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魔剣混沌◆ClAmicNkI.



(寂しいのぅ……)
黒い一降りの剣は心の中でそう呟いた。
何がどうなったのかは知らないが、気がついた時にはデイパックの中に入っておりそれからずっと暗闇の中で過ごしていた。
外の会話を朧気ながら思い出す。
どうやらロワという女性が神の力を持つ剣の担い手を選別してるらしい事。
(神の力を持つ剣ねぇ……)
魔神を倒す為の力を神に欲したら、神の力を得た代わりに剣にされた自分自身の過去を思い出す。
(お仲間みたいなものなのに、こんな扱いしやがって。それにしても暇じゃのー)
先程頭の上に光が差し込み、その穴から女性の顔が伺えた。
(今回の儂のパートナーは女の子って事か。いいのーいいのー。心の友との旅も良かったが、やっぱり女の子に使って貰うのが剣としての最上の喜びじゃ)
嫌らしい笑みを浮かべて、先程ちらっと見えた女の子の妄想に取りかかる。
整えられた黒髪と、あの独特の着物。
昔の仲間日光とどことなく似ている。
(つまりJAPANのおなごっちゅー訳か。JAPANのおなごはどうも日光を思い出してしまい良くないと思っとったが……。むちむちうは~んじゃない子猫ちゃんでもそれはそれで楽しみがいがある)
それにしても、先程から声も心のちんちんも全く出ないのはどういう事か。
女の子は女の子で、こちらの顔(?)を見るなり、顔をしかめてそれっきりである。
(放置プレイは嫌じゃ。儂、つまらん)
こちらからアプローチする手段が無い以上は、向こうの心が開くのを待つしかない。
しかし、ああも嫌な顔されたのならいつ手にとって貰えるか解ったものじゃない。
なまじ意識が残っていて、日頃飢えていた女性剣士が目の前にいるというのにお預けを喰らっているこの状況は魔剣カオスにとって焦らしプレイ以外の何ものでもなかった。
「困ったな……」
戦う気が起きないもう一つの理由が出来た。
着物にジャケットを羽織った、一見異なるセンスを見事に着こなした少女、式はそう呟いた。
どうやら自分に配布された剣は、どうも曰く付きの剣らしい。
袋の中をチラッと見たのだが、禍々しいオーラを漂わせていた。
特に西洋系の魔剣は疎くて詳しく解らないが、このゲームの開始時に頭の中に強制的に送り込まれてきた剣の情報から『魔剣カオス』と呼ばれている事と、誰でも装備出来る事、魔人ですら斬り殺せる事などの基本情報だけは情報として浮かんできた。
「――呪われたりするのだけは勘弁だぜ」
しかし剣がこれしか無い以上は贅沢を言ってられない。
他の剣を手に入れるまで戦わずにいられるのならそれに超した事無い訳だが、この状況だそうも言ってられないであろう。
妖刀の類の呪いといっても多数存在する。
持ち主の元を離れない物から、寿命を削っていく物、無性に人を斬りたくなる物や、理性を奪われる物。
「一回実際に試し切りしておかないと危険だな」
間合いや重さなどの確認の意味もある。
いざとなったらその呪いの事象自体を斬って殺せばいいのだ。
「んっと、あれでいいか」
周囲を見渡すとおあえつらえ向きに、前方に丁度人と同じ程度の大きさの岩が横たわっていた。
いや、よく見てみると岩ではない。
「――これも剣……なのか?」
きちんと柄が作られており、無骨だが刃もついている。
斬るというよりその重量からすり潰す、押し潰すといった武器なのであろう。
確かに理には敵っている――が、極端過ぎてこの大きさを扱える人間がいるとも思えない、思いたくもない。
他の剣が欲しいとは思ったが、流石にこれは無茶がありすぎる。
まだ魔剣の方が振るえる分マシであった。
恐らくこの剣を支給品に貰った人も、使いこなせなくて捨てていったのであろう。
もしこれを使いこなせる奴がいたとして、そんな奴が殺し合いに乗ってたら面倒な事になる。
ならば魔剣の危険を確かめるついでに、斬るには大きさ的にも丁度良い目標であるといえた。
「しかしやっぱりこの魔剣を触るのは躊躇するな……」
デイパックを空けるとよりいっそう邪悪なオーラが増した。
――まるで何かを待っていたかの様に。
(やっと出番なの?儂、嬉しくて張り切っちゃう)
そっと手に取り、特に身体に変化は起きていない事を確認する。
「日本刀より重いな。それに未来予知も使えないみたいだ」
やはり未来予知などの潜在能力は、本来の式の武器である日本刀を使わないと発揮できないらしい。
だが概念、霊体や能力の死を視るだけならば、この魔剣でもできる。
式は魔眼に力を込めて、目の前の斧剣の死を探した。
――三本、四本。
複数の死の線が見える。
(こんなに可愛い子に先端を握って貰えるなんて……おおおおおっ、心のちんちんも元気になって……あっ、だめそこはデリケートだからもっと丁寧に)
――五本、六本。
線がどんどん増えていく。
「凄いな」
じらしプレイの効果により、いつもより興奮状態にあるカオスはその性能を十二分に発揮していた。
(さあ、行け!!行って、儂であいつを切り刻め!!)
――十本。
ついには目の前の斧剣が線でほぼ覆われていた。
つまりはあの頑丈そうな斧剣ですら、この魔剣にかかれば何通りも殺し方があるという事だ。
式は魔剣カオスの凄さを実感していた。


一閃。
十本の内の一本の線を無造作に選び、魔剣カオスでその線をなぞる。
今回の場合相手は動かないので斬るのに力も速さも必要ない。
敢えて言うならカオスを満足に振れるだけの力があればいい。
日本刀より重いので多少慣れが必要であるとは思われるが、複数本存在する動かない線をなぞるだけなのだ。
決して困難な作業ではない。
死の線によって線引きされた斧剣は、その線通りに音を立てて真っ二つに別れた。
「特に変わった事象も無し……か」
自分に異変が起こってない事も念入りに魔眼でチェックする。
魔眼を使った体力の消耗がいつもより多い気もするがそれ位であろうか。
「後はかかってるとしたら、魅力≪チャーム≫の魔術か」
西洋刀に全く興味がなかった式ですら、切れ味に引き込まれたのだ。
しかし特に魔術的な力は無くても、切れ味だけで惚れ込ませる妖刀の類も存在する。
「使わずに元の世界に帰れるならそれに超した事はないんだけどなぁ」
(え、ちょ。儂の活躍もう終わり?全然斬り足りない。もう焦らしプレイ飽きた……)
そんな声が聞こえるはずもなく再びデイパックに魔剣カオスをしまい、当てもなく式は歩き出した。
橙子や幹也がいれば色々指示してくれるんだろうけど……いないものは仕方ない。
この世界にはいない二人を思いつつ、風の赴くままに歩を進めた。


【F-6/山脈/一日目/黎明】

【両儀式@空の境界】
【状態】疲労(小)
【装備】無し
【道具】支給品 魔剣カオス ランダムアイテム(個数内容ともに不明)
【思考】基本:元の世界へと帰る。
1:とりあえずここから帰る方法を探す。
2:この魔剣に呪いとかは特にないだろうと判断。だが念には念をで使わないで済めばそれに超した事ない。

【備考】
※F-6 山脈に放置されたバーサーカーの斧剣@Fate/stay nightは真っ二つになりました。
※魔剣カオスは喋れない&見えない触手が出せない制限中。式にはなんのアピールもできませんので解らない人は式視点でカオスに全く触れずに書く事も可能です。



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