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骸骨の踊り◆bUcVbHLxUE



月が照らすは二人の男女に一体の骸骨。
グリーンが特徴的な眼鏡をかけた少女は悲しみの涙で顔を濡らし、赤いハチマキに鎧をつけた青年は状況を飲み込めずにいた。
骸骨は埃のついた黒衣のスーツを纏い、上下統一感がある。
しかし骸骨の表情をうかがうことはできない。彼は肉体を失った骸骨だから。


戒めから解放されたブルックはドラゴントゥースを鞘に収めた。
クレスはそれを彼の意思表示ととらえ、息をつく。
最悪の事態は避けられたようであると、とりあえず安心した。

「フウさん、あなたの言葉は私の胸にドン!と来ました!!」

ブルックは気絶した少女の元に歩み寄り、彼女の背中に左手を回し抱きかかえる。
骸骨は泣き崩れた少女に対し、陽気に語り掛けた。
先ほどまで殺そうとしていたとは思えないほど優しく、眼鏡にかかった髪を右手で払いながら。
その姿には年を取った者に特有の父性が感じられる。なるほど、先ほどの50年というのは伊達ではないようだ。
しかし彼女には聞こえていないと分からないのだろうか、クレスは疑問に思う。

「申し訳ありませんでした。突然、殺し合いをしろといわれ私、平気な振りをしていても真っ白になってしまいました!骨だけに!!」
「死にたくない、死にたくないって考えてしまって、って私、死んでるんですけども!!」
「私が間違っているのが身に沁みて分かりました!!!!!!といっても私、身なんて無いんですけども!!ヨホホホ!」

身体的特徴を生かしてうまいギャグを言うもんだ、とクレスは思いながらもブルックの様子がおかしいことに気づいた。
興奮状態から抜け出せていないのか、それとも彼のような種族からすればこれは普通なのか、クレスには見当もつかない。
楽しそうに骨が動くところから、彼の情動を予測するしかないからだ。

「こんな顔してても心が弱いのでしょうね」

声のトーンが一段下がる。
冷たく、腹の底から出てきたような声であった。
クレスに悪寒が走った。

「その点、あなたは心優しく、そして強い方だ。殺そうとした私まで思いやれる素晴らしい人だ」

その言葉を聞くや否や、クレスの安堵が失せた。
ブルックが一度は抑えた殺気を再び現したためだ。
無意識のうちにクレスの手が刀へと伸びた。


瞬間、鳳凰寺風の首に異物が入る。
ブルックの、人のように皮膚に覆われておらぬ鋭利な骨の指が、彼女の首をズブズブと進み行く。
風は血を吐いた。己の身に何が起きているかも分からないだろう。息苦しくてしょうがないようだ。

「そんなあなたはここにいるべきではない」

ブルックは風の首の深部まで右手の指を入れた後、力任せに横に引き裂いた。
そのあふれ出る血の量からクレスは理解する。


―――――――彼女は死神の手にかかってしまったのだ


せめて彼女が意識を取り戻さずに死んだことは救いだったのだろうか。
そんな現実から酷く遊離したような思いを抱き、クレスは立ち上がった。
言葉を口から出すのが酷く億劫で、しかし、なさねばならぬことが彼の思考回路を埋め尽くす。

「きさまぁ!!!!」
「おおっと」

怒りを顕わにし、クレスはブルックへと疾走する。
生かしておけぬ、とたぎる殺意をニバンボシに宿し振りかざす。
対するブルックも風を地に置き、ドラゴントゥースを再び抜きニバンボシの一撃を受け止めた。
クレスは問わずにはいられない。

「なぜ彼女を殺した!?彼女はお前を許したのに!!」
「彼女が少女だったからですよ」
「どういうことだ!」

淡々と話すブルックだが勿論、クレスには納得できなかった。
力を込め、ドラゴントゥースを押し込もうとするもブルックの膂力に阻まれていた。
しかしクレスにとっては動きを止めることさえできれば問題ない。
体を内に巻き込み左手に持ったニバンボシを左に振るうことで、ブルックが右手に持っていたドラゴントゥースを押しのける。
この時、ブルックはクレスを抑えるため正面からの動きに合わせていたため、クレスの急速な横の動きへの移行に対応しきれなかった。
ブルックは無防備となり動揺するも、クレスは構うことなく獅子を模る闘気を右手で前方に放つ。

「獅子戦吼!!!!!!」

そしてブルックをクレスが練った獅子が襲う。
ブルックの体に衝撃が走り、そのまま成す術も無く後方へ飛ばされた。
吹っ飛ばされ感覚器官を揺さぶられたブルックだが、
宿敵リューマとの戦いの経験地によるものか、空中で難なく一回転し体制を整え着地する。
クレスが考えていた以上にブルックが軽かったからか、二人の距離は開けてしまった。



月光は、剣士と骸骨を照らす。
その構図は知らぬものが見れば、まるで黒衣に身を包んだ死神に剣士が魅入られていると想像するだろう。
そして骸骨が口を開いた。

「突然ですが、あなた。この首輪を外すことはできますか?」

クレスが追撃しかけ、一時的にやめた。何が言いたいのか、意図を測りかねたからだ。
首輪があるから、脱出できないから彼女を殺したとでも言うのか。

「できない。でも」
「なんですか、他にあてがあるんですか?」
「脱出するんだったら僕の剣があれば、何とかなるかもしれない」
「私あなたのことをよく知りませんからそうですかとしか言えませんが……
そんな参加者に逃げられるかもしれないものを支給したりしてくれますかね?」

ブルックが言うことは間違っていない。
クレスとてその可能性に気づいていなかったわけではない。
考えようとしなかっただけだ。

「100歩ゆずってその特殊な剣を支給してくれたとして、その力を存分に使うことはできますかね?」

「そしてもしも脱出できたとして、脱出した後連れ戻されたら、
いやそれならまだしも、脱出した直後に首輪を爆破されたらどうするんですか!!」

続けざまにブルックはクレスに怒気を含んだ声を浴びせた。
そう、考えれば間違いなくこの結論に至ってしまうから。クレスはブルックの顔を睨むも言葉を返せない。

「私は、私以外にもここに来ているだろう人を知っています」
「……?」
「その人はそういった分野に関しては疎いです。恐らく私同様に首輪に関して期待できないでしょう」
「……」
「私、その方、あなた、フウさん、フウさんのお友達のヒカルさん、ウミさん。数にして6人。
ちっぽけなものですが、会場にいた人数を考えれば意外と多いと思いませんか?」

この6人に共通することは首輪に関する知識も外す技術もないということ。
クレスは否が応でも、この男は僕に現実を説きたいのだと悟ってしまう。

「それでも!!彼女のような人を殺してはいけないだろう!!!」
「彼女は脱出したいと言ってました。私もできることならば誰一人殺さず共に脱出したい」

故に彼はブルックを認められないため正論を吐かざるを得ない。
しかし、クレスの正論にぶつけられるのもまたブルックにとっての正論。

「ですが無理でしょう?ならば絶望する前に、何もわからぬまま死んだほうが彼女のためじゃないでしょうか?
フウさんは人を殺すならば自殺を選びそうですが、自殺の恐怖を彼女のような少女が味わうのはあまりに可哀想だ」
「くぅ……屁理屈を!!!」

本当に心の底からそう想っているようでブルックは始末に負えなかった。
しかし、本当に首輪を外す方法が無いとしたら?

そんな悲観的な考えが頭を過ぎるのをクレスは認めたくなかった。
理解されるとも、されようとも思っていなかったブルックは後ろを向き歩いてゆく。

「私は逃げるとしましょう。今のあなたならば勝てそうですが、初戦から傷を負うのは良くない」
「逃がすと思っているのか!」
「フウさんをよろしくお願いします」

そのまま勢い良く走り始めたブルックの言葉に、クレスは少女の死体に視線をよこす。
首を裂かれ、地を血で塗らしていた。
見るも無残で、野ざらしにはしておけない。だが今はこの男を。
そうして視線を彼女の死体から逸らそうとして、クレスはふと傍らの人形が目に付いた。

(これは……)

アミィちゃんがくれたものだ。

クレスの中で風がアミィに重なる。
親友、チェスターと共に狩りに行った間に騎士団の襲撃を受け、帰ってきた頃には物言わぬ躯となってしまっていた彼女を。
すると雨の中、チェスターが冷たくなった彼女を抱きしめ、体を震わせていた光景がフラッシュバックした。

あの時も、そして今も。
だが今のお前ならアミィを助けることができたんじゃないのか、クレス・アルベイン。
星を守るために戦ったダオスは殺せても、生き残るためアミィを殺した男は殺せないのか。なあ、クレス。

心の中で親友の姿が浮かび、問いかけてくる。
クレスはトーティス村の再興のため力を注ぐチェスターが、夜な夜な悪夢に苦しめられているのを知っていた。
だからこそ、あのような悲劇を繰り返してはいけないと固く誓ったというのに。いま、この場で悲劇は繰り返されてしまった。

「違う……この子はアミィちゃんじゃない」

瞼を閉じ否定した。
この地で死んでいたのはアミィではなく風という少女だった。

「この子はアミィちゃんじゃないんだ……」

クレスの顔が歪む。悲痛な声はチェスターに当てた言葉だろうか、それとも自らに当てた言葉だろうか。
気づけばブルックの姿は無かった。
優先すべきはこの少女ではなく、骸骨のモンスターを倒すことだったのに。クレスは虚脱感に包まれ、なにもできなかった。

言い返せなかったのだ。


自分のこの殺し合いに対する認識の甘さを指摘された。
ブルックが状況をふまえた上で、殺人を犯したことも、
彼女のことを想ってというのが冗談や酔狂で言ったのではないことも理解させられた。

「僕は間違っているのかな、ミント……」

剣士はいとしき人を想い、空を見上げた。
その声は、夜空に消えた。




漆黒の闇を骸骨が走り抜ける。
アフロが揺れ、慌てて転んだりしても休むことなく駆けていく。
市街地を抜け出たところでようやくブルックは一息ついた。

(ヨホホホ……ついにやってしまいましたね……)

心が揺らいでいた。
彼女がこれ以上、自分にその清廉潔白なる言葉を紡げば、自分は彼女を信じてしまう。
共に脱出の道を探そうと思ってしまう。すれば二度と人を殺せなくなる。
だからその前に自分は彼女を殺した。だがブルックは心が痛み、涙を流したかった。

「って私、血も涙もありませんでした!!!」

そんなボケを聞き入れるものはいない。
脱出する方法なんてあるわけがない、ブルックにはそうとしか思えなかった。
これはブルックの中でこの場に集められた人間がゾロのように剣に特化した者のみだという推測に起因する。
こんな首輪を外す方法なんてブルックには分からなかったし、事実風も少し話してそんな技術は知らないといった。
それはつまり友人であるヒカルやウミにも分からないということとブルックは取った。
彼女は知ってる人がいるかもしれないから探そうと続けたが、
ブルックにはそれは偽りの希望にすがって虚しく努力をする人間に見えたのだ。事実、クレスにはやはり外す方法など分からなかった。
ならばと、ブルックは確かな希望のために動くことを決めた。


私がこのゲームに乗って人を殺すことを決意したのは事実だが、彼女は殺したくは無かった。
あの何者にも穢されておらず真っ直ぐに理想を語る姿はルフィさんとだぶり、非常に好意的な人物だったからだ。
しかし彼女を生かしておけば私は彼女に会うたび、説得され、常に鏡を見るかのように、己の悪行と向き合わねばならない。
これでは堪らない。私は耐え切れないだろう。良心の呵責に押しつぶされるかもしれない。だからフウさんを殺した。
考えてみれば我ながら身勝手で酷い話だ。だがそれでも戻りたい場所がある。


「私は50年も一人だったんです、たった数日ぐらい気にしませんよ……」


骸骨は笑みを浮かべる。
肉は無く、表情からは読み取れないが確かに。

ある世界の海賊王を目指す一人の船長は仲間を集めた。
戦闘員、航海士、狙撃手、コック、医者、考古学者、船技師、そして音楽家。
彼が音楽家を誘うことが無ければ、音楽家はその手を少女の血で染めることは無かったのだろうか。
彼が希望を差し出さなければ、音楽家は修羅の道を歩もうとしなかったのだろうか。


答えは無く、帰路を死神が往く。手には少女の血を滴らせ。


【G-3 市街地 外壁傍/一日目/深夜】

【クレス・アルベイン@テイルズオブファンタジア】
【状態】 健康、疲労(少) 
【装備】 ニバンボシ@テイルズオブヴェスペリア
【道具】支給品×2、 ランダムアイテム×2、バスタード・ソード@現実、
【思考】基本:仲間を募り、会場から脱出する……?
  1: 風をこのままにしておく訳にはいかない
 [備考]
※ 参戦時期は本編終了後です


【F-3 市街地 出口/一日目/黎明】

【ブルック@ONE PIECE】
【状態】 健康、疲労(小) 
【装備】 ドラゴントゥース@テイルズオブファンタジア
【道具】支給品
【思考】基本:生き延びて約束を果たす
  1: 優勝して元の世界に帰る
 [備考]
  ※参戦時期はスリラーバークで影を取り戻した直後です




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ブルック 032:人間だもの
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