ファンタジー剣士バトルロワイアル
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ファンタジー剣士バトルロワイアル
ja
2011-12-18T01:31:57+09:00
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朝焼けに間に合わない
https://w.atwiki.jp/irohahifumi/pages/228.html
**朝焼けに間に合わない◆k7QIZZkXNs
月が沈み、太陽が昇る。夜闇は朝の光に打ち払われ、マスク越しの視界を眩しく染めていく。
ダース・ベイダーはその光を全身に浴び、手にする宝刀・獅子王を鞘へと納めた。
この地へ降り立ち指針を定めて以降ダース・ベイダーはすぐには動かず、まず自身を把握する事に努めた。
最期の瞬間を覚えている。
魔星デス・スターで。帝国の将、シスの暗黒卿として。実の息子ルーク・スカイウォーカーとの、幾度めかの、そして最後の戦い。
ルークが放った叫びは今も耳に、魂に焼き付いている。
暗黒面に堕ちたダース・ベイダーを光の下へ呼び戻した、誇るべき息子の切なる声を。
そして、ルークを排除せんとする銀河帝国皇帝ダース・シディアス――暗黒の師にして全ての元凶を、湧き上がる怒りのままに討ち果たした。
ルークを守れはしたものの、代償は己の命。ダース・ベイダーもまた、命尽きる事となった。
しかし――後悔はなかった。
己を堕落させた禍根であり、銀河を蝕む悪意を滅ぼせた、それ以上に。
自らが傷つけ、苦難の道を歩ませた息子を、何一つ父親らしい事をしてやれなかった息子を、この手で守る事ができたのだから。
強く正しく成長した息子の姿を見て、息子の手の中で、息子に看取られ、穏やかに瞳を閉じた。
銀河帝国は遠からず滅ぶだろう。最後のジェダイ騎士ルーク、惑星オルデランの女王にして実の娘レイア、そして彼らの仲間たちによって。
憂いはない。これ以上何かを望む事もない。ただ一つとして悔いはない――が、ダース・ベイダーに静かな眠りは訪れなかった。
気がつけば。そう、気がつけばダース・ベイダーは生きてまたここに在った。
肉体の傷は全て消え去ていた。ルークによって斬り落とされた右手や、皇帝の放ったフォースの電撃により破損していたはずの生命維持装置すら一切の不備なく修理されて。
一度修羅の道を歩んだ者はその業から逃れる事は出来ないと言う事か。
自らが再びの生を受けた理由。傷を癒し戦う力を取り戻させた理由。数十名の剣士たちを殺し合わせる理由。
気にならないと言えば嘘になる。だが、考えても現状で答えの出る問題ではない。
何者が修理したかはわからないが、生命維持装置の調子は良好だ。
義手・義足は共
2011-12-18T01:31:57+09:00
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仲間
https://w.atwiki.jp/irohahifumi/pages/227.html
**仲間◆k7QIZZkXNs
近づいてくる気配に気付き、アーチャーはゆっくりと立ち上がった。
未だ傷ついた勇者は目覚めていない。
昏々と眠るダイにちらりと視線を遣り、動かすのはまだ無理だと判断してアーチャーは一人屋外へと忍び出た。
感じた気配はまっすぐ今いる診療所へと向かってくる。治療手段の確保は誰に取っても死活問題、当然と言えば当然だが。
一つ所に留まっていたのは愚策だったかも知れない。それでもダイの状態を鑑みれば、その判断は正しかったと言えるだろう。
まだ距離がある内に、アーチャーは自身の戦力を確認する。
携えるのは一振りの日本刀。だがそれがただの刀でないことは錬鉄の英雄たるアーチャーの目を以てせずともすぐにわかった。
なんせ、柄を持って地面に落とせばそれだけで刀身が根元まで埋まってしまうのだ。
切れ味が良い、という次元ではない。触れた物全てを抵抗無く斬り裂く、刀剣としての極地と言える刀であった。
(鋭さや摩擦で斬っているのではない……刃によって物体の分子構造を破壊している。こんな刀を創る者がいるとは、な)
古今あらゆる刀剣を目にし、手にし、複製してきたアーチャーに取り、それは久しく覚えていない驚きだった。
英霊として過去・未来へ果ての無い闘争に召し上げられた身であれど、このようなちぐはぐな刀は見た事が無い。
刀の形状をしていながらもその本質は外見にそぐわない超絶の技術で織り成されている。
宝具という訳でもない。刀からは一切の神秘が感じられない。
だがしかし、殺傷力という一点のみに置いて、その刀はあるいは宝具にすらも匹敵し得る力を有している――そう思わせる。
最強の剣士。
その『一』を見出す闘いと言うならば、演者達が用いる剣もまた最強ではなくてはならないと言う事か。
五十二名もの剣士を拉致し、更にはこのような刀まで用意したロワの存在が改めて脅威に感じられた。
が、それはともかく。この刀が武器として第一級の業物であることは疑いない事実。
しかしアーチャーが得手とするのは短刀の二刀流であり、長物も扱えない訳ではないがセイバーのようにとまではいかない。
魔術を用いれば剣を複製する事は可能だが、先のセイバーとの一戦でアーチャーは己の能力に翳りがあるのを
2011-12-18T01:35:18+09:00
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夢追う鷹は刃を隠す
https://w.atwiki.jp/irohahifumi/pages/226.html
**夢追う鷹は刃を隠す◆k7QIZZkXNs
永く戦場にいると、色々な奴と出会う。
すばしっこい奴、力自慢な奴、剣よりナイフが得意な奴、馬術が上手い奴。
鷹の団という一団を率いるグリフィスも当然、数多くの部下や敵と対面してきた。
その中でもグリフィスの中へ特に強く焼き付いている人間と言えば、それは間違いなくガッツだろう。
初めてグリフィスが本気で手に入れたいと思った個人、それがガッツだ。
グリフィスが剣で手に入れ、そして剣で自分をもぎ取っていった男。
ガッツとはグリフィスに取り、実に多様な意味を持つ無二の存在である。
親愛、友誼、信頼、共感、そして憎悪。
愛憎入り混じった複雑な感情を、グリフィスはガッツに抱いている。
が、ガッツ以外にももう一人、忘れられない男がいる。
その男の名はゾッド。『不死のゾッド』――戦場の生ける伝説である。
一体いつ頃から戦場にいたのか定かではなく。死んだと噂される度にまた次の戦場へと現れる。
鷹の団もまたこの伝説と交差し、それが偽りでないことを思い知らされた。
鋭き爪牙、大木の如き四肢、強靭な翼を持つ異形の巨獣。『使徒』と呼称される人外の魔物、それがゾッド。
後にグリフィス自身がその『使徒』の上位存在であるゴッド・ハンドへと転生することとなるが、現時点のグリフィスにはその因果の糸は結ばれていない。
故に、いまグリフィスが知る魔的な存在といえば、それはゾッドを置いて他にいない。
そして今日、グリフィスの記憶にまた一つ、ゾッドに続く化け物の項目が追加された。
一人、無人の野を進んでいたグリフィスの前にふらりと現れたその人影は――骸骨であった。
気配も無く視界から骸骨が消える。
視線を上に向ければ、骸骨は今まさに抜刀しグリフィスめがけて落ちて来る。
多少の驚きはあったものの、ゾッドという前例があったためグリフィスはさほど動揺する事無く状況を把握した。
こちらも抜刀しその剣を弾く。腕に走る衝撃が、夢や幻覚の類ではないことを示している。
初撃を防がれ、骸骨は着地と共に後退した。その一歩が、異常なまでに遠い。
まるで宙を滑るように飛び、あっという間に間合いを離される。
機を逃さず反撃に移ろうとしたグリフィスの剣が
2011-07-23T06:43:05+09:00
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刃の亀裂
https://w.atwiki.jp/irohahifumi/pages/225.html
**刃の亀裂◆k7QIZZkXNs
思えば、あの城攻めの時から全ての歯車は狂い始めたのだろう。
何もかもが宝石のように輝いて見えた、あの時代。鷹の団が健在であったとき。
現世の理の外にある、不死の怪物との戦い。
その怪物から放たれた滅びの預言。
そう、預言を聞いたあの瞬間から――ガッツの世界は歪み始めた。
眼前にそびえ立つ古城を見上げ、ガッツは述懐した。
暁の空が白み始め、朝焼けの光が街を照らしている。
不思議とこの数時間、夜だというのにガッツの周りに悪霊は現れなかった。
生贄の烙印を刻まれたガッツに安息の眠りは決して訪れはしない。
現世と幽界の境界が曖昧になる夜の時間は、すなわち彼に絶えず付き纏う悪霊たちとの血で血を洗う闘争の時間だ。
当然、この場でもガッツはそれら魔的な存在の襲撃を警戒し、一睡もせず常に気を張って城下を忍び歩いていたのだが。
(夢魔の一匹も出やがらねえとは……あの女、使徒じゃねえくせにゴッド・ハンド並みの力を持っているってことか?)
ここまで完璧に幽世の存在の侵食を抑えられるというのなら、使徒どもの首領であるゴッド・ハンドと並ぶだけの力を有していると考えてもいいだろう。
そうしてみると、この戦い。
神の剣に相応しい剣士を見定めるというこの戦いは、ある意味ではゴッド・ハンド転生の儀式『触』に近いものと言えるかもしれない。
数多の人間を生贄に捧げたった一人の剣士を選び出す。その剣士は神にも等しい力を得る――触、そのものだ。
ギリッ、と奥歯が鳴る。
ガッツの中で、未だあの日の惨劇の記憶は薄れてはいない。
共に戦場を駆けた朋友たちが、ただ一人愛した女が、抗えない圧倒的な運命に呑み込まれ蹂躙されたあの日。
その中心にいた親友――親友だと思っていた、男のことも。
ユーリと名乗る男と戦った後、ガッツは一人夜の街を彷徨っていた。
目的は主に二つ。身を休める場所の確保、そして索敵である。
夜闘い朝眠るという昼夜逆転の生活を日常としていたガッツに取り、暗闇は長年連れ添った相棒のようなものだ。
黒い甲冑にマントは闇と同化し視認性を薄める。
悪霊にどれほど有効かはわからないが、今となっては黒でなければ落ち着かないというのもあった。
が、結局悪霊は現れず、敵の姿も見出せない
2011-01-27T21:06:52+09:00
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受け継ぐ者へ(後編)
https://w.atwiki.jp/irohahifumi/pages/224.html
**受け継ぐ者へ(後編) ◆k7QIZZkXNs
人間を殺してはならない。
人間を殺してはならない?
人間を殺してもいいのではないか?
そう、剣を向けてくるのなら、相手が人間でも――。
目の前にいる、脆弱な人間を――。
「逃げろ! 私に近づくな!」
ありったけの理性をかき集め、クレアは叫んだ。
クレスはもちろんのことその叫びの意味を理解できない。
彼の本能はうるさいほど危険を警告し、今の内に斬れ、もしくは逃げろとがなり立てている。
だが、クレア自身にはどうも敵意はないように感じるのだ。
左腕のみならず全身を使って右腕を押さえつけるその姿からは、まるで右腕から先が別の誰かに乗っ取られたように見えて。
「まさか……くっ、しっかりするんだ!」
「に、逃げろと……言ってる、だろう」
「僕のせいであなたはそうなったんじゃないのか!? だったら、逃げられる訳ないじゃないか!」
斬り捨てることなど、できはしなかった。
ブルックとは違う、必死にクレスを殺すまいとするクレアという人物を、このまま置いては逃げられない。
「何か僕にできることはないか? どうすればその腕は止まるんだ!?」
「……斬り、落としてくれ。腕を離せば……暴走は止まる、はずだ……」
「斬り落とす……それしか、ないのか」
「やるなら、早くしろ……もう、抑えていられない……」
クレアは苦しげに呻く。見ず知らずの、しか人間であろうクレスを頼ったのは、それだけ追い詰められているからだ。
気を抜けば意識が一瞬で食い潰される。『クレイモアのクレア』ではなく、『覚醒者クレア』と成り果ててしまう。それだけは耐えられない。
逃げればいいのにクレスは残ってクレアを救うと言ってくれる。
彼はクレアを待っているはずの丈瑠と同じ表情をしている。信じられる人間の顔だ。
だからこそ、恥を忍んでクレアは頼んだ。
「……わかった、やるぞ!」
やると決めたら迷いは不要だ。
刀を構え、全身の力を集約させる。
「真空……破斬!」
刀身に真空を纏わせ切れ味を上げる剣技。
放たれた斬撃は、クレアの右腕を見事宙へ舞わせることに――失敗した。
ガキンッ、と刀は受け止められた。地に突き立っていたクレアの右腕が、神速で抜き放たれて
2011-01-27T21:14:31+09:00
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受け継ぐ者へ(前編)
https://w.atwiki.jp/irohahifumi/pages/223.html
**受け継ぐ者へ(前編) ◆k7QIZZkXNs
誠刀『銓』は刃なき刀。
秤は天秤を意味し、己自身を測る。
自分を試し、自分を知る刀。
敵ではなく自分を切り、自分自身を測る刀。
志葉丈瑠はこの刀を用いて自らの迷いを断ち斬った。
全ての虚飾を取り去った根源である自分とは何か。
丈瑠にとってそれはまさしく平和を守る「侍」であり、シンケンジャーの将たる「殿」だった。
では今現在、誠刀を握る少年ノヴァはどうか。
彼と志葉丈瑠は違う。
ノヴァはそもそも勇者と呼ばれる自分を否定してはいないし、自らの行いに疑問を持ってもいない。
クレアを悪と断定した自らの判断は絶対だと信じているし、またそれを成すだけの力も備えている。
ならば誠刀が指し示す道とは何か?
もしここにいるノヴァが勇者ダイと邂逅した後ならば、魔王軍が尖兵であるハドラー親衛騎団に敗れた後ならば――誠刀はノヴァを正しき道へと導いただろう。
しかし、それは叶わない。
何故ならノヴァはダイの名は知っていても会ったことはないし、自分以外に勇者と呼ばれる彼の存在を疎ましがってもいた。
溢れる剣才は齢十六にして並み居る騎士たちを凌駕せしめ、世に跋扈する魔獣どもも敵ではなく。
自らが世界の中心と信じて疑わない無垢な童子の心のままで、ノヴァはこの戦に招かれた。
だから、誠刀を手にしてもノヴァの精神は何ほども揺らぐことはない。
彼の持つ特異技能、自らの闘気を刃へと変換する資質も原因の一つと言えるだろう。
丈瑠は誠刀に何がしかの意味があるのではないかと推測し、理解しようとすることでその本質に触れた。
だがノヴァは誠刀に別の意味を見出してしまった。
すなわち、武器としての一面を。
万人に問えば万人が否と断ずるであろう、柄と鍔だけしかない刀に。
故に、誠刀は沈黙する。
ノヴァは誰よりも誠刀と相性が良く、あるいは誰よりも相性が悪い。
おそらくは刀工四季崎記紀とて予想し得なかっただろう、誠刀のただ一人の使い手。
それがノヴァなのだ。
もしこれが王刀『鋸』であれば、毒気を滅するその特性はノヴァに正しく作用し、彼に正道を歩ませることとなっただろう。
ノヴァは決して悪ではない。ただ我が強すぎるだけだ。
しかし誠刀に王刀のような毒気を失くす作用はない。
2010-11-23T22:29:48+09:00
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◆X8UEQnbu92
https://w.atwiki.jp/irohahifumi/pages/222.html
*◆X8UEQnbu92
**氏が執筆した作品
-041:[[七転八刀]]
**氏が登場させしたキャラクター
1回
小川健太郎、セイバー、サマルトリアの王子、ヒュンケル、龍咲海、両儀式、セシリー・キャンベル、錆白兵
#comment
2010-10-28T22:57:00+09:00
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七転八刀
https://w.atwiki.jp/irohahifumi/pages/221.html
**七転八刀――◆X8UEQnbu92
遠く、遥かな頂きから声が降ってきた。
何事かと空を見上げた錆白兵は知る。
これは、新たな戦の号砲であると。
「拙者にときめいてもらうでござる」
独語し、堕剣士の影が霞む。
目にも止まらぬ勢いで険しい山脈を駆け昇っていく。
この声はかなりの広範囲に届いているようだ。おそらく先ほどの黒い剣士も来るだろう。
剣を砕かれた今の錆白兵ではあの強者を相手取るのは甚だ不利。
それをわかっていて尚、剣士は目前にある熾烈な闘争の香りに引き寄せられる。
なんとなれば戦場こそが錆白兵の存在意義を証明できる唯一の聖地だからである。
十数分も走っただろうか、山脈の頂きへと到達した錆白兵の目前には広く開けた岩場が映っている。
慎重に身を隠し様子を伺うと、そこには一人の男と二人の女がいた。
青年は刀を佩き、手には何やら珍妙な筒のようなものを持っている。
その筒を口元に当て、大きく息を吸い込んで吐き出す寸前、青い髪の少女が慌てて男の手から筒を取り上げた。
遠めに見て何やら説教をしているようだ。男の表情が情けなくも弱々しい様相へと変化している。
もう一人の女は着物を纏い、興味なさげに少女と男のやり取りを眺めていた。
(仕掛けるか……? いや、あの着物の女人は相当腕が立つ……これ以上近づけば即座に悟られるでござる……)
数の上では三対一。
奇襲と言う利はあれど、初手で数を減らせなければ瞬きのうちに逆撃を受けるは必定だ。
今は待ちの一手と観察を続けることとした。
脚運びを吟味し、青髪の少女はそれほど脅威ではないと断定した。あれは剣士ではない。
着物の女は逆に相当腕が立つとわかる。
岩を背にして死角を減らし、いつ攻撃されても対応できるよう剣の柄に常時手をかけている。
だが先ほどの黒い剣士ほどではない。一対一なら十分討ち取る自信はあった。
懸念はなにやら面妖な気配を発するあの剣くらい。
最後、青年はどうにも測りきれない。
しかし容易ならざる敵手であるということだけは、今もって錆白兵が隙を見出せないことからも明白であった。
(ふむ……仕掛けるならば、まず狙うは着物の女人でござるな)
一手で彼女を無力化し、然る後に青年と対峙する。
その際彼女の剣を手にすることができ
2010-11-23T22:36:24+09:00
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彼・彼女の顔が思い浮かんだ
https://w.atwiki.jp/irohahifumi/pages/220.html
**彼・彼女の顔が思い浮かんだ ◆Bn4ZklkrUA
「ところで健太郎さん。さっきから何をしてるんですか?」
「おかしいなぁ。いつもなら怪しい場所をどんどん触っていけば隠し扉の一つや二つ、すぐに見つかるものなのにー」
「さすがにそんなに簡単に見つかるようなら誰も苦労しないと思いますけど…」
「それでもこんなに探して、何も出ないのは最初から何も無かったと思うんだけどね」
「それは……」
改めてこの慰霊碑を一通り探索していた二人だが所詮は探索に素人。
しかも片方は闇雲になんでも弄って、罠が発動しようがどうなろうがお構い無しな行動が探索することだと
本気で思ってる自称ベテランだ。
最初から探索には不向きなコンビだったのだ。
何かがあったとしても見つけられるかどうか最初から疑わしいが…。
「それもそうですね……いつまでもここにいるより早く他の人達と合流した方がいいかもしれませんね」
「それもそうかもしれないけど、今から探すとなると大変じゃないかな?」
健太郎は別に殺し合いをしたいわけではないが、接極的に他人を助けたい理由もない。
いい手段があるのなら手伝ってもかまわないかなぐらいの動機はあったが。
「それについて私にいい考えがあるんです。実は私に支給されたアイテムが……じゃん、コレなんです」
余程自分のアイデアに自信があるのだろう。自慢げにバッグからそれを取りだす。
「え~と、それは?」
「なんでも遠くにも声を届ける事ができる機械なんですけど。つまり……」
◇ ◇ ◇
「え~と……つまり、それで人を集めるつもりなんですよね?
でも、それを使用すれば人を呼ぶのは簡単だけど……危ないんじゃないかな?」
「はい、本当はコレを使うのに躊躇してたんです」
躊躇するのも当たり前だ。仮に拡声器を使った場合、殺し合いに乗った参加者も引き寄せる可能性がある。
「でも……こうしてる間にもこの島の何処かで誰かが誰かを殺してるのかもしれない。
誰かが誰かに殺されてるかもしれない……だから、だから私はそれを止めたいんです!!
お願いです、健太郎さん。私に協力してください!」
そう言い切るとさくらは勢いよく健太郎に対して頭を下げる。
「えっ、ちょっと、急にそんなこと
2010-10-28T22:24:57+09:00
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聖剣の少女騎士
https://w.atwiki.jp/irohahifumi/pages/219.html
**聖剣の少女騎士 ◆Mc3Jr5CTis
セシリー・キャンベルの住まう大陸には一匹の獣がいる。
かつて山々を叩き潰し、大地を割り、海を呑みほした史上最悪の人外ヴァルヴァニル。
悪行の限りを尽くしたその獣は一振りの『聖剣』によって封印されたという。
だが聖剣に磔にされ、身動き出来ぬようになった獣は人を憎み、人を互いに殺し合わせるためのシステムを生みだした。
『霊体』
ブレア火山に封印されたヴァルヴァニルが今も吐き出し続ける、その目に見えぬ粒子は、大陸に生を受けたヒトの心臓に干渉し、
そこに『死言』と呼ばれる呪いの文字を刻み込む。
本人のみに認識出来るその言葉を口にすれば、霊体は人間の肉を触媒にして、悪魔と呼ばれる強大な人外をこの世に顕現させる。
大陸の国々は、そのヒトには制御出来るはずもない力を使い、代理契約戦争と呼ばれる悲惨な戦いを起こしてしまった。
かの獣の思惑通りに。
その戦争から四十四年後。
人の肉ではなく、玉鋼を触媒に霊体を利用し、役立てる技術『祈祷契約』の普及で、大陸諸国は復興を遂げていた。
故にかつての聖剣による、ヴァルヴァニルの封印が解けようとしている今。
『霊体』を生みだす永久機関とも言えるヴァルヴァニルへのスタンスの違いから、大陸各国は再び激突しようとしていた。
都市が『神』と呼び、帝国が『王』と呼び、軍国が『獣』と呼び、群集列国が『機械機構』と呼ぶ『ヴァルヴァニル』
の利権をかけて。
唯一、獣を封じる事の出来る、新たなる聖剣も不在のままに。
◇
「あの岩山が右手にあるという事は、町はこっちだな……」
『異世界』より召喚されたというゼロの使い魔――ヒラガ・サイトとの別れの後、セシリーは単身、北東の町へと向かう。
手分けをして反撃への糸口を掴むため、二人は別々に行動する事を決めたのだが、その前にサイトはその経歴から来る
知識と推論をセシリーに色々と教えてくれた。
首輪に仕込まれているであろう、盗聴と盗撮の機能。
未知の技術からなる、異世界の通信アイテム。
そして、二人の住む『世界』の相違について。
サイトの生まれ故郷だというカガクの進んだ国ニホン。
月が二つ浮かび、魔法の力が支配するというハルケギニア。
祈祷契約という技術が日常生
2010-10-28T22:28:50+09:00
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