流したい。(美雪優先)
  4:高遠を警戒。

[備考] ※美雪をIsi、剣持をHorかIsi、高遠をSetと推測し、それを前提に行動しています。
      またその推測が外れている可能性も視野に入れています。
     ※レイジングハートがベルカ式カートリッジシステムになっているかはまだわかりません。後の書き手様にお任せします。
 天馬、言峰、折原といくらかの情報交換をしました。


【天馬賢三@MONSTER】
 [属性]:正義(Hor)
 [状態]:健康
 [装備]:コルトガバメントM1911A1(7/7)、予備弾倉4つ
 [道具]:基本支給品、不明支給品1~2、月の腕時計@DEATH NOTE、医薬品多数
 [思考・状況]
 基本行動方針:ヨハンの抹殺。負傷している者がいれば治療する?
 1:他の者と行動するか否か……。
 2:ニナ、グリマーを探す。
 3:いずれ杳馬と合流する。

[備考]
金田一、折原、言峰といくらかの情報交換をしました。


【竜ヶ峰帝人@デュラララ!!】
 [属性]:その他(Isi)
 [状態]:健康(高揚感?)
 [装備]:なし
 [持物]:デイパック、基本支給品、支給品1~3(本人確認済み)
 [方針/目的]
  基本方針:死にたくないけど……
  1:他の人達と協力していく。
  2:言峰さんが信用できない。
  3:ヨハンに興味?
[備考] 少なくとも原作6巻以降のいずれかより参戦
    金田一、天馬、言峰といくらかの情報交換をしました。



【折原臨也@デュラララ!】
[属性]:悪(Set)
[状態]:健康
[装備]:メス(コートの隠しポケットに入っている)
[道具]:基本支給品、セルティの首、属性探査機、属性電池(Isi)属性電池(Set)
[思考・状況]
基本行動方針:実験を完遂させつつ、その中で活躍してヴァルキリーに認められ、天国へ行く。
1:Horらしき参加者を見つけ、五代達との合流を促して擬似Horによる大集団を作る。
2:Isiらしき参加者を見つけたら、人間観察がてら人間不信に追い込む。
3:Setらしき参加者に遭遇した場合、様子を見て情報収集・擬似Set集団形成促進の為に接触する。
4:属性電池を探索する。
5:ここで活躍できなかった場合の保険の為に、本ちゃんの戦争に必要な竜ヶ峰帝人はなるべく保護したい。
6:言峰綺礼とはなるべく協力関係を築いていきたい。

[備考]
登場時期は原作2巻終了後。
吉良吉影と、第一放送後に合流する場所を密かに決めています(詳細は、後の書き手にお任せします)。
金田一、天馬、言峰といくらかの情報交換をしました。
言峰綺礼より、更にいくつかの情報を得ました。


【言峰綺礼@Fate/stay night】
[属性]:悪(Set)
[状態]:健康
[装備]:なし
[持物]:デイパック、基本支給品、支給品0~2
[方針/目的]
  基本方針:?????
  1:他の者と今後の行動方針について話し合う。
  2:竜ヶ峰帝人の観察を続ける
  3:折原臨也とは、なるべく協力関係を築いていきたい。

[備考] 出展時期は他の人にお任せ。
金田一、天馬、折原といくらかの情報交換をしました。
    原作二巻当時における竜ヶ峰帝人の情報を得ました。多少臨也の主観混じり(?)

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金田一少年の冒険 金田一一 [[]]
甘楽ちゃんのドキ☆ドキ身体&精神検査!? 天馬賢三 [[]]
折原臨也 [[]]
運命/不可思議な偽りを 竜ヶ峰帝人 [[]]
言峰綺礼 [[]]






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