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「「Lights! Camera! Action!」」(2010/09/21 (火) 00:49:47) の最新版変更点
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**「Lights! Camera! Action!」◆JR/R2C5uDs
人が。
人が。
人が、舞っていた。
人が。
人が。
次々と倒れ、或いはくずおれ、ただ物言わぬ物体と化していった。
四十二人が死に、四十六の死体が出た。
人が。
人が。
人が、これからまた、次々と死んでゆく。
赤い薔薇を、散らすように。
少女が走り去るのを見送って良かったのかどうか。
ニナ・フォルトナーの心には戸惑いが残っている。
ドイツ全州で起きた、「中年夫婦連続殺人事件」 の被害者の養女。
失われた過去。
呼び覚まされた"赤い薔薇の屋敷"での悪夢。
全ては、幼き日に別れた双子の兄、ヨハンの中の怪物によるもの。
ヨハンを怪物に育てた過去に纏わるもの。
なまえのないかいぶつ。
彼女は決意した。
全てを終わらせるために、兄を、自らの手で殺すことを。
決意した、はずだった。
目が覚めたとき、ニナは自分が死んでいない事を改めて確認した。
記憶を掘り起こし、足跡を追い、遂に出会った兄ヨハンを、彼女は殺せなかった。
かつて幼かった頃に"赤い薔薇の屋敷"に連れられて、そこで経験したこと。
それをニナは兄に話した。何日も何日もかけて話した。
何人もの人が、人が、人が、赤いワインを飲み、次々と、舞い踊るように斃れ、死んでいった事を。
それを聞き続けたヨハンは、ニナになった。いや、ニナがヨハンとなった。彼の記憶の中では。
ヨハンはその記憶を、自らの物として記憶してしまったのだ。
ニナが体験したこと、見たものを、自らの記憶である、自らの体験であると、そう思いこんでしまった。
なまえのないかいぶつ。
ヨハンが立ち去ってから、ニナは、自ら手にした銃で、自らを撃とうとした。
ヨハンを怪物にしたのは私だ。幼き日に、彼に与えてしまった記憶こそ、ヨハンが怪物なったはじまりなのだ。
そのとき、ドクター・テンマが現れ、ニナを止めようとし…。
撃った記憶もない。撃たなかった記憶もない。
しかし、死んでいない。死なず、何処にいたのかと言えば、何処とも知れぬ部屋の中だ。
辺り一面が鏡と、モニターに覆われている。
あの山小屋ではない。もちろん病院等の施設でもない。
人が、人が、人が、ざわめき、うごめき、そこかしこに漂っている。
アナウンス。何者かが言う。『実験に協力して貰う』。
そして、今、此処だ。
深夜、と言える程に暗い時間帯。
明かりはほとんど無く、無人の街。
命の気配のない街並みを見れば、あまりドイツらしく思えない。些か色合いが濃く、鮮やかで、どちらかというと南の色調。
洒落た石張りの街路に、所々に鮮やかな緑の生け垣。
そしてニナが居るのは、その一角のカフェテリアの中だった。
足元に置かれているバッグを、あまり意識のはっきりしないまま開ける。
水と食料。いくつかの包み。手帳。
中を開くと、地図、名簿、マニュアル……。
何だ、これは? いったい何が起きているのか?
"赤ん坊"や、チャペックの組織? いや、彼らにもはやこんな大きな力は残っていないはず。
まして、彼らの妄執は、こんな実験などを今更必要とはしていないはずだ。
既に、選別された怪物、彼らが王と掲げるべき人物、ヨハンは居るのだから。
分からない。何もかもが分からない。
分かるのは、名簿にある数人の名前。何より、兄、ヨハンの存在。
そして、手にしている、冷たい金属。
確認する。
それ、はしっかりと手に握られる。
それ、は死をもたらすものか。
それ、は助けをもたらすものか。
或いは。
足音がしたのは、そのときだ。
歩く、というより、走る。
目的があるのか、一直線に近づいてくる。
反射的に、ニナはカフェテリアの奥、カウンターの後ろに隠れる。
しかし視界は広く、全面ガラス張りの窓から、表の通りを見渡せる位置。
走る靴音は、確固としたリズムですぐに近づいてくる。
少女だった。
ニナよりも若い、まだローティーンの様に見える少女。
彼女は、こちらに気付いた風もなく、真っ直ぐに道を通り過ぎ、そのまま去っていった。
少女が走り去るのを見送って良かったのかどうか。
ニナ・フォルトナーの心には戸惑いが残っている。
こんな事態で、事前に「殺し合え」等と言われ、しかもその手段足る武器まで与えられている。
状況は知りたい。話もしたい。しかし、信頼に足るかどうかは、また別の話だ。
ニナは、走り抜けた少女を引き留める事を躊躇した。
それは単に、状況からくる恐れだけではない。
目。
迷い無く、一直線に走るあの少女の目。
まるで空洞のようなその目に。
無明の混沌を落とし込んだかのようなその目に。
言いようもない恐れを抱いたのだ。
ぼくをみて ぼくをみて
ぼくのなかのかいぶつが こんなにおおきくなったよ
息が荒くなり、心拍数が上がっているのが自分でも解る。
と同時に、果たしてあの少女が本当に走り去ったのか。
それを確かめずには居られない。
一歩。さらに一歩。
ニナはゆっくり、そして慎重に歩を進め、カフェの開けた窓へと近づく。
そのとき、だった。
「pusy cat baby、仔猫ちゃん、どうしたいそんなこわぁ~い顔しちゃって?」
ニナは、反射的に引き金を引いた。
◆◆◆
「聞いたか?」
「ああ、聞こえたぞ、衛宮上級生」
拙い、と士郎は歯噛みする。
最初に聞こえたのは、高笑いだった。
笑い、というべきか、怪音声とでも言うべきか。
それが笑い声だと分かったのは、一度それを耳にしていたからだ。
最初に居た、あの部屋、あの空間で、アナウンスの声に異議申し立てをしていた男の声。
決して相容れぬ事のない響き。そう、"邪悪な"響きだった。
聞こえたのは微か。決して近くではないが、遠くもない。
このコロッセオの周辺、何れか近くに彼の男が存在しているかもしれない事にいやな予感がする。
士郎はめだかと視線を合わせ、確認し合う。
おそらく、と、おおよその見当をつけ、走り出した。
地図によるとこの辺りの市街地は放射状に街路が延びているが、細かい路地が多く複雑である。
下手に横道に逸れると、簡単に方向感覚を失い、迷いかねない。
広い道にあたるまで、直線で進むのが順当だろう、としたあたりで、今度は銃声と、ガラスの割れる音がした。
拙い、と士郎は歯噛みした。
音は、その横道の奥からだった。
二人がそこにたどり着いたとき、走り去る一つの影と、仰向けに横たわる男の姿があった。
角にあるカフェテラスの、通りに面した大きなガラス窓は割れて飛び散り、ここで何らかの問題が起きたであろう事は一目瞭然。
何らか?
違う。
殺し合いだ。
誰かがこの男を撃ち、逃げ去ったのだ。
士郎が走るより先に、めだかが駆け寄った。
紫のスーツ、緑の髪。遠目に見ても異様な風体。
しかし、近づく度に感じられるこの違和感は何だ?
大股に近寄る士郎の目に、白面痩躯で、異様に引きつったような口元の男の顔が見える。
その口が、奇妙に歪み、
「黒神、待っ……」
HA HA HA HA HA
HA HA HA HA HA!
笑った。
二人の前で、男はくるっと足を振り上げて、ばね仕掛けのようにぴょんと立ち上がる。
そのまま、踵で2回転ターンをして、軽くタップを踏んでから、バっ、と二人に向き直った。
「遅いじゃねぇか、善良なるポーイスカウト&ガールスカウトの諸君。
今のはなかなか良いシーンだったぜ?
なんてったってこのジョーカー様が、何処の誰とも分からねぇ小娘に…
Bang! Bang!
撃ち殺されるなんて名場面が見れたんだからな!」
そう言って、再び大声で笑う。
確かに、ジョーカーと名乗ったこの男のスーツの腹に、銃創と思える穴が空いている。
しかし、死んで居るどころか、血の一滴すら見えない。
「貴様、無事なのか?」
めだかは顔色も変えず問う。
距離が近い、と、士郎が危惧するが、意にも介さないようだ。
「無事ぃ?」
けたたましい笑い声をピタリと止め、白面の男は聞き返す。
「無事かぁ? だってェ!? おい、待て、待て、待て、待て、違うだろ? 今は、そうじゃねぇよ。
無事ぃ? 違うだろ、何言ってんだ?」
まくしたてる。
「笑うところだろうが!?
まるで俺がハズしたみてーなリアクションとってんじゃねぇよ!
畜生、タイミングか!? おまえらが遅すぎたからか!?」
激しく怒鳴り出す。
先程までの躁状態とも言える高笑いと、一転した怒り様に、流石のめだかも眉根をしかめた。
士郎は再び警戒する。いや、警戒するというのは少し違う。むしろ、恐れというのに近いかも知れない。
危機や戦いに対する恐れ、ではない。士郎はそう言う場で怖じるタイプではない。
異質さ。噛み合わなさ。端的に言えば、狂気。
その片鱗への、畏怖。
ぴたり、と。またジョーカーの表情が止まる。
「はぁ~~~~~……。
やぁ~~~~~っぱなぁ~~~~~………」
溜息と共に、肩を落としてそう呟く。
「殺っちゃうっしかねぇなぁ~~~♪」
懐に、手を伸ばした。
士郎の認識よりも、めだかの速度は速かった。
厳密には、速いのではない。早い、のだ。
一つに、反応である。
ジョーカーが手を懐に入れるよりも、懐に手を入れようとする動きを、察知して対応した。
そしてもう一つは歩法だ。
それは剣道においては基本も基本の足運びであるが、それを黒神めだかの身体能力ですれば、ただの動きとはならない。
傍目の認識能力を、遙かに超える。
「貴様が無事なのは善哉。
だがその了見は頂けんぞ?」
めだかの左手が、ジョーカーの右手をがっしと掴み、動かない。
「…早いねぇ、お嬢ちゃん♪」
動かない、というより、動けないようだ。
ジョーカーの、痩せた、枯れ枝のような体躯で、この体勢を覆せるとも思えない。
・ ・ ・
「貴様も」
めだかが言葉を続ける。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「かつては純粋で冗談の好きな、愛らしい子どもであったに違いない」
突然の言葉に、士郎がやや面食らう。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「しかし不幸な環境と成育過程の愛情不足で、そのような不埒な言動をする捻れた性根に育ってしまったのだろう」
ジョーカーは口元を下げ、聞いている。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「私が、失われた幼年期の分、貴様に存分に付き合ってやろう」
言い切った。
士郎が、あまりの成り行きに言葉を失う。
常々、何かにつけてお人好しだと言われている自分ではあるが、この対応、この発言は、それにしても士郎の想定の範疇を超えていた。
だが。
「…なんで、ワカったんだ……?」
小さくか細い呟き。
「そうよ、俺ぁちっちぇえ頃からよ。いつも冗談を言っているようなガキだったさ」
ジョーカーの反応は、さらに士郎の想定の範囲を二重三重にも超えていた。
「貧乏暇無しとはよく言うが、俺のオヤジは違っていて、いつも飲んだくれちゃあオフクロや弟や、俺のことも何かってえとぶん殴る。
そりゃあヒデェもんさ。俺たちゃ青あざの無ェ日はなかったもんだ」
途方に暮れたような、何かを懐かしむような、不思議な表情を見せる。
「そんなオヤジが機嫌良くなるのは、俺が何か巧いギャグをやったときだけだ。
まあ、3回に2回はぶっ飛ばされたけどよ。でも、笑いってのは人を変える。俺ぁそう信じたね」
押さえられていた右手が、抵抗するでもなく力が抜けてゆく。
「けどな、あるときオヤジが、今までに無いくらいに怒って帰って来たんだよ。賭け事に負けたのか、仕事がまたクビになったのかぁ分からねぇ。
それでも、今まで以上にヤバいってのはすぐ分かったぜ」
視線が、めだかを越えた遠い空を彷徨っている。
「俺は、なんとかオヤジを笑わせよう、そうすりゃ機嫌も治るって、そう思って、ズボンのベルトをハズして、駆け寄りながら、ずでーっ…てな。
コケてみせたんだよ。こいつは、オヤジのお気に入りのギャグだった」
再び笑う。しかしそれは先程までの狂気に満ちたそれとは違う。まさに子どもの頃のような、あどけない微笑みだった。
「でも、その日は違った。それを見たオヤジは益々怒って、拳で俺をしたかに殴った。俺は意識を失って、気がついたら病院のベッドの上さ。
そんで、聞かされたんだよ。
オフクロと…ちっちゃなトミーが、オヤジに殴り殺されちまったって話をよ……」
その言葉が終わるかどうか。
めだかが、ビクリと痙攣した。
「おぉ~~~っと、動くなボーイスカウト」
駆け出しそうになる士郎を、ジョーカーが留める。
左手に、小さな銃に似た道具を持っていた。
「こいつは、えー…何て名前だったかな~~。
まあ名前なんてどうでもいいやな。
説明書きによるとな。
首輪に関しての機能を借り受けできるってーモノらしい」
ひらひらと手を振って、それを見せる。
「今この娘っ子に、電気ショックを与えたのも、その一つだ」
めだかは、立ったまま痙攣し、動けない。
「そんでこっちを押すと…」
士郎の頭に、最悪の予感が過ぎる。
「や、やめろ……!」
再び、めだかが激しく痙攣した。
「あ、同じボタン押しちまったぜ! 押すと電圧が上がる仕組みだな、こりゃ!」
おどけた口調で返す。
「ま、とにかく、よ」
軽やかな足取りで、半ばスキップをするように歩く。
「今、俺はいつでも娘っ子の首輪を爆発できるってわけだ。Boom,Boom,Boom! ってな」
ボタンを押すような、押さないような、そんな仕草を士郎へと見せつける。
「嘘をつけ…! そんな都合の良いもの…」
そんなものを主催者が渡してくるわけがない。
そう思う。
誰が考えても、これはそう考える。
そんなものがあっては、あまりに簡単すぎる。
「そうそう。そんなに都合は良かぁない。
まず、ターゲットの首輪をロックオンするのに、かなり近づかないといけねえ。
それと、1km離れれば、ボタンを押しても何ともならねぇ」
ロックオン。
そのために、敢えてめだかに攻撃するそぶりを見せて、近づかせたというのか?
「何れにせよ、今は"詰み"って状態だよなぁ~~~、娘っ子は~~~~」
歯噛みをする士郎。
ジョーカーの言うことが何処まで真実かは分からないが、今の情況は拙い。
迂闊にも、手には何も武器はなく、この距離を一気に詰めて、確実にあの装置を奪う、というのは、容易ではない。
「だが、今は押さない」
ジョーカーが、その装置を握ったまま、手をポケットにしまう。
いつでも押せる状態。しかし今は押さない、という。
「何故押さないか? さあ、考えろ。
A.俺様は実は凄く善人で、人殺しなんかしたくないから。
B.俺様は、美味しいものは一番最後に取っておく主義だから。
C.俺様は実は女の子には優しいから」
今度は真剣そうな、それでいて人を馬鹿にしたような表情を作りながら、続けて問う。
「D.………プロデューサーとして、おまえらに命令することがあるから」
◆◆◆
引き金を引いたのは、全くの事故だった。予期せぬ暴発。
殺意があってのものではない。
しかし、既にセーフティーロックを外して、いつでも撃てるように構えていた事に、言い訳は効かない。
「どう…しよう……」
何のために、あんな厳しい訓練をしてまで、銃の扱いを覚えたというのか。
これじゃまるで、始めて銃を手にしたずぶの素人ではないか。
自省をしている場合ではない。とにかく、この人の具合を確かめねば、と駆け寄ったそのとき、
「グフッ…」
男が、口元を押さえて咳き込んだ。
ニナは些かに混乱し、覗き込む程に近寄る。
「あ~~…だめだ、やっぱり俺は死ぬ、もうどうしようもない…これが俺の運命ってもんだ…」
「そんな…」
兄、ヨハンを殺すこと。怪物となり、ドイツ各地で人々を操り、多数の人間を殺し、破滅へと追いやってきたヨハンと自分の運命に、自ら決着をつけること。
それを心に決め、そのための訓練までした。
覚悟を決めていたはずだった。自分はこの手で、人を殺すのだ、兄を殺すのだと。
しかし、見も知らぬ誰かを、出会い頭に誤って殺すこと。
その覚悟までは、出来ていなかった。
「気にするな…お嬢ちゃん、こいつぁ事故だ、アンタが悪いんじゃねぇ…。俺はこうなる運命だったんだよ…」
顔を白く塗りたくった道化が、月明かりを浴びてそう囁く。
「だが…憐れな道化の頼みを、一つだけ聞いてくれ…」
ニナは、そのか細く小さな声に耳をば立てる。
「バットマン…あいつを探して、ここに連れてきてくれ……。憐れな道化が、此処で死んだと、伝えてくれ……」
「バットマン…そいつを探し出して、コロッセオまで連れてこい」
士郎に向かい、そう言い放つ。
「誰だ、それは…?」
「ん? ん? ん~~~?
俺が思うに、そいつはおまえらの同類だ。
頭がイカレていて、何かと他人の世話を焼いて、イチイチ首を突っ込んでは、物事をつまらなくしやがる。
この俺が! 最高のショーを計画して! 盛大な笑い死にパーティーをセッテイングしても!
あの野郎はノコノコ現れちゃあ、全部ぶちこわしにするのサ!
HA! 優れたコメディアンってのは、いつだって洒落の分からねぇ野郎に邪魔されるもんなんだよ! ええ、そうだろう?」
士郎はこの言葉の意味を、素早く正確に理解した。
つまりバットマンというのは、正義の味方なのだ。
「その…人を探すのね? けど、でも、あなたも…」
助けなければ。この男はまだ死んでいない。なんとか、なんとか出来るかもしれない。
傷口を確かめようと、手を伸ばすが、止められる。
「足音が…聞こえる。銃声を聞きつけて、誰かが来る…。
こんな…ところを見られたら…お嬢ちゃんが危ない……。
ここは……ひとまず………」
ニナの脳裏に、先程の少女のことが過ぎった。
まるで空洞のような目をした少女。
無明の混沌を落とし込んだかのような目をした少女。
その一瞬の躊躇、その一瞬の逡巡に、さらに道化の言葉が滑り込む。
「お嬢ちゃんも、逢いたいヤツはいるだろ?」
◆◆◆
軽快に、ダンスのステップを踏むように、道化は屋根の上を歩く。
楽しげな、或いは今にも鼻歌でも歌い出しそうな風情だ。
「バァ~ッツ! 楽しいなァ、ええ、楽しいじゃねぇかよ、このイカレたゲームも、なかなかよ」
そう囁くジョーカーは、腹のあたりを軽く撫でさする。
けばけばの原色、色鮮やかな服の内側にあるのは、赤い胴当て。
ジョーカーの支給品の一つであったが、ジョーカーがこれを着込んだ最大の理由は、防弾防刃耐火性能を求めて、ではない。
これが、バットマンのサイドキック、ロビンのものだという点だ。
ロビンのチュニックを着込んでバットマンに見せびらかして、からかってやろうという、それだけの理由だった。
ただ思いの外、早いうちに、本来の役目を果たしたのだが。
そして、もう一つの支給品。
『カーラーコントローラー』と書かれていた、小さな装置。
首輪に関する一部権限を貸し与えられるというもの。
これが、黒神めだかの首輪に強烈な電気ショックを与えたものだ。
ただし、ジョーカーが士郎達に話した説明には、嘘がある。
ひとつは、これには首輪を爆発をさせる機能は、ない。
この装置が首輪を通じて出来る事は、3つある。
一つは、「首輪を4つまで、ロックオン出来ること」
逆に言うと、ロックオン出来ていない首輪に関しては、何も出来ない。
士郎にした説明のうち、「ロックオンするためにはかなり近づかなければならない」というのは本当だ。
ロックオンボタンを押した際に、接近して、きちんと方向を合わせておかないと、信号が届かない。
もう一つが、実際に使って見せた、「首輪の持ち主に強烈な電撃を浴びせる」 事だが、これに関しても嘘をついた。
実際には、1kmの射程範囲ではではない。
これもまた、ロックオン同様、数メートル程の近距離である必要があるのだ。
従って、この装置を使って誰かを殺そうとする場合、まずかなり近くに寄ってロックオンをし、さらには電撃でショックを与え、とどめに射撃武器を使う、という、非常に面倒くさい手順が必要になる。
実は一番有用な使い道は、最後の一つなのだ。
トレーサー機能。
ロックオンした首輪の持ち主がその時点で何処に居るかを追跡出来、さらには心拍数等の身体データを参照したりするなど、様々な情報を得られる。
駆けつけたときの二人の反応から、ジョーカーは黒神めだかと衛宮士郎が、「ヒーロー」側の人間だと察知した。
ならば、この装置を試してみるのには丁度良い。
案の定、それは当たった。
めだか本人や、同行していた士郎が、厄介なスーパーパワーを持っていたり、同行者の生死などおかまいなし、という手合いであったら逃げるしかなかったが、結果としてはおおむね問題なし。
このゲームをディレクションするのに相応しいキャストだったようだ。
先に銃を暴発させたニナに対しては、「自分の死をバットマンに伝えて欲しい」と伝言をした。
めだかと士郎には、「コロッセオで決着をつけるように呼び出せ」と伝えた。
コロッセオ。
古代ローマの闘技場を摸した巨大建築物。
こんな面白げなものが、真ん中にあるのだから、利用しない手はない。
いや、こここそ、自分がプロデュースする殺戮ショーのステージに相応しいではないか。
ジョーカーはそうも考える。
色んな奴らに、色んな嘘を吹き込んで、バットマンや、或いはバットマンの様なヒーロー気取りと、悪党共を一カ所に集めてやろう、と。
そしたら、奴らがどんな間抜けなアドリブを見せてくれるのだろうか? と。
仕込みに仕込んだギャグも良いが、時には即興のリズムに乗せたステージも悪くはない。
勿論自分なりの仕込みを考えてはおきたい。おきたいが、それはそれ。何よりもキャスティングも重要だ。
カーラーコントローラーに表示される情報を見る。
名前は黒神めだか。ジャパニーズのティーンエイジャー。
一緒にいた男の方はロックオンしていないため、情報は見れない。
しかし、手に取るように分かる。
お人好しの正義漢。殺し合い等という舞台に、似つかわしくない連中で―――だからこそ、是非ともキャスティングしたい連中。
ジョーカーは月を見上げて、高らかに笑う。
「ライツ! カメラ! アクション!
悪くねぇ、全然悪くねぇぜ、このショーの幕開けは」
◆◆◆
ニナは走っている。
何処とも目当てはなく、ただ闇雲に走り続けている。
混乱と恐慌と、疑念。
ヨハンと会い、そして殺そうとするが適わず。
自分を撃ち、死のうとしたが、それも適わず。
いつの間にか見知らぬ街に連れてこられ、誤って人を撃ち殺してしまった。
彼は本当に死んだのだろうか。
本当にヨハンはこの場所にいるのだろうか。
ドクター・テンマに逢わなければ。
バットマンを探さなくては。
あの少女はいったい何者で、何を目指していたのだろうか。
駆けつけようとしていた足音の主から逃げて良かったのだろうか。
あまりに多くの事が立て続けに起き、あまりに多くの事が変わってしまった。
ニナは走り続ける。
何処とも目当てはなく、ただ暗闇の奥、さらに奥へと向かって。
黒神めだかは、ただそこに立ち続けていた。
ジョーカーは二人に「命令」を与えると、今度は右手に持った奇妙な銃からワイヤーを発射し、それを使って近くの建物の屋根へと去っていった。
甲高い笑い声だけを残し。
「黒神…」
声を掛ける士郎に、力はない。
己の迂闊、己の無力故、彼の危険な男をみすみす逃がすことしかできなかった。
これが、自分だけの事であれば良かった、とは思う。
自分の首輪を爆破させると脅されたのであれば、まだやりようはあった。
しかし、めだかの命を、一か八かの賭けに使うことは出来ない。
「……衛宮…上級生」
近寄るが、めだかの吐き出す声からは、それでも恐れや不安の色はない。
「私は、怒っているぞ……」
あれほどの、傍目に見ても強烈な電撃を浴びせられても、めだかは悲鳴も上げなければ膝をつきもしなかった。
彼女の芯にある炎が、彼女を屈させなかったのだ。
しかし……。
ジョーカーの弁によれば、彼の男の1km以内にいれば、めだかはいつでも殺されてしまう。
また、もう一つ、二人がここに到着する前に立ち去った人物が居たことも気に掛かる。
結果、ジョーカーは銃弾を受けても尚死んではいないバケモノだったが、おそらくは彼を殺そうとして銃を撃った者も又、この近くに居るかもしれない。
士郎も、めだかも、この奇怪な実験に呼び出され、初めて出会った者同士が共に正義を求める人間だったから良かったものの、すぐ側には同様に、銃で人を殺そうとする者、それを受けても死なず、またさらには首輪を爆発させる装置で人を操ろうとする者も居たのだ。
ジョーカーによる「ロックオン」。
銃を撃った人影。
探すべきバットマンという「正義のヒーロー」。
行動に起こさねばならない。
しかし、気丈に振る舞っているめだかではあるが、あれだけの電撃を浴びて、体力も消耗しているはずだし、何より自分達の準備が不足していたのも感じる。
いずれにせよ、二人はただ暗闇の奥、さらに奥へと向かって、足を踏み出さねばならない。
【E-6/市街・屋根の上:深夜】
【ジョーカー@バットマン】
[属性]:悪(Set)
[状態]:健康
[装備]:アンカーガン、ロビンのチュニック
[道具]:基本支給品、カーラーコントローラー(1/4ロックオン済み)
[思考・状況]
基本行動方針:このゲームをとびっきりのジョークにプロデュースする。
1:とりあえずゴッサムタワーにでも向かう。
2:他に面白そうなヤツがいたらちょっかいをかけて、「バットマンをコロッセオにおびき出す伝言」をしてみる。
3:バッツ(バットマン)をからかって遊ぶ。
4:面白そうな、使えそうなヤツは、ロックオンしてみる。
[備考]
※黒神めだかを「ロックオン」済み。
※ロビンのチュニック@バットマン
バットマンの相棒、ロビンの防具。
ケブラー繊維を用いた三重構造の防弾仕様で、表面は優れた耐火性を誇るノメックス生地。
※カーラーコントローラー@オリジナル
・近距離にて装置を向け、ロックオンボタンを押すことで、首輪を4つまで、「ロックオン」する事が出来る。
・「ロックオン」した首輪の持ち主に関して、現在地や名前その他のプロフィール、健康状態など、装置で様々な情報が確認できる。
・近距離において、その首輪の持ち主を一時的に行動不能に出来るだけの電撃(或いは他の何か)を浴びせることが出来る。
【E-6/市街・路地裏:深夜】
【ニナ・フォルトナー@MONSTER】
[属性]:その他(Isi)
[状態]:健康、混乱
[装備]:ハンドガン
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0~2
[思考・状況]
基本行動方針:
1:落ち着く
【E-6/市街・カフェテリア前:深夜】
【黒神めだか@めだかボックス】
[属性]:正義(Hor)
[状態]:健康、電撃による体力の消耗
[装備]:
[道具]:基本支給品、不明支給品1~3
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いを止める
1:衛宮上級生と行動を共にする
2:ジョーカーを追うべきか? 謎の人影を確認すべきか? バットマンを探すべきか?
[備考]
※第37箱にて、宗像形と別れた直後からの参戦です。
※ジョーカーの持つ装置により、「ロックオン」されているため、現在地他多くの情報が筒抜けになっていますが、本人は気付いていません。
※ジョーカーの持つ装置により、「ロックオン」されているため、1kmの範囲内では、ジョーカーによって電撃、または首輪の爆発をさせられる、と聞かされています。
【衛宮士郎@Fate/stay night】
[属性]:正義(Hor)
[状態]:健康、若干の困惑
[装備]:
[道具]:基本支給品、不明支給品1~3
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いを止める
1:めだかと行動を共にする
2:ジョーカーを追うべきか? 謎の人影を確認すべきか? バットマンを探すべきか?
[備考]
※参戦時期は後続の書き手さんにお任せします。
*時系列順で読む
Back:[[20世紀中年]] Next:[[悪ノ王]]
*投下順で読む
Back:[[20世紀中年]] Next:[[悪ノ王]]
|[[宣戦布告だ]]|[[黒神めだか]]|[[理性と感情の差異]]|
|[[宣戦布告だ]]|[[衛宮士郎]]|[[理性と感情の差異]]|
|[[Crazy Wonderland]]|[[ジョーカー]]|[[王と道化師]]|
|&color(cyan){実験開始}|[[ニナ・フォルトナー]]|[[記憶の欠片]]|
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**「Lights! Camera! Action!」◆JR/R2C5uDs
人が。
人が。
人が、舞っていた。
人が。
人が。
次々と倒れ、或いはくずおれ、ただ物言わぬ物体と化していった。
四十二人が死に、四十六の死体が出た。
人が。
人が。
人が、これからまた、次々と死んでゆく。
赤い薔薇を、散らすように。
少女が走り去るのを見送って良かったのかどうか。
ニナ・フォルトナーの心には戸惑いが残っている。
ドイツ全州で起きた、「中年夫婦連続殺人事件」 の被害者の養女。
失われた過去。
呼び覚まされた"赤い薔薇の屋敷"での悪夢。
全ては、幼き日に別れた双子の兄、ヨハンの中の怪物によるもの。
ヨハンを怪物に育てた過去に纏わるもの。
なまえのないかいぶつ。
彼女は決意した。
全てを終わらせるために、兄を、自らの手で殺すことを。
決意した、はずだった。
目が覚めたとき、ニナは自分が死んでいない事を改めて確認した。
記憶を掘り起こし、足跡を追い、遂に出会った兄ヨハンを、彼女は殺せなかった。
かつて幼かった頃に"赤い薔薇の屋敷"に連れられて、そこで経験したこと。
それをニナは兄に話した。何日も何日もかけて話した。
何人もの人が、人が、人が、赤いワインを飲み、次々と、舞い踊るように斃れ、死んでいった事を。
それを聞き続けたヨハンは、ニナになった。いや、ニナがヨハンとなった。彼の記憶の中では。
ヨハンはその記憶を、自らの物として記憶してしまったのだ。
ニナが体験したこと、見たものを、自らの記憶である、自らの体験であると、そう思いこんでしまった。
なまえのないかいぶつ。
ヨハンが立ち去ってから、ニナは、自ら手にした銃で、自らを撃とうとした。
ヨハンを怪物にしたのは私だ。幼き日に、彼に与えてしまった記憶こそ、ヨハンが怪物なったはじまりなのだ。
そのとき、ドクター・テンマが現れ、ニナを止めようとし…。
撃った記憶もない。撃たなかった記憶もない。
しかし、死んでいない。死なず、何処にいたのかと言えば、何処とも知れぬ部屋の中だ。
辺り一面が鏡と、モニターに覆われている。
あの山小屋ではない。もちろん病院等の施設でもない。
人が、人が、人が、ざわめき、うごめき、そこかしこに漂っている。
アナウンス。何者かが言う。『実験に協力して貰う』。
そして、今、此処だ。
深夜、と言える程に暗い時間帯。
明かりはほとんど無く、無人の街。
命の気配のない街並みを見れば、あまりドイツらしく思えない。些か色合いが濃く、鮮やかで、どちらかというと南の色調。
洒落た石張りの街路に、所々に鮮やかな緑の生け垣。
そしてニナが居るのは、その一角のカフェテリアの中だった。
足元に置かれているバッグを、あまり意識のはっきりしないまま開ける。
水と食料。いくつかの包み。手帳。
中を開くと、地図、名簿、マニュアル……。
何だ、これは? いったい何が起きているのか?
"赤ん坊"や、チャペックの組織? いや、彼らにもはやこんな大きな力は残っていないはず。
まして、彼らの妄執は、こんな実験などを今更必要とはしていないはずだ。
既に、選別された怪物、彼らが王と掲げるべき人物、ヨハンは居るのだから。
分からない。何もかもが分からない。
分かるのは、名簿にある数人の名前。何より、兄、ヨハンの存在。
そして、手にしている、冷たい金属。
確認する。
それ、はしっかりと手に握られる。
それ、は死をもたらすものか。
それ、は助けをもたらすものか。
或いは。
足音がしたのは、そのときだ。
歩く、というより、走る。
目的があるのか、一直線に近づいてくる。
反射的に、ニナはカフェテリアの奥、カウンターの後ろに隠れる。
しかし視界は広く、全面ガラス張りの窓から、表の通りを見渡せる位置。
走る靴音は、確固としたリズムですぐに近づいてくる。
少女だった。
ニナよりも若い、まだローティーンの様に見える少女。
彼女は、こちらに気付いた風もなく、真っ直ぐに道を通り過ぎ、そのまま去っていった。
少女が走り去るのを見送って良かったのかどうか。
ニナ・フォルトナーの心には戸惑いが残っている。
こんな事態で、事前に「殺し合え」等と言われ、しかもその手段足る武器まで与えられている。
状況は知りたい。話もしたい。しかし、信頼に足るかどうかは、また別の話だ。
ニナは、走り抜けた少女を引き留める事を躊躇した。
それは単に、状況からくる恐れだけではない。
目。
迷い無く、一直線に走るあの少女の目。
まるで空洞のようなその目に。
無明の混沌を落とし込んだかのようなその目に。
言いようもない恐れを抱いたのだ。
ぼくをみて ぼくをみて
ぼくのなかのかいぶつが こんなにおおきくなったよ
息が荒くなり、心拍数が上がっているのが自分でも解る。
と同時に、果たしてあの少女が本当に走り去ったのか。
それを確かめずには居られない。
一歩。さらに一歩。
ニナはゆっくり、そして慎重に歩を進め、カフェの開けた窓へと近づく。
そのとき、だった。
「pusy cat baby、仔猫ちゃん、どうしたいそんなこわぁ~い顔しちゃって?」
ニナは、反射的に引き金を引いた。
◆◆◆
「聞いたか?」
「ああ、聞こえたぞ、衛宮上級生」
拙い、と士郎は歯噛みする。
最初に聞こえたのは、高笑いだった。
笑い、というべきか、怪音声とでも言うべきか。
それが笑い声だと分かったのは、一度それを耳にしていたからだ。
最初に居た、あの部屋、あの空間で、アナウンスの声に異議申し立てをしていた男の声。
決して相容れぬ事のない響き。そう、"邪悪な"響きだった。
聞こえたのは微か。決して近くではないが、遠くもない。
このコロッセオの周辺、何れか近くに彼の男が存在しているかもしれない事にいやな予感がする。
士郎はめだかと視線を合わせ、確認し合う。
おそらく、と、おおよその見当をつけ、走り出した。
地図によるとこの辺りの市街地は放射状に街路が延びているが、細かい路地が多く複雑である。
下手に横道に逸れると、簡単に方向感覚を失い、迷いかねない。
広い道にあたるまで、直線で進むのが順当だろう、としたあたりで、今度は銃声と、ガラスの割れる音がした。
拙い、と士郎は歯噛みした。
音は、その横道の奥からだった。
二人がそこにたどり着いたとき、走り去る一つの影と、仰向けに横たわる男の姿があった。
角にあるカフェテラスの、通りに面した大きなガラス窓は割れて飛び散り、ここで何らかの問題が起きたであろう事は一目瞭然。
何らか?
違う。
殺し合いだ。
誰かがこの男を撃ち、逃げ去ったのだ。
士郎が走るより先に、めだかが駆け寄った。
紫のスーツ、緑の髪。遠目に見ても異様な風体。
しかし、近づく度に感じられるこの違和感は何だ?
大股に近寄る士郎の目に、白面痩躯で、異様に引きつったような口元の男の顔が見える。
その口が、奇妙に歪み、
「黒神、待っ……」
HA HA HA HA HA
HA HA HA HA HA!
笑った。
二人の前で、男はくるっと足を振り上げて、ばね仕掛けのようにぴょんと立ち上がる。
そのまま、踵で2回転ターンをして、軽くタップを踏んでから、バっ、と二人に向き直った。
「遅いじゃねぇか、善良なるポーイスカウト&ガールスカウトの諸君。
今のはなかなか良いシーンだったぜ?
なんてったってこのジョーカー様が、何処の誰とも分からねぇ小娘に…
Bang! Bang!
撃ち殺されるなんて名場面が見れたんだからな!」
そう言って、再び大声で笑う。
確かに、ジョーカーと名乗ったこの男のスーツの腹に、銃創と思える穴が空いている。
しかし、死んで居るどころか、血の一滴すら見えない。
「貴様、無事なのか?」
めだかは顔色も変えず問う。
距離が近い、と、士郎が危惧するが、意にも介さないようだ。
「無事ぃ?」
けたたましい笑い声をピタリと止め、白面の男は聞き返す。
「無事かぁ? だってェ!? おい、待て、待て、待て、待て、違うだろ? 今は、そうじゃねぇよ。
無事ぃ? 違うだろ、何言ってんだ?」
まくしたてる。
「笑うところだろうが!?
まるで俺がハズしたみてーなリアクションとってんじゃねぇよ!
畜生、タイミングか!? おまえらが遅すぎたからか!?」
激しく怒鳴り出す。
先程までの躁状態とも言える高笑いと、一転した怒り様に、流石のめだかも眉根をしかめた。
士郎は再び警戒する。いや、警戒するというのは少し違う。むしろ、恐れというのに近いかも知れない。
危機や戦いに対する恐れ、ではない。士郎はそう言う場で怖じるタイプではない。
異質さ。噛み合わなさ。端的に言えば、狂気。
その片鱗への、畏怖。
ぴたり、と。またジョーカーの表情が止まる。
「はぁ~~~~~……。
やぁ~~~~~っぱなぁ~~~~~………」
溜息と共に、肩を落としてそう呟く。
「殺っちゃうっしかねぇなぁ~~~♪」
懐に、手を伸ばした。
士郎の認識よりも、めだかの速度は速かった。
厳密には、速いのではない。早い、のだ。
一つに、反応である。
ジョーカーが手を懐に入れるよりも、懐に手を入れようとする動きを、察知して対応した。
そしてもう一つは歩法だ。
それは剣道においては基本も基本の足運びであるが、それを黒神めだかの身体能力ですれば、ただの動きとはならない。
傍目の認識能力を、遙かに超える。
「貴様が無事なのは善哉。
だがその了見は頂けんぞ?」
めだかの左手が、ジョーカーの右手をがっしと掴み、動かない。
「…早いねぇ、お嬢ちゃん♪」
動かない、というより、動けないようだ。
ジョーカーの、痩せた、枯れ枝のような体躯で、この体勢を覆せるとも思えない。
・ ・ ・
「貴様も」
めだかが言葉を続ける。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「かつては純粋で冗談の好きな、愛らしい子どもであったに違いない」
突然の言葉に、士郎がやや面食らう。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「しかし不幸な環境と成育過程の愛情不足で、そのような不埒な言動をする捻れた性根に育ってしまったのだろう」
ジョーカーは口元を下げ、聞いている。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「私が、失われた幼年期の分、貴様に存分に付き合ってやろう」
言い切った。
士郎が、あまりの成り行きに言葉を失う。
常々、何かにつけてお人好しだと言われている自分ではあるが、この対応、この発言は、それにしても士郎の想定の範疇を超えていた。
だが。
「…なんで、ワカったんだ……?」
小さくか細い呟き。
「そうよ、俺ぁちっちぇえ頃からよ。いつも冗談を言っているようなガキだったさ」
ジョーカーの反応は、さらに士郎の想定の範囲を二重三重にも超えていた。
「貧乏暇無しとはよく言うが、俺のオヤジは違っていて、いつも飲んだくれちゃあオフクロや弟や、俺のことも何かってえとぶん殴る。
そりゃあヒデェもんさ。俺たちゃ青あざの無ェ日はなかったもんだ」
途方に暮れたような、何かを懐かしむような、不思議な表情を見せる。
「そんなオヤジが機嫌良くなるのは、俺が何か巧いギャグをやったときだけだ。
まあ、3回に2回はぶっ飛ばされたけどよ。でも、笑いってのは人を変える。俺ぁそう信じたね」
押さえられていた右手が、抵抗するでもなく力が抜けてゆく。
「けどな、あるときオヤジが、今までに無いくらいに怒って帰って来たんだよ。賭け事に負けたのか、仕事がまたクビになったのかぁ分からねぇ。
それでも、今まで以上にヤバいってのはすぐ分かったぜ」
視線が、めだかを越えた遠い空を彷徨っている。
「俺は、なんとかオヤジを笑わせよう、そうすりゃ機嫌も治るって、そう思って、ズボンのベルトをハズして、駆け寄りながら、ずでーっ…てな。
コケてみせたんだよ。こいつは、オヤジのお気に入りのギャグだった」
再び笑う。しかしそれは先程までの狂気に満ちたそれとは違う。まさに子どもの頃のような、あどけない微笑みだった。
「でも、その日は違った。それを見たオヤジは益々怒って、拳で俺をしたかに殴った。俺は意識を失って、気がついたら病院のベッドの上さ。
そんで、聞かされたんだよ。
オフクロと…ちっちゃなトミーが、オヤジに殴り殺されちまったって話をよ……」
その言葉が終わるかどうか。
めだかが、ビクリと痙攣した。
「おぉ~~~っと、動くなボーイスカウト」
駆け出しそうになる士郎を、ジョーカーが留める。
左手に、小さな銃に似た道具を持っていた。
「こいつは、えー…何て名前だったかな~~。
まあ名前なんてどうでもいいやな。
説明書きによるとな。
首輪に関しての機能を借り受けできるってーモノらしい」
ひらひらと手を振って、それを見せる。
「今この娘っ子に、電気ショックを与えたのも、その一つだ」
めだかは、立ったまま痙攣し、動けない。
「そんでこっちを押すと…」
士郎の頭に、最悪の予感が過ぎる。
「や、やめろ……!」
再び、めだかが激しく痙攣した。
「あ、同じボタン押しちまったぜ! 押すと電圧が上がる仕組みだな、こりゃ!」
おどけた口調で返す。
「ま、とにかく、よ」
軽やかな足取りで、半ばスキップをするように歩く。
「今、俺はいつでも娘っ子の首輪を爆発できるってわけだ。Boom,Boom,Boom! ってな」
ボタンを押すような、押さないような、そんな仕草を士郎へと見せつける。
「嘘をつけ…! そんな都合の良いもの…」
そんなものを主催者が渡してくるわけがない。
そう思う。
誰が考えても、これはそう考える。
そんなものがあっては、あまりに簡単すぎる。
「そうそう。そんなに都合は良かぁない。
まず、ターゲットの首輪をロックオンするのに、かなり近づかないといけねえ。
それと、1km離れれば、ボタンを押しても何ともならねぇ」
ロックオン。
そのために、敢えてめだかに攻撃するそぶりを見せて、近づかせたというのか?
「何れにせよ、今は"詰み"って状態だよなぁ~~~、娘っ子は~~~~」
歯噛みをする士郎。
ジョーカーの言うことが何処まで真実かは分からないが、今の情況は拙い。
迂闊にも、手には何も武器はなく、この距離を一気に詰めて、確実にあの装置を奪う、というのは、容易ではない。
「だが、今は押さない」
ジョーカーが、その装置を握ったまま、手をポケットにしまう。
いつでも押せる状態。しかし今は押さない、という。
「何故押さないか? さあ、考えろ。
A.俺様は実は凄く善人で、人殺しなんかしたくないから。
B.俺様は、美味しいものは一番最後に取っておく主義だから。
C.俺様は実は女の子には優しいから」
今度は真剣そうな、それでいて人を馬鹿にしたような表情を作りながら、続けて問う。
「D.………プロデューサーとして、おまえらに命令することがあるから」
◆◆◆
引き金を引いたのは、全くの事故だった。予期せぬ暴発。
殺意があってのものではない。
しかし、既にセーフティーロックを外して、いつでも撃てるように構えていた事に、言い訳は効かない。
「どう…しよう……」
何のために、あんな厳しい訓練をしてまで、銃の扱いを覚えたというのか。
これじゃまるで、始めて銃を手にしたずぶの素人ではないか。
自省をしている場合ではない。とにかく、この人の具合を確かめねば、と駆け寄ったそのとき、
「グフッ…」
男が、口元を押さえて咳き込んだ。
ニナは些かに混乱し、覗き込む程に近寄る。
「あ~~…だめだ、やっぱり俺は死ぬ、もうどうしようもない…これが俺の運命ってもんだ…」
「そんな…」
兄、ヨハンを殺すこと。怪物となり、ドイツ各地で人々を操り、多数の人間を殺し、破滅へと追いやってきたヨハンと自分の運命に、自ら決着をつけること。
それを心に決め、そのための訓練までした。
覚悟を決めていたはずだった。自分はこの手で、人を殺すのだ、兄を殺すのだと。
しかし、見も知らぬ誰かを、出会い頭に誤って殺すこと。
その覚悟までは、出来ていなかった。
「気にするな…お嬢ちゃん、こいつぁ事故だ、アンタが悪いんじゃねぇ…。俺はこうなる運命だったんだよ…」
顔を白く塗りたくった道化が、月明かりを浴びてそう囁く。
「だが…憐れな道化の頼みを、一つだけ聞いてくれ…」
ニナは、そのか細く小さな声に耳をば立てる。
「バットマン…あいつを探して、ここに連れてきてくれ……。憐れな道化が、此処で死んだと、伝えてくれ……」
「バットマン…そいつを探し出して、コロッセオまで連れてこい」
士郎に向かい、そう言い放つ。
「誰だ、それは…?」
「ん? ん? ん~~~?
俺が思うに、そいつはおまえらの同類だ。
頭がイカレていて、何かと他人の世話を焼いて、イチイチ首を突っ込んでは、物事をつまらなくしやがる。
この俺が! 最高のショーを計画して! 盛大な笑い死にパーティーをセッテイングしても!
あの野郎はノコノコ現れちゃあ、全部ぶちこわしにするのサ!
HA! 優れたコメディアンってのは、いつだって洒落の分からねぇ野郎に邪魔されるもんなんだよ! ええ、そうだろう?」
士郎はこの言葉の意味を、素早く正確に理解した。
つまりバットマンというのは、正義の味方なのだ。
「その…人を探すのね? けど、でも、あなたも…」
助けなければ。この男はまだ死んでいない。なんとか、なんとか出来るかもしれない。
傷口を確かめようと、手を伸ばすが、止められる。
「足音が…聞こえる。銃声を聞きつけて、誰かが来る…。
こんな…ところを見られたら…お嬢ちゃんが危ない……。
ここは……ひとまず………」
ニナの脳裏に、先程の少女のことが過ぎった。
まるで空洞のような目をした少女。
無明の混沌を落とし込んだかのような目をした少女。
その一瞬の躊躇、その一瞬の逡巡に、さらに道化の言葉が滑り込む。
「お嬢ちゃんも、逢いたいヤツはいるだろ?」
◆◆◆
軽快に、ダンスのステップを踏むように、道化は屋根の上を歩く。
楽しげな、或いは今にも鼻歌でも歌い出しそうな風情だ。
「バァ~ッツ! 楽しいなァ、ええ、楽しいじゃねぇかよ、このイカレたゲームも、なかなかよ」
そう囁くジョーカーは、腹のあたりを軽く撫でさする。
けばけばの原色、色鮮やかな服の内側にあるのは、赤い胴当て。
ジョーカーの支給品の一つであったが、ジョーカーがこれを着込んだ最大の理由は、防弾防刃耐火性能を求めて、ではない。
これが、バットマンのサイドキック、ロビンのものだという点だ。
ロビンのチュニックを着込んでバットマンに見せびらかして、からかってやろうという、それだけの理由だった。
ただ思いの外、早いうちに、本来の役目を果たしたのだが。
そして、もう一つの支給品。
『カーラーコントローラー』と書かれていた、小さな装置。
首輪に関する一部権限を貸し与えられるというもの。
これが、黒神めだかの首輪に強烈な電気ショックを与えたものだ。
ただし、ジョーカーが士郎達に話した説明には、嘘がある。
ひとつは、これには首輪を爆発をさせる機能は、ない。
この装置が首輪を通じて出来る事は、3つある。
一つは、「首輪を4つまで、ロックオン出来ること」
逆に言うと、ロックオン出来ていない首輪に関しては、何も出来ない。
士郎にした説明のうち、「ロックオンするためにはかなり近づかなければならない」というのは本当だ。
ロックオンボタンを押した際に、接近して、きちんと方向を合わせておかないと、信号が届かない。
もう一つが、実際に使って見せた、「首輪の持ち主に強烈な電撃を浴びせる」 事だが、これに関しても嘘をついた。
実際には、1kmの射程範囲ではではない。
これもまた、ロックオン同様、数メートル程の近距離である必要があるのだ。
従って、この装置を使って誰かを殺そうとする場合、まずかなり近くに寄ってロックオンをし、さらには電撃でショックを与え、とどめに射撃武器を使う、という、非常に面倒くさい手順が必要になる。
実は一番有用な使い道は、最後の一つなのだ。
トレーサー機能。
ロックオンした首輪の持ち主がその時点で何処に居るかを追跡出来、さらには心拍数等の身体データを参照したりするなど、様々な情報を得られる。
駆けつけたときの二人の反応から、ジョーカーは黒神めだかと衛宮士郎が、「ヒーロー」側の人間だと察知した。
ならば、この装置を試してみるのには丁度良い。
案の定、それは当たった。
めだか本人や、同行していた士郎が、厄介なスーパーパワーを持っていたり、同行者の生死などおかまいなし、という手合いであったら逃げるしかなかったが、結果としてはおおむね問題なし。
このゲームをディレクションするのに相応しいキャストだったようだ。
先に銃を暴発させたニナに対しては、「自分の死をバットマンに伝えて欲しい」と伝言をした。
めだかと士郎には、「コロッセオで決着をつけるように呼び出せ」と伝えた。
コロッセオ。
古代ローマの闘技場を摸した巨大建築物。
こんな面白げなものが、真ん中にあるのだから、利用しない手はない。
いや、こここそ、自分がプロデュースする殺戮ショーのステージに相応しいではないか。
ジョーカーはそうも考える。
色んな奴らに、色んな嘘を吹き込んで、バットマンや、或いはバットマンの様なヒーロー気取りと、悪党共を一カ所に集めてやろう、と。
そしたら、奴らがどんな間抜けなアドリブを見せてくれるのだろうか? と。
仕込みに仕込んだギャグも良いが、時には即興のリズムに乗せたステージも悪くはない。
勿論自分なりの仕込みを考えてはおきたい。おきたいが、それはそれ。何よりもキャスティングも重要だ。
カーラーコントローラーに表示される情報を見る。
名前は黒神めだか。ジャパニーズのティーンエイジャー。
一緒にいた男の方はロックオンしていないため、情報は見れない。
しかし、手に取るように分かる。
お人好しの正義漢。殺し合い等という舞台に、似つかわしくない連中で―――だからこそ、是非ともキャスティングしたい連中。
ジョーカーは月を見上げて、高らかに笑う。
「ライツ! カメラ! アクション!
悪くねぇ、全然悪くねぇぜ、このショーの幕開けは」
◆◆◆
ニナは走っている。
何処とも目当てはなく、ただ闇雲に走り続けている。
混乱と恐慌と、疑念。
ヨハンと会い、そして殺そうとするが適わず。
自分を撃ち、死のうとしたが、それも適わず。
いつの間にか見知らぬ街に連れてこられ、誤って人を撃ち殺してしまった。
彼は本当に死んだのだろうか。
本当にヨハンはこの場所にいるのだろうか。
ドクター・テンマに逢わなければ。
バットマンを探さなくては。
あの少女はいったい何者で、何を目指していたのだろうか。
駆けつけようとしていた足音の主から逃げて良かったのだろうか。
あまりに多くの事が立て続けに起き、あまりに多くの事が変わってしまった。
ニナは走り続ける。
何処とも目当てはなく、ただ暗闇の奥、さらに奥へと向かって。
黒神めだかは、ただそこに立ち続けていた。
ジョーカーは二人に「命令」を与えると、今度は右手に持った奇妙な銃からワイヤーを発射し、それを使って近くの建物の屋根へと去っていった。
甲高い笑い声だけを残し。
「黒神…」
声を掛ける士郎に、力はない。
己の迂闊、己の無力故、彼の危険な男をみすみす逃がすことしかできなかった。
これが、自分だけの事であれば良かった、とは思う。
自分の首輪を爆破させると脅されたのであれば、まだやりようはあった。
しかし、めだかの命を、一か八かの賭けに使うことは出来ない。
「……衛宮…上級生」
近寄るが、めだかの吐き出す声からは、それでも恐れや不安の色はない。
「私は、怒っているぞ……」
あれほどの、傍目に見ても強烈な電撃を浴びせられても、めだかは悲鳴も上げなければ膝をつきもしなかった。
彼女の芯にある炎が、彼女を屈させなかったのだ。
しかし……。
ジョーカーの弁によれば、彼の男の1km以内にいれば、めだかはいつでも殺されてしまう。
また、もう一つ、二人がここに到着する前に立ち去った人物が居たことも気に掛かる。
結果、ジョーカーは銃弾を受けても尚死んではいないバケモノだったが、おそらくは彼を殺そうとして銃を撃った者も又、この近くに居るかもしれない。
士郎も、めだかも、この奇怪な実験に呼び出され、初めて出会った者同士が共に正義を求める人間だったから良かったものの、すぐ側には同様に、銃で人を殺そうとする者、それを受けても死なず、またさらには首輪を爆発させる装置で人を操ろうとする者も居たのだ。
ジョーカーによる「ロックオン」。
銃を撃った人影。
探すべきバットマンという「正義のヒーロー」。
行動に起こさねばならない。
しかし、気丈に振る舞っているめだかではあるが、あれだけの電撃を浴びて、体力も消耗しているはずだし、何より自分達の準備が不足していたのも感じる。
いずれにせよ、二人はただ暗闇の奥、さらに奥へと向かって、足を踏み出さねばならない。
【E-6/市街・屋根の上:深夜】
【ジョーカー@バットマン】
[属性]:悪(Set)
[状態]:健康
[装備]:アンカーガン、ロビンのチュニック
[道具]:基本支給品、カーラーコントローラー(1/4ロックオン済み)
[思考・状況]
基本行動方針:このゲームをとびっきりのジョークにプロデュースする。
1:とりあえずゴッサムタワーにでも向かう。
2:他に面白そうなヤツがいたらちょっかいをかけて、「バットマンをコロッセオにおびき出す伝言」をしてみる。
3:バッツ(バットマン)をからかって遊ぶ。
4:面白そうな、使えそうなヤツは、ロックオンしてみる。
[備考]
※黒神めだかを「ロックオン」済み。
※ロビンのチュニック@バットマン
バットマンの相棒、ロビンの防具。
ケブラー繊維を用いた三重構造の防弾仕様で、表面は優れた耐火性を誇るノメックス生地。
※カーラーコントローラー@オリジナル
・近距離にて装置を向け、ロックオンボタンを押すことで、首輪を4つまで、「ロックオン」する事が出来る。
・「ロックオン」した首輪の持ち主に関して、現在地や名前その他のプロフィール、健康状態など、装置で様々な情報が確認できる。
・近距離において、その首輪の持ち主を一時的に行動不能に出来るだけの電撃(或いは他の何か)を浴びせることが出来る。
【E-6/市街・路地裏:深夜】
【ニナ・フォルトナー@MONSTER】
[属性]:その他(Isi)
[状態]:健康、混乱
[装備]:ハンドガン
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0~2
[思考・状況]
基本行動方針:
1:落ち着く
【E-6/市街・カフェテリア前:深夜】
【黒神めだか@めだかボックス】
[属性]:正義(Hor)
[状態]:健康、電撃による体力の消耗
[装備]:
[道具]:基本支給品、不明支給品1~3
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いを止める
1:衛宮上級生と行動を共にする
2:ジョーカーを追うべきか? 謎の人影を確認すべきか? バットマンを探すべきか?
[備考]
※第37箱にて、宗像形と別れた直後からの参戦です。
※ジョーカーの持つ装置により、「ロックオン」されているため、現在地他多くの情報が筒抜けになっていますが、本人は気付いていません。
※ジョーカーの持つ装置により、「ロックオン」されているため、1kmの範囲内では、ジョーカーによって電撃、または首輪の爆発をさせられる、と聞かされています。
【衛宮士郎@Fate/stay night】
[属性]:正義(Hor)
[状態]:健康、若干の困惑
[装備]:
[道具]:基本支給品、不明支給品1~3
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いを止める
1:めだかと行動を共にする
2:ジョーカーを追うべきか? 謎の人影を確認すべきか? バットマンを探すべきか?
[備考]
※参戦時期は後続の書き手さんにお任せします。
*時系列順で読む
Back:[[20世紀中年]] Next:[[悪ノ王]]
*投下順で読む
Back:[[20世紀中年]] Next:[[悪ノ王]]
|[[宣戦布告だ]]|[[黒神めだか]]|[[理性と感情の差異]]|
|~|[[衛宮士郎]]|~|
|[[Crazy Wonderland]]|[[ジョーカー]]|[[王と道化師]]|
|&color(cyan){実験開始}|[[ニナ・フォルトナー]]|[[記憶の欠片]]|
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