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F剣ロワOP案 ◆Mc3Jr5CTis



耳を叩く濁流の音。
不規則に、伏した身体を揺らす力強い水のうねり。
自己を取り巻く環境の、異変を察して志葉丈瑠は目を覚ます。

開いたばかりの眼にまず映るのは、奇妙に薄暗い朱の光。
夕暮れともまた違う、まるで血のような色素に包まれた世界に、丈瑠は存在していた。
足下にあるのは、太い丸太で組まれた巨大な筏。
その百メートル四方はあろうかという大きな筏を、時代遅れのぼろぼろの帆船が幾本もの太いロープで繋いで曳航していた。
周りでは、丈瑠と同じように目覚めたばかりの人々が辺りを見回している。
その全員の首に、銀色に鈍く輝くリングが装着されているのが妙に目に留まる。
それはもちろん、丈瑠の首にも装着されており……

「ここは、一体……」

見覚えのない周囲の様子に丈瑠が疑問の声を発すると、背後から低い男性の声がそれに応えた。

「ここは、三途の川だ」

聞き覚えのある声に、丈瑠は素早く振り向いて身構える。

「腑破十臓ッ!!」

そこに居たのは、かつて丈瑠と幾度もの死闘を繰り広げたはぐれ外道、腑破十臓であった。
構えた瞬間、自らの愛刀シンケンマルを腰に帯びていない事に気付いた丈瑠ではあったが、どうやら十臓もその身に
寸鉄帯びていない様子。
どういう事かと訝りながらも、今は人の姿を取った男に仔細を尋ねる。

「三途の川だと……? 生きた人間は、この場所に来る事は出来ないと聞いていたが……俺は死んだのか?」

この男との斬り合いの果て、辿りついた所がこの場所だというのか。
志葉家当主の影たるその役目を解かれた今、丈瑠にやるべき事はなくなっていた。
流ノ介を初めとする家臣たちを騙していた事をちゃんと謝れなかった事が心残りではあったが、侍戦隊はようやく
その真の姿を取り戻したのだ。
姫という真の主の元、その務めを果たして欲しいと丈瑠は思う。

「勘違いをするな。俺とお前の決着は、未だ着いてはいない。
 ……俺も、気付いたらここにいた。仔細は判らん。だが――
 そら、説明してくれそうな奴がおいでなすったぞ」

野性味あふれる野武士めいた風貌が、ぐっと上方を見上げる。
釣られて同じ方向を見上げた丈瑠の瞳に、帆船の船尾に姿を現した仇敵の姿が映った。

「血祭ドウコク……ッ!」

呻くように、丈瑠が呟く。圧倒的な力で叩き潰された記憶が蘇る。
血祭ドウコクという名の通り、血を浴びたような真紅の色合いに染まった物々しい意匠の鎧を身に着けた、この荒武者
こそ丈瑠たちシンケンジャーの敵である外道衆の総大将である。
右手には青龍刀の如き幅広の刀、昇竜抜山刀を担ぎあげ、左手には酒をなみなみと注がれた大きな杯を掲げたその男は、
妖しく発光する複眼で眼下の人間たちを睨め付けると、その巨体に似つかわしい大音声を張り上げた。

「お前らああああああっ! よく集まったなあああああああぁ!
 てめえらにはこれから、最後の一人になるまで殺し合いをして貰うっっ!!
 存分に斬り合い、殺し合えぃっ!!」


一息も継がずに、言い切った。
その傍若無人な言葉の前に、筏の上に居並ぶ人々は言葉もない。
この状況を説明しようだの、その意図を語ろうなどというつもりは欠片も感じさせない態度であった。
それだけ言うと用は済んだと思ったのか、戻ろうとするドウコクを傍らに控えた骨のシタリが引き留める。

「お、お待ちよドウコク。それだけじゃ、判らないだろう?
 ルールだとか、ちゃんと色々教えないと……」
「面倒くせぇ。お前が説明しとけ」

説明役をシタリに押し付けると、ドウコクはその場に座り込み、杯を呷りはじめる。
その様子から、もう喋るつもりはなさそうだとシタリは思い、渋々説明役を替わろうと進み出た。

「お待ちください。御大将に、御老体。その役、よろしければこの私が承りましょう」

が、それを一人の怜悧な印象を持つ、銀髪の男が遮った。
丈瑠には見覚えのない、外道衆とも思えぬ人の姿をした優男だったが、その姿を見た瞬間、傍にいた桜色の着物に
緋の袴といった、大正時代のような和装をした少女が声を上げた。

「おまえは……葵叉丹!! あの時、確かに倒したはずのあなたが、なぜ!?」
「フフフ……真宮寺さくらか。貴様らに敗れ、三途の川を漂っていた私を御大将が拾ってくれてな。
 こうして再び貴様らと相見える事が出来たというわけだ」

顔見知りらしき少女とやり取りをかわす叉丹と呼ばれた男に、シタリは道を譲る。
確かに、この男ならば適役だろうと考えて。
隙間を通ってこの世とあの世を行き来する、外道衆の能力を更にさまざまな世界へと繋げる事が出来たのは
この男の齎したさまざまな技術や魔術のおかげなのだから。
そう、参加者たちの首に光る、金属製のリングを考案したのも、また――

「それでは、先ほどの御大将の言葉を補足させて貰う。
 これから様々な世界から選りすぐった貴様ら剣士五十三名を、三途の川の中州へと解き放つ。
 貴様たちは、その島で最後の一人となるまでお互いに殺し合って貰う。

 島は、一定時間が過ぎる毎に水位が上がり、移動範囲が狭まっていく。
 また、この空間では外道に堕ちれば堕ちるほど、貴様ら剣士たちの力は増していく。

 つまりだ。のっけから広い島に散在する参加者たちを、各個撃破する事で貴様らの力は上がっていき
 殺し合いを有利に進める事が出来るというわけだ。
 時間がたてば、生き残った参加者たちは隠れる事も出来ずに島の中央部へと追いやられていくのだから、
 下手に殺し合いに抗おうなどとは思わず、なるべく序盤の内に力をつけておく事を薦めておこう」

「誰が、おまえたちの言う事なんてっ!!」
「待つんだ、さくらくん!」

激昂し、食ってかかろうとする桜色の乙女を、傍らの男が押し止める。
正しい判断だと、丈瑠も思う。
なんの装備もない今、あの驚異的な力を誇る血祭ドウコクに立ち向かうのは不可能だ。
ましてやここは敵の本拠地とも言える三途の川。
なんとか機を窺い、脱出するより他にはない。

だが、そこに乙女の考えに同調する、毅然とした声が響いた。

「そうだ。そのような言葉を聞く必要はない!」

聞く者の心を鼓舞するかのような、力強い少女の声がその場の空気を染め変える。
と同時に、どこからともなく聞こえてくる、重厚な陣太鼓の音が鳴り響いた。
白色の陣幕が筏の上に張り巡り、志葉家の家紋が染め抜かれたのぼりが立つ。

その声を聞き、まさか――と、丈瑠は思う。
まさか、姫までもが、この場に連れて来られたのかと。

声の主を包み隠していた陣幕が引き、その中から現れたのは白を基調とした上質な着物に身を包んだ年端もいかぬ少女の姿。
どこか凛とした気品を漂わせるこの少女こそ、本物の――

「ショドウフォンッ!」

姫の指示で、どこからともなく現れた黒子が、筆型の携帯端末を差し出した。

「一筆奏上! ハァッ!!」

超然とした掛け声とともに、見事な筆致で書かれた火という文字が中空に踊る。
文字が反転し、少女の全身が「火」のモヂカラに包まれると、そこには真紅のスーツを纏った一人の戦士が立っていた。

漢字をモチーフとしたゴーグルの形は火。
身体に張り付き、僅かに盛り上がったスーツの胸元が、この凛々しい戦士が先ほどの少女である事を示していた。
これが変身。
これが天下御免の侍戦隊、シンケンジャー。その頂点に立つ真の志葉家十八代目当主――

「シンケンレッド! 志葉 薫!!」

黒子が用意したシンケンマルを構え、この場に集う全ての者どもに対し、挑むように名乗りを上げた。
その立ち居振る舞いには、一分の隙もない。
まさにシンケンレッドを名乗って何の不足もない、珠玉の才。

だが、長年影武者として一人で戦い続けてきた丈瑠の経験が警鐘を鳴らす。
姫をこのまま一人行かせてはならないと。

「姫ッ!」

諌める意図を持って、呼びかける。
が、シンケンレッドへと転じた少女は、まかせよとでも言うかのように丈瑠に頷くと

「参る」

告げて、炎が燃え移るかのように鮮やかに、ロープの上へと飛び乗った。

奔る。

筏と船を繋ぐ、張り詰めたロープの上を軽業師の如く一瞬で渡り切ると、シンケンマルをその場の葵叉丹へと叩きつける。
腰間の光刀無形を引き抜き、その一撃を間一髪受け止めた叉丹ではあったが、助走混じりの一撃は重く、後方へと体が流れる。
一瞬の間の出来事にシタリは慌てふためき距離を取り、ドウコクは杯を床に叩きつけて立ちあがる。

「やはり、貴様が来たかっ! 志葉の小娘がぁっ!」

主催者たる三者に生じた一瞬の隙を突き、シンケンレッドは刀にインロウマルを装着する。
全ての折神の力を宿した「真」のモヂカラの発動により、陣羽織を纏ったスーパーシンケンレッドとドウコクの太刀が激突した。

ただ振るうだけで火のモヂカラを纏い、鮮やかな赤の剣閃を描くスーパーシンケンレッドの華麗な太刀捌き。
だが、それでもドウコクの剛剣には抗しえないのか、軽く剣を合わせるとすぐさま後方へと飛び退いた。

「てめえら手ェ出すんじゃねえぞ! この小娘は俺がやる!」

そこへ追撃を仕掛けようとしたシタリと叉丹の両名を、猛り狂うドウコクの警句が止める。
次いで口から衝撃波を――


出そうとした所へ、逆に炎の乱舞が襲い来る。
炎のモヂカラを斬撃に乗せて放つ、この技を使うためにレッドはドウコクの攻撃を軽くいなし、後ろへと退いて見せたのだ。
真・火炎の舞をまともに受けて仰け反ったドウコクが、次に見たのは宙に紅く輝く「門」構えのモヂカラであった。

「血祭ドウコクッ! 今こそ、貴様を討つ!!」

シンケンマルを右手に。
ショドウフォンを左手に構えたレッドが、渾身の力を込めて書いた、このモジカラこそ志葉家当主のみが使える
ドウコク封印のためのモヂカラの一部。

「――ッ!? いけないよ、ドウコク。あれを完成させては!」

その事に気付いたか、骨のシタリがドウコクに注意を促した。
それに応え、先ほど止め掛けた衝撃波を今度こそ口から放つ。
ドウコクの目前の空気が歪むように振動し、レッドの元へと殺到する。

「烈火大斬刀ッ! ハア!」

シンケンマルを巨大な大斬刀へと変化させ、それを床に深々と突き立てる事で、即席の盾とする。
瞬間、ニトログリセリンでも使ったかのような大爆発が、その場で発生した。
爆風に陣羽織がなびく。
華奢な身体を吹き飛ばされそうになりながらも、烈火大斬刀の影の中で、レッドは先ほど書いた門構えの中に
「悪」の変体仮名を書き込んだ。

「させるかよぉおおおっ!!」

昇竜抜山刀を振り回しながら、ドウコクの巨体が突撃する。
迎え撃つレッドは烈火大斬刀を蹴り上げる事で、刃の突き刺さった床を切り裂きながら、引き抜いた。
地中から擦りあげるように迫り来るレッドの斬撃。
それを受け止めた昇竜抜山刀と烈火大斬刀とが重なりあい、火花が散る様な鍔迫り合いとなる。
両者ともに、引く様子は見えない。
目と鼻の先で睨みあう。
ドウコクは封印のモヂカラの完成を止めねばならないし、レッドはそれをなんとしても完成させねばならない。

何百年も続いてきた侍と外道衆の因縁の戦い。
その頂点同士の決着が、今、ここにつこうとしていた。

「おおおおおおっ!」
「くぅっ!」

力比べでは、やはりドウコクに軍配が上がった。
一瞬でも拮抗出来た事が奇跡だったのか、小柄なレッドが押しつぶされて膝を着く。
が、そのゴーグルは未だ勝利を諦めないかのように上を向き、ドウコクの殺意に抗い続ける。
その意思ごと叩き切ろうとドウコクの刀に更に力が籠り――

瞬間、抵抗を続けていた大斬刀から力が抜け、昇竜抜山刀が刃の上を滑った。
巧妙に変わった力の流れに戸惑うように、ドウコクがたたらを踏み、そこに隙が生まれる。

巨刀から小さなシンケンマルへと戻った刀が、ドウコクの鎧を一合、二合と切りつける。
刀に込められた火の力が、ドウコクを鎧ごと切り裂いて爆発を起こす。

「グッ、し、しまったッ!!」

もはや、剣が届かぬ間合いにまでドウコクを押し戻したレッドが、最後に「炎」の封印のモヂカラを――

「なあーんて、な」

発動させようとした時、ドウコクが緩慢に振った一撃が、その発動を阻んだ。

それは、その場に居並んだ英雄、剣豪たちの眼を持ってしても理解しがたい光景だった。
まるで力なく適当に振られた斬撃が、届くはずもない距離から行われた攻撃が、
スーパーシンケンレッドの首を、一撃のもとに刎ねていたのだった。


「ひ、姫ェェェーーーーーー!!」

誰かの絶叫が耳をつんざく。
それが自分の声なのかどうかすら、丈瑠にはわからなかった。

刎ねられた首から、大量の血が噴水のように飛び出てドウコクの鎧を更に朱に染める。
宿敵の一族、その最後の一人の血を心地よく浴びながら、ドウコクは満足げに哄笑していた。

強大な封印のモヂカラを宿していた、書きかけの文字が消滅し、同時にシンケンレッドの変身も解ける。
たった十四歳で、その短い生涯を終えることとなってしまった少女の首が、三途の川にぽちゃりと落ちた。
何が起きたのかも、わからぬままに。


ドゥと倒れた少女が握っていたショドウフォンが、床に叩きつけられてバウンドした勢いで船から落ちて丈瑠の
元へと転がってきた。
その血に塗れた遺品を手にして、丈瑠はゆっくりと理解する。
ここに、彼が生涯を懸けて守ろうとしていた志葉の家系が途絶えた事を。




「……さて、御理解いただけたかな?
 貴様たちに、反撃の機会など存在しない事が」

まるで何事もなかったかのように、騒動が起こる直前のままの口調で叉丹が説明を再開する。

「そう、気付いている者もいると思うが、先ほどの御大将の攻撃は、貴様らの首に嵌められたその首輪の機能を使ったのだ。
 ……御大将、よろしいですか?」
「応」

宿敵を倒し、どっしりと座りこんで祝い酒を呷っていたドウコクが、叉丹の声に答えて僅かに剣を引く。
すると、その場の全員の首に痛みが走り、一筋の血が垂れ落ちる。
理屈は判らないが、ドウコクの剣とこの首輪が繋がっており、逆らえば一刀でこの場全員の首が飛ぶ事を全ての剣士が理解する。

「島から逃げようとすれば、切る。
 首輪を外そうとしても、切る。
 死にたくなければ、全ての参加者たちを斬り殺し、このゲームに優勝する事だ。
 改めて言うまでもないが、生き残れるのは一人だけ。
 恋人、友人でも迷わず切れ。外道に堕ちれば、堕ちただけ優勝の可能性は跳ね上がる」

さきほど自分に反抗した二人を昏い眼で見やりながら、叉丹は淡々と説明を続ける。
自らの発言に端を発した凄惨な出来事に青褪めていた少女は、声もない。
傍らの男が少女を勇気づけるように、ぐっと肩を抱き締めた。

「さて、後は……六時間毎に死亡者の通知を放送で行う。
 聞き逃さないように注意しろ。
 島の水位が上がるのも、だいたいその頃だ。
 その時間になったら水辺から離れよ。三途の川に触れたものは、逃亡の意思ありと見做して首を刎ねる。
 ……説明は、だいたいこんなところだろうか」

全ての説明を終えた叉丹が言葉を切り、その場に静寂が戻る。

「……待て」

鋭い男の声が、その静寂を裂くように響いた。
傍らより響いたその声の主は、はぐれ外道腑破十臓。

「斬り合う事には何の異存もない。いずれ劣らぬ剣豪揃いだと言うなら、むしろ望む所よ。
 だが、剣はどうした?
 我が愛刀、裏正はちゃんと返して貰えるんだろうな?」

斬り合いを肯定する声に、彼の周囲の人々は息を呑む。
参加者の中に主催側の言葉を肯定する者が出た事で、本当に殺し合いが始まるという事を実感したのだ。

「おお、これは失礼。
 剣はもちろん支給される。だが、それが貴様らの望む剣、扱いやすい剣であるかどうかは我々は関知せぬ。
 良い剣が欲しいのであれば、それを持つものから奪い取ればいい。
 その意味でも、早々と殺し合いに乗る事は得策だと言えるだろう。
 なお、剣と一緒に細々とした物を入れる袋も支給しよう。
 鎧や、殺し合いに役立つさまざまな道具、殺し合いに参加する者たちの名前の載った名簿、食糧などが入っているはずだ」

支給品に関する事を説明しおえ、今度こそ説明が終わった事を確認すると叉丹は退く。
代わりにドウコクが立ちあがると、大号令を発した。

「それでは、これより参加者五十二名による殺し合いを始める。
 者ども、存分に愉しめ!!」

参加者たちの首筋を、ちくりとした痛みが走ると眠気が襲う。
次にこの眠りから覚めた時、そこは地獄の底であろう事を皆は確信しながら、抗えぬ眠りへと落ちていった……。



【志葉薫@侍戦隊シンケンジャー 死亡】
【残り52名】


【主催者 血祭ドウコク@侍戦隊シンケンジャー】
【主催者 骨のシタリ@侍戦隊シンケンジャー】
【主催者 葵叉丹@サクラ大戦】


【ファンタジー剣士バトルロワイヤル 開幕】