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夢の続き◆3VRdoXFH4






真夜の中でも、この回りは明るかった。
道路を照らす電灯、建築物の照明。
人が機械の文明を手にしたときから、世界はずっと休息を忘れて動き回っている。
空高くから見渡せば、人工物でありながら意図せず生まれた、煌びやかな輝きを魅せてくれる。
そんな地上の星々も近くまで降りて見れば、道には廃棄物が散乱し、路地の隅は腐臭で満ちている。
どんなに美しいものでも近づけば「あら」が目立つ。ならば美しさを保つのは、視点を遠ざけるのが秘訣だろうか。
普段はそれに加えて自動車などの走行音が付いて回るのだが、ここではそれはないようだ。
その高き視点から、赤き弓兵―――アーチャーは地上を見下ろしていた。

あのあとにアーチャーはひとまず建ち並ぶマンションのこの一室に身を潜めた。
気絶した少女1人を抱えてこの戦場を練り渡るのは危険極まる行為なのは明らかだ。
幸いここは高層マンションが立ち並ぶ近代都市、身を隠すには都合のいい地点だった。
そうするのも、主催者とやらの思惑なのだろうか。
保護した少女はベッドに横たえてある。
多量の出血を見たことによるショックの気絶のようだからそう長引きはしない。じきに目を開けるだろう。
衣服を汚してしまっているので少々無礼だが、部屋の一室から下着類と適当に見繕った衣服を並べて置いておく。
それと気を落ちつかせるために紅茶でも淹れようとしたのだが、これがどうして万全に整っていた。
正確にはこれらはこの部屋にあったものではなく自身の手荷物に包まれていたものだ。
選りすぐられた様々な種類の茶葉、厳選されたポット、カップ、スプーン、etc……
無駄に、異様に、必要以上に取り揃えられていた。
少し、主催の意図を掴みかねたアーチャーだったが、一種のからかいだろうというところで落ちついた。
癪なものもあるが、ある以上は、使えるものは使うというのが彼の信条でもある。
一応毒の有無も確かめ、支度にとりかかった。


水道、ガス、電気は全て付いていた。部屋の照明は外から気付かれるので切ってあるが。
ポットは先に暖めておく。そうしないと注いだお湯の温度が下がるからだ。
次いでポットに茶葉を入れる。やや大きい葉なのでティーメジャーで山盛り一杯約3グラム。これで1人分。
沸騰した湯は素早く注ぐ。でないと紅茶の成分が抽出されない。
あとは時間をかけて蒸らす。熱湯を注がれたポットの中では茶葉が緩やかに上下に動く。
ジャンピングとよばれる、紅茶の味を引き立たせるのに必須な工程だ。待つ間は大よそ三分以上。
ゴールデンルールと呼ばれる、最も普及、かつ伝統的に伝わる紅茶の淹れ方だ。
出来は上々。生前の経験により家事及び諸事全般が卓越している執事のサーヴァント・バトラーの本領発揮である。



「………………はっ」

我に帰るように漏らすアーチャー。
ここまで終えて、ようやく自分のしていることの気の抜け様に気付いたらしい。
ここで茶を淹れてる位なら外で見張りをしてる方が遥かに効率的なのではなかったのではなかろうか。
……いくら否定したくとも、冬木のブラウニーの異名は来世まで付き纏っているのかもしれない。

「……まあ、淹れたものは仕様がないな」

既に茶に湯を注いだ手前、無駄にするのも何か、気が引ける。
気絶した少女一人を残しておくというのも不安がらせてしまうことになる。
そういうことでひとり納得することにした。

―――それに、時間が欲しかったのも事実だ。
今の自分の状況、ここで行われている実験、これからの行動、考慮することは幾らでもある。
茶が蒸すまでの時間、それに時間を費やすのも悪くない。
ソファに腰を下ろし、そうしてしばらくの間を脳内での思考を構築していった。







まず、今自分の置かれた状況。
ここに来られる前の最後の記憶は鮮明に憶えている。
朝焼けの丘。聖杯戦争の終わり。
遠坂凛。己のマスター。
目元を滲ませながらも笑みを崩さない少女。
その狂おしいまでの感情は、今も色褪せることなく脳裏に焼き付いている。
今この瞬間だけの誓いを胸に、自身は再び守護者の任に戻されるはずだった。
『守護者』に記憶の引き継ぎはない。感情の保持はない。
世界を救うただの力として行使され、役目を終えた後消滅する。
知っているのも、ただ広大な本棚に置かれた一冊の本の様に記録されるのみだ。
よって別の、過去か未来の己がその本を読んだところでなんの感慨も湧くことはない。
『5度目の冬木の聖杯戦争で召喚されたアーチャー』でなければ、そこに綴られた感慨を知ることはない。
ならばこの自分は、その『座』へと帰る直前に道を逸らされた、という認識で間違ってはいないだろう。
自信に気付かれることなく聖杯に介入しサーヴァントを、英霊を掠め取る。
可能かどうかはここでは置いておく。そもそも主犯の正体すら掴めていないのが現状なのだから。

手の平を見下ろす。魔力はどうやら補充されているようだ。
消滅には程遠く、だが全力を振るうにはやや不足している量。
「2日間戦い続けろ」というのなら絶妙な塩梅だろう。



それででこの見知らぬ土地で何をさせられるのかといえば、シンプルに一言で表せば声の主の通り、殺し合いである。

誰が?何のために?

正体は未明、目的も不明。
だが、ヒントは多く散りばめられている。そのひとつが名簿だ。
ここに記されている名でアーチャーが知る者は4人。大なり小なり関わりのある人物だ。

衛宮士郎。これはもう言うに及ばない。自分にとっての目的であったが、今はその執着も失せている。
語ること、吐き出すものは吐き出したのだ。生きていれば、知らずまみえるだろう。

言峰綺礼。聖杯戦争の監督役。直接の面識の機会などなかったが、直観として良からぬ結果をもたらす気配がある。
監督役としての責務のないここで何をする気なのか、注視ておいて損はない。

間桐慎二。はっきりいって彼は無力だ。だがそれ故に逸脱した行為に踏みかねない。
聖杯の不敵な器とされたところを凛に救われたのなら少しは丸くなってるやもしれないが、楽観できるものではない。

藤村大河。彼女は紛れもない一般人だ。この殺し合いに抗する力を持たない、善良な人間だ。
別段縁故があるわけでもないが保護の対象ではある。それ以外に気にするようなことはない……はずだ。

アーチャーに関してはこんなものだが、他の参加者にとってはそうではないかもしれない。
家族、恋人、友人、宿敵。何らかの繋がりがある者同士をまとめて攫っていってるのではないか。
会いたい者。守りたい者。殺したい者。
これらは十分、危険を冒して動く理由になる。
ひとり民家の中で震えながら期限を待つ、という行動を取るのはごく少数と見ていいだろう。

それはそのまま参加者同士の遭遇を高める意味を持つ。
殺し合いと銘打った以上、殺人を是とする者は当然集められているだろう。
この名簿は参加者の名が記された紙以上に、殺し合いを促進させる心理トラップの側面を持っているのだ。

与えられたもう一つのヒントは組み分け、チーム戦というルールだ。

HorはIsiを守り、Setを全滅させる。
SetはHorを全滅させる。
Isiは唯々生き延びる。

一見すれば実に不平等なルールだ。
Horは特定の人物を殺しながら、なおかつ守らなければならない。
だが誰がどのグループに分けられているか判別できない序盤ではその行動には移りづらい。
特にSetは全員皆殺しに等しい。
それに反してIsiは特別な条件がない。守ろうが殺そうが自由なのだ。
もしなんらかの手段で自分の陣営が分かり、それがSetであれば生き残ろうとする気も喪失しかねない。

だが、ここで違う視点でこれらを眺めてみる。
虫も殺せない非力な人間がSetでは不平等に過ぎる。
では容易く人を殺せ、かつ殺人を躊躇しない人物だったら?

HorはIsiを守り、襲いかかるSetを撃退できるだけの力を持つ者、
いやむしろ、率先して人を守ろうとする行為に踏み切る人物ばかりだったら?

Horの勝利条件は単純だが、それは生き残る手段が余りに少ない、誰かを害するだけの力がない者しか組み込まれていないとしたら?

その過程を踏まえると、この殺し合いの意味合いが変わってくる。
これだけの人数を拐してわざわざ組ごとにルールを設定した以上、単に名前順やランダムではないだろうとは思っていたが―――

守る者。殺す者。そして守られ、殺される者。
正義と、悪。
この組み分けがその法則で分けられているとしたらこの実験とは―――



(だが……まだ、断定には早いな)

そこまできて、アーチャーは考察を打ち切る。
仮定はあくまで仮定、個人の脳内で構成された幻想に過ぎない。
この地に足を付けてからまだ半日も経っていない。人間にも殆ど接触していない。
まだ物証があまりにも足りな過ぎる。
仮定を定めたのならその実証に移るべきだ。推察に関しては、保留にしつつ時間と共に進めていけばいい。


そう考えを巡らすと、これからの行動の指針も立ってくる。
まず、参加者との接触は積極的にすべきだろう。この場に置いて情報は単純な力量より価
値がある。
情報を共有しそれを広めることで、会場内で起きる疑心暗鬼を早めに収束させる。
単独行動はアーチャーの得意分野だ。同士撃ちの防止にも一役買える。
この序盤で積極的に殺戮に臨んでいるのは高確率でSetであろう。そもそも組み分けなど意に介さないという連中も多いはずだ。
そういう手合いに対しての抑止としても、存在は広く知らせておきたい。
……そのために血を撒くことに、命を摘むことに忌避はない。
忌むにはもう、数を重ね過ぎた。感覚が麻痺してしまった。
だが、今の自分は『守護者』との枷から外れている。
そしてサーヴァントとしての願いも、もう持ち合わせていない。
ならばこの身は、この感情は、■■■としての、己個人としての存在だ。
彼女の笑顔に応えることも、「オレ」の望みを叶えるのも、間違いではないだろう。

そうなるとあの少女はむしろ枷になることに、不満はないが不安はある。
自分のこれからの行いは日常を謳歌してきた一般人には苛烈すぎる。
信頼できるHorを見つけたらそこに託すのがいいだろう。
それまでは、派手に動き回るのは控えてた方がいいか。



部屋の外から、音が聞こえた。
寝室からの、少女のか細い声が。
目を覚ましたようだ。見れば丁度茶も準備が整っていた。
気が動転してるだろうからまずは落ちつかせるのが先決だ。
そうしたら当面は、彼女を護衛しつつ殺し合いに乗ってない参加者との接触に向かおう。
ティーカップに赤い水を注ぎ、寝室へと足を運んでいく。



答えは得た。
頑張っていくと誓った。
だから、大丈夫だよ遠坂。
あの笑顔を曇らせないためにも、今はこの心のままに動こう。






「…………あう?」

つい、間抜けた声を出してしまう。
目元をこすりながら、武藤まひろは目を開けた。
暫くぼーっとしていたが、次第に視界も開けあたりを見回してみる。
今、自分はベッドで寝ている。体重をかけるたびに下が沈み、ボヨンボヨンと軽快に跳ねる。
よくわからないがとても高価らしく、いつも寄宿舎で寝ているベッドとは全然違うのはわかった。

……夢?

夢、なのかな。あの怖い出来事も。あの怖い人も。
あの助けてくれた赤い人も。
こんな夜遅くならすぐに眠くなってもおかしくないのに私の目は冴えている。
起き上がろうと思って、下半身、特に股のあたりに冷たい感触が襲う。
視線を下ろしてみると、水に濡れたスカートとショーツ。それが意味するものはとても分かりやすい。
途端、顔から火が出るほど恥ずかしくなってきた。学校での出来事ではそんなことにはならなかったのに。
それは対象が人ならぬ化物であったからなのか。それとも身を呈する友達がいなかったことなのか。
どうしようものかと立ち往生していると、隣に綺麗に折りたたまれていた下着類が目に付いた。
あたりを少し見渡した後、腰に手を当てる。
用意されていた下着はどれもサイズがぴったりで、始めから彼女の為にあったかのようだ。
そこに気味の悪さを、まひろは感じはしなかった。

不意に、扉を叩く音が小刻みに鳴らされる。
それは、この薄い木の扉一つを挟んで「誰か」がいるということ。

「あ、はーい。ちょっと待って下さい!」

そこに悪感情を持つことなく、まるで宅配便が家に来たかのような軽さで応対するまひろ。
それは果たして能天気なのか、芯の強さ故なのか。

着替えは完了。衣服もあったのだがほぼ乾いていたし、この制服はお気に入りなのもあって、脱ぐことはしなかった。
身なりが整ったことを確認し、まひろは許可の返事を返す。
開かれた扉からは、片手に盆を乗せた、大人の男性が姿を見せた。


不思議な姿をした人だった。
髪肌は浅黒く、髪は白い。その色合いはなんだか、擦り切れた印象を持たせる。
瞳は鷹のように鋭く、けれど恐ろしさを感じさせない気遣いを思わせる。
黒服の上には鮮烈に赤い服を纏い、否が応にも強く印象に残る。

「……異常はないようだな。それだけでも僥倖だ」

そっけない感じで声を出す男。
そこには本当に安心したような、それだけで報われた思いを感じたのは気のせいだろうか?

「自己紹介がまだだったな。私の名はアーチャーという。差し支えないようなら、君の名前も教えてもらえないだろうか」

丁寧に自己紹介をする男性―――アーチャーさん。
不思議な名前だけど、外国の人はこんなものかとまひろは思う。

「あ、えっと、銀成学園一年A組武藤まひろですっ!」

多少たじろぎながらも応対するまひろ。するとアーチャーさんは腰を下ろしたと思うと、傍の棚にお盆に乗せていたカップを置く。
鼻孔をくすぐるほのかな香り。どうやら紅茶みたいだ。

「まひろ、だな。まずはそれを飲んで落ち着くといい。話すことも多いだろうしな」

湯気を出してカップの中で揺らめく赤い液体。
それを見て、なぜだか肩が震えていた。それほど寒い所じゃないけど、私は寒さを感じていたらしい。
両手でカップを手に取り、その温度を味わう。息で冷ましながらゆっくりと口に流し込んだ。
瞬間。ゆっくりと、私はその味に呑みこまれた。

口に広がる紅茶の風味。鼻と舌で、その深みを堪能する。
暖かみが喉から通って、体中に広がっていく。寒さはいつの間にか消えていた。
特有の苦みも、おいしさを引き出すエッセンスとして機能している。
紅茶をこんなに深く味わったのは生まれて初めてだ。もうこれは芸術だ。
今まで自分が飲んでいた紅茶はなんだったのか。ひょっとしてあれは紅茶じゃなかったのだろうか。
ティーパックとか高級品とかそんなチャチなもんじゃあない、もっと恐ろしい執事の片鱗を味わった……。

「おいしい……!」

「そうか。お褒めに預かり何よりだ」

小さく微笑みながら椅子に腰を下ろすアーチャーさん。
私の反応にとても満足したようだ。それを見て、私もにっこりと笑う。
そんな真夜中ティータイムで、私とアーチャーさんとのお話ははじまったのでした。


【I-9/市街地・マンション内:深夜】

【アーチャー@Fate/stay night】
[属性]:正義(Hor)
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:基本支給品、高級お茶会セット、不明支給品0~2(確認)
[思考・状況]
基本行動方針:目に映る限りの人を救う
0:武藤まひろと話をする。
1:情報を収集し参加者とのパイプを作り、疑心による同士撃ちを防ぐ。
2:当面は武藤まひろを守り抜く。信頼できる相手がいたらそこに託す。
3:Horは人を守る者、Setは人を殺す者、Horは力を持たない者?
[備考]
登場時期はUBW終了後(但し記憶は継続されています)
投影に関しては干将・莫耶は若干疲労が強く、微妙に遅い程度です。
他の武器の投影に関する制限は未定です。

※高級お茶会セット
至高の茶葉と茶器の詰め合わせ。お茶菓子付き。
少なくとも紅茶類は数種類ある。



【武藤まひろ@武装錬金】
[属性]:一般(Isi)
[状態]:気絶
[装備]:無し 
[道具]:基本支給品、不明支給品0~2(確認済) ワルサーP99(16/16)@DEATH NOTE ワルサーP99の予備マガジン1
[思考・状況]
基本行動方針:人は殺したくない
1:アーチャーさんと話をする
2:お兄ちゃん………
【備考】
参戦時期は原作5~6巻。カズキ達の逃避行前。


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闇を斬り裂く一筋の光 アーチャー BATMAN:Tales of the Devil
武藤まひろ









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