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漂う匂いを追いかけて◆Grjjhv/h/s



先手を打ったのはクレアだった。
クレイモア―――身の丈ほどの大剣を駆り、妖魔を狩る者たち。
その一端に属するクレアにとって、手元の剣はなんとも頼りがたい物であったが。
建物の陰から一気に飛び出し、歩いてくる長身の男に斬りかかる。

「―――(早い!)」

それゆえか、その速力はソルジャー1st、セフィロスでさえ舌を巻く程の物であった。
しかし彼の驚きも、クレアの驚愕に比べれば薄い。

「な―――そんな短剣で、私の一撃を!?」

セフィロスは、とっさに突き出した二振りの短剣で、クレアの一撃を弾き、即座に後退していた。
必殺のタイミング、必殺の間合いを、いとも簡単に無効化され、クレアは唇を噛む。

「ち……一撃でしとめたかったんだがな……」

「……お前はあんな女の口車に乗せられたのか?」

蔑むような口調で襲われた男、セフィロスが問う。
クレアは油断なく剣を構えなおし、その問いに答えた。

「別にそういうわけじゃないが、危険な奴は早い段階で排除しておきたかったんでな。
 貴様―――妖魔だろう? 臭いでわかるんだよ」

「――――モンスターと一緒にされるとはな。俺も一応……フン、英雄とまで呼ばれているんだが」

双剣を両手に持ち、不愉快そうに吐き捨てるセフィロスに、容赦なく斬りかかるクレア。
セフィロスは面倒臭そうにクレアに背を見せると、全力で駆け出した。



「逃げる気か!?」

「お前の相手をする気がないだけだ」

すぐに撒ける、と思っての行動であっただろうが、クレアはまるで意に介さずぴったりと着いてくる。
ソルジャーである自分の脚力で振り切れない女。クレイモアである自分が追いつけない男。
両者はしばらくの間追いかけっこを続けていたが、疲労が出る前に足を止めた。
奇しくもその選択は同時だったようで、町の一角―――ちょうど、最初に会敵した地点に戻ってきていた。
男は飄々として、クレアに言葉をかけてくる。まるで本当に敵意がないかのような振る舞いだったが、
クレアは妖魔の猫かぶりには慣れきっているゆえに、殺意を孕んだ警戒をやめる事はない。

「まったく……妙な言いがかりをつけて襲ってくるとは、珍しい女だ。珍しい男はいいが、珍しい女は面倒だな」

「……なぜ本性を出さない? 人間の姿でその身体能力なら、妖魔化すれば私を倒す事も容易いだろう」

「俺は人に命令されるのが嫌いなんでな。あの女の言うまま戦ってもいいのかと、そう思っただけだ」

「……変わった、」

妖魔だな、と言おうとして、クレアの思考が凍りついた。
自分が佇んでいた横の建物から、巨大な鉄の塊が飛び出し、自分に向かって振り下ろされたのだ。
奇襲―――そう、先ほど自分が行った行為―――その単語が頭に浮かぶ前に、身体は飛び退いていた。
石のタイルに、狂暴なクレーターが出来上がる。常軌を逸した膂力の持ち主の一撃だと、クレアは冷や汗をかく。
もくもくと砂埃が上がり、崩れた民家の壁から姿を現した男は、なるほど巨大な剣を携えた、剛力の黒い剣士だった。
片腕の義手を見ても、その男が"戦う生き物"だということはすぐに分かる。
だが、クレアの鼻には妖魔の臭いは届かない。間違いなく、ただの人間のはずだ。
血走った目から見て、こちらを殺す気なのは明らかだが、クレイモアとして人間を斬るわけにはいかない。

「待て―――こちらに敵意は」

しかし黒い剣士はクレアの話を聞く意思など微塵も見せず、すぐさま右腕に持った大剣を振りかざした。
理不尽な殺意―――だが、その殺意が男にとって明白な物であり、狂気の類でない事だけは分かる。
クレアが見た男の目は冷静に此方の戦力を分析し、必殺の一撃を決めようとする研ぎ澄まされた眼光を湛えていた。



「く―――」

「ガアアアアアッ!」

咆哮を上げ、大剣を振り下ろす黒い剣士。
その剣は、セフィロスの知る長刀『正宗』とも、クレアの知る大剣『クレイモア』とも違う、異形の剣。
それは無数の鋭角(エッジ)を持ち、意図不明な意匠が亜等間隔に配属された、何かの冗談のような兵器だった。
単純な重量だけでも自分の四倍はあるだろう剣での一撃に、クレアは眉を潜め、形振り構わず地面を転がる。
同時に剣を振り上げ、相手の剣への盾にするように、タイミングを合わせて打ち込む稚気も見せるが。
回避とは言えなかった。その刀身が地面に触れた衝撃と轟音だけで、クレアは聴覚と、支給された剣を失っていた。
否―――失ったと、思った。だが、金剛石をも砕くだろうその一撃を受けて、その剣―――否、「刀」は無傷なのだ。

「……」

避けたクレアを燃えるような目で追い、黒い剣士が追撃に入ろうと、腕に力を込める。
だがその一瞬の技後硬直を見逃さず、突剣を構えたセフィロスが、黒い剣士に突撃していた。
これほどの殺意と力の持ち主、この殺し合いの場で生かしておけるはずもない。ここで殺さねば、自分が死ぬだけだ。
それを理解しているセフィロスだからこそ、クレアが追い込まれる姿を見て助けも逃げもせず、この一瞬を待っていた。
だが―――セフィロスは気付いていただろうか。
.....................................
黒い剣士の視線が、一度たりとも自分から外れていない事に。

「な―――――」

渾身の力で突き出したレイピアは、黒い剣士の義手に絡め取られ、半ばから圧し折られていた。
同時に、レイピアを折った鋼鉄の左腕でセフィロスの顎を掴み、全力で建物の壁に押し付け、押し込む。



「てめえは、後だ!」

「ガッ……!」

先ほど黒い剣士が飛び出してきた民家の中に押し込まれ、もんどりうつセフィロスを尻目に、黒い剣士は向き直る。
クレアは既に刀を回収し、逃げの体勢に入っていた。命を懸けてまでこの敵を倒す意味がない以上、
逃走は当然の選択であった。先ほどセフィロスが取った選択と同じだ。だが、今度は追う側の執念が違った。
黒い剣士は足音だけでクレアの行動を察知し、左腕だけをそちらに向ける。
ガチャリ、と義手が音を立てて展開した。そこから現れたのは、なんというか……大砲だった。
人間に大砲を持たせるという思想を理解できる剣士がこの地に何人いるだろうか?
少なくとも、クレアがそれについて何か考える前に、砲弾は発射されていた。

「ぐっ……」

右腕に直撃した。
肘から先を吹き飛ばされながら、クレアが転ぶ。
黒い剣士は特に何かを感じるでもなく、ゆっくりとクレアに身体を向き変え、大剣を持ち直して―――。

数秒、意識を失った。

その一瞬でクレアは千切れた右腕を拾い、町の雑路に紛れ込む事に成功した。
黒い剣士は大剣を杖のように地面に立て、荒い呼吸を立てる。
自分の愛剣、ドラゴン殺しと比べても、この大剣―――『アスカロン』は重すぎた。
ガチガチに固まった筋肉をほぐしながら、黒い剣士―――ガッツは、ため息をついた。






「こっちも、逃がしちまったか」

崩れた民家の壁を覗き込み、セフィロスがいなくなっている事を確認するガッツ。
義手の調子を確認し、もう一度懐を探って砲弾の替えや炸裂弾がなくなっていることを確かめる。
もともと装填していた一発が見逃されていただけ、幸運だったと思うべきか。
首筋の痛みは、既に治まっていた。

(女の方は"もどき"だろうが……男は、確実に使徒だ。まったく……厄介な事になりやがった)

ガッツは、首筋の傷痕を摩りながら、大剣を眺める。
どうもこの剣には、相当なギミックが組み込まれているらしい。
扱い方によっては、斧のように砕き、槍のように貫き、鎌のように刈る事もできるだろう。
それはいいが、この剣をドラゴン殺しと同じ感覚で振るっていれば、無駄な疲労が溜まってしまう。

「……気休めくらいにしかならねえだろうが、解体するか」

一介の剣士として、これほど精妙に作られた剣の形を崩すのはどうかという感情はあった。
だが、戦場においてガッツに必要なのは、手に馴染んだ武器と機転だけだ。
ドラゴン殺しがない以上、この剣にはその代替をしてもらわなければならない。
鋼の刀身は弄りようがないし、手に持った感じで分かる、内部に秘蔵された隠し剣は不意打ちに有効だ。
とりあえず盾の紋章があしらわれた装飾を、瓦礫でガンガンと叩きながら、外しにかかる。

(……チッ、急いでるってのに、何でこんな事に巻き込まれてんだ、俺は……!)

ガッツは、キャスカという名の大事な女を救い出すため、聖地に向かう途中だった。
一刻も早くこの茶番を終わらせなければ、キャスカが危ない。
無論他人に気を使っている余裕はなかったが、別にガッツは快楽殺人者という訳ではない。
人間同士での殺し合いなど、若いころに経験しつくして飽いていた。
せめてもの救いは、あの女の演説の場に参列していた者がかなりの割合で使徒のような気を発していた事だろうか。
不思議と、あのロワと名乗る女からは、使徒特有の首筋の痛みは感じなかった。
信じられるかどうかは別だが、とりあえず、話の内容を鑑みる価値はあるだろう。
願いを叶える云々と言っていたが―――。

(いまさら、何の願いがあるってんだ―――)

ガッツには、叶えたい願いなど何もなかった。
もう一度会いたい人間や、戻りたい過去はあったが。
それは、彼自身の選択の末に壊れ、失ったもの。
育ての親を殺し、鷹の団を抜けて去り、グリフィスの選択を変えられなかった自分が掴み取った、
クソッタレの現在(いま)を捨ててそこに縋りつくなど、自分には願う権利すらない、と思っていた。

(強いて言うなら―――キャスカのところへ)

ガッツは、既に最後の一人となるまで生き残る事を決めていた。
それは、過去を満たす願いのためでもなく、現在に満ちる恐怖のせいでもなく―――。

未来に向かおうとする、黄金の意思である。

【F-2 市街地/一日目/深夜】

【ガッツ@ベルセルク】
【状態】健康 
【装備】アスカロン@とある魔術の禁書目録
【道具】支給品 ランダムアイテム×1
【思考】基本:優勝してさっさと帰る
     1:とりあえず 出会った奴は 斬り伏せる
【備考】アスカロンはなんかいろいろやって50kgくらい軽くなったようです



クレアが左腕を抱えて、『早く繋げなければ―――しかし、この傷痕だと時間がかかるか』などと言いながら
走るのを物陰に隠れて見届けたセフィロスは、痛む頭を抱えながらも、町を走り始めた。
黒い剣士からは逃げ切れたようだが、あれほどの化け物がいるとなると、ますます鬱だ。
殺し合いなど、やりたい奴だけでやっていればいいものを……と吐き捨て、
セフィロスはひとまず洋服店に身を隠す。

「しかし、あの男――― 一体、何者だったんだろうな」

セフィロスは、常に他人に対して『自分と違う』と感じていた。
だが、あの黒い剣士に対しては、その感覚が、なんともなしに、薄かったような気がする。
そう、あの男は、まるで『死から生まれた』ような錯覚を、自分に感じさせた。
それは疎外感というよりは、共感に近い印象だった。

「まったく……馬鹿馬鹿しい。だがやる気の奴がいるなら、俺も殺らざるをえん、か」

また、痛みが走る。
だが、そのどこに走ったとも分からない痛みは、黒い剣士に掴まれた頭の痛みとは別種のような、気がした。

【F-3 市街地 洋装店/一日目/深夜】

【セフィロス@ファイナルファンタジーⅦ】
【状態】健康 ソルジャー時代
【装備】折れたレイピア
【道具】支給品 干将・莫揶@Fate/stay night
【思考】基本:専守防衛
     1:生き残る

【G-2 市街地/一日目/深夜】

【クレア@CLAYMORE】
【状態】右腕、肘から先切断
【装備】絶刀・鉋@刀語
【道具】支給品 ランダムアイテム×1
【思考】基本:妖魔を刈り、この殺し合いの主催者の真意を探る
     1:とりあえず安全なところまでいって右腕を繋げる



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