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悪意の風◆x.6zTnwIjo



草原の真っただ中でリンディスは目覚めた。
「ここは……」
漠然と周囲を見渡し、全てを思い出す。

『只今より、皆さんには――殺し合いをして頂きます』

(そうだ、私は――!)

首に手を当ててみるとそこには冷たい金属の感触。
どうしようもなく囚われている。
リンディスはそのことを実感した。

「く、ロワ……!」
「呼びましたか?」

「!!?」

まさか反応があるとは思わず、リンディスは振り向いた。
そこにはやはり自分をここへと落とした張本人、ロワの姿があった。

「あなたは……! 殺し合いなんて馬鹿な真似を今すぐに止めさせなさい!」
「お断りします」
「なら!」

リンディスは剣を抜こうとして腰元に手をやる。
しかしそこには愛剣の存在はない。

「剣を探しているのですか? それなら、これを差し上げましょう」

ロワはリンディスに一本の剣を差し出した。
その剣はレイピアとサーベルの中間のような細身の剣。束には隼を象った装飾がなされている。
しかしその優美な姿と裏腹に凶悪なまでの妖気を発していた。

「これは破壊の妖気を宿した隼の剣。細身なれど破壊の力によって威力は申し分なし。
 あなたの技と速度をさらに活かした戦闘が可能となりましょう」
「なんのつもり?」

当然のことながらリンディスはそれをすぐに受け取ることはせず、警戒の構えをとった。

「これを持ってあなたには積極的に参加者を狩ってもらいたいのです。
 この『ゲーム』を管理する私の切り札、いわば【ジョーカー】となって欲しい」

「ふざけないで! 私は誇りある草原のサカの民、そんな真似するはずがないわ!」

「ですが、そうしなければあなたは祖父の下へは帰れない」

「!」

リンディスの声が止まる。

「よいではありませんか。ここは隔離された世界、あなたを知る者は誰もいない
 ここでのあなたの行為が帰還した後、誰かに知られる怖れはないのです」

「そんな、事……」

「あなたの祖父の寿命はあと数カ月もないでしょう。その残された時間を共に過ごしたいのでしょう?
 それがあなたが示せる愛の形なのでしょう?」

「う、うるさい……あなたに何が解るの」
「解ります。私の主は全能なのですから……」

ロワは再び禍々しい妖気の剣をリンディスへと差し出す。


「受け取りなさい、リンディス。あなたは選ばれたのです」
「何故……私なの……?」
「あなたには素質があると判断したからです、リンディス。あなたなら我が主の使い手として――」

そしてリンディスは剣を……取った。

「それで良いのです」
「そうね、これで私は――」

瞬間、リンディスの姿が消えた。

「あなたを斬れる!」

次にリンディスが姿を現したのはロワの背後だった。
刹那の間にリンディスはロワを瞬断していた。

しかし……

「!? そんな、手ごたえが――」
「受け取りましたね? その剣を」

ロワはリンディスの方へと振り向き、微笑んだ。

「このゲームはすでに止められません。既に死人も出ている。
 解りますか、リンディス? 手遅れなのです。ゲームは止まらない、脱出の方法もない。
 あなたの道は二つ、誰も斬らずに死ぬか――」

「黙れ!」

再びロワへと斬りかかるが、剣が届く前にロワの姿は消えていた。

――それとも、戦い抜くか――

その言葉を最後にロワの気配はリンディスの周囲から消失した。
リンディスは敗北感に打ちのめされ、地に膝をつく。
彼女の心は揺れていた。
帰りたい。殺したくない。死にたくない。逃げられない。

「私は……どうすれば……」

『帰ってきなさいリン……全てを終わらせて』

「お爺様?」

リンディスに誰かが囁きかける。
その声は懐かしき祖父、キアラン公ハウゼンの声だった。

『そうだ、草原の民は家族を、同胞を何よりも大切にする。リン、止められないのなら全てを終わらせればいい
 そして祖父の元へ帰ってやるがいい』

「ああ、ラス……」

再び聞こえたのはかつて戦場で心を通わせた同じ草原の民、クトラ族の戦士ラスのもの。
彼は最後の戦いが終わった後、リンの前から姿を消していた。
ここにはいない筈の戦友と祖父の声。だがリンディスはそれを不思議に思わない。
何かに憑かれたかのようにその言葉は真実、ラスとハウゼンのものだと信じた。

「そうね……止められないなら……手遅れなのなら……せめてもう二度とこんな事が起こらないように……
 この破壊の力を持つという剣で……」


『全てを破壊しろ』
「全てを破壊する」


リンディスの親しき者たちと、そして彼女の声が重なった。

リンディスは駆ける。
この『ゲーム』を終わらせること。自分が最後の一人になることが正しい事なのだと信じて。

そんなリンディスの背を慈しむように微笑み見送る姿があった。
先ほどこの場から消失した筈の姿――ロワ。

「踊りなさい、リンディス。愛しい者の囁きによって、この『ゲーム』を加速するのです。
 ふふふ、ですがそれは悪魔の囁きなのですけど……ねぇ?」

嘲るような口調でありながら、その声には確かに慈しみがこめられていた。
なぜならリンディスもまた主の望みである可能性があるからである。
彼女は主の為に行動する全てのものを愛していた。

そしてロワが見つめる、リンディスの背中。
その腰部にはいつの間にか黒い矢のような形をした尾が伸びている。
それはまるで人を誘惑し悪意へと陥れる悪魔が持つ尾のようであった。

風が悪意を孕み、この地を吹き荒れる。
これはその予兆であった。

【B-4 村はずれの草原/一日目/深夜】

【リンディス@ファイアーエムブレム烈火の剣】
【状態】健康
【装備】破壊隼の剣@ドラゴンクエストⅡ
【道具】支給品一式 あくまのしっぽ 不明アイテム一個
【思考】基本:元の世界へ帰還する
     1:全破壊
【備考】・破壊隼の剣は破壊の剣の攻撃力(DQ2最強の威力)と隼の剣の二回攻撃の特性を併せ持つ剣です。
     一度装備を外せば通常の隼の剣となり、破壊の剣の攻撃力は失われます。
    ・あくまのしっぽは呪いによりはずせません。常にリンディスの親しい者の声で悪意へと誘います。
     身に付ける代償として常に魔法や、特殊能力に対する抵抗力を失います。




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