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過去どこかしらに書いたやつでログが残ってて且つ自分で面白いと思ったやつ再掲。

■mixi(2006~7年頃?)

なるほどよくわかったよ。
冒頭から自己解決。
先が思いやられるぜ。

主張したいことは何も無い。
特筆すべきも無し。
つまり何も言いたくないんだと、すごく言いたい。
わかる?この気持ち。
わからなくてもいいんだ。
君のそのアマルガム脳じゃ理解できないだろう。
馬鹿にしているわけじゃないよ。
君がそんなにも哀しい笑顔で怒るから、
僕は毎日朝日を見ながら読売新聞を読むしかないんだ。
真っ黒な石鹸で君の全身を洗ってあげよう。
え?水が怖い?
OK、思い出したよ。
君は水恐怖症という病を患っているんだ。
奇遇だな、僕もPTSDなんだ。
お互いにどちらがより重症で可哀想か、病気自慢勝負をしよう。

君はあの夏…
そう、昭和58年、カーペンターズのカレンがお亡くなりになった年さ。
あの時君は一体何を思って、何をしたのか、
あの時の君と君を独り占めしている僕にしかわからない事だ。
君は軟水にも硬水にもその手で触れられないことに腹を立て、
刃物のようなもので刃物のようなものを刺し、
刃物のようなものに乗って逃走した。
検挙された君はこう言ったんだってね。

『刃物のようなものが、私をいざなった。

信じようがなかったよ、当時の僕は。
だって、当時僕はまだ84歳。
物心だってまだついてない。

それからだったね、
君が水を恐れるようになったのは。
20Kgも痩せてしまった。
でも翌年18Kg太って、更に翌々年19Kg痩せた。
それでも翌々々年には21Kg太った。
見事なプラマイゼロだよ。
僕はここまで見事なプラマイゼロを、未だかつて聞いたことが無い。
君の体重をXとした計算式は以下参照だ。

X=X-20+18-19+21

合ってるかい?
それは指紋認証よりも信頼できる結果かい?
貝が食べたいのかい?
ダメだよ。
貝だけはだめだ。
貝だけは許せない。
捕まっても別に構わない。
だから、僕は、貝だけは死ぬ前に殺してやるんだ。
だって貝って硬いじゃん。
すごくムカつく。
今風にいうと、ムッカムカだモン★

臀部をしまえ!ボケ!!

なんなんだ、誰だ?こんな夜中に!!
俺か?俺じゃない!!誰だ!?誰なんだ!?
もしかして東海林のり子さんですか!?
違うんですか!?違うなら違うと言え!!
なんなんだ、そのホクロは!!
取りなさい!!今すぐレーザー手術をしなさい!!
君のホクロを見ているとなんだか総裁に離党届けを提出したくなるよ!!
国会議員でもないのに!!!

と、いう事を思います。思いました。
思っていきます。思わず。


私の記憶の中にたくさんの私が居た。

一人の私は猫を殺して泣いていた。もう一人の私は自分のポリシーを強く語っていた。
もう一人の私は死にたいと呟いていた。もう一人の私は狂ったようにご飯を食べては吐きを繰り返していた。
もう一人の私は好きな男の子のことを日記に記していた。

私はどうしてココに来たんだろう。無意識ではない、目的はある。私は望んでココに辿り着いたのだ。
記憶を求めていたのだ。頭の中で文章にしてみると、やっと理解ができた。

最後の私が私に向かって優しく語りかけた。

「私は私の気持ちがわかるけど、この先は行っちゃダメ。

私は私の言うことを聞かずに、その先へ行った。

そこには目玉がいっぱい落ちていた。今までに丸ごとの目玉を見たことがないから、その大きな球が人間の目玉かどうかはわからない。

足元を見て気づいたが、ここは学校の廊下だった。ふと私に近づいてくる気配を感じる。でも振り返ることはできない。
最初に出会った私が最初にココへ辿り着いた私に「絶対に振り返らずに進むんだよ」と言ったことを思い出したのだ。
リノリウムを蹴る音が段々近づいてくる。トンネルの中のようにその音は反響し、けたたましく私の耳を劈く。

ふと、気づくとその気配はなくなっていた。違和感を感じ下腹部に目をやると、その異変に気づいた。

「オギャア…オギャア…。

私は謝るしかなかった。私には育てられない。私は念仏のように「ごめんなさい」を繰り返すと、その赤子を羊水の海で溺死させた。

それにしても猫を殺して泣いていた私の気持ちが全然わからない。私は目玉を拾うと振りかぶりそれを空高く投げた。

「第一球投げました…。

月明かりに照らされて少女がゆっくりこちらに近づいてくる。
彼女の視線――目指す先は他ならぬ私の居る場所だ。
私は彼女に対して特別な感情を微塵も持ち合わせていない。
それどころか友達とも認識していない。初対面なので。

「月がはみ出てますよ」

それだけ言い残すと彼女は音もなく踵を返した。
私にその小さな背中を抱き締める権利なんてなかった。初対面なので。
ここはグッとこらえるのだが、次こそは自分を抑制できる自信がない。
それはコシヒカリでもきらら397でもなく、ひとめぼれだった。

「余人を交えず貴女と二人、束の間の逢瀬を」ポストイットにそう記し、彼女がいつも立ち読みするコンビニの週刊文春に添付した。
やがて彼女はいつものようにマイノリティなファッションに身を包み店の中に。
私は見つからぬよう一つ後ろのカップ麺コーナーへ。

例の雑誌を手に取った彼女は一驚。

「もう、安倍ったら……」

しまった、名前を連ね損ねラブレターフロム安倍晋三だと勘違いされた。
仕方ないので私は喜怒哀楽を全部混ぜたカオスな顔面で彼女に熱い想いをぶつけた。

「月がはみ出た夜、私は貴女に恋をした」

これは嘘偽りなき心からの真剣な気持ちだ。
なのに何故?どうして?はみ出てたから?月だってそうだったじゃない。
それなのにどうしてあなたはそんなにも失敗した福笑いのような残念な顔で私を見つめるの?答えてください。

「年が離れすぎてるわ」

少女は矢張り音もなく消えていった。闇の向こうに。
なので私は涙の鼻水割りを嗜んでいた。上戸な私でも久々に酔えそうだ。
大阪府東大阪市東部の近鉄奈良線枚岡駅~額田駅上り線(南行き)沿いにある一般府道、大阪府道170号枚岡停車場線で。

■書きかけの小説
『AM2:00 MAGI★NIGH』2007年頃

あらすじ(構想していた話):
派遣魔法少女を生業としている桃衣りぷほは人間界のボロアパート常俣寺華荘引っ越すことになった。
そこに住んでいる住人の男は昼は普通の人間だが夜になると猫に、女は昼は猫で夜は人間になるという呪いがかけられていた。
封印されしエレベーターに住む機械の少女は一体…謎が謎を呼びやがて舞台は火星に移り第一次魔法大戦が繰り広げられる。
果たしてりぷほの運命やいかに。無事呪いを解きマッチョと結ばれ派遣の更新手続きは出来るのか。

※既存の楽曲歌詞の盗作部分とか色々ありますが著者の意思と当時の世情を尊重しオリジナルのまま掲載しました。

 その時の私は猫だったので人語が解せなかった。
「どうかにしてキスがしたいと……それはよもや強行手段に及んでしまうということでしょうか?」
「んなわけないッスよ。ちゃんといい感じになったのを見計らってするッス。ただ未熟な自分にはそれだけの度胸がなくて……どうかスミス氏に助言を申し受けようと相談したまでッス」
 姿形共に人の脳に戻ってようやく彼らの会話を反芻し、理解し、反応を示すことができるのだ。
「ベタな恋愛漫画やドラマにヒントがあるかもしれません。例えば目を瞑るよう促すといったシチュエーションはどうでしょうか?」
「おぉ、そこまで持ち込めればこりゃもう惰性で接吻完遂ッスね!」
 だがそれは非常に困難で、異国民の異国語による日常会話を目の当たりにし、その直後和訳辞書を手渡されたとて容易く翻訳できるはずがない。
「成らばおまじないという提案をしてみます。例えば早々に床に就かねばならぬ状況の彼女を横にならせ、眠くなるおまじないと称し目を閉じてもらうんです」
「そっ、それは凄いッス! でもそれでキスしたら逆にドキドキして眠れなくなってしまわないッスか?」
「でしょうね。フフッ、貴方と彼女のお戯れが目に浮かびますよ。完璧だと思いますけどね」
「確かに……うおー、頑張るッス! 早めにそんな状況が到来するよう心待ちにしながら日々を生きるッス!」
「お互いに頑張りましょう」
 取り立てて彼らの日常会話に興味もないので、私は目的のあの猫を探すため木製の廊下を肉球でペタペタ捺印するように進む。

 もうすぐ全てが終わる。全てを終わらせる。この哀しい物語の全てを、私が終わらせてあげるのだ。
 それが私の使命であり、派遣魔法少女として生きる目的也。

 長い長い階段を眼前に私は正しい深呼吸の方法を思い出したりしていた。でもそれはラマーズ法だった。今この状況で私は無痛分娩に至る努力をする必要性は皆無なので、みだりに不躾な呼吸で肺を酸素で満たしている。それにつけても一体この煩わしいくらいの胸の高鳴りの正体は何だ。楽器か。確かに世に蔓延る万物は須らく楽器である言っても過言ではない。音が鳴れば楽器。音が鳴らねば非・楽器。故に私は楽器なのだ。そう、あんたも楽器なのさ!……と、意味不明な独り言に我に還る。そもそも我に還るという表現は如何なものか。私は生まれてから死ぬまで私を出入りしたりなどできない。
 そういえば近年混沌としたメディア界では今、ダジャレアイドルなるものが流行っているとか。或る眠れぬ夜の事、手持ち無沙汰な私の手の平は気付くとリモコンをそれはそれは優しく包んでいた。私には掛け替えのない大切な物がたくさんあり、テレビのリモコンはその内の一つなのだ。紅一点の電源ボタンに口付けをする。紅一点の言葉の使い方が間違っているという指摘は真摯に受け止めるが撤回なんてしない。すると突如ブラウン管に映し出されたいけ好かないアイドルはいけ好かない口調でいけ好かないダジャレを言い放ったのだ。
「ドキがムネムネするんですぅ~!」と。
 それはご丁寧にテロップまで付いていた。私は今のその時間が深夜の二時だという事もすっかり忘れ、大爆笑したのだ。ベッドをトランポリンの要領で飛び跳ね、スピーカーの使用を疑われるくらいの耳を劈く声量で、腹筋が取れそうなくらい大笑いをした。実際あのまま笑い続けていたら本当に腹筋が取れていたと思う。そして嘆いた。見識張った中ニ病患者が如くボソリと呟いた。
「終わったな、日本……」
 私は日本を、世界を、この星を憂いだ。

 そしてココにやってきたのだ。まぁ厳密に言うと私がココに至るまでの経緯は他でもない他人の都合によるものなのだが……。
 結局私の頭の中で光の速さで思考が脱線し取り留めなくなってしまったわけなのだが、つまり私は今ドキがムネムネしているのだとだけ言っておこう。長い長い階段の前でドキがムネムネしているのだ。そして新しい季節の到来に、ほんの少し期待をしているのだ。

 柔らかい風が鼻腔をくすぐった。それは無味無臭だったので私は無反応を示した。だが私の視線は無意識に向かい風を辿っていた。その終着点には一人の男性……でいいのだろうか? 中性的な男性が突っ立っていたのだ。
「初めまして、中性的な男性です」
「あ、こちらこそ初めまして、女性です」
 互いに己の性別だけを述べる斬新な自己紹介だった。
「もしかして新しい住民さんですか?」
 そう言って中性的な男性は長い長い階段の行き着く先を指で差す。両親に手渡された地図に間違いがなければ、そこには私の目的地――引越し先であるアパートがあるはずだ。なので私は肯定の意を込めウインクをしてみせた。
「どうしましたか? 目に異物が混入しましたか? それとも肯定の意を込めたウインクですか?」
「肯定の意を込めたウインクです」
 ウインクに込めず通例に則り言葉に込めれば良かったと軽く後悔する。
「でしたら私はお隣です。宜しくお願いしますね」
「左様で、こちらこそ宜しくお願いします」
「醤油が切れた時などは存分に頼ってくださいね」
「万が一の時はお言葉に甘えます」
 中性的な男性は「では後ほど」と言い残すと会釈し背を向け商店街方面へと歩を進める。私は再度長い長い階段を凝視し「長いなぁ」と思うのだった。
 胸に手を当て呼吸を整える。長い長い階段は長いだけでなくひどく鋭い傾斜だ。その石造りの階段を淡々と昇りきると、富士山登頂を完遂したかのような達成感に覆われた。実際に今まで一度も登山の経験はないが……。そして無事に長い長い階段を昇りきった私は、この先如何なる時も息を乱さず帰宅できないのだろうなと軽く嘆いていた。
 聳え立つ建物を眼前に私の頭の中を疑問符が沸いてでた。それは私が想像していたモノと全くの別物だったからだ。確かに私はここまで足労し下見に来たことは一度もないが、契約を任せた両親の前情報によると今私の目の前に聳え立っている建物は『小洒落たアパート』であるべきなのだが…… それは……古い老舗の民宿のようだった。言い換えればボロい宿屋のようだった。『忘らるる宿屋』――この建物を舞台に小説を書けと言われたらこんなタイトルが浮かぶ。
 辺りを見渡すも人間が歩ける道は全て木で遮断されており、私はしばし足止めを食らう。だが寸刻して私の手を割とすんなり格子の引き戸にかけさせた要因は、玄関に掲げられたこれまたボロボロの看板だった。
『常俣寺華荘』
 難解地名辞典なる本が出版されていようものなら恐らく掲載されるであろうそれは、私の引越し先のアパート名に他ならなかった。微力ながら私の手によりガラガラともガタガタともジャラジャラとも何とも表現し難い擬音で戸が開く。
「お、おじゃましまーす……」
 言う必要あったのだろうか。だが幾らこの先ここが根城になろうと無言で上がるのはどうにも躊躇われる玄関だったのだ。
 靴を揃え振り返った先に居たのは、いわゆる今時の若者という形容以上で表現し難い有り触れたヤサ男だった。査定してますよといった空気をプンプンに醸し出したそいつは視線で私の全身を一通り舐めまわすとニヤリと口をU字型にした。
「おほおっ、泥棒だ! やったぁ人生初通報だぜ!」
「違います! あの……新しくココに住まわせて頂くことになった者です」
「マジで? やっべー。マジやばくね?」
「やばいと思いますよ、その耳たぶの面積は」
 というのも彼の耳にぶら下がった無数の金属を指しての発言なのだが、本人はファッションのつもりなのだろう。どこぞの部族にしか見えないが。ちなみに私は以前一度ひどく自虐的な気分の時に、思い切って一つ穴を開けようと画策したのだがあと一歩が踏み出せず未遂に終わった過去がある。
「耳とかいらなくね? 目があればよくね?」
「貴方は音楽も映画も嗜まないんですか?」
「やっべそりゃ盲点だわ」
 彼は「そもそも耳がなかったら耳かきできなくて困るしな」と不可解な二の句を付加する。
 私はひどくメランコリーな気分だった。そりゃ世界が私の思い通りになることなんて今までの人生ろくにもひゃくにもなかったさ。でも、だからといって、この住人はない。あるかないかで言ったら、ない。尤も普通のアパートであれば大した問題にならないのかもしれない。彼との近所付き合いを全力で避け続ければ良いのだ。だが見るからにトイレも風呂も共同使用であろうこの建物ではさてどうだろうという話だ。
 だから次の一言が無かったら私は彼を完全にシカトしてマイルームへと向かう筈だった。
「困りごとがあったらいつでも頼れな」
「……あ、ども」
 頼られるのは未亡人の次に好きだと付け加えるピアス野郎。未亡人に頼られたらと訊ねるとそいつは超常現象レベルだと返ってきた。その後何故か、彼の数分に亘る「J-POP界に於ける日本語ラップの将来」という全く興味の惹かれない熱い弁論を聞かされる羽目になった。

「さてと、じゃあ部屋とトイレ、どっち先に案内しようか?」
 話半分に聞いていた為一瞬頭に入らなかったがどうやら二択を迫られたようだ。えっとなになに……部屋かトイレね、どっちにしようかな。
「……ん? 何でトイレ?」
「いや、さっきからオメーすかしっ屁ばっかしてるからもしかして黒翼の天使を我慢してるのかなぁと……」
「ちょっと待って。私は女の子よ? 女の子の体内に放屁機能なんて野暮なもんはついていません。そしてその無駄にハイソな比喩は何」
「おいおい、だったらさっきから俺の鼻を苦しめるクッセーのの正体は何だっていうんだ?」
「私の方こそさっきからずっと、あなたの尻穴から断続的に製造される地獄のそよ風なんだと思い込んでいたわ」
「なっ何だと、誰が地獄だ! 言っとくが俺は正真正銘天国だからな!」
 彼の不思議な怒髪箇所に疑問を感じるよりも先にこの異臭の解明を優先すべきだと判断。吸引続けていたら病気になり兼ねない程の悪臭だ。
「何かガスが漏れるようなもの、近くにないの?」
「ねーよ。食堂はアッチだし……風呂もアッチだし……ココには原因になりそうなもんはねー」
「ならば簡単なことよ。私とあなた、どちらかが嘘をついている」
「ほう、先に言っておくが俺は屁が臭くないことで有名なんだ。よって犯人はオメーだ」
「さっきも言ったけど女の子は放屁なんてしないのよ? あなたまさか女の子と付き合ったことないの?」
「OK理解した。つまりお前は実は男だということだ。最近可愛い男の子が静かなブームだしな」
「……じゃあこの二つの腫れ物は一体何だというの!?」
 そういって私は自分の胸を鷲掴みにする。何かがおかしいけど放屁犯の疑惑を晴らすには瑣末なことだった。
「鳩胸?」
「断じて違う!」
 やがて私の部屋に辿り付き放屁争論は膠着という結果と相成った。論破できずに体を安売りした己の語彙の貧困さと愚かさに軽くヘコむ。
「ここがお前の部屋な」
「ノンブル振ってないから間違えやすそうね」
「まぁすぐに部屋なんてどうでもよくなるけどな」
 それは決して軽視できない発言だった。気の合う同性同士ならそれは楽しいのかもしれない。だが私は絶対に嫌だ。他の住人の皆さんが空気を読む能力と世間多数派の倫理観を保持している事を願い、今は深く考えないようにしておく。
 多少の埃は目についたが部屋は概ね片付いており、ワンルーム以上の広さを感じさせた。流石にきちんと鍵もついていて安堵。
 窓を開けて一服する。と、言っても喫煙したわけではない。リップクリームを塗ったのだ。私はリップクリームを塗る事を一服と呼んでいる。唇をこれでなぞると、何だかとっても落ち着く体質なのだ。
「引越し屋とか今日来んの?」
「来ないよ」
「いつ来んの?」
「一生来ないよ」
「手ぶら入居?」
「そんなことないわ。リップクリームとポケットティッシュと七味唐辛子がある」
 私はポケットに忍ばせたティッシュと七味を取り出し顔の前でフラフラさせてみせる。
「んー……俺が言うのもなんだけどさ、ココって変な奴ばっか集まるわけよ。やっぱりなって感じだぜ」
「あら、自覚しているのなら変人じゃないわ。真の変人というのは自分が常人だと思っている。自分が変人だと思っていないのが真の変人なのよ」
「なるほど、じゃあ俺もオメーも常人だということだな」
「そういうことよ」
「あ、そういえば自己紹介がまだだったな」
 すると彼は突然ブレイクダンスを披露してみせた。結構上手なのが何か癇に障った。首折れろ。
「将来の夢はダンサーかDJだ、よろしく!」
「将来の夢はパン屋さん。こちらこそどうぞ宜しく」
 ドアノブに手をかけ部屋を出て行く直前、彼は初めて私に視線を絡ませるとこう言った。
「みんなバイトで今時分ココに居るのは俺とお前だけな。あぁ、あと猫が4匹。まぁ好きに散策すればいい」
 腕時計の時刻表示は午前10時。私は時間を嬲り殺す方法を考えていた。

 床に寝そべり天井で脳内ピンボールに興じるも倦怠感からは脱せず。匙加減一つの甘いティルト判定は私をやきもきさせた。何かに憑かれたのだろうか。慣れない環境に私の体は小刻みに悲鳴を上げていた。どっと疲れが出たという表現が適切だろう。
 廊下に出る。風呂もトイレも共同なのだろう。散策すべく私は軋む木製の床を蹴って歩くのだ。
 すると前方に生き物を発見する。ところで世界には我々人類を含め数多の生命体が存在するが、その中でもとりわけ可愛らしいフォルムで見目麗しく我々人類を甘美な世界へといざなうグッドルッキングにも程がある生物といえば? ………そう、猫です。猫が三匹、体を寄せ合い、そのキューティクルな瞳で私を見つめていたのだから私は咄嗟に失いそうになる意識を渾身の力で現世に留める。
「ニャー」
猫が鳴いた。それに合わせて三匹が輪唱するように調べを奏でる。
「ニャーニャー」
 私を悶死させる気だろうか。このかわゆさは常軌を逸している。これは使用者の力量で命中率の左右されるけん銃よりも遥かに有効な武器といえるだろう。お上もそろそろこの危険性に気付き、近い将来日本に訪れるであろう猫社会を勝手に危惧しそうになったところで例の如く出てもいない我に還る。だが眼前の猫三匹唄えばサムライがチャーミングの極みなのは事実で、今私が本当に絶命しようものならマスコミは記事の見出しに如何なる記述をするのだろうか。だが私は死なない。死ぬものか。絶対に生き抜いてやる。生きてこの猫達を愛で回すのだ。
 猫を抱きかかえ体温を分け合う。なんとも温々。そして呟く。
「あぁ……お前ら……お前たち……」
 言葉にできないこの気持ちを言語化しようと試みる。
「すっごいよねー」
 誰に同意を求めそもそもどこがどうすごいのかはわからないけどすごいとしか言えない。猫はすごい。そのすごい猫を一匹選抜して抱きかかえる。私はすごい猫をすごい愛でながらすごい勢いで廊下を闊歩するしかないのだ。
「あれ?新しい住人さんですか?」
 仄かに西臭のするイントネーションに振り返る。無駄に伸ばしっ放しの髪の毛が鞭の要領で頬を叩く。ええと、確か今時分ココに居る住人は私とあのピアス野郎の二人だけだと記憶しているのだが……。ひょっとすると不法侵入者だろうか。私の視線の先には還暦という橋の真ん中でウロウロしていると思しき有り触れたオッサンが居たのだ。その齢男がそのカモシカの様な二本の足――ただガリガリなだけなのだが――で直立し、私を見つめて笑む。笑み返すべきか否かの判断材料はオッサンのその掌に包まれた新聞とシケモクで充分だった。きっと彼はここの住人なのだ。ピアス野郎が彼の存在を忘れていたか、若しくは住人と見なしていないかのどちらかだろう。
「宜しくお願いします」
「宜しくなぁ。自分花も恥らうやん」
「お褒めに授かり光栄で御座います」
「褒めてへんわ。その返しはあかんて」
 駄目出しされた。
「ココええとこやから、出てかんといてな」
「出ていくなんて……それはないと思いますけどどこかに看過できそうにない問題が?」
「ないことはないな。あることはあるわ」
「それは私の生命を脅かしますか?」
「心臓弱かったらそれは否定できひんなぁ」
「心臓の強さには自信あります。ふと助手席を見たときに知らない人が乗っていても平静を装えます」
「それはそれで問題ちゃうんか!?」
 堰を切ったかのように大爆笑するオッサン。やった、関西人を笑かせた。関東人のセンスを舐めんなよ。笑う後姿がそのまま自室へと吸収されていくさまを眺めながら、私は猫を抱き直し、適当にうろついたりまごついたりすることにした。
 外観からして二階建てだと予想していたのだが、階段がどこにも見当たらないのでどうやら平屋らしい。玄関を中心に考えて東に10部屋、西に2部屋あり、私の部屋は東の突き当たりから二番目だ。どの戸も無表記でその扉を開けば処刑台へと繋がっているのではないかというほど不気味な雰囲気が館内全域に漂っている。ホラー映画は好きな方だが、それは平穏な日々にうんざりした時に恐怖の世界を擬似的に体験したいという欲望を満たすものであって、日常環境が既に奇妙珍奇であればそれは心労を貯める素因だけでしかないだろう。
「鳴きなさい、猫、ホラ」
「ニャ」
 猫の鳴き声をトランキライザーに、私はしばらくうろちょろと無益な散策を味わっていた。

「ただいま戻りました」
 玄関先のロビーで猫とじゃれ合っていた私の耳にそれは飛び込んできた。やけに高音域な声の主は今朝階段下で出会った中性的な男性のものだった。
「お帰りニャさい」
「アハハ。もう馴染めましたか?」
「小学生の時に4年も通った塾には結局慣れませんでしたが、今回は恐らく平気の平左です」
「それはそれは」
 ちなみに……と、突然不適な笑みを浮かべる中世的な男性。実際誰かに不適に笑んでみせろと命令されても困窮してしまうだろう。目の前に笑顔の男性が三名現れ、さてこの中に不適な笑みを浮かべている者が一名いますがそれは誰でしょう?と問われても長考してしまうだろう。それだけ不適な笑みというものにに対し不透明な理解しか持ち合わせていないにも関わらず、彼の今のこの笑みが不敵な笑みであるという事を私は強く実感していた。
「お酒はイケる口ですか?」
 彼の手元のビニール袋の頭から一升瓶がひょっこり飛び出していた。あの笑みとこの質問内容から導き出せる解答といったら唯一つ、私を酒に酔わせ何かを企んでいるのだろう。だが如何せんそんな事するような男には見えない。そもそも男に見えない。実は女みたいな男を装った女なのではなかろうか。
「胃が弱いけどそれなりにイケますよ」
 実際今までの人生でチューハイを一口二口舌で転がした程度の経験浅だというのに何となく強がってみた。本格的に呑んだことは一度も無いが、自分はお酒に強いという得体の知れぬ自信がある。
「奇遇ですね、私も胃が弱いんですよ」
 奇遇なのだろうか。胃の弱い人間なんてそこらに溢れ返っている気がするので、その一致に感想を求められても閉口してしまう。
「それは……奇ぃなる偶然ですね」
「さてさて、ではあなたの胃はどの程度弱いんでしょうか?」
 えっ、まだ引っ張る気? 全く胃弱談話なんかでどう盛り上がれと言うのだ。
「飲酒はヨーグルトでコーティングしてからでないとまず間違いなく痛みますね」
「フムフムなるほど、タイプCですね。あ、この分類は私の独自調査によるものなんですが……」
 すると彼が胃痛に関する雑学を語り始めた。その軽妙洒脱な語り口に私は思わず時間も忘れ食い入るように彼の一言一言に聞き入ってしまった。まさか本当に胃トークでここまで盛り上がるとは夢にも思っていなかったよ。胃界にとって彼はかなり貴重な人材であるといえよう。ひどく馬鹿らしい思考に猛省する。
「つまりピロリはポーマンが食べられなくて云々……」
「ふぅん。それにしてもあなた綱引きね」
「ん? 一体全体どういうことでしょう?」
「オーエスオーエスってことです」
「了解しました」
 何となく適当な事を言ったら適当な返しをされた。当然の摂理だが少し切なくなっちゃった。
「ところで……あなたは現在鼻づまりを患っていらっしゃいますか?」
「通気性抜群な鼻だと自負していますが?」
「はて……では先程からのこの劇臭は私の鼻腔のみを限定しついているという事ですか……何の因果でしょう」
「鼻の穴が腐ってしまわれたのかと。口の中に氷を含んでいれば熱湯も喉元に至る過程で水になります」
「忠告をありがとう。明日の予定を立てる際には耳鼻咽喉科への通院を視野に入れておくよ」
 なんてねっ……と、舌を出し軽く握った拳で自分の頭をコツンと叩く。
「どうやら慣れちゃってたみたい。確かにまだ匂いますね」
「そう言いますとこの匂いの発生は以前から? あなたが今朝転居してきた時には既に?」
「ピアスの方と一緒に発生源を考えあぐねたのですが分からずじまいでした」
「左様で…。夜も更けてしまいました。明後日にどうにか策を講じましょう」
 何故に明日ではなく明後日なのか少し考えてみた。だがそれは仮説すら立てられぬ程の難解な問いだった。なので単なる彼の気まぐれな発言だろうと結論したわけだが、そもそもこの中性的な男性は現実の世界の現実の人間なのだ。必要な発言しかしないTVゲームのNPCではないのだから私の判断は間違っていない強い自信がある。
 ところでさっきから腕の中の猫が暴れているのはどうやら気のせいではなかったようだ。溶けるソフトクリームの様に伸びていく腕に引かれた赤い線。一刻も早く抜け出そうともがくマイリトルキティ。猫の目指す場所は他ならぬ中性的な男性の腕の中だった。中性的な男性も中性的な男性でその両の腕を限界まで開き猫を受け入れる気マンマンだ。
 フッ……新参者の私の完全敗北。解放すると猫は中性的な男性の胸元に勢い良く飛び込む。
「ご主人様、お帰りなさいませだにゃん」
「何ですかその棒読みのアテレコは。腹がよじれてしまいそうです」
 無表情でそう言う中性的な男性。気休めはよしてください。
 何かをさておき圧死をも辞せぬ覚悟なのだろうか中性的な男性は力強く猫をがっしり抱き締めている。人間が一方的に猫を抱き締める行為にこの表現は国語的に間違いな気もするが、それは抱擁に他ならなかった。彼はこの猫が好きで、この猫は彼が好きで、私の入り込む余地は一涅槃寂靜もないようだ。勿論だがこのジェラシーの念は中性的な男性に対してのものである。
 私が彼らにできもしない指笛を吹いてみせようと試行錯誤を重ねていると、続いて帰宅してきたのは何の特徴もない男だった。その毒にも薬にもトリカブトにもならなそうな笑顔で私を見るなり、およそ大多数の人が初対面の相手にかけるべき常套句を口にしてみせる。
「どうもはじめまして! 新しい住人さんですね!」
「はじめまして。そうです、私が新しい住人です」
「………………」
「………………」
ねぇ、何でここの住人は名乗ってくれないの? まぁいいけどね…だから私も意固地になって名乗ってやらないのだが…。でも常識的に考えると新入りの私が先に名乗るのが礼儀な気もするが、どちらにせよもうタイミングは失ってしまったのでアフターフェスティバルだ。
「そうだ山さん、お手隙でしたら適当におつまみを用意して頂けませんか?」
「今日呑みあるの? あぁそっか、新しい住人さん歓迎会だね」
「あら、私って歓迎されてるんですか?」
「何を言ってるんですか、勿の論ですよ」
 それならその歓迎すべき人の名前くらいは気になって欲しいものだが、どうせ大層な名前でもなし気にしないでおくことにする。そうだ、山田か山本か山崎か山村かはたまた山止かは知らないけどおつまみには是非たこわさを希望します。好物なんです。

 おつまみを準備し終えた山なんとかさんに通されたのは質素な部屋だった。がらんどうとまではいかないが、余りにも生活感を感じ取れない。「え? 違うよ僕の部屋はもっと本とか服とか置いてあるよ。ここは呑み専用部屋。つまりは空き部屋ってこと」……だそうだ。
 やがてピアス野郎、続いて中性的な男性が揃い「始めましょうか」という甲高い独り言と共に、厳粛に飲み会開催の火蓋が切って落とされた。わからないことがあったらすぐ聞く。これは新人の特権であり、この先この環境に馴れる為に必要悪な面倒だ。
『ここに女の住人は居ないのか?』に対する中性的な男性の回答。
「4名居ますよ(4匹の猫を指差して)」
『関西弁の壮年期はここの住人ではないのか? またそれならば何故この呑み会に呼ばないのか?』に対する山なんとかさんの回答。
「住人だけど引きこもりだから滅多に会わないし、あの人を呼ぶとたちまちどっちらけになるよ」
『なんか今、玄関で物音が鳴った気がするが泥棒の侵入ではないのか?』に対するピアス野郎の回答。
「筋肉じゃね?」
 筋肉だった。
 その男は間違いなく人間だが、それ以上に筋肉という存在であった。日々の睡眠時間を削ってでもビルドアップを望みそうなそのマッチョ男はまだ空気も暖まっていないこの呑み部屋に入り込むと、おいおい自分を放って呑みなんてズルイッスよ~なんてにこやかに談笑しながら、予め余計に放置されていた座布団に腰を下ろし、私の顔を見るや否や突如硬直しその口を閉ざしてしまった。中性的な男性の目配せに殆ど反射で、
「どうもはじめまして」
 と、ご挨拶する。そう言葉を発してから静々と頭を下げゆっくり顔を上げる。
「一体どういうことッスか!?」
 すると突然の叫び声。それを発した主は筋肉男で、一瞬私に何か不手際があったのかと狼狽するが彼の目は他の住人たちに向けられていた。
 私について説明し彼を諌める住人の面々。どうやら新たな住人が転居してくることに関して知らされていなかったのと、元々声が大きいだけで彼に特に他意はなかったようだ。

 そう、それが私と彼との最初の出会いだった。
 室温でぬくくなっていく缶ビールに付着した水滴を眺め私は本日何度目かわからない溜め息をつく。いいから早くカンパイしようよ……。

「おいおい酔ってるだろオメー?」

そう、突然よっちゃんが私に話し掛けてきたのだ。ちなみに私は酔っていないのだ。

「えへ~酔ってないよ~!」
「ママママァジでぇ? ならばおいスミスお前酔ってる系だろコノヤロー?」
「酔ってないッスよ!」
「ちょっ、スミスさん自分の物真似上手ッスね! ウケるんですけどッス!」
「そういう筋肉さんも随分酩酊状態になられてるようですよ?」
「酔ってないッスよ!」
「ちょっと待って、皆の話を整理すると……四人ともまだ酔ってないの?」
「そういうことになりますね」

何ということでしょう、呑み会の席が始まり、夜の帳が下りた今、依然として誰一人酔ってないなんて!
散乱した缶ビールの数は目算20缶! 一升瓶の中身は残すところ雀の涙ほど!

「信じてたのに!」

力の限り叫ぶ。残された力を振り絞り、私は生きてるんだって全力で主張する。
私の声が寂しい部屋に木霊する。壁も屋根も床もきっと痛がってる。

「ごめんね……りぷりぷ……」

スミスがインラインフィルタでカットしそびれた高音域な周波数で私に謝罪する。
悪いと思ってないのに謝らないでよ。なんか私一人が馬鹿みたい。
それに謝るのは私の方だよ。だってもしも私がOLだったら恋する暇なんてないんだよ……?

「今日初めて会った私たちだけど……でも……」

言い掛けた私の背中を何かが優しく包む。

「君がシュローダーなら自分は毛布になるッス」

汗臭い。否、これは汗の匂いに非ず。マッチョのアポクリン腺より発せられた匂いとは断定致し兼ねる!
では例を挙げよう、臭いものといえば……? ex.タバコ、銀杏、納豆、くさや、シュールストレミング……
該当なし。

お客様大変申し訳御座いません! 私どもでお調べ致しました結果、原因は把握致し兼ねましてご回答致し兼ねます!
ふざけんな! こっちは金払ってるお客様だぞ! お客様は神様じゃねーのか! ええ、仰る通りで御座います!
お客様のご意見は今後の参考にさせて頂き、よりよいサービスを提供させて頂くべく反映させて頂きたいと思います!
もういい! お前んとこの商品は二度と買わねーよ! 不快な思いをさせて大変申し訳御座いません! うっせーバカ! ガチャッ。

思い出せ、自分の発言に責任を持って生きるよう親に言われたろう! いい親を持ったじゃないか私!
そう、蓄膿症なんだ。私は蓄膿症。他人の所為にするな! 原因はいつだって私、自分自身にあるという事を忘れるな!

「やめろォォォ!」

パシンッ!

私の頬がどこかに飛んでいった……かと思いきや私の顔面の皮膚達は強い結束を保っており頬もそこに留まった。

「お前一人の命じゃねぇんだぞ! お前が死んだら……俺、すげぇ悲しいじゃねぇかよ!」

きっと私、今すごいマヌケな顔してる。よっちゃんの耳元でブラブラ揺れるピアスに焦点を当てて呆然とし続けるしかない私。

「お前みたいなションベン臭いガキに俺を泣かせる権利なんかねぇ! 立派な有閑マダムになるまで勝手な真似するんじゃねぇよ!」
「………」
「……三人酔わばもんじゃ焼きって言うだろう?
「………………」

なんかここまで来ると名乗ったら負けな気がする。彼らの名前はその会話から一通り回収できた。
誰かに尋ねられるまで絶対に名乗らないとそう誓おう。

(まだ続きはあるがシーンが相当飛んでいる為ここまで)

■twitter(2010年頃)
  • 「ま、まさか君が…?」「如何にも、我女子高生也!」「こんなもののために俺は…!」
  • 「女をブランド品感覚でしか考えてないあんたにはきっと一生わからないわ、私だって…一応昔は女子高生だったんだゾ☆」
  • 限りなく女子高生に近い成人女性なら満足できるのかといえばそうではなく、逆に成人女性にしか見えない女子高生も論外だそうだ。彼らはそれぞれの女子高生という幻想を追い求め路頭を迷い続ける。我々取材班は彼らを笑顔で見送った
  • 「バッキャロー、オイラは女子高生とイチャイチャしてぇんだー!」「一体何が起きているんだ…死んでいてもおかしくないほどのダメージを受けてまだ立ち上がるだと…?」「おあいにく様、死ぬのは女子高生の腹の上って決めてるもんでね…!」
  • 「ハァハァ君いくつ?」「風が騒ぎだした…」「え?」「また一人、哀れな狩人が社会という名の樹海でさまよい、常識という名の罠で駆逐されていく…」「あれっ、なんでだろう…俺にそっくりな人がニュースに出てるぞ?」
  • 「好きなパーツを選んでください、あなた確か茶髪がお好きでしたよね?」「畜生っ…」「おやおや、涙を流すほど感動して頂けるとは!」「違う!」「なにっ…?」「こんなの…こんなの女子高生なんかじゃねぇ!」

  • くっそー!よくも俺が今までコレクションしたモンスターを勝手に全部合体させて一匹にしやがったな!絶対に許さない!お前ん家の玄関にでっかく「靴」と書いてやる!靴を求めてこぞった裸足の中高年達に戸を塞がれたお前は欠勤を余儀なくされ会社をクビになっちまうのさ!今更謝ったって遅いぜ!!


■謎のテキストファイル(2009年頃)

好きな女の子が出来た。生きるために必要なもののひとつにした。
彼女と居ると毎日が楽しい、この人と一緒に生きていこうと思った。

好きな男の子が出来た。死ぬために必要なもののひとつにした。
彼と居ると毎日が楽しい、この人と一緒に死のうと思った。

「一度しかない人生で君に出会えたのは奇跡だ」
「全く私もそう思う」
「結婚しよう」
「はい」

こうして二人は結婚をして互いを愛し合い喧嘩一つせず暮らしておりました。
しかし女は過度なスキンシップを拒むのです。耐え切れずに男は女に訊ねました。

「子供、欲しくないの?」
「親が居ないのは可哀相だよ」
「は?」

初めて聞いた君のそんな気持ち。
僕は君と生きていきたかったんだけど君は違ったんだね。
君は僕と死にたかったんだ。同じ野草を摘んだけど目的は違った。

「君は自殺願望があるのかい?」
「ちょっと!他人を病んでる人みたいに言わないでよ、私はあなたと死にたいの」
「そんなの嫌だ」
「我がまま言わないで、決めてる事だから」
「そんな事言わずにずっと一緒に生きていこうよ」
「そんなの嫌よ」
「死ぬことを考えるなんて…正気じゃないよ」
「狂っているのは確実にあなたの方よ」

あなたと出会ってから今日まで、とても楽しかった。
でも今日が最期の日になるとは思わなかったね。
最近チェックしてなかったから知らなかったけど今日やってたんだね最期の日。
手渡されたナイフで頬を撫でると君はとてもよろこんだ。

今、君は死んだ。

そう思う事にして僕は家を飛び出した。

「待ってよ」

声が聞こえた。

「次に会った時、私はあなたを殺すし、私を殺してねあなたは」

声が聞こえた。

声が遠のいていく。僕の意識も遠のいていく。

君と好きな音楽を聴いて、

面白いテレビを観て、

映画を観て、

アイスを食べて、

犬などを飼って、

ワインを飲んで、

政治家の失言を批判して、

子供の名前を考えて、

カラオケに行って、

カーテンを洗って、

写真を撮って、

花火をして、

君とずっとそうやって毎日楽しく、
幸せに、
充足して、
支え合って生きていこうとずっと思ってた…

馬鹿か?
え?馬鹿なのか?

僕は狂っている。
僕は生まれながらに狂っている。
そんなことが許されるはずがないのに。
僕は馬鹿だ。
本当に人間なのか僕は。
狂っているとかいう次元じゃない。
そんな事を考えるなんて正気の沙汰じゃあない。

男は女の元へ戻った。

「ごめん…僕が間違ってた」
「」
「ありがとう、君と出会えて本当に良かった…」
「」
「死に際に僕の危険思想を指摘してくれてありがとう」
「」
「ありがとう」
「ありがとう」

好きな女の子が出来た。生きるために必要なもののひとつにした。

好きな男の子が出来た。死ぬために必要なもののひとつにした。

間違っていることがあったとするならそれは、お互いがお互いを、
生きるため、死ぬために必要なもののすべてにしてしまったことだ。