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絆を紡いで ◆WoLFzcfcE.


視界を遮るものは何もない。
くたびれたロングコートを風になびかせ、ブーメランは無人の野を進み続ける。

魔族。
金属の身体に水銀の血。
生命のしなやかさに機械の強靭さを併せ持つ、生まれついての戦闘種。
ブーメランはその中でも一際闘争に執着を見せる男だ。

求めるのは常に死線。
死に最接近する死地においてこそ、生の充足を得られると信じている。
戦うことが、他者とぶつかり合うことがブーメランが唯一自己の存在を確信できる手段である。
たとえ誰かの掌で踊らされているのだとしても、今ここに在る戦意こそは己の内から生まれ出たただ一つ確かなもの。
故に、この状況に不足はない。




思い返すのは数刻前の闘争だ。
緑の髪の剣士との短くも鮮烈な交差。
あの白刃の軌跡を、覚えている。

無骨な指が胸の傷を撫でる。腰元の炎の剣によって刻まれた、強き剣士の印。
荷物の中にあった指輪の効果で緩慢に再生が始まっている。
鈍く痛みを残すその傷痕はブーメランにとっては誇るべきものだ。

肉体の強度で魔族に遥か劣る人間によって刻み込まれた戦傷。
それは彼らの可能性を示すものであると同時に、ブーメランを更なる高みへと導くものでもある。


――ロロノア・ゾロ。奴は強かった。


そう、素直に思えた。
かつて
戦った三人の人間――ファルガイアを守護する戦士達、その内の一人もまた優れた剣士だった。
魔族の目にも止まらぬ瞬速の剣技――早撃ちは、この身体に無数の痛みを与えてくれた。
ブーメランに、と言うより魔族全般に言えることだが、彼らは基礎能力で人間を圧倒している。
筋力、瞬発力、体力、魔力、抵抗力。およそあらゆる面で人間に大きく水を開けている。
だがただ一つ追いつけないものがある。
老いとは無縁の鋼の身体を以てしても、たかだか数十の時しか生きられない人間の後塵を拝するもの――それは技だ。

短い生ゆえに人は後に続く者へと何かを託す。
それは信念、伝統、知恵、記録、記憶など様々だ。こと、闘争に特化された体技や剣技も例外ではない。
技は年月を重ねるごとに練磨され、より実戦的で強力なものへと進化していく。
先ほど闘ったロロノア・ゾロもまた、かつて見たことのない様々な剣技を駆使しブーメランへと喰らいついてきた。
力の無さを技で埋める。それもまた剣士の強さの一つなのだろう。


――だが、まだ足りない。俺はそれを打ち砕いてしまった。


いかに卓越した剣技を誇ろうと、それだけではブーメランには届かない。
何が足りないのだろう――自問して、すぐに解を得た。

足りないのは“絆”だ。
心を繋いだ人間たちが見せる、互いを信頼する心が生み出す相乗効果。
一つ一つは弱く儚い力を束ね、災厄すらも退けるほどに強く激しい力へと昇華させるモノ。




かつてブーメランを退けた戦士たちは、個別に見ればどれもブーメランの相手にはなり得なかった。
だと言うのに、三位一体で迫る彼らの勢いはブーメランと相棒ルシエドを同時に相手取ってなお突き抜けたのだ。
ならばブーメランのやることもおのずと決まる。
一対多の絶対不利的状況においてこそ、己を追う死の影も濃くなろうと言うもの。


――正面から打ち破ってこそ、俺の渇きは満たされる。


草原に微かな痕跡を見つけた。
焼け焦げた草が、踏み固められた土が、この場で闘争があったことをブーメランへと知らせている。
二人――いや三人。

視線を上げた先には建造物の影の連なりがある。

新たな戦場の到来を確信し、戦鬼は大剣を引き抜いた。
飢えを、渇きを満たすために。
空っぽの自分を、今一度確かめるために。


              ◆


頭が痛い。
赤髪の剣士ミズー・ビアンカは声に出さず息を吐く。
込めた想いはこの状況への憤りであり、現況と思われるロワへの怒りであり、または彼女の目の前で親しげに話す二人への呆れだった。

「ニケは勇者様なんだ。すごいな、私と同い年なのに」
「いやぁ、それほどでもないよ。実際はククリの――オレの仲間の魔法使いのおまけみたいなものだったし」

村へと侵入する直前、ミズーの同行者の獅堂光に新たな出逢いが訪れた。
金髪の小柄な少年はこちらが何か言う前にペラペラと自己紹介をし、述べ五分ほど喋り通した。
内容はまあほとんど聞き流したのだが、要するに自分に戦う気はないので
同行させてほしいと言うことだった。
その口の軽さにミズーはもちろん警戒したのだが、光があっさりと信用してしまったので剣を突きつけて尋問することもできずこうして一緒にいる始末。
少し日が差してきたとはいえまだ辺りは暗い。
奇襲のリスクを減らすためにもできれば余計なお喋りはしないでもらいたかったが、その会話の理由は恐らく状況への不安だろうと察してもいたので止めはしなかった。

村の中ほどまで達すると、そこはまるで戦争でも起きたかのような有様だった。
住宅地の中に不自然な空き地ができている。
瓦礫が散乱し、家屋は廃屋へと呼ぶが相応しい状態にまで破壊し尽くされ、ところどころに薄く残り火が見える。

ミズーが同じ状況を作れるかと問われれば、精霊を用いれば可能だと答えるだろう。
逆に言えばそんなものでも使わなければここまで徹底した破壊は不可能だと思われた。

「……殺し合いに乗り気な者は思ったよりも多そうね」

辺りを見回し、地面に残っていた血痕を見つけた。
血は固まりかけている。戦闘が起きてから多少時間が経っているようだ。
ミズー自身黒髪の少女に襲われたばかりなので、そういった輩がいることを既に受け入れている。
だから冷静でいられたのだが、光やニケにとっては幾分衝撃だったようだ。
生々しい鮮血の赤が、いやが上にも状況の理不尽さを雄弁に示している。

(どうやらこの子供はこの村の戦闘とは関係ない……と見ていいか)

ニケを信用していなかったミズーは内心で呟いた。
あるいは仲間がいてミズーたちをここへ誘き寄せたのかとも思ったが、青ざめた顔に嘘の色はないように思えた。

ここでミズーは二人の同行者についてさっと考えをまとめる。

獅堂光。
念糸とも精霊とも違う炎の力を操る少女。
出逢ったときに身を包んでいた鎧は今は無い。剣もだが、光の意志次第で自由に現出させられるとか。

軽く話したところでは剣の心得もあるらしい。

ニケ。
等身的に光と同年代とは思えないほど小柄な少年。
魔王を倒した――という先ほどの武勇伝が本物ならかなりの実力者と言うことになろうが、とてもそうは見えない。
というかミズーはそもそも魔王ギリという存在すら知らない。ゆえにハッタリか嘘の類かと思っていた。


とにもかくにも協力者を早々に二人も得られたことは僥倖だ。

続いて、
ミズーがこの場でどう動くべきか。
最終的にロワと神の剣を破壊するためには、まずその場所へと辿り着かねばならない。
そのためには最後の一人になるまで殺し合うしかないのだが――やはりそれは選べない。
ならば『ロワが出てこざるを得ない状況』を作り出す。

これは光もだが、既にミズーは自身の力が大きく減退させられていることを看破している。
自身の念糸能力の弱体化。精霊檻の開封も不可能なほどに弱まっている。
光の魔法と言う力。普段とは比べ物にならない疲労を感じていると言った。
そのからくりは、おそらく今もミズーの首にあるこの首輪が鍵になっているはず。
これをどうにかして外し、獣精霊を全力で暴れ回らせればもはや殺し合いどころではなくなるだろう。

常にミズーとともにいる獣精霊、炎の獅子ギーアは古き精霊の一柱である。
獣精霊はマント留めのレリーフに埋め込まれた水晶檻の中で今も解放のときを待っている。
かつて世界の中心である帝都を蹂躙した灼熱の力は人が抗えるものではない。
間違いなくロワは阻止に動くはずだ。
狙うのはそのタイミング――

外套の裏に吊るしてあった剣帯から短剣を抜き放ち投擲する。
夜を切り裂いた銀光は瓦礫に突き立つ音をさせず空中で停止した。

「ミズーさん、何を……」
「二人とも、気をつけて。誰かいるわ」

その一言で光は瞬時に剣と鎧を身に着ける。
ニケはと言えばバッグから剣――剣だろう、多分――を引っ張り出す。ミズーの身長よりなお長い大剣だった。
出したはいいものの持ち上げようとして難儀している姿を見て、やはり溜息を吐く。

「戦えないなら下がってなさい。無理しなくていいから」
「うう……すいません……」

下手に手を出されるより最初からいないものとして扱ったほうが気を散らさずに済む。
剣を抜き、ナイフを投げた方向――風に乗って微かな血の匂いを感じた方向へと構える。
影の中から現れたのは、こちらも馬鹿に大きい剣を携えた長身の男だった。
片手にはミズーが投擲した短剣。飛来する刃の刀身を掴み止めたらしい。血の一滴も流れてはいなかったが。
仮面を被っているようにも見える男の顔からは表情が窺えない。
だが双眸が湛えるのは紛れも無い戦意だ。

「三人……か。だが見込みがありそうなのはお前だけのようだ」

短剣を弄び男が言う。その視線が捉えているのはミズーだけ。
言葉を交わすまでも無く男は戦いを望んでいるのだと知れる。

「俺の名はブーメラン。行くぞ」

手短に名乗り、男――ブーメランは短剣を天高く放り投げる。
そして大剣を構え、次の瞬間、まさに一瞬でミズーの間合いへと踏み込んできた。

(――速すぎる!)

疾走の勢いを乗せた大剣を受け止めるのは不可能と判断し、ミズーは二本目のナイフを手首の動きだけでブーメランの眼前へと投擲した。
軽く顔を傾け避けられる。
重心が崩れた一瞬を見逃さず、ミズーは前転してブーメランの脇を抜けた。
直後、轟音が追いかけてくる。
急ぎ立ち上がり振り返れば、ブーメランの大剣を受けた石畳が粉々に砕かれているのが見えた。
先ほど戦った少女の膂力も相当のものだったが、これは更に上を行くだろう。

落ちて来た短剣を見もせずに掴み取り、投げ返される。
腕の動きから軌跡は読めている。ミズーは息を止め、極限の集中を以て剣で打ち落とした。

その間にブーメランは動いていた。
ミズーを牽制している間に背後の二人へと突進。
武器のないニケをボディブローの一撃で沈め、次いで身体を旋回させ光へと大剣を横薙ぎに叩きつけた。
岩をも砕くブーメランの膂力と百人斬りを成し遂げた頑強な剣の融和した一撃は、剣で受けた少女を軽々と吹き飛ばし瓦礫の中へと追いやった。

数秒の交差で見せ付けられた力に戦慄する。
ミズー自身とも黒髪の少女とも違う、純粋なパワーと速度で圧倒する剣術。
それこそ下手な精霊など凌駕しかねないほどの。
コートから覗く腕は人間と同じ色をしていない。
鎧かと思っていたが、剣を振る瞬間二の腕が蠕動するのが見えた。まるで人間の筋肉が盛り上がるような、そんな動きを。


(人間じゃ……ない。精霊だとでも言うの?)

剣を握る掌に汗が滲むのを感じる。


黒衣とも違う。あれは怪物であっても根本は人間だった。
だが今、こうして相対している存在は確実に違うモノだと、ミズーの本能が囁きかけている。

「こんなものか。奴ほどではない……」


ぼそりと呟かれるブーメランの言葉に反応し、ミズーは先手を打つ。
速度で勝る敵に主導権を渡してはならない。
鋭い踏み込みと共に突きを放つ。
あの大剣では接近戦での小回りは効かないはずだ。
ミズーが持つ剣は長剣と呼ぶにはやや短い。が、密着した距離ではそれが利点になる。
小刻みなステップで位置を変えつつ斬撃を繰り返す。
致命打は防がれるものの、大きなダメージには至らない牽制の攻撃が何度かブーメランの肌をかする。
噴き出す銀色の血飛沫。魔族の血液、水銀である。
それを見てますます確信を深める。
数合打ち合った末、ブーメランは跳躍し大きく距離を開けた。


「お前はあの二人とは違うようだな」
「褒めてくれているのかしら」
「そのつもりだ。これならあるいは……いや、まだ足りんな」
「どういう意味?」

答える代わりにブーメランが腰の後ろからもう一振りの剣を取り出した。
左手で構えるその剣の鍔元から炎が噴き出していく。
右手の大剣に炎の剣を重ねると、炎が渦を巻き大剣を包み込んだ。

「これはある剣士の技だ。無論、型を模倣しただけだが……」

肌を焼く灼熱の風がミズーを通り過ぎた。
振り上げた剣にまとわりつく炎が膨張し、煌々と輝く巨大な槌となる。
夜闇は完全に焼き払われ、まるで太陽の中心にいるかのよう。

「威力は奴のものと比べても引けを取らんだろう。さあ……凌いで見せろッ!」

手にした剣がひどく頼りなく感じる。
優れた剣士であってもミズー本人は人間でしかない。剣で以てあの炎を斬り散らすことは不可能だ。
精霊を行使しなければ大規模な破壊は成せないし、今現在その精霊は封じられている。
回避――おそらく無駄だろう。
力任せの愚直な一撃でさえ大地を砕く威力なのだ。
その力にあれだけの炎が加われば、どれほどの破壊力になるか想像もつかない。
刻一刻と死が迫る状況において、ミズーは打つ手を模索する。

自分では対処できない。
獣精霊は呼び出せない。
ニケは気絶している。
光は吹き飛ばされたまま、未だ姿を見せない。

万事休す。
そう結論付けたとき、背後から覚えのある声を聞く。

「ほのお、の……」

振り返ると、光が剣を杖にして立ち上がっていた。
掲げられた腕の先に生成される炎の塊が細く長くなり、まるで矢のような形状へと変化していく。
ミズーにはなくとも光には手段がある。
だがやはり、そう簡単に思い通りにはいかないらしい。
矢の形が崩れ出す。光はそれを必死に維持しているようで、苦悶の表情を浮かべている。

(力の抑圧……私と同じ)

ミズーの念糸と同じだ。光の魔法も力を発動させる際、何らかの干渉を受けイメージ通りの結果を生み出せない。
剣士には不要の力だとでも言いたいのだろうか。
だが、ミズーの脳裏に天啓が閃く。

魔法――魔力の集中に光は苦戦している。
念糸――思念の通り道。意志を通し、効果を得るまでにタイムラグがある。

一つ一つでは足りない。
二つを足してもまだ足りない。
ならば。

踵を返し、ブーメランに背を向け光の下へと滑り込むミズー。
光の身体を支え、彼女が掲げる掌に自らも指を重ねる。

「ミズー……さん?」
「ヒカル、これが見える?」

念糸を具現させる。
薄い透明の、ミズーの意志で自在に動きどこまでも伸びる思念の糸。

「糸? うん、見えるけど」
「なら、いいわ。あなたの『魔法』……その力を、私に預けて」
「え……?」

ブーメランが炎剣を構え、駆け出してくる。
もう猶予は無い――ミズーは叫ぶ。

「糸に力を集中させて!」
「……わかった!」

問答しないでくれたのはありがたい。
ミズーの念糸を経路にして、光の魔力が一気に流れ込んでくる。
形の無い、純粋な炎の塊。
光は力を出力するだけでいい
――それを誘導するのはミズーの意志だ。
『発火』。それがミズー・ビアンカ、ハート・オブ・レッドライオンの念糸能力。
ミズーの心象にある最も強き力の具現。
獣精霊ギーアの、あの威容を思い浮かべる。

「炎の……!」
「……獅子!」

光の言葉をミズーが継いだ。
魔力が弾丸とすれば、念糸はレールだ。
加法ではなく、乗法。二つの力を掛け合わせる。
方向性を与えられた力は一つに収束し、灼熱の奔流となって現出した。

「それでこそ……!」


ブーメランが、突如眼前に出現した炎の獅子へと炎剣を叩きつける。
絶体絶命の窮地に追い詰められたときこそ、絆の力は限界を超えて燃え上がる。
噛みつかれれば鋼の身体とて影も残さず灼き尽くすだろう真紅の獣に、ブーメランは歓喜を以て挑んでいく。

炎剣と獅子がせめぎ合い、超高熱の爆風が吹き荒れる。
ぶつかり合う力は三人の中間で拮抗していた。

「くう……うううっ!」
「ヒカル!」

この土壇場での奇策。辛いのは経路を提供するだけのミズーではなく力を放出し続けているヒカルだ。
少しでも力を緩めれば、ブーメランの勢いに押し切られる。
それがわかっているからこそ、光は身を削ってでも魔力を搾り出していく。

(このままじゃ、ヒカルが持たない……!)

均衡が崩れたとき、それはすなわちミズーと光がこの世を去るときに他ならない。
せめて、この純朴な少女だけでも終わりから遠ざけたい――どこかに身を隠せる場所はないかと視線だけを彷徨わせた、そのとき。

前触れも無く、圧力が掻き消えた。
押し留められていた獅子が解き放たれ、進路上の家屋を薙ぎ払っていく。
直後に力を出し尽くした光がくずおれ、ミズーは慌ててその身体を支えた。

「一体、何が……」

ブーメランはどうなったのか。
その答えはすぐに知れた。

ブーメランと自分たちの間に立ち塞がる人影があった。
ニケか、と思ったが等身的にそうではない。
ミズーよりも長身の青年が、剣を構えて魔族と対峙していた。

「思わず助けに入っちまったけど……どっちが悪役かは、まあ一目瞭然だよな」

飄々と呟くその男――クリスタルの戦士、バッツ・クラウザーは肩越しにミズーへと笑いかけた。
と言って立ち振る舞いに隙はない。この男もまたかなりの手練だと、すぐにわかった。

「さて、あんた。得物が壊れてもまだやるか?」

ブーメランに剣を突きつけるバッツ。
これ以上やるなら自分が相手だと言外に告げていた。
ブーメランは新たに現れた敵手をしばし観察していたが、やがて剣を背に収めた。
剣は片方だけだ。炎の剣のみ――大剣は熱に耐えられなかったか、半ばから融解していた。

「いや、今はこれで十分だ。想いを束ね力へと変える……二ンゲンが結ぶ絆、確かに見せてもらった。
 ならばこそ、お前たちは俺の敵となるに相応しい」

どこか満足げに言う。
求めていたものを見つけた、そんなニュアンスを感じた。

「やはりニンゲンはそうでなくてはな……それでこそ、打ち破る意義があると言うもの……」
「ん……? どういう意味だ」

独白を続けるブーメランに、バッツは訝しげな声を返す。
落ちていたナイフ――ミズーが投擲した二本目――を拾い、ブーメランは未だ倒れ伏していたニケを担ぎ上げた。

「こいつは預かる。助けたくば俺を追って来い」
「なっ……待て!」

バッツの足元にナイフが突き立った。
たたらを踏んで踏み出すのが遅れる。
体勢を回復したとき、ブーメランは既にこの場を走り去っていた。

人間にはとても追いつけない速度だ。

追おうとしたバッツだが、背後にミズーと光がいるのを思い出したか迷った末に近づいてきた。


「大丈夫か?」
「ええ……助かったわ。あなたは?」
「俺はバッツ、バッツ・クラウザー。話は後だ。とりあえずその娘を介抱しよう」

光は完全に気を失っていた。
出逢ったばかりのバッツに託すのは少々気が引けたが、ミズーの疲労も重く、申し出を断れる状況ではなかった。

「ええ、お願いするわ……」

バッツに光を預け、ミズーはその場に腰を下ろした。
疲労のせいか散漫になった思考で考える。

(あの子を……ニケを、助けなくては)

それをバッツに伝えようとする前に。
湧き上がる睡魔がミズーの意識を呑み込んだ。



【C-4/村/一日目/黎明】


【バッツ・クラウザー@ファイナルファンタジーⅤ】
【状態】健康
【装備】ディフェンダー@ファイナルファンタジータクティクス
【道具】支給品、宝の地図三枚セット
【思考】基本:脱出する。
 1: ミズーと光を介抱し、話をする。
 2: とりあえず地図を調べる。協力者に渡してもいい。
 3: 首輪を外す方法を考える。
【備考】
 ※宝の地図はそれぞれ場所がバラバラでこの島の特定の場所の地形に謎の印が付いています
    場所は何処で正確にはどういう地図かは次の書き手さんに任せます
 ※この首輪は魔法に属するものだと推測しています


【ミズー・ビアンカ@エンジェルハウリング】
【状態】疲労(中)、気絶
【装備】ダイの剣@ダイの大冒、ガッツの短剣(×8本)@ベルセルク
【道具】支給品
【思考】基本:ロワを倒し、神の剣を破壊する。
 1:…………。
 2:無駄な戦いは出来るだけ避けたい、が敵対する者は倒す(殺す)。
 3:ブーメランを警戒。
 4:ニケを助けたい。
【備考】
 ※参戦時期は原作9巻(ミズー編最終巻)アマワの契約が破棄された後からです。
 ※自身の制限を全て把握しています。
 ※念糸能力は制限により発動がとても遅く、本来の威力を発揮する事が難しくなっています。
 ※精霊の召喚、行使は制限により不可能です。
 ※ミズーはダイの剣を扱えます。他の人間が扱えるかは不明です。


【獅堂 光@魔法騎士レイアース】
【状態】疲労(大)、右肩に深い刺し傷(止血済み)、出血と治療(火傷)によるダメージ、気絶
【装備】魔法騎士の剣(光専用最終形態)、魔法騎士の鎧(光専用最終形態)
【道具】支給品
【思考】基本:主催に反抗し、殺し合いを止める。
 1:…………。
 2:海ちゃんと風ちゃんがいるなら合流したい。
[備考]
 ※参戦時期は光がセフィーロの柱になった以降(最終回後)です
 ※魔法騎士の剣は魔法騎士の鎧(手甲の宝玉)に収納可能です。(光の意思で自由に出し入れ可能)
 ※魔法騎士の鎧は光の意思で自由に纏う事が出来ます。
 ※魔法騎士の剣、魔法騎士の鎧を他の人間が扱えるか不明です。



              ◆




「あのー……オレはどうしてこんな目に遭っているんでしょうか」
「運が無かったな」
「それだけ!?」

元々ニケのものだった黒刀・夜を片手にブーメランは走る。
もう片方の手に無造作に掴まれているのは、勇者と呼ばれる少年の襟首だった。

「お前、気を失ってなどいなかっただろう」
「ぎくっ!」
「手加減したつもりは無いが……お前もまた、この場に招かれるに相応しい強者ということか」
「いえいえそんな! オレはただのしがない盗賊ですから!」

ブーメランの言うとおり、ニケは腹を殴られたときこそ一瞬意識が飛んだもののすぐに覚醒していた。
服の下に仕込んでおいたスケベ本が役に立った……のだろうか。
しかしあまりにも非常識な力を見せるブーメランにビビッてしまい、何となく起き上がらずにいたのだ。
そしてその罰とでも言うのか、こうして拉致されてしまっている。
馬もかくやというスピードで疾走するブーメランは、村から十分距離が取れたと判断すると足を止め勇者を解放した。
そして腰に差していた剣を外し、ニケの前へと放り出す。

「えーと、これをどうしろと?」
「武器が無くては戦えんだろう」
「えっ、あんたと戦えってこと? ……謹んでお断りします」
「今戦えと言っているわけではない」

村の方角を見つめ、ブーメランは言う。

「お前には餌になってもらう」
「え……餌?」
「奴らはお前を取り戻すために俺を追ってくるだろう。成り行きの遭遇戦ではなく、確固たる意志を持って俺を倒すべく、な。
 俺と奴らの間にも、強く確かな絆が結ばれたと言うことだ」
「つまり……今、オレを殺す気は無いの?」
「お前が俺と戦いたいと言うなら話は別だが」
「いえいえいえいえ! そんな滅相も無いです!」
「ニンゲンは戦うために理由が必要な者もいるらしい」

「はあ」
「仲間を守るために限界以上の力を発揮する。それもまたニンゲンだけに許された力……」

独語するブーメランの背後、ニケはこっそりと距離を取っていく。
盗賊の面目躍如というか、実に見事な忍び足だったのだが、

「逃げても構わんぞ。ただしその場合、戦う意志があるとみなして全力で追撃するがな」
「……イエソンナ。ニゲルキナンテアリマセンヨー」

釘を刺され、ニケの足が止まる。

逃げ足には定評のあるニケだが、この化け物と追いかけっこをして逃げ切れる自信は
なかった。
剣を渡してきたことといい、ニケを拉致した行動といい、ブーメランは殺し合いに乗っていると言うより戦いそのものを求めているのだとニケも察する。
下手な行動を取らなければ危害を加える気はないというのもまあ本当なのだろう。
とりあえず今はブーメランに従っておくかと決めて(諦めて)、渡された剣をバッグに入れる。
やはりニケには合わない長剣だったが、夜よりは使いやすい。
そもそもニケに剣の才能は無いのだが……そんなことを言って利用する価値無しと断じられてはたまらないので黙ってもらっておいた。

「行くぞ」
「へ、どこへ? ミズーさんたちを待たないの?」
「最後に乱入してきた男はお前たちの仲間ではないのだろう。少し時間を置けばお互いの手を見せ合い連携することも可能になる」
「でもそれじゃあ、あんたが不利になるんじゃ……」
「俺はそれを望んでいる」

言ったきり口を閉ざし、黙々と歩を進めていくブーメランの背中を追いニケは考える。
ミズーたちがすぐに追いかけてきてくれるならいいが、光の容態ではそれも難しいだろう。
今はどうしたところでブーメランに
ついて行かざるを得ない。
もし誰かに襲われれば危険ではあるのだが、そうした場合おそらくこのブーメランこそが率先してその誰かと戦うことだろう。
見方を変えれば強力な護衛ができたと考えられなくもない。あるいはその隙に逃げ出すこともできるかもしれないし。
襲われるのを期待するのも変な話だったが。

(そうとでも思わなきゃ、やってらんないって……)

勇者は大きく溜息をついた。
勇者と魔族が仲良く旅をするなんて、一体何の悪夢なんだろう。



【D-5/平原/一日目/黎明】

【ブーメラン@ワイルドアームズ アルターコード:F】
【状態】胸に深い裂傷(再生中)、疲労(中)
【装備】夜@ONE PIECE、守りの指輪@FF5
【道具】支給品×2、ランダムアイテム×1
【思考】基本:ニンゲンと戦う。
 1:次の相手を探す。
 2:いずれバッツたちと再戦する。
 3:ニケを害するつもりはないが、立ち向かってくるなら応じる。逃げれば追いかける。
【備考】
 ※守りの指輪の効果は常時リジェネがかかります。



【ニケ@魔法陣グルグル】
【状態】健康
【装備】フレイムタン@FF5、スケベ本@テイルズオブファンタジア
【道具】支給品
【思考】基本:この殺し合いから脱出したい。
 1:ブーメランの隙を見て逃げ出したい……。
 2:立ち向かう? ムリムリ!
【備考】
 ※参戦時期は魔王ギリを封印し、ククリと旅を始めてから1年経った頃。レベルも上がっている。






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037:荒ぶる者どもに吹き荒れろ嵐 投下順 039:聖剣の少女騎士
037:荒ぶる者どもに吹き荒れろ嵐 時系列順 039:聖剣の少女騎士

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001:戦鬼、再び…… ブーメラン :[[]]
007:弦月の下で/獅子邂逅 ミズー :[[]]
007:弦月の下で/獅子邂逅 :[[]]
016:勇者、たつ! ニケ :[[]]
024:パーティを作ろうとしてみる バッツ :[[]]