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正義の業(後編) ◆KKid85tGwY



「ドリームコレットか……知らないな」
「俺も知らねーな。ってか、本当にあんのか、そんな物?」
「ホントにあるよー!」

 グリマー、のぞみ、善吉、本郷の4人は合流してすぐに問題なく同盟を組むことが出来た。
 自己紹介も終えて、殺し合いが始まってから各々のこれまで経緯を情報交換する運びとなる。
 もっともグリマーとのぞみは、始まってすぐ合流したので話せる内容はほとんど同じである。
 妖精や異世界の話に本郷は特に意に介した様子は無かったが、さすがに善吉は戸惑いを見せた。
 しかしそれは、本郷と善吉の話を聞いた時のグリマー程ではなかった。

「本郷、君はその……へ、変身するのか?」
「ああ、疑うならここでしても構わない。だが今は負傷しているから、激しい動きは見せられん」
「……いや、疑ってるわけじゃないんだが…………」

 変身してヒーローになると言うことは、グリマーには特別な感慨を与える。
 それは14歳までの人生での数少ない記憶の1つ、『超人シュタイナー』を嫌でも思い起こさせた。
 幼少の頃の憧れでもあり、現在の彼の影でもある存在。
 そんな本来はフィクションの存在が、実在したのだ。
 ただ、それでグリマーが本郷を特別な目で見ることは無い。
 今となっては『超人シュタイナー』は結局、グリマーの内面の問題なのだから。

 話をする中で4人の中で、自然にある共通認識が出来る。
 それは『この殺し合いの中では、何が起こっても不思議ではない』ということだ。
 妖精やら改造人間やら吸血鬼やらすでに当人以外には、あるいはこの場の4人にも信じ難いような話が出て来ている。
 そもそもこの場に連れて来られたのも、瞬間移動と言う超常現象だった。
 3人は改めて現状の底知れない不可解さを思い知らされた。
 ちなみに例外は、この期に及んでも大して緊張感を抱いていないのぞみである。

「それより、早くそのバイクをくれた人を助けに行かないと行けないんじゃないですか!?」

 ただ、のぞみとて現状に何の危機感を抱いていない訳ではない。
 のぞみの指摘が入った途端、善吉はそれをすっかり忘れ去っていたことを自覚し慌てふためく。

「そうだ! 早く行かないと!」
「慌てた所で意味は無いぞ」

 しかしそれを宥めたのは、助けに行くと言い出していたはずの本郷である。

「いや、早くしないと不味いでしょう!?」
「急ぐつもりなら、初めからのんびり話などしていない」
「そ、それはそうでしょうけど……」
「DIOが相手だ。どんな形であれ、もうとっくに決着は付いている」
「……なら、何で助けに行くとか言ったんですか?」
「助けには行く。どういう状況に至ったか確認もしないといけないし、首輪や支給品を回収できるかもしれない」

 本郷の言葉が善吉には意外だったが、同時に納得も行った。
 善吉は本郷が自分の安全も省みず、ひたすら他者を守るために突っ走る性格だと思っていた。
 そういった面もあるだろうが、実際の本郷は思っていたよりも遥かに冷静に状況を捉え行動が出来る。
 考えてみれば、本郷は善吉が想像も付かないほどの歴戦を潜り抜けた猛者なのだ。
 自分の状況も省みないほど愚かだったら、これまでの戦いでとっくに死んでいるはずだったのだ。

「首輪かァ。たしかにそれを回収して解析できれば、外す糸口にはなるな。
でもそれをするには、まず首輪の解除が出来る可能性のある人を捜した方が良いんじゃないか?」
「それなら、もうここに居る」

 本郷は自分が自分が改造人間を作り出せるほど、工学の知識と技術を持っていることを説明した。

「ちょ、ちょっと待ってくれ! それじゃ、君をDIOの所に行かせる訳には行かない。
君は貴重な首輪解除の可能性なんだ。絶対に失うわけにはいかない」

 グリマーの言葉に善吉はやっと、自分が本郷を死なせるわけにはいかないと考えているか合点がいった。
 めだかと生還するには、殺し合いから脱出する必要がある。
 しかしそれが容易ではないのは、漠然とでも想像がつく。
 まず首輪を外さなくてはならない。
 それが出来たとしても全く未知の、しかし強大な力を持つと思しき主催者を倒さなくてはならない。
 それらが途方もない難事であることは、少し考えれば分かることだ。
 人吉善吉1人の力ではどうしようもない。
 あの、この世のあらゆる才能を持ち合わせているとすら思える黒神めだかの力を借りても至難と言えよう。
 だが本郷猛の力を借りればどうか?
 常軌を逸した頭脳を持ち
 人を完全に超越した力を持ち
 幾多の悪と戦い抜き、それを打ち倒した実績を持ち
 何よりどんな困難にあろうと決して屈さぬであろうと強靭な意志を持つ本郷猛なら
 途方もない難事も成し遂げられる可能性が出て来る。
 仮面ライダーは善吉にとってだけでなく、殺し合いからの生還を願う全ての人にとっての希望なのだ。
 絶対に死なせるわけにはいかない。

「俺もグリマーさんの意見には賛成ですね。本郷さん、あんたは絶対に失う訳にはいかない人材だ」
「だが、俺でなくてはDIOを相手にはどうしようもないぞ」
「肝心なのはDIOを倒すのではなく、バイクをくれた人の様子を見るのと可能なら支給品と首輪を回収することでしょう。
なら俺が行きますよ。帰ってこなかったら、それまでと思って下さい」

 当然、善吉の意見に賛成する者も居ない。
 そこからしばらくグリマーと善吉と本郷で、誰が行くか行かないかとまとまらない議論が続く。
 のぞみは中々その中に入れなかったが、やがて意を決して3人の中に割り込んだ。

「あたしが行くよ! ねっ! ねっ!」

 善吉はまるで凍りつきそうな視線をのぞみに送った。
 グリマーは逆に生暖かい目でのぞみを見ている。

「のぞみちゃん、俺たちは真面目にな話をしてるんだ。ちょっと黙っててくれ」
「真面目に言ってるの!」
「真面目に死にてーのかよ!」
「大丈夫だよ、だってあたしプリキュアだもん!」

 そこまで話してのぞみは、しまったとばかりに口を押さえる。
 プリキュアのことを話してしまった。
 しかしよく考えれば、もう既にピンキーやドリームコレットのことは話している。
 それにここには同じように変身する本郷も居るのだ。
 プリキュアを隠すことに、あまり意味は無いと判断出来た。

「そのプリキュアとは何だ?」
「すっごく強い戦士に変身するできるの」

 本郷の問いに答えるも、グリマーと善吉は半信半疑の様子だ。
 仮面ライダーはすんなり受け入れられて、なぜプリキュアは疑われるのか?
 さすがののぞみも憤りを感じざるを得ない。

「では、実際に変身をしてくれるか?」

 のぞみは黙って首を縦に振る。
 促した本郷は何かに気付いている様子だった。
 それはのぞみに秘められた力にだったのかもしれない。

「プリキュア・メタモルフォーゼ!!」

 のぞみの手に巻かれたピンキーキャッチュから、光が広がり
 それがのぞみ自身を包み込んでいく。
 学生服だったのぞみの衣装が、桃色の装飾に彩られた物へと変化していった。
 胸には蝶のリボン。
 それはパルミエ王国が伝説の戦士の姿。

「大いなる希望の力、キュアドリーム!」

 ポーズまで完璧に決まった。
 これでもう疑われない。
 のぞみは勝ち誇ったように、グリマーと善吉を見る。

「……うん、凄いな」
「……まー、変身はしてるな」
「えぇー!?」

 2人の反応は相変わらず薄い。
 それも当然で、これまで散々超常現象に接してきて、善吉は仮面ライダーも見たのだ。
 今さら衣装が変化したくらいで驚けという方が無理だ。

「では、その能力を試してみても良いか?」
「いいよ。もうこうなったら、なんでもするもん」
「じゃあ、善吉。君が自分で試したほうが良いな」
「お、俺ですか?」
「彼女を全力で蹴れ」
「まあ、それくらいなら簡単……じゃねーよ!! めだかちゃん以外の女子を、全力でなんて蹴れるか!」

 善吉の抗議にも、本郷は反応しない。
 無謀な提案をされているはずののぞみも、平然としている。
 どうやら本郷は本気らしい。
 ならば信用するべきだろう。

「本当に良いんだな?」

 確認する。
 のぞみはやはり平然としたままだ。
 善吉は覚悟を決めて、サバットで鍛えた蹴りをのぞみの腹に放った。

「…………消えた?」

 しかし蹴りは空中の何も無い空間を通る。
 目の前にいたはずののぞみの姿は無い。

「こっちだよー」

 不意に背後からの声。
 よく聞けば、それはのぞみの物だが
 善吉は咄嗟に後回し蹴りを、のぞみの頭部に放っていた。

(しまった!! 顔を蹴っちまった!)

 しかしその蹴りはのぞみの顔の前で止まる。
 蹴り足をのぞみの手に掴まれていた。

(俺の蹴りが片手で止められた!!?)
(……身体能力なら、仮面ライダーに匹敵するな)

 本郷もプリキュアの予想以上の戦力に瞠目していた。
 善吉の蹴りは速度、威力共に人間では最高峰のものだろう。
 それをあっさり避けて後ろを取り、さらに片手で軽々と受け止めた。
 戦闘能力は五体満足な自分にも引けを取らない。
 ただ問題は、やはりDIOと単独で戦うのは危険だということか。
 それでも今の自分が戦うよりマシだ。
 改造人間である本郷は、回復力でも人間を遥かに超越している。
 だからこそ悪の秘密結社との、休み無き戦いもこなせたのだ。
 貫通した脇腹もほど無く治るだろう。
 それまでは自分たちの最強戦力は、このプリキュアだ。
 この予想外のカードを、どこでどう切るべきか——。

(超人シュタイナーが2人……)

 グリマーはいよいよ、自分が異常事態の只中に居ることを自覚せざるを得なかった。
 先ほどまで連れ立っていた少女までもが、『超人シュタイナー』だったのだ。
 これまでに出会った参加者は3人。内2人は超人だった。
 さらに吸血鬼などと言う存在まで居るらしい。
 ここは、ただの殺し合いの場ではない。
 超人と怪物の跋扈する世界なのだ。
 所詮はただの人間に過ぎない自分に何が出来るか?
 グリマーの悩みは深い。

「痛い、痛いって!!」
「あ、ごめん」

 しばらくのぞみに足を掴まれていた善吉が、痛みを訴えだす。
 のぞみは慌てて、手を離した。
 どうやらのぞみが善吉の足を強く握り過ぎたらしい。

「痛ってー……分かった、認めるよ。のぞみちゃんは、無茶苦茶強い戦士だ」
「うふふー。よーし、あたしがDIOを倒しに行くするぞー! けってーい!」
「それとこれとは、話が別だ。まさか、あんた1人で行く気じゃねーだろ−な!」
「えー!? じゃあ、どうすんのよー?」

 再び議論が始まる。
 それを本郷が手で制した。

「とりあえず、話はあっちの問題を処理した後だ」
「あっちの問題?」

 グリマーの疑問を無視して、本郷は背後に振り返った。

「そこに居るのは分かっている。武器を捨てて出て来い」


     ◇


(ユッキー)

 日記を見る。更新は無い。

(ユッキーユッキーユッキー)

 日記を見る。更新は無い。

(ユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキー)

 日記を見る。更新は無い。

(ユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキー
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 日記を見る。更新は無い。

(いつまで更新されないんだ!!!!!)



 東南の都市、否。天野雪輝を目指して歩く我妻由乃は
 そうしながらも頻繁に、自分の未来日記『雪輝日記』を開いていた。
 雪輝日記は10分ごとに更新されるのだから、それを追っていけば
 雪輝に関する最新の、そしてより詳細な情報を得ることが出来る。
 ——はずなのだが
 もう先ほどから、10分置きに何度も日記を見ているというのに一向に更新される様子が無かった。
 つまり先ほどから、天野雪輝の状態が全く分からないのである。

 日記が更新されない今の状況は、由乃に異常な焦燥を与えていた。
 単純に天野雪輝の安否が分からないという問題だけでは無い。
 雪輝日記は未来日記となる以前から、由乃が天野雪輝を徹底的に観察し詳細に記録して来た物の延長である。
 1年前の約束の日から、天野雪輝を陰からずっと観察していた。
 登校中も、授業中も、下校中も、街中でも
 1日たりとてかかさず10分置きに、天野雪輝の記録を取って来た。その延長なのだ。
 言わば雪輝日記は、由乃の天野雪輝への思慕の情の蓄積が形を為した物である。
 そして未来日記となってからは、更に別の重要な機能と意味も付加された。
 雪輝日記は何もしなくとも天野雪輝の状態が、10分置きに書き込まれる。
 勉強している状況も、運動している状況も、遊んでいる状況も、眠っている状況も、排泄している状況も
 自分も知り得なかった天野雪輝の全てが、10分刻みで知ることが出来るのだ。
 それは由乃にとって大きな喜びだった。
 雪輝をよりよく知ることが出来、雪輝をさらに身近に感じることが出来る。
 言わば雪輝日記は、由乃と天野雪輝の繋がりが形を為した物でもある。
 日記所有者にとって未来日記は、正しく命そのものだが
 由乃にとっての雪輝日記は、ある意味それ以上の物だ。

 それが今はレプリカにすりかえられている。
 情報は簡素で、その上更新頻度まで大きく落ちる劣化品。
 由乃の内で憤怒が燃え盛る。
 それは雪輝の情報が得られないというだけに尽きず
 雪輝との繋がりまで絶たれたことになるのだ。
 今の由乃は天野雪輝に飢えていた。

 雪輝日記を取り上げた主催者に対しては、殺意が沸くほどの怒りを覚えていた。
 しかし胸中でどれだけ大きな怒りに囚われていても、由乃の脳内では今すべきことも冷静に捉えている。
 激情の中でも怜悧な判断が下せる。
 由乃は修羅場でこそ光る、そんな精神的素養も身に付けていた。
 今すべきことは、一刻も早く雪輝と合流すること。
 そして、まるで蜘蛛の糸のごとくか細い手掛かりであろうと問題無い。
 由乃は雪輝への無限の愛で進んでいる。
 何時かは必ず雪輝の下へ辿り着くと言う確信が有った。
 だから惜しむことなく、足を進めることが出来るのだ。

 そして、ついに見付けたのだ。
 雪輝へと続く糸口が。
 護送車と思しき車とバイクの傍らで、男女4人が集まっているのが
 遠目から確認出来た。
 その中に雪輝は居ない。
 それでも由乃はやっぱりと思った。
 やっぱり雪輝に辿り着けるんだ、と。
 だって参加者が4人も居たのだから。

(あいつらを3人……ううん、全員殺せば良いんだね)

 マニュアルには3人を”排除”すれば報酬が出るとあった。
 報酬に関しては曖昧な説明しかされていなかったが、こちらの希望によっては
 それで天野雪輝の居場所を知ることが出来るかもしれない。
 それが叶わなくても、報酬には『物資の補給』がされるともある。
 ならば、希望すれば本物の雪輝日記を手に入れられるかもしれない。
 そしてあいつらが持っている車も頂ける。
 それがあればより早く雪輝の元に行ける。

 何れにしろ、試す価値はある。
 相手は4人だが、こちらの存在に気付いていない。
 相手は見た所、誰も武器を所持していない。
 しかしこっちには、拳銃がある。
 由乃がバックパックから取り出したのは、ベレッタM92。
 世界中で使用されている、ポピュラーな拳銃。
 由乃になら容易く扱える。

 我妻由乃に苦悩は無い。
 彼女にとって天野雪輝と言う目的は、余りに明確であり
 他——例えば自分の命であるとか赤の他人の命であるとか——は、それに奉仕する手段であることも余りに明確なのだから。

 由乃は上手く建物の陰にかくれながら、その高い運動能力を活かし
 4人共のちょうど背後に当たる、20mは離れた建物の裏側まで回り込む。
 そして建物の陰から4人の様子を窺った。
 4人は何か議論をしているらしく、由乃には全く気付いていない。
 今なら奇襲は成功する。

(殺さなきゃユッキーに会いに行かなきゃ殺さなきゃユッキーに会いに行かなきゃ殺さなきゃユッキーに会いに行かなきゃ殺さなきゃ)

 次の瞬間男の1人が由乃の方へ振り返った。

「そこに居るのは分かっている。武器を捨てて出て来い」

 気付かれた?
 そんなはずは無い。
 こんな街灯も無い場所で、20mは離れた建物の陰に居る人間に気付けるはずが無い。

「その手に持っている銃を捨てて、両手を頭の後ろに組んで出て来るんだ」

 瞬間、背筋が凍る。
 完全に見られている。
 だが、建物の陰に完全に身を隠しているのにどうやって?

「道路を挟んだ向こうの家の窓ガラスに、お前の姿が映っている」

 男の言葉通り、道路挟んだ民家の小さな窓ガラスに由乃の姿は映っていた。
 しかしその窓ガラスは、由乃から更に10mは離れている。
 あんな物がどうして見える?
 大体、あいつは背を向けていたじゃないか。

 由乃の勘が告げる。
 あいつは人間ではない。
 まともに戦っては危険だと。

「逃げれば敵と見なして、お前を殺す」

 しかし男の有無を言わせぬ声に機先を制された。
 それだけではっきりと思い知らされた。
 男の言葉はハッタリではないと。
 男にはそれを為し遂げる力も意思も存在すると。

 さて、どうするか?
 戦う? 奇襲は感づかれた上に得体の知れない男も居るのに、4人相手はリスクが大き過ぎる。
 逃げる? ここで逃げては、また雪輝が遠のく。
 では、取るべき選択は——。



 建物の陰から拳銃が地面に投げ捨てられた。
 そして両手を後に組んだ、少女が姿を現す。

(本当に居たのかよ! しかしあんな女子とは……)

 本郷が突然、誰も居ない空間に威嚇をしだした時は善吉も当惑したが
 他の3人が全く気付いても居なかった者の存在に気付くとは、さすがに本郷と言った所である。
 それ以上に驚いたのは、少女を恫喝する時の本郷の迫力だった。
 悪と戦い続けた本物戦士の気迫には、味方だと分かっていても震え上がりそうだった。

「お前の名前は?」
「あんたこそ誰よ?」

 瞬間、本郷は少女の腕を捻り上げた。
 少女の顔が痛みで歪む。

「質問したのは俺だ。答えろ」
「ちょっと本郷さん!」
「来るな」

 慌てて割って入ろうとするのぞみを制す。
 それだけで、のぞみは息を飲んで止まった。
 今の本郷さんには先ほどまでと違う、異常に厳格な空気を纏っている。

「こいつのことは、俺に任せろ」

 その後も少女に対する本郷さんの質問。いや、尋問は続いた。
 少女の名前は我妻由乃。
 殺し合いが始まって、これまでに誰とも出会っていない。
 参加者の中に知っている者は2人。雨流みねねと平坂黄泉。
 どちらもテロリストのような人物で、由乃とは敵対関係らしい。
 それにしても、確かに由乃は怪しいが
 少しやりすぎじゃないのか?

「質問に答えたんだから、もう良いですよね!」

 腕を捻り上げっぱなしの本郷を押し退けて、のぞみが由乃を解放する。
 半ば睨み付けるように見つめるのぞみを無視して、本郷は由乃が投げた銃を拾いに行っていた。
 数分前までプリキュアがどうとか言っていたのが嘘のように、空気が重い。

「大丈夫? 怪我は無い」
「君は殺し合いに乗っているのかい?」

 グリマーさんの声まで心なしか冷たい。
 由乃は否定する。まあ当然だな。

「では、何で俺たちに近付いたんだ?」
「情報交換したかっただけよ」

 その言葉、信用できるのか?
 さて、ややこしくなってきたぞ。



 グリマーは由乃から不穏な気配を受け取っていた。
 そもそも銃を持って建物の陰から様子を窺っていたのが怪しい。
 しかし、それはあくまで勘と状況証拠に基づく物だ。
 無論、油断は出来ない。
 そしてのぞみと本郷を見る。
 不穏な空気が辺りを支配し始めていた。



(本郷さんがあんな乱暴な人だったなんて!)

 のぞみは本郷の由乃に対する態度に憤りを覚えていた。
 いきなり少女を脅かして、腕を捻り上げるような真似をする意味が全く理解出来ない。
 由乃に何か恨みでもあるのだろうか?
 理由は分からない。
 だがはっきりしていることは、のぞみは本郷のやり方が許容できないと言うことだ。



(問題ない。生きて集団には潜り込めた)

 奇襲に失敗した由乃は、次の作戦に移っていた。
 それは集団の中に潜り込み、目的地を東南の都市に誘導しながら
 可能なら隙を窺い全員殺す。
 どうやら、疑いは掛けられた。だが問題ない。
 もとより死のリスクも計算の上、それでもなお由乃には生きて雪輝の出会えると確信している。
 何故なら自身の雪輝への愛より強い物はこの世に無いと知っているからだ。

 ただ本郷と呼ばれた男には、怒りと警戒の気持ちが抑えられない。
 未来日記所有者との戦いで、幾つも修羅場を潜って来たが
 本郷ほど底知れない相手は初めてだ。
 奴の隙を衝くのは容易ではない。
 だが、やらなければならない。
 そして本郷は必ず殺さなければ。
 恐らく、本郷と言う男は自分にとって最大の障害になる。
 そんな予感がする。

 由乃は知らない。
 自分が潜入した集団には、悪を滅ぼす伝説の戦士が2人も存在することを。
 いや、行く手に如何なる障害があろうと彼女は止まれないであろう。
 恋する少女は、結末の分からないヴァージンロード(血飛沫絨毯)を歩み続ける。



 警告を発する前に、本郷はその聴覚で由乃の足音から接近に気付いていた。
 そして由乃の動きからこちらの死角に周り、隙を衝こうとする動き。
 つまり、奇襲を仕掛けようとしているのも知っていた。
 まずこの段階で由乃の殺意に確信が有った。
 そして由乃自身を見て、もう1つの確信も得る。
 それは由乃がDIO同様、決して生かしては置けない悪だという確信。

 仮面ライダーの戦いの歴史。
 それは悪の秘密結社が社会の闇で巡らす陰謀から、人々を守る戦いの歴史でもある。
 善良なる人間を装う組織の尖兵が、無知なる人々を陥れようとするのは
 ショッカーに始まる、悪の秘密結社の常套手段である。
 本郷はIQ600の頭脳を駆使して、それらの陰謀を未然に食い止めてきたのだ。
 その長き陰謀との戦いで培われた洞察力ゆえに本郷は
 悪意を持って人を傷つける者や
 欲望のために他者を犠牲にする者などを
 極めて高い精度で判断出来る。
 だからこそDIOが吸血鬼であることを差し引いても、悪意に満ちた存在であり
 説得や交渉の余地すら無いことも見抜けた。
 そして由乃も同様であろうことも。
 由乃は自分の目的や欲望のために他者を犠牲にすることを厭わない類の人間だ。
 それはもはや、如何なる説得も矯正も絶対に効かないであろう。
 そして本郷の内で、仮面ライダーの正義が叫ぶ。
 人間でありながら同じ人間を、しかも隙を衝いたり油断を誘ったりして後から刺すような真似をするような者。
 そんな卑劣な存在は、絶対に許すことは出来ないと。

 しかしそんな確信は決して他の者とは共有できない。
 だから由乃を倒すには他の者も納得がいく根拠がいる。
 由乃が『クロ(悪)』だと示す根拠が。
 そして悪だとなれば、我妻由乃を倒す。つまり『殺害する』。
 本郷は数え切れない悪の怪人を葬ってきた。
 決して容赦をしてはいけない、すれば守るべき者を守れなくなる悪が存在するのを知っているからだ。
 DIOや由乃が正にそれだ。
 苦痛はある。哀しみはある。しかしそれは、これまで人類を脅かす怪人相手にずっとそうして来た時と同じだ
 そしてこれまで人類を脅かす怪人相手にずっとそうして来た時と同じく、迅速かつ確実に抹殺する。
 今まで何度も同族の怪人にそうして来たのだ。
 異種族の人間にそう出来ない道理は無い。
 そうすれば、首輪のサンプルも確保できる。

 本郷は知らない、我妻由乃もまた幾人もの未来日記所有者を
 その異常な戦闘能力で葬ってきた、歴戦の猛者だということを。

 伝説の戦士”1st”仮面ライダー、本郷猛。
 怪物的な強さを誇る”2nd”未来日記所有者、我妻由乃。
 2人の戦いは静かに始まった。


【F-6/市街地:黎明 】

【人吉善吉@めだかボックス 】
[属性]:その他(Isi)
[状態]:健康
[装備]:なし
[持物]:基本支給品一式、支給品(本人確認済)1〜3
[方針/目的]
基本方針:めだかと合流して生還する
1:本郷を絶対に死なせない
2:由乃にどう対処するか考える
3:DIOを倒す
[備考]
※参戦時期はフラスコ計画終了後です。

【本郷猛@仮面ライダーSPRITS】
[属性]:正義(Hor)
[状態]:脇腹貫通(処置済み)
[装備]:ベレッタM92@MONSTER
[道具]:基本支給品一式、支給品1〜3(本人確認済)、バギブソン@仮面ライダークウガ
[思考・状況]
基本行動方針:仮面ライダーとして力なき人々を守る。
1:由乃が悪だという根拠を示し倒す
2:引き返してDIOを倒す
3:首輪を回収し解析して解除する
[備考]
※参戦時期は次の書き手さんにお任せします。

【ヴォルフガング・グリマー@MONSTER】
[属性]:一般人(Isi)
[状態]:健康
[装備]:なし
[持物]:基本支給品、支給品(本人確認済)1〜3 、護送車@DEATH NOTE
[方針/目的]
基本方針:のぞみと共に行動し、できるなら殺し合いを止めたい。
1:由乃への警戒
2:本郷を死なせない
3:ドリームコレットというものを探してみる。

【夢原のぞみ@Yes!プリキュア5シリーズ】
[属性]:正義(Hor)
[状態]:健康、キュアドリームに変身中
[装備]:ピンキーキャッチュ@Yes!プリキュア5シリーズ
[持物]:基本支給品、支給品(本人確認済)0〜1
[方針/目的]
基本方針:友達みんなのもとへと戻る。
1:本郷さん酷い!
2:DIOを倒す
3:ドリームコレットの中に、最後のピンキーを移す。
[備考]
※Yes!プリキュア5の45話からの登場です。
※ピンキーキャッチュに55匹目のピンキー、ニャンキューが入っています。
支給品紹介
【ピンキーキャッチュ@Yes!プリキュア5シリーズ】
デジタル型腕時計の形をした変身アイテム、カバーの隅に蝶の装飾がある。
キュアドリームに変身可能になる他、一時的にピンキーを収納することができる。

【我妻由乃@未来日記】
[属性]:その他(Isi)
[状態]:健康
[装備]:雪輝日記(レプリカ)
[道具]:基本支給品、支給品(確認済み)0〜1
[思考・状況]
基本行動方針:ユッキー(天野雪輝)と共に生き残る。
1:隙を見て4人を殺し(本郷優先)て車を奪い、褒美でユッキーの情報を得る
2:ユッキーを探す。情報を頼りに東南の都市へ向かう。残りは愛でカバー!
3:そのためにも本物の雪輝日記を取り戻したい。
4:邪魔をする人間、ユッキーの敵になりそうな奴は排除する。殺人に忌避はない。
5:最終的にユッキーが生き残るなら自己の命は度外視してもいい。
[備考]
※雪輝日記(レプリカ)
ユッキーこと天野雪輝の未来の行動、状況が逐一書き込まれる携帯電話。
劣化コピーなのでごく近い未来しか記されず、精度はやや粗い。更新頻度が落ちている。


時系列順で読む


投下順で読む



Crazy Wonderland 我妻由乃 幼気
夢に向かって ヴォルフガング・グリマー
夢原のぞみ
〜悪意は極力隠すこと、それが……〜大宇宙の真理 本郷猛
人吉善吉








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