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かいしんのいちげき!◆97R.cWfJaE



          一


雲をつき抜けるほど高大な山々。
冷え冷えとした風が吹く中、その山中に造られた細い道を月明かりを頼りに一人の青年が歩いていた。
狭い谷間を抜けると本道と思わしき道が現れ、そこに足を踏み入れると、幾分道幅は広くなる。
しかしそこは山道、左を見ればまるで切り立った崖のような傾斜であり、あまり安全とはいえない。

(……?)

そんな危険な山道をひた進んでいた青年の足が、ふと止まる。
ぴたりとその場に立ち止まり、かけていたゴーグルをあげ、前を厳しく睨みつける。
闇は深く、彼の目には何も見えない。

(……)

しかし彼は左足を引き、右手をいつでも背負った剣が抜けるよう身構えた。
彼に闇を見通す視力はない。
だが彼の戦士としての直感が前方の闇に何かがいるという事を感じていたのだ。

「いるんだろう?」

彼の問いかけに闇の中から明瞭な返事が返ってくる。

「フッ、オレの闘気に気付いたか……」

低い男の声だった。

「その隙のなさ、只者ではないようだな。名を聞いておこうか」
「ローレシアの王子、ロラン」

青年―――ロランはそう答えながらすらりと茶色がかった剣を抜き放った。
ロランは「殺し合いに乗ったのか」とは尋ねなかった。
何故なら強烈な殺気がその答えを雄弁に語っていたからだ。

「どうしてこんな殺し合いに乗ったんだ?」
「愚問だな。優勝すればあらゆる望みが叶うというのだ、乗らない理由はあるまい?」

その答えにロランの眼光が鋭くなる。

「そのためなら人を殺す事も厭わない、というのか?」
「厭う? ……このオレがか?」

声の主は意外そうに尋ね返し、そして笑いだした。

「フフフ、ハーハッハッハッ!」

その時、強い風が吹き、雲に隠れがちだった月が顔を出す。
月光が声の主の姿を晒す。
そこに居たのはロランの予想通り、若い二十歳ぐらいの男だった。

「何がおかしいんだ?」
「フッ、貴様の頭の中があまりのおめでたいんで笑ったのさ」
「なんだと……」
「このオレに人間どもを殺す事を躊躇う理由など……ないッ!」


その時、男の瞳になにやら得体の知れない殺気がひらめいたようにロランには思えた。
男は無造作にロランに一歩近づき、月光に煌く白銀の剣をロランに向け、名乗る。

「オレは魔王軍、六団長のひとり……不死騎団長ヒュンケル!」
「魔王……軍だって!?」
「よく覚えておくんだな。それが貴様を殺す者の名だ!」

ヒュンケルが跳躍、大上段に構えた剣をロランに向かって打ちこんだ。

「ぐっ!」
「ほう。大地斬を受け止めるとはたいした力だ。ならばこれはどうだ!」

そう言うとヒュンケルは縦横無尽に剣を振るう。
だが、ロランは赤銅色の剣でその全てを弾き、あるいはかわす。

「な……なに!」

ロランの力量[レベル]が予想外だったのかヒュンケルは驚きうめきながら飛び退く。
しばし両者とも足を止め睨み合い、次に動いたのはロランだった。

「君の考えはよくわかった。ならば僕は邪悪なる者として君を断たねばならない……」

ひゅんと剣を水平に構え、一見無造作にそれをヒュンケルへと打ちこむ。
一文字に放たれた剣撃をヒュンケルは即座に反応し、弾き返す。
だがしかし。

「ば、ばかなっ!?」

ヒュンケルの左わき腹から血がにじみ出し、これが服を赤く染めた。
浅い傷だ、しかしこれはヒュンケルが今の一撃を受けきれなかった証拠だった。

「許せよ」

ロランがそう呟き、猛然と地面を蹴った。
そして攻守は完全に入れ替わったのだった。


          ニ


龍咲海は顔を真っ赤にしていた。
吐く息も荒く、長く整った髪を乱し、モデルのようなその顔は真紅に染まっていた。

「……んっ……の……」

額には汗が浮かび、限界が近いのか指が震え、ついに腕が弛緩する。

「んん……も……だめぇ…………」

そして脱力したように地面にへたりこんでしまった。

「はぁ、はぁ……こんな……の……やっぱり持てっこないじゃない!」


地面に横たわる剣を恨みがましげに睨むと、彼女は天に向かって怒鳴りつけた。
彼女が何をしているのかといえば単純な話であった。
剣を構えようとしていたのだ。
しかし構えるどころか―――持ち上げられない。
かれこれ十分近くも頑張っていたのだが、彼女の細腕にはこの剣は大きく、分厚く、そして重すぎた。

「もう……こんな公園のベンチみたいな物を渡してどうしろっていうのよ。
 あのロワって人、殺し合いをしろとか言ってたけど「実はドッキリでした」なーんて事―――」

そこでぶるりと身体を震わせ。

「ないわね」

フレンと呼ばれた騎士の事を思い出したのか幾分顔を青ざめながら、そう呟いた。
彼女は理解していた。
この場が本当の殺し合いの場であることを、しっかりと。
だから最初に身を守るために剣を求めたのだが……出てきたのは巨大な岩塊。
握りがあったので剣だとはわかるが、オブジェとしか思えないような巨大なそれは、とても人間が使えるようには見えなかった。

(きっと、はずれをひいちゃったのね……)

と、ついに剣を持つ事を諦めた。
そう区切りがつくと、次に彼女はロワがいたあの薄闇の中で見た二人の親友の事を考える。

「あの後ろ姿、確かに光と風だった……そうね、こんな所で座ってる場合じゃなかったわ」

海は自分を励ますかのようにわざと声に出し、勢いよく立ちあがる。
あたりは真っ暗だった。
ごくりと唾を飲み込むと、彼女は勇敢にも闇の中へと飛びこんでいった。
街灯もない山道を月明かりを頼りに進むこと数十分。

(なに、この音……?)

何やら風の音に混じって金属が鳴るような音が響いてきたのだった。


          三


戦闘はロランが優勢だった。
しかし―――倒せない。
初めこそ油断していたヒュンケルだったが、ロランの力量[レベル]を把握すると、即座に自分を戒め防御に徹した。
結果、ロランは一方的に攻撃をしかけているというのに、ヒュンケルにほとんど傷[ダメージ]を与えられない。
稀に与えても頑強な生命力を持つヒュンケルには多少の傷[ダメージ]ではまったく動きが鈍らないのだ。
そんな硬直した戦闘を大きく動かしたのは第三者の声だった。

「ねえ、そこに誰かいるの?」
「ッ!? 来ちゃいけない!」

高いソプラノの声が響いた瞬間、ロランは大声で叫んだ。
しかし全身全霊をかけ、ロランの隙を窺がっていたヒュンケルがその隙を見逃しはしない。

「うおおおおおおおーーーッ!!」
「く……ッ!」

しなる様に弧をえがいた剣先をかわしきれず、ロランの肩から血が噴き出す。

「ちょ、ちょっとなにやってるのよ!?」


ロランが声の方に視線を移すとそこには十代前半ぐらいの少女が立っていた。
そこにいたのは龍咲海。

「逃げるんだ! この男は危険―――」
「フッ、どうした? さっきから隙が多いじゃないか!」

叫ぶロランにヒュンケルが無慈悲に追撃をいれる。

「うぐうッ―――おのれッ!」

苦しげにロランが横一文字に剣を振るうが、ヒュンケルはするりと余裕をもって飛び退く。

「やめなさい! やめないと攻撃するわよ!?」

海が状況を理解してそう叫ぶが、しかし、ヒュンケルは止まらない。
逆にロランの動きが鈍っていく。
ロランはそっと海を庇うように動いていたのだが、それをヒュンケルに悟られていた。
ヒュンケルは巧みに海を狙うと見せかけ、ロランへと確実に傷[ダメージ]を与えていった。

「止めないっていうのなら、こっちだって考えがあるんだから!」

止まらないヒュンケルに海がついに実力行使を決意する。
高く掲げた海の右手に青い魔力が集まる、そして魔力は水へ、水は龍へと姿を変える。

「水の龍ーーー!」

水龍がそのあぎとを開きヒュンケルを呑み込もうと襲いかかる。
だがしかし、ヒュンケルは決して海の存在を気にしていなかったわけではない。

「むうん!」
「ええ!?」

水の龍がヒュンケルを呑みこむ直前、突如水龍が真っ二つに割れ、ヒュンケルを避け地面に炸裂する。
アバン流刀殺法・海破斬―――その名の通り海をも割る秘剣だった。

「そ、そんな…………え、あれ?」

驚きの声をあげながら海はふらりと地面に倒れかける。
海の身体から急激に力が抜けていったのだ。
魔法を使ったことによる反動、ロワによる制限だったのだが、海には何が起こったのか理解できなかった。
それゆえ海はヒュンケルの仕業だと考え、

(私じゃ勝てない)

そう思ってしまった。
剣で戦おうにも重すぎるあの岩剣は置いてきてしまった。
魔法で戦おうにも通じないどころか、逆に倒されかけてしまった。
にじり寄る死の手触りに、海が恐怖に囚われかけたその時。
海の目に青い服が―――大きな背中が飛び込んできた。

「ここは僕に任せて……君は逃げるんだ」

ロランだった。
彼もだいぶ傷[ダメージ]を受けていたが、その動きは鈍っていない。
ロトの血族は他人を守るとき、無限の力を発揮するという。

「だ……ダメよそんなの!」

海はその言葉を拒絶した。
傷だらけのロランを見捨てて逃げるような真似は彼女には出来ない。

「なら、助けを呼んできてくれないかな」
「そんな―――そんな言葉に誤魔化されないわ。私だって、戦えるんだから!」
「誤魔化しじゃないさ。大丈夫、こう見えても僕は強いんだ。君が助けを呼んでくるまで持ちこたえてみせる」

その屈強な背中を見て海はなぜか泣きだしそうになった。
そして同時に理解していた、彼の背中が所々赤く染まっているのは自分を庇ったせいだという事を。
この場では足手まといにしかならないという事を痛いほど理解してしまった。

「……わかったわ。きっとすぐに誰か連れてくるから、絶対に死なないでよ!」

海は気丈にそう告げると、ふらつきながら闇の中へと飛びこんでいった。
遠ざかる海の気配を見送りながらロランは尋ねる。

「どうして彼女を見逃した?」

海を説得している時、そして逃がす時、ロランには大きな隙ができていた。
しかしヒュンケルはその間、様子を見るだけでまったく攻撃を仕掛けてこなかったのだ。
その問いにヒュンケルが答える。

「たとえ敵でも女は殺すな、それが武人としての最低限の礼儀だとオレは教わった」
「え……?」

その言葉と、僅かに緩んだ殺気にロランは驚く。

(彼はまだ―――完全には邪悪に染まりきっていないのか?)

そう感じたが、さりとて説得の言葉も思いつかない。
なにしろロランはヒュンケルの事情も、憎しみの原因も知らない。
それで説得など出来るはずもない。
だからロランはこう言った。

「なら、武人として約束してほしい。僕が勝ったら人殺しを止めてくれないか?」
「……いいだろう。その傷[ダメージ]では最早オレに勝てるとは思えないがな!」

言うやヒュンケルは右手を引き、剣を地面に水平になるように構える。
その構えに凄まじい殺気を感じたロランは自身も僅かに右手を引き、剣を水平に構える。
奇しくも似たような構え、両者とも相手に剣の切っ先を向けた姿勢で微動だにせず動きを止めた。

(この一撃で全てが決まる)

両者ともそれを肌で感じていた。
戦況は互角の状態に引き戻されていたのだ。

そしてヒュンケルが矢の如く疾る。

対するロランは岩のように動かず。

「死ねッ!」

ヒュンケルが構えた剣をひねり、押し出す。

「ブラッディースクライド!!」

強烈な螺旋を加えた突きがロランの心臓目掛けて突き進む。

それに反応し、ようやくロランが動く。

「古流剣殺法――」

剣を下段に、地面を擦るよう跳ねあげ、発息。

「昇一文字!!」

剣に込められた闘気がブラッディースクライドを押し上げようと上昇する。

(まずい!!)

そう思ったのはどちらだったか。

力と力、技と技がぶつかりあい。

力で勝ったロランの剣がヒュンケルの剣を跳ね上げかけ。

そしてロランの―――どうのつるぎがするどい音をたてて砕けた。

【つうこんの いちげき!】

【ロランは 190ポイントの ダメージをうけた!】


          四


ロランの胴体からヒュンケルは剣を引き抜く。
どっと血液が飛び散り、少しして、どう、とロランの身体が地面に倒れる。

「………………恐るべき相手だった」

荒い息を整えながらヒュンケルが思わずといったように言葉をこぼす。
今の勝負、ヒュンケルが勝てたのは武器の性能差が大きかった。
ヒュンケルは神の金属といわれるオリハルコンを加工し造られた覇者の剣。
ロランはごく普通の銅を鋳型に流し込み造られたどうのつるぎ。
その強度の差が勝敗を分けた。
どうのつるぎは覇者の剣とヒュンケル、そしてロラン自身の技の威力に耐えきれなかったのだ。

「持つ剣が逆だったならば結果も逆になっていたかもしれんな。
 いい経験になった。さらばだ―――ローレシアの王子ロラン」

ヒュンケルが誰にともなくそう呟く。
人間嫌いとはいえ彼の本質はどこまでいっても武人のそれ、強敵には相応の敬意を持ってしまうのだろう。
ヒュンケルは懐に手を入れ、支給されたやくそうをつかった。
すると、みるみるうちにロランにつけられたわき腹や細かい切傷が塞がっていく。
それを確認するとヒュンケルは足速くその場から離れていった。
ただし彼が向かったのは龍咲海が駆け出した方向とは真逆の方向。
それがヒュンケルなりの少女を守るために散った強敵への

(武士の情け)

であった。


【ローレシアの王子@ドラゴンクエストⅡ 死亡】
【残り 49人】


【F-6 山脈/一日目/深夜】

【龍咲 海@魔法騎士レイアース】
【状態】健康 魔力消費(大)
【装備】無し
【道具】支給品 ランダムアイテム
【思考】基本:光と風を探す
1:ロラン(名前は知らない)を助けてくれそうな強そうな人を探す
2:身を守る剣が欲しい

【ヒュンケル@DRAGON QUEST-ダイの大冒険-】
【状態】傷(小) 体力消費(中)
【装備】覇者の剣@DRAGON QUEST-ダイの大冒険-
【道具】支給品
【思考】基本:優勝する
1:優勝する
2:できるだけ女は手にかけたくない

【備考】
※F-6 山脈に海に支給されたバーサーカーの斧剣@Fate/stay nightが置いてあります。
※ロランの死体のそばにランダムアイテムが落ちてます。




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