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夜に乱雲花々乱れ◆LwWiyxpRXQ



0

一目見ただけで分かった。
この剣は抜いてはならぬものだと。
銘も何も知らぬ剣だが、そのことだけは分かった。


何も分からなかった。
何故死んだはずの自分が生きているのか。ここがどこなのか。『剣』とは一体何なのか。
が、少し考えて、考えること自体が無駄だと分かった。


ロイド・アーヴィングは英雄だ。
二年前、二つの世界を統合した世界再生の旅以来そう呼ばれるようになっていた。
そして、数日前には大精霊ラタトスクを巡る戦いも終わりを迎え、その処理に向けて動き出そうとしていた時にこの場に呼ばれていた。

「城……か」

暗い夜。
そこには、月によって怪しげに照らされる城があった。
造りはしっかりしており、豪勢ながらどこか質素さを感じさせ、見たことのない城だったが主の趣味の良さを思わせる。
ロイドが周りへの警戒を怠らずに大きな扉を押すと、きぃという金属の軋む音と共に扉は開かれた。
罠などに気を付けながら慎重に中へ入ると、視界が光に包まれ、一瞬身構えたが、それが天井に浮かぶ豪華絢爛なシャンデリアによるものだと分かると、肩の力を抜いた。

城の内装も外観と同じく豪華だが派手過ぎない、品の良さを感じさせるものだった。
床に敷かれた質の良い真紅の絨毯を踏みながら、ロイドは城の中を歩き進める。
城の内部は静寂に包まれており、自分以外の存在は感知できない。
どうやらここには自分以外誰も居ないようだ。そう判断した瞬間、

「ふあ」

聞き取り方によってはひどく間抜けな、力の感じられない欠伸が聞こえた。

3

宇練銀閣は浪人だ。
銀閣は幕府からの命令に背き砂漠で生きていた。
だが、同時に城主でもある。
砂漠につつまれた大地で彼はたった一人で城を守っていた。
かつて城が、街が、大地が、人が砂に覆われ、すべての者は国を去った。
宇練銀閣。ただ一人を除いて。

故に銀閣は城を守った。
意味など特にはない。ただ何かを守りたかった。守らなければ戦えなかった。
守るべきものが、彼にはそれくらいしかなかったのだ。
そうして砂漠で一人、斬刀『鈍』を振るって現れる者をひたすら斬り続ける。いや、斬り続けていた。

「ふあ」

眠くて、欠伸が出た。

彼はこの場に来る前に既に敗れ、城は陥落し、刀も奪われていた。
そうして唯一残された守るべきものも奪われ、誰にも省みられることなく死んだ筈だった。
これでやっと……

(やっと、ぐっすり眠れると思ったんだがなあ)

とんだ悪夢もあったもんだ。
まどろみながら自嘲気味にそう思った。

「階段、か。通りで姿が見えなかった訳だ」

下から声がした。
気だるげにそちらに目を向けると、そこにいたのは赤い西洋の服を着た男。
銀閣が居たのは一階と二階を繋ぐ階段の、狭い場踊り場だ。
男――ロイドはその姿を階段の下から見上げるようにして眺めている
銀閣は最初、ロイドの言葉を無視しようとしたが、ふとあることを思い出し口を開く。

「あんた……斬刀『鈍』つう刀を持ってねえか?」

不躾な質問だったので少々驚いたが、斬刀などというものには心当たりがなかったので、それを偽ることなくロイドは「知らない」と返した。
すると、銀閣はさして落胆した様子もなく、そうか、と呟く。
その眼光は弱く。今にも眠りに落ちてしまいそうである。
ロイドはそんな銀閣の様子に戸惑ったが、すぐに気を取り直して意思疎通を図るべく口を開いた。

「なぁ、こんな場から出るためにも協力してくれないか?」
「………」
「その……斬刀ってのを探してるんだろ?それを探すのも手伝うからさ」
「………」
「二人で探せば、一人で探すより二倍早く見つけられる筈だろ?」
「………うるせぇな」

銀閣は大きく欠伸をすると、鬱陶しそうにロイドに視線をやった。
しばしの沈黙の後、銀閣は半開きの瞳のまま

「とりあえずさあ、兄ちゃん。
そんな下からじゃ話しにくいから、とりあえずここまで来てから話してくれねえか」


と言った。
ロイドは銀閣の言葉に何か含むものを感じながら、しかし話しづらいことは確かだったので、階段を上がることを承諾した。
質の良い絨毯を踏み締めながら、一歩一歩駆け上っていく。
そして、遂に銀閣の居る踊り場に着こうとした、まさにその時だった。

しゃりん。

音が響いた。

4

それとどちらが早かっただろうか。
同時に剣と剣がぶつかる、甲高い金属音が響いていた。
その音と共にが吹っ飛び、階段を転げまわっているロイドの身体。

「くっ、やっぱ斬刀じゃねえと巧く斬れねえか」

言葉とは裏腹に銀閣はさして取り乱していない。
対するロイドは階段から落ちた痛みを堪えながら、先ほど抜いた剣を構えていた。

何が起こったのか、傍目にはまるで分からなかっただろう。

銀閣がしたことは単純だ。
近付いてきたロイドを居合い抜きで斬りつけた、ただそれだけ。
しかし、斬り付けた速さが異常だった。
この場に二人以外の者が居たならば、銀閣は抜刀した瞬間には既に納刀を終えているようにも見えただろう。
その刃を視覚で捕らえることすらできない。その並外れた速度による居合いは零閃と呼ばれていた。

ロイドは咄嗟にそれに反応して、腰に吊るしていた剣でその凶刃を弾くことに成功していた。
まさに紙一重だった。後少しでも反応が遅れていたならば、ロイドは零閃に斬り裂かれ、真っ二つになっていただろう。
いや、反応が遅れていなくとも、銀閣が振るった剣が違ったならば、あらゆるものを両断する斬刀『鈍』であったならば、弾くことも適わず斬られていた筈だった
自分に刀を振われたのだと認識すると、ロイドは頭上で佇む銀閣に鋭い眼差しで睨み付け、声を放つ。

「お前………」
「………」
「あんな奴の言うことに従って人を殺すのかよ!」

言葉尻に怒気を含んだ叫びだった。
しかし、銀閣はそれを軽く受け流し、言った。

「だったら、どうする?おれを殺すのかい? いや、殺せるかい?」

ロイドは問いに答えず、二人の間に奇妙な沈黙が生まれる。

(今の攻撃……居合いって奴か?)
どうやって攻撃されたかは検討が付くが、それが分かった所でどうしようもないのだ。
銀閣の居る踊り場は狭く、まともに行けば剣の届く範囲に入った瞬間に斬られてしまうだろう。
かといって踊り場にはこの階段以外から行く道はないようだし、どうしても正面から挑む必要がある。

(魔神剣……でも駄目だろうな。階段があるし)
しばらくの思考の末、ロイドは判断を下した。

(一度……退くか)
選択は一時撤退。
二年前の彼だったら違ったかもしれない。
去らずに説得を続けていたかもしれない。あるいは無鉄砲に突っ込んで零閃の餌食になっていたかもしれない。


銀閣は何も言わず、先ほどまでと変わらず腰に刀を差して佇んでおり、瞳は相変わらず虚ろで、眠そうだ。
その姿に後ろを向け、しかし警戒は怠らずロイドは城から出た。
腰には抜いてしまった一本の刀が刺さっている。
抜いては駄目だと一目見たとき感じた刀だが、先ほど一度抜いてしまった。
仕方なかったとはいえ、何か悪い予感がしていた。
だが、不思議と刀を手放す気にはなれなかった。

5

「行っちまったか」

ロイドが去り、城に残っているのは銀閣一人になった。
下酷城とは全く違う形の城だった。異国に興味がない銀閣にとって、西洋の城だということしか分からないが、豪華な城だとは思った。
無論、どうでもいいことだが。
やたら明るくて寝付けないのは困りものだった。

「ふあ」

銀閣はロイドを斬り付けたが、実のところ殺し合いに乗ろうという意識はなかった。
それどころか生き残ろうという意識すらない。
国も城も人も刀も失った。
いまさら失っていた筈の命を取り戻そうとは思えなかった。

あらゆるものを失った銀閣に残されたのは剣だけだ。
彼は剣士だ。元より剣以外で語る術を知らない。
故に、殺し合いとは関係なく生前と同じく精々人を斬り続けよう。

(おれにはもうそれくらいしか守るものなんてねえんだから)

この場に留まるか、それともこの場にあるのかも知れぬ斬刀を探しに行くか、どちらにせよ今はとりあえず寝よう。
そう思い、銀閣は眠そうに欠伸をした。


【E-3/城/1日目/深夜】

【宇練銀閣@刀語】
 【状態】健康
 【装備】ドルチェットの刀@鋼の錬金術師
 【道具】支給品一式
 【思考】
基本:出会った者は無差別に斬る
  1:とりあえず眠る
  2:斬刀『鈍』を探したい
  3:この場から動くか留まるかを考える
[備考]
※ 死亡後から参戦。




ロイド・アーヴィングはその優れた身体能力により零閃に反応した。
そう反応してしまったのだ。
一目見て抜いては駄目だと確信していた筈の剣を、咄嗟に、反射的に、考えるよりも速く抜いていた。

その剣の名は【毒刀『鍍』】
四季崎記紀の作りし完成形変体刀十二本が一本である。

完成形変体刀十二本はその完成度の高さ故に強烈な毒を持つ。
一度持てばそれを振るいたくなり、人を斬りたくなる、呪いのような毒を。
しかし、本来ならばロイドにその毒は及ばない筈だった。
マーテルの加護により彼は守られている。それ故、彼はセンチュリオンコアによる精神異常も引き起こさなかった。
だから、変体刀を持っても平気な筈だった。安全な筈だった。問題ない筈だった。
他の変体刀、例えば銀閣が求めていた斬刀『鈍』ならば問題なかっただろう。
だが、毒刀だけは駄目だ。
完成形変体刀十二本の中で『毒気の強さ』に重きを置かれたその刀だけは。

猛毒刀与。
かつて毒刀によって乱心した真庭鳳凰は自らのことを四季崎記紀と称し、毒刀『鍍』の毒気の強さをそう呼んだ。
その言葉通り、他の変体刀の毒が並の毒ならば、毒刀による毒はまさに猛毒。
マーテルの加護によって守られているロイドは表面上はおかしくなっていないが、この場において制限され弱まっていた加護では完全に消し切ることまではできず、さらには彼は剣士だった。
刀の毒は持つものが剣士であればあるほど、深く強く効く。
本能的にそれを察知していたにも関わらず、ロイドは毒刀を抜いてしまった。
抜いてはいけないといけないとは思いつつ、身に着けていた時点である程度は毒が効いていたのだろうけれど、抜いてしまったことが決定的だった。
幾つもの偶然、あるいは必然によってロイド・アーヴィングの身体に刀の毒は有効に作用し、蝕んでいた。


【F-3/城の外/1日目/深夜】

【ロイド・アーヴィング@テイルズオブシンフォニア ラタトスクの騎士】
 【状態】健康、刀の『毒』に犯されている
 【装備】毒刀『鍍』@刀語
 【道具】支給品一式
 【思考】
1:殺し合いを打破する
[備考]
※ 『 ラタトスクの騎士』本編終了後より参戦
※ 毒刀の影響を受けていますが、どの程度かは不明





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