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オープニング


サンレッドは静かに目を開いた。普段生活しているかよ子のマンションのものではない、
見知らぬ天井が目に飛び込んできた。思わずぎょっとして、体を起して辺りを窺う。
西洋建築の粋を集めたかの如く豪奢な内装にサンレッドはまず困惑し、
そして彼の周りに横たわりぐっすりと眠っている何十人もの人間に、彼はますます慌てふためいた。

(なんだこの状況は……昨日はそんなに飲んじゃいないはずだが……
 誘拐されたのか? いや、まさか……)
教会……いや、神殿のような建物だった。神々しいとはこういう建物の事を言うのだろう。

(……ん?)

サンレッドから少し離れたところ、ステンドグラスの下に中年の男性と若い女性が
机を挟み、小さな椅子にちょこんと座っているのが目に見えた。男の方は特筆する事もない容姿だが、
女の方は違う。絶世の美女とはこんな女の事を言うのだろう。サンレッドは思わず彼女に見とれてしまった。

(って、見とれている場合じゃねえ。あの二人なら、
 この意味不明な状況について何か知っているかもしれねえ。
そう思い、サンレッドは男女の元へと歩み寄る。

「おい、あんたら。なんなんだこの状況は。何か知ってん────ぶっ!」

見えない何かがサンレッドの顔面にぶつかった。何かある。
これは、ガラスの壁だ。ありえないまでの透明度を誇るガラスの壁が、サンレッドと男女の間をし切っている。
サンレッドは短気で粗暴な男である。訳の分からない状況に加えて、
見えないガラスの壁に顔面をぶつけてしまい鼻血を流してしまった事で、彼は軽い興奮状態に陥る。

「おい、なんだこれは!!」
ガンガンとガラスの壁を蹴ってみるが、ビクともしない。
「そんなにいきり立っても無駄だよサンレッド君。その壁は壊れないようにできてるからな」
「そうよサンレッドさん。余計に体力を消耗するだけだから止めなさい。その壁は私たちじゃないと開けないもの」
壁の向こうから男と女の声が聞こえてくる。声が聞こえてくると言う事は、それ程厚い壁ではないはずなのだが、
彼らの言う通り、サンレッドがどれだけ蹴ってもまるで手応えがない。

「あんだよ、だったらさっさと開けてくれ」
「ねえ貴方。もういい加減、貴方とあの小娘との関係について問い詰めるのも疲れてきたわ。
 貴方って毎日のように不倫するから、どんどん事実の隠蔽が上手くなっていくもの。私の気持ちも知らないでね。
 そう言う訳だから、そろそろ眠っている方々を起こして、ゲームを始めましょうよ。早く気分転換したいわ」
「おい!聞け!」
「そんな言い方はやめてくれよ……あの子とは本当に何の関係もないと何度も言っているじゃないか」
男は怯えるようにして女の目を覗きこむ。どうも彼は彼女に頭が上がらないようだ。

「ま、まあ……とにかく始めるか」
男は握りしめた右手を机の上に置き、そっと開いた。彼の掌からバチバチと電撃が発生し、
巨大な雷鳴が轟いた。そのとてつもない轟音によってサンレッドの足もとで眠っていた者達が一斉に跳ね起きる。
あまりに突然の出来事だったため、サンレッドは口を開いてただただ驚いていた。

「ちょっと貴方!五月蠅いじゃないの!もっとスマートな起こし方ってものがあるでしょう!?」
「そうかな……電撃ってカッコ良くてスマートだと思うんだけど……僕の得意技だし」
「そういう問題じゃないわよ!五月蠅いって言ってるの!」

「お前ら……何者だ……?」
サンレッドはぽつりと呟いた。見たところ二人は普通の人間だ。
それなのに、男はまるで怪人のように電撃を放った。呼吸をするかの如く、いとも簡単に。
二人はまるでサンレッドを含む人間達に気付いていないかのように、痴話喧嘩を続けている。
完全に蚊帳の外だ。そういう感じがした。

「待て、待て待て待ってくれ。サンレッド君が今何か言ったぞ。少し落ち着いてくれ。
 さあ、サンレッド君、君はなんていったんだい?」
「…………お前ら何者だ?」
ついさっきまで眠っていた者たちは、サンレッドが問い詰めている男女に視線を向ける。
往々にして不安げな眼差しだった。

「僕らは所謂『神』という存在なんだ。僕の名前は……まあ沢山あるのだけど……
 とりあえずゼウスと名乗っておこう。有名だし、聞いたことあるだろう?」
「それじゃあ私の名前はヘラよ。ギリシア神話に私達が一応登場するけど、あれってほとんど作り話だから」
辺りはざわめいた。この二人は何をとぼけた事を言っているのか……
常識的に考えて二人はバカげた作り話を言っているのに違いない。
間違いなく嘘だ。手の平から電撃を放った事実に目を瞑れば、だが。

「まあ、僕らが神であるというのを信じる信じないは各々の勝手だ。僕としては別に信じてくれなくても構わない。
 僕らが何者であるかなど、これから皆さんにプレイして頂くゲームには特に関係ないからね」
「ゲーム……?」
誰かが言った。嫌な予感がする。

「そうゲームよ。ゲームの名前はバトルロワイアル。プロレスリングのバトルロイヤルからもじって名付けたの」
「ルールは至ってシンプルだ。これから皆さんに殺し合いをして頂く。最後の一人まで生き残った者が優勝だ。
 一応反則行為はあるにはあるけど、普通にプレイしていればまず引っ掛からない」
「おい、ちょっと待て」
ゼウスとヘラの目の前で、サンレッドが唸るように声を挙げた。

「何言ってんだ。殺し合いってどういうつもりだ……?」
「貴方こそ何を言っているのかしらサンレッドさん。どういうつもりも何も、言葉通りの意味だけど?」
ヘラは苦笑する。
「何が目的なんだって言ってんだろうが!」
「ああ、目的ね。そうねえ、それじゃあ貴方達の足もとに一人一つずつ、デイパックが置いてあるでしょう?
 その中にゲームの参加者の名簿が入っているから取り出して確認して貰えないかしら」

「…………ッ!!」
ヘラに言われた通り名簿を確認してみて、夜神月は密かに激昂した。
勿論、表には出さずクールを装っているが、腹の中はまるで穏やかではない。
用意した名簿は、ゲームの参加者達を三つのグループに分類した特殊な名簿だった。


【参加者名簿】

【正義】17/17
○アーチャー
○衛宮士郎
○L
○金田一一
○空条承太郎
○黒神めだか
○五代雄介
○高町なのは
○テンマ
○天馬賢三
○バットマン
○東方仗助
○本郷猛
○武藤カズキ
○夢原のぞみ
○ロビンマスク
○ロールシャッハ

【悪】17/17
○悪魔将軍
○雨流みねね
○折原臨也
○吉良吉影
○言峰綺礼
○ジョーカー
○高遠遙一
○蝶野攻爵
○DIO
○杳馬
○パンドラ
○V
○ポイズン・アイビー
○結城美知夫
○夜神月
○ヨハン・リーベルト
○ン・ダグバ・ゼバ

【その他】26/26
○相沢栄子
○相沢たける
○天野雪輝
○アリサ・バニングス
○イカ娘
○ヴァンプ将軍
○ヴォルフガング・グリマー
○内田かよ子
○我妻由乃
○賀来巌
○剣持勇
○サンレッド
○ジェームズ・ゴードン
○月村すずか
○七瀬美雪
○ニナ・フォルトナー
○ハインリッヒ・ルンゲ
○人吉善吉
○平坂黄泉
○藤村大河
○松田桃太
○間桐慎二
○武藤まひろ
○メロ
○夜神粧裕
○竜ヶ峰帝人

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「一目見て分かるように、貴方達に支給した名簿は参加者達を正義と悪、それ以外の三つに分類したものなの。
 極一般的な人間の常識と良識に照らし合わせて公平に分類したつもりよ。
 まあ、この分類を信じるかどうかは貴方達各々の判断に任せるわ」

「…………」
自分の名前が『悪』に分類されているのを見て、吉良吉影の背筋に冷たい汗が流れた。
どうしてこんな事をする? 殺し合いをさせるだけなら、参加者達を正義と悪に分ける意味はあるのか。

二人は殺し合いをゲームと称しているが、このような分類はむしろゲーム性を失わせる事に繋がる。
誰がどう考えても、『悪』に分類された参加者はゲームの性質上、他の参加者から警戒される。
何しろ殺し合いだから、警戒されないわけがない。不公平だ。

「名簿をこんな風にしたのはね。極限状態の中、同じ檻の中に正義漢と悪人を放り込んだらどうなるのか、
 善悪について実験めいた事をしてみたいと思ったからなの。最近は一元的なモノの見方が廃れてきちゃって、
 善悪に対する色々な捉え方が世界に溢れて来たわ。神様として、そういうのって見過ごせないの」
参加者達の一部がヘラの言葉に対してピンとこない表情を見せる。
何故、神ならそういう事を見過ごせないのだろうか。

「一つ質問してよろしいですか?」
世界一の名探偵、Lが唐突に手を挙げた。ヘラはその男に視線を移し、微笑みをもって質問を促した。

「いくら正義漢と悪人の対決を見たいからと言っても、貴方達は今からやる事をゲームと称するのなら、
 もう少し公平性について気を配るべきでしょう。悪に分類された参加者は明らかに不利じゃないですか」
「あら、そうかしら。そうとは限らないわよ?」
ヘラは悪戯っぽく笑った。
「正義に分類されている参加者が本当にいい人だとは限らないわ。その逆もまたしかり。
 例えば、正義側には簡単に人を殺す子がいるし、悪人側には犯罪者から社会を守ろうと奮闘中の子がいるのよ?
 色んなタイプの正義漢と悪人を集めたの。中には乱暴な正義漢もいるし、優しい悪人だっているの」
横でゼウスが苦い顔をしている。少し喋り過ぎではないだろうか……

「一部例外がいたとしても、大部分が正しく分類されているのであれば、悪人が不利なのには変わりありませんよ……」
「まあいいじゃないか。君にとってはむしろ有利になるのだし」
「正直言って不利だとか不公平だとかどうでもいいの。
 私達は善と悪の対決が見たいのが目的であって、善悪どちらにも染まりきっていない人達を参加させたり、
 色々ルールを決めてゲーム風にしたのは実験を盛り上げるためのおまけなの」
ヘラは開き直った。Lに向かって屈託のない笑顔を見せる。


「さあ、もういいだろう? ルール説明を続けさせてくれよ」
ゼウスはヘラを押しのけてゲームのルール説明を強引に再開する。
折角楽しくお喋りしていたのに、とヘラは不満げだ。

「ゲームの大まかな流れについて説明しよう。この後、皆さんをバトルロワイアルが行われる会場へと飛ばす。
 会場に着いたと同時にゲームスタートだ。これから言う禁止行為を除いて、基本的に何をしようと構わない。
 他の参加者を積極的に殺そうが、生き残るために逃げ回ろうが、好きにしてくれ」
「逃げ回る消極的なプレイヤーよりも、私達は積極的に行動するプレイヤーを見たいのだけどね……」
「まあ……本音を言うとそうだけど、そこはホラ、個人の自由だよ、ヘラ」
それもそうね、とヘラは言った。

「さて、説明に戻るよ。ゲームは6時間単位で区切られている。6時間経過するごとに放送を流す。
 放送では、前の6時間に死んだ者の名前と侵入してはならない禁止エリアについて発表する。
 その他重要な情報も流すかもしれないから、各自聞き逃さないようにして欲しい。
 禁止エリアというのは……そうだな、各自デイパックから会場の地図を取り出してくれ」
ゼウスがそう言うと、参加者は戸惑いながらもいそいそと地図を取り出した。
「ああ、そうだ。デイパックの中には僕とヘラが選んだ道具が入っている。
 武器やサバイバルグッズ、様々なものが入っておるから有効的に活用してくれ。
 あと、簡単なルールブックめいたものもデイパックの中に用意してある。聞き逃した人はそれを読んで確認してくれ」

「さて、禁止エリアについてだけど、デイパックの中からエリア分けされた地図が出てきただろう?
 禁止エリアというのは、この地図に沿って指定していく。例えば僕が放送で12時からA-1が禁止エリアだと言ったら、
 この地図で示されているA-1が禁止エリアとなるわけだ。絶対に入ってはならない。大変な事になるからな」
「あら、大変な事って何かしら貴方。いったい何が起こるの?」
ヘラは楽しげに聞いた。これから起こる事について期待しているかのようだ
「ふふ……それはね……」


────ピっピっピっ………


人だかりの真ん中辺りから音が聞こえてきた。皆、音源へと目を向ける。
子供達の首に巻き付けられている首輪が電子音を立てている。
子供達は不安げに周囲の大人達の顔を窺った。

「真面目にゲームに参加して貰うために、貴方達の首に首輪をつけさせて貰ったの。
 ただの首輪じゃないわ。高性能の爆弾入り首輪なの」
「─────ッ!」
ヘラの衝撃的な発言に参加者たちは息を飲んだ。子供達はますます不安そうに眼を瞬かせる。
「さっきゼウスが説明した禁止エリアに侵入したり、首輪を無理やり外そうとしたら爆発しちゃうわ。
 その他にも、ゲームの進行を妨げるような事をしたら爆破するから、気を付けて」
「その首輪はどんなタイミングでも僕達の好きなタイミングで爆破する事が出来る。
 その事をどうか肝に銘じておいてくれ」

「ふざけるな!!」
何人かが怒声を上げて、参加者達とゼウス、ヘラをし切る透明の壁を殴った。
「こりゃあいい!思ったよりも楽しげなゲームじゃねえか!」
彼らとは対照的に、一部の参加者達は早くもゲームにやる気を出しているようだ。

「この悪魔め!貴様らのどこが神だ!子供達は関係ないだろう!
 見たいのは正義と悪の対決じゃないのか!」
「見せしめは必要なのよ。そうしないと、貴方達は本気になってくれないでしょう?」
罵倒されてむっとし、ヘラは不機嫌そうに言い返す。
「子供達の首輪を止めろ!今すぐに!」
「五月蠅いわね。あまり騒がないで。私、そういう見苦しい姿を見せつけられるのは凄く苦手なの」

「────お母さァん!!お父さァん!!」
部屋の真ん中で見せしめとして選ばれた子供たちは泣いている。
その騒々しい泣き声を聞いて、ヘラはまたも気分を害したように舌を鳴らした。
一部を除いて、殆どの参加者達は首輪が爆弾だと言われたその時から、自然と子供達から離れていた。
距離を置いて不安そうに子供たちへと視線を送るが、それだけだ。誰だって巻き添えになるのは怖い。

「みんな……」
たけるは泣き叫ぶ友達の前でぽつりと呟いた。イカ娘は、その隣で顔を白くして何も言えないでいた。
「た、たける!危ないから離れるよ!イカ娘も!」
「嫌だ!みんな死んじゃうなんて嫌だよ!!」
たけるの姉、栄子はたけるとイカ娘の腕を掴んで、強引に引っ張る。
このままでは爆発の巻き添えを食らってしまうかもしれない。たけるもイカ娘もショックを受けている。
辛いけどここは自分がしっかりしないとならない……

「────死にたくないよ……死にたくないよぅ……!」
子供達は涙をぼろぼろ落としながら、お互いを強く抱きしめ合った。

「さっさと首輪を止めろ!!」
「だから五月蠅いわね!!たかが子供が死ぬくらいで何よ!!
 うだうだうだうだ好き勝手言っちゃって、見苦しいったらないわ!!」
ヘラはヒステリックに喚いた。人外である彼女にとって、個人の命とは本当にどうでもいいものだ。
元々短気な彼女は、大量に罵倒の言葉を浴びせられ、とうとう我慢の限界に達した。

「ゼウスッ!!壁を透明にしたからいけないのよ!早く何とかしなさい!」
「はいはい……分かったよもう」
ヘラがヒステリーを起こすのはよくある事だ。こうなってしまうと本当に面倒臭い。
ゼウスが合図すると、透明の壁は一瞬で黒く染まった。
「クソッ!ふざけるな!」
それでもなお壁を殴り続ける者達。

────ピピピピ

電子音が次第に加速していく。爆発は近い。

「俺は絶対にお前らを許さない!絶対に!!」
壁の前で本郷猛は叫んだ。その直後、子供達の首輪が爆発し、辺りに鮮血が飛び散った。
生首がごろんと転がる。部屋の中央に残った子供達の体は、死してなお、お互いを強く抱きしめ合っていた。
参加者たちは誰も何も喋らず、子供達の亡骸を見つめるのみだった。

─────パチ……パチ……

唐突に拍手の音が聞こえてきた。周囲の怪訝な視線を一身に浴びて、
ジョーカーは笑いながらぺちぺちと手を叩いている。
なかなか面白いショーだったぞ、と主催者達を称賛しているかのように。


「…………は?」
栄子は目を瞬かせた。たけるの腕を掴んでいたのに、そのたけるが突然音もなく消えてしまった。
辺りを見ると、周囲の人間も少しずつたけると同じように音もなく消えていく。
「こ、今度は何事!?」

ふと思い至る。もしかすると、これがゼウスの言っていた『会場へ飛ばす』と言う事なのだろうか。
だとしたら、やはりゲームと言う名の殺し合いは始まってしまうのか。夢なら早く覚めて欲しい……


【GAME START】

【残り60人】




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