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悪夢のプレリュード ◆uBMOCQkEHY氏


「困ったな…」
結城美知夫は薄暗い月光だけが頼りの深い森の中を彷徨いながら、深いため息をついた。
結城美知夫——アメリカが開発した殺人化学兵器MWで全人類を死に至らしめようと目論んだテロリスト。
その計画は、彼の兄である河本玉之丞と、彼と肉体関係を持つ賀来巌によって阻止された。
未遂に終わった人類滅亡計画であるが、これが世界に与えた影響は大きい。
マスコミはこぞって事件について報道した。
計画を遂行するために行った連続殺人や売女のような経歴と絡めながら。
結果、結城の顔は世界中に知られるようになってしまった。
殺人、同性愛、窃盗、暴力——これらの禁忌を犯してきた結城を、世界中の人間はこう罵るはずである。
“この悪魔めっ!!”と。

何者かの陰謀によって、結城は殺人ゲームに強制参加させられてしまっているが、結城の顔を見れば、皆警戒することは必須。
中には身の危険を感じて、問答無用で結城を襲う人間も現れるだろう。
結城は別の人間になる必要があった。
本来であれば、結城と瓜二つの河本玉之丞だと名乗って誤魔化せばよかった。
しかし、参加者全員の名が記載された名簿の存在がそれを許さなかった。
「まぁ…悪いことばかりではないんだが…」
幸いなことに、悪魔は彼に“味方”してくれていた。
しかし、その力は微々たるもの。
もう一歩、力が欲しかった。
「さて…どうしたものか…」
その時、背後で砂利を踏む音がした。
「何だ…」
結城は振り返った。
そこには一人の少女が立っていた。
流れるような黒髪に、あどけなさが若干残る優しげな表情。
その割にその肉体は成人女性のような成熟さを感じさせた。
薄紫色のブレザーの制服を着ていることから、どうも高校生のようである。
森のどこかで拾ったのであろう丸太を結城に向けて構えている。
少女は怯えた声で尋ねた。
「あ…貴方は今、一人ですか…それで…」
おそらく少女がこの先、口にしたい言葉は“殺し合いに乗っていますか?”だろう。
その少女の言葉を察し、結城はバックパックを降ろし、手をあげた。
「信じてもらうのは難しいかもしれないが…私は殺し合いに参加していない…
それに武器になりそうなものは持ってはいないんだ…
もし良かったら、その鞄を君に預けても構わない…」
結城ははにかんだ笑みをこぼしながら、少女を眺める。
少女は怯えている様子ではなるが、その怯えはテロリスト、結城美知夫に遭遇したからというよりも、突然、殺し合いの会場に飛ばされてしまったことによる心細さからのようである。
どうやら、結城の正体には気づいていないようである。
結城は含みを持った笑みを浮かべた。
(これは好都合…)
「よかったら、僕と一緒に行動しないか…?
僕はたいした腕っぷしを持ち合わせてはいない…
だけど、生き残りたいんだ……仲間は多い方がいい…
…ダメかな…?」
結城の言葉を受け入れたのか、少女は丸太を降ろし、頭をぺこりと下げた。
「すみません…疑ってしまって…」
「構わないよ…状況が状況だからね…」
結城は苦笑を浮かべた。
少女は申し訳なさそうに自己紹介する。
「あの…私の名前は七瀬美雪と申します…貴方は…」
「僕の名前は…」
結城の言葉がとまる。
ここで素直に名前を出せば、少女——七瀬美雪は一目散に逃げ出すだろう。
結城は逡巡し、名乗った。
「賀来…巌…それが僕の名前です…」

二人は軽い自己紹介を終えると、近くの茂みの中に腰を下ろした。
姿を隠したのは、自分たちが狙われることを避けるためである。
丁度茂みの中に平べったく、腰を落ち着かせるに丁度よい高さの岩があった。
二人はこの岩の上に参加者名簿を広げた。
月明かりが名簿と二人を照らし出す。
二人は名簿を見ながら、 『“バットマン”や“ジョーカー”っておかしな偽名の人もいるんだ』などと、談笑しながら情報交換する。
美雪は“う〜ん”と少女らしい悩ましげな声を洩らしながら、名簿を目で追う。
「えっと……私の知り合いは…金田一一…はじめちゃんに、剣持警部…それから…」
結城は美雪に気付かれない程度に眉を顰めた。
「君は…刑事さんと知り合いなのか…」
結城は犯罪者である。
美雪が気付いていなかったとしても、警察官であれば結城の存在は周知の事実。
すぐにその身を拘束するだろう。
(厄介だな……)
そんな結城の心情など露知らず、美雪は苦笑を浮かべる。
「よく…事件に巻き込まれていましたから…」
「事件…?」
「私の幼馴染のはじめちゃんって、探偵の金田一耕助の孫で、これまで色々な事件を推理して解決してきたんです…」
結城は感心するかのように、“ほう”と相槌を打つ。
「素晴らしい少年だな…で、その過程で、刑事さんと知り合いになったってわけか…」
美雪は一が高評価されたのが嬉しかったのか、誇らしげに“そうなんです”と頷く。
「あとは…」
その時、美雪の目がある参加者の名前を捉えた。
その表情から笑顔が消えていく。
美雪は憮然としたまま、名簿に記載されているある人物を指差した。
「高遠遙一…彼ははじめちゃんが追っている凶悪犯…「犯罪芸術家」って自称していて、何人もの人を殺しているんです…彼がこの名簿の中で、多分…一番の危険人物…!」
「高遠遙一…」
まるで悪を憎むかのように名簿の高遠の行を睨みつける美雪の横顔を眺めながら、結城は考察する。
結城自身、日本、海外問わず、犯罪者のことは調べ上げているが、高遠遙一なる人物は耳にしたことがない。
自分の調査が甘かった部分もあったかもしれない。
しかし、一人殺害しただけで騒ぎ立てるのが今のマスコミである。
美雪の言うように何人も殺害をしているのであれば、ワイドショーのネタとなるのは目に見えている。
なぜ、マスコミは彼を報じなかったのか。それとも…
「あの……」
突然、黙ってしまった結城の顔を美雪が不安げに見つめている。
我に返った結城は照れ笑いを浮かべながら、美雪の話を聞いていなかったことを詫びる。
「すまない…考え事をしていたもので…とにかく高遠遙一は危険人物なんだね…その名は覚えておくようにするよ…」
美雪は結城の言葉を聞いた途端、訝しげな表情を見せた。
「あの…高遠遙一のこと…知らないんですか…?随分、マスコミにも取り上げられていたんですけど…」
「えっ…」
結城は言葉を失う。
前述したとおり、結城は高遠遙一という名をテレビの画面で見たことなどない。
むしろ、結城の記憶が正しければ、当時マスコミが取り上げていたのは高遠遙一ではなく、結城美知夫だった。
なぜ、彼女とこれほどまで意見が食い違うのか。
ここで結城にある考えが過る。
その答えを確かめるため、結城は尋ねた。
「結城美知夫って、人物を知っているかい…?」
美雪はキョトンとした表情を浮かべるも、すぐに首を横に振る。
「いいえ…知り合いですか…?」
結城の中で答えに手ごたえを覚えた。
(もしかして、彼女と俺は……)

——別の世界から来た人間。
考えてみれば、このゲームに連れてこられる過程からしておかしかったのだ。
この会場に飛ばされる前、結城は“河本玉之丞”として、ソファにもたれ、テレビを見ていた。
己の計画を推理する滑稽なコメンテーターを嘲笑いながら。
ひとしきり笑った後、とりあえず睡眠を取ろうと、ソファから立ち上がったその時だった。
床がスパッと抜けた感覚を覚えた。
身体が軽くなり、何が起こったのだと見渡した時、視界に飛び込んできたのがあの暴力的な白い光だった。

説明のしようがない、異形の力による空間移動。
あまりにも非現実なことであるが、事実であることに変わりはない。
もし、ほかの参加者も美雪と同じように別の次元から連れてこられたのであれば、名簿に日本人どころか、人間ですら怪しい名が連なっていることも頷ける。
結城は美雪を見つめた。
(つまり、俺が思っているよりも、俺の存在を知る人間は少ない…だが、用心するにこしたことはないな……)
結城は教師のように、丁寧にかつ穏やかに、“結城美知夫”について説明する。
「彼は…MWという化学兵器を使って、世界を滅亡させようとした犯罪者…とても危険な人物さ……そして……」
結城は笑顔と悪意が入り混じった禍々しい鬼の形相を見せた。
「……俺のことさっ!!」
結城はその場にあった石を拾うや否や、美雪の顔面を殴ったのだ。
ゴッと骨が砕ける音と共に、美雪の額から鮮血が迸しる。
「あぁあぁあぁああっ!!!!」
まるで焼き鏝をされたかのような鈍痛。
美雪は自分の身に何が起こったのか理解できず、錯乱した悲鳴を張り上げながらその場に倒れ込む。
結城は美雪に馬乗りになると、その悲鳴を潰すように美雪の首を締めあげた。
「あ……かは……」
美雪はこの場を打開しようと、手足を必死にばたつかせる。
しかし、悲しいかな。
結城は美雪の抵抗が想定済みだったらしく、両膝で美雪の両腕を押さえ、その動きを殺していた。
美雪の陶器のように白い肌が、見る見るうちに酸欠独特の土色に変わり果てる。
美少女から骸へ——。
常人であれば、倫理感や死への忌避感から嫌悪感を覚えるだろう。
しかし、結城にとってはリトマス紙が変色していく過程に等しいこと。
結城は実験に心躍らせる少年のように、好奇心を秘めた瞳を輝かせながらで美雪の変貌を観察する。
「あ…そうだ……」
結城に疑問が浮かんだ。
偶然、通りかかった教師に尋ねるかのように、その疑問を口にした。
「そう言えば……君は処女かい?」




森の中は静寂に包まれていた。
その茂みの中、少女が横たわっていた。
その顔面は何度も殴られたらしく、顔は血で赤く染まり、皮を剥いた果実を連想させる程に骨と筋肉が露呈していた。
こうなるともはや少女が何者であったのか判別することは困難である。
それでもこの骸が少女であると認識はできる。
張りがある肌に乳房——少女の亡骸は一糸まとわぬ全裸だったからだ。


その少女の横で薄紫色のブレザーの着心地を確かめている人間がいた。
結城である。
結城は横たわる死体に自慢げに自身の姿を見せつける。
「美雪…どうかな……似合うと思うんだけど……」
勿論、少女——美雪からの返答はない。
「まぁ…当然か……」
その一人芝居に飽きたらしく、結城は気だるそうなため息をつきながら、“長い黒髪”をかき上げた。
そう、結城の“悪魔が味方したこと”とは支給品のカツラである。
結城は日常生活では黒ぶち眼鏡に、険しい人相という男性的な表情で過ごしているが、
実際は兄が女形をしているだけあって、恐ろしく中世的な顔をしている。
女装し、他人に化けることなど造作も無いことであった。
現に、結城は関都銀行新宿支店の支店長の娘、美保になり済まし、身代金を奪い、また、その顔で銀行強盗も行っている。
ちなみに、このカツラは3種類一セットであり、一つは栗色のツインテール、もう一つはピンクのセミロング、そして、結城が被っている黒髪である。
カツラの中ではその黒髪が一番美雪の髪型に近い。
しかし、美雪の髪が絹糸を束ねたような垂直なものであるのに対して、結城のカツラの黒髪は毛先にやや癖っ毛がある。
その髪型で美雪に変装したというのはいささか苦しいものもあるが、結城が求めているのは七瀬美雪という存在である。
この際、髪型は妥協するしかない。

七瀬美雪という偽名をあっさり結城は手に入れることができた。
しかし、この名は次の放送までしか使用できない。
放送で美雪の名が呼ばれてしまうからだ。
しかし、6時間もあれば、次の偽名を探すことはできるだろう。
万が一、見つからなければ、また、“結城美知夫”に戻ればよい。

「主催者が何を企んでいるのかは分からない……ただ、僕は生き延びる……生き延びて、また、世界を破滅へ導いてやる……」

結城が抱くのは失敗したMWによる人類滅亡のシナリオの再構築。
悪徳と虚栄に満ちた世界。結城の人生を歪ませ、その事実を隠して謳歌する世界。
その世界が崩壊していくのだ。
世界が虚栄と秩序を保つために切り捨てた結城という悪魔の手によって。
世界を包み込む灰色の地獄。
苦悶の表情を浮かべ死していく人々。
罪なき人々が理不尽に命を奪われる。
何と痛快なことだろう。

その汚物の如き、歪みきった美しい世界を想像し、結城は心の底から湧き出る哄笑を止めることができなかった。
【B-6/森:深夜】

【結城美知夫@MW】
 [属性]:悪(Set)
 [状態]:健康
 [装備]:丸太 私立不動高校制服 黒髪のカツラ
 [道具]:基本支給品、不明支給品1〜5 カツラ三点セット(栗色のツインテール、ピンク色のセミロング)
 [思考・状況]
 基本行動方針:生き延びて、世界滅亡の計画を築き直す
 1:次の放送前までに偽名を使えそうな人間を探し出す。
※金田一一、剣持勇、高遠遙一が美雪の知り合いであることを知っております。
 [備考]
 ※原作終了後からの参戦。

【七瀬美雪@金田一少年の事件簿 死亡】

【残り Hor:17名 Set:17名 Isi:25名/59名】


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実験開始 七瀬美雪 死亡
実験開始 結城美知夫 あなたって本当に最低の悪魔(メフィスト)だわ







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