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オープニング ◆KKid85tGwY


目を覚ましたダイが最初に抱いた疑念は、自分が未だ覚醒せずに夢を見ているのではないかと言うものだ。
 それほどダイの周囲の状況は、現実感に乏しいものであった。
 ダイを包む光景。そこには見渡す限り暗闇が広がっている。
 しかも尋常の闇ではない。
 霧で光が遮られているのでもない、黒く塗りつぶされているのでもない。
 上を見ても下を見ても遠くに目を凝らしても、ひたすらに底の無い暗黒が広がっている。
 まるで星の無い宇宙空間に漂っているような景色が、ダイの周りに広がっていた。
 異常な光景。
 ダイはデルムリン島から始まった冒険の過程で、深い海底から天高く飛行するバーンパレスまで世界中の様々な場所を旅してきた。
 しかし、こんな不可解な景色は始めて見る。
 意識が鮮明としていなければ、今が夢だと確信していたところだ。

(ここはどこだ!? …………おれは今、見えない床に立っているのか?)

 ようやく視覚以外にも意識がいき、自分が”底無しの闇に立っている”ことに気付く。
 意識が明瞭としているはずなのに、ますます現実感が薄れる。

(…………おれ以外にも誰か居る)

 背後にある人の気配に、ダイも気付く。
 振り返ると、やはり今までと同じように果ての無い闇が広がっている。
 が、ダイが立っている床とおそらく同一平面上に人が横たわってるのが
 どこにも光源が見当たらない闇の中なのに、何故かはっきりと視認できた。
 それも1人や2人ではない。
 見渡したところ3、40人かそれ以上の人々が各々一定の距離を保って存在していた。
 そして、それらの人々も覚醒していっているらしく
 1人、また1人と身を起こしていく。
 中にはすでに完全に覚醒していた様子の者も見受けられる。
 やがて、ほとんどの者が目覚めたらしく次第に戸惑いと警戒の色が混じった喧騒が生まれ
 それが波紋のように大きくなっていった。
 しかしその喧騒が前触れも無く、一斉に止む。
 突如闇の中に、人の姿が浮かんだのだ。
 宝石の散りばめられた装飾を頭に付けた、白い顔に青い瞳が光る
 自分より何倍も巨大な女の姿が。
 それを見た瞬間ダイ、だけでなく場のほとんどの者が一際強い警戒の気配を向けた。
 おそらく他の者達も、ダイと同じく直感的に悟ったのだろう。
 こいつは我々のような理不尽に囚われた者とは違う、この場を支配する側の存在だと。

「選ばれし剣士達よ、よく集まった。今からお前達には――殺し合いをして貰う」

 女は落ち着き払ったしかし威圧感に満ちた声で、事も無げに話す。
 しかしダイには、その意味している内容がすぐには理解できなかった。
 そんなダイを置き去りにして、女に明らかな敵意のはらんだ声が掛かる。

「デボネア!!」

 声の主は赤い髪を後で編み込んで同じく赤い瞳に敵意を露にして女を睨んでいる、まだダイとそう年齢も変わらないであろう少女。
 あの女――デボネアを知っているらしい。
 この状況も把握しているのだろうか?

「これはどういう事なの!?」

 今度は先ほどの少女のすぐ隣に居る、ダイよりもう少し年長らしい青い長髪の少女が疑問を投げ掛けている。

 どうやら2人は知り合いらしい。
 と言うことは、あの2人も状況を把握していないようだ。

「光さんも海さんも、迂闊に動いてはいけませんわ!」

 どことなくアバン先生を思い起こさせる丸い縁の眼鏡を掛けた3人目の少女が、前の2人を制止した。

「風ちゃん、でも……」
「今の私たちは、武器をもっていませんわ。それに……」

 3人目の少女はそう言って、自分の首に嵌っている金属の輪を指した。
 それを見て他の2人は自分に嵌っている首輪を触って確認する。そしてダイも。
 いつの間にか自分に、首輪が嵌っていた。さすがの”勇者”ダイの背筋にも、冷たい物が走る。
 それと少女達の会話でもう1つ、重大なことに気づく。
 背負っているはずのダイの武器、『ダイの剣』が無いのだ。
 ここに集められた者は皆、武器を取り上げられているようだ。

「ウフフ」

 子供の笑い声が聞こえる。
 デボネアの足下に、こちらも闇の中から突然、桃色の長い髪をした少女が姿を現す。
 無邪気さの中に残酷さを滲ませた笑みを浮かべる顔は、赤い髪の少女によく似ていた。

「ノヴァ!」
「ヒカル、お母様の言うことをちゃんと聞こう。だってヒカルはここじゃ、セフィーロの時よりもずっと弱いんだよ」

 桃色の少女の名前を聞いて思わず北の勇者の顔が浮かぶも、それを振り払う。
 こっちのノヴァは、デボネアの仲間のようだ。

「ヒカルだけじゃない。ここではお母様に……私にだって誰も逆らうことが出来ないんだよ」
「それはどうかな」

 どこかで聞いた声が割って入る。
 沈着な、それでいて威厳に満ちたその声をダイが聞き間違えるはずが無い。
 白いマントを翻し前に進み出る老人の姿は、やはりダイの知った者だった。
 大魔王バーン。
 現在地上を侵攻している魔王軍の、頂点に立つ存在である。
 ダイは右手の甲に竜の紋章を輝かせて、バーンに向かって叫んだ。

「バーン!! これはやっぱりおまえの仕業だったのか!!」
「ほう、勇者ダイよ。おまえも来ておったか。だが早合点するなよ、これは余も与り知らぬことだ」

 バーンはそう言って自分の首輪を指先で突いた。
 それを見て、ダイは驚愕に目を開いた。
 あのバーンですら、ここでは使役された側だという事実に。

「ダイよ、どうやらおまえとの戦いの前にまず、あ奴らの始末をつけねばならんようだな」

 バーンはダイに一瞥をくれると、ノヴァに向き直る。
 ノヴァは相変わらずの笑みのまま。そこには侮蔑の色さえ浮かんでいる。

「さて、我らをここへ召喚した理由は、殺し合いをさせるためだったか?
……なるほど。魔界の弱肉強食を再現するかのごとき催しは、中々に興がのる。
しかも勇者まで参加しているとなると、ふっふっふ……さぞ見物であろうな。
…………だが……」

 バーンの声に怒気が混じり、一気に威圧感が増す。

 その直接圧するかのごとき威を受け、ダイはバーンの恐るべき力を思い出した。

「この大魔王バーンまで首輪を嵌め走狗にしようなど、思い上がりも甚だしいわ!!
あの世で悔いるがいいぞ、余を侮った己の愚かしさを!!」

 バーンの右手に炎が発生する。
 それは火炎呪文を使った証。

「燃え尽きよ!! その威力と優雅なる姿から、太古より魔界で畏怖された余のメラゾーマ――カイザーフェニックスでな!」

 バーンが右手から火炎呪文を放った。
 それは拳大ほどの大きさの火球となって、ノヴァに襲い掛かる。

「!? カイザーフェニックスではない……メラだと!?」

 迫り来る火球をノヴァは片手で造作も無く払い除ける。
 バーンは左手からも火炎呪文を放つ。
 しかしそれも小さな火球でしかない。
 ダイにはバーンのしていることが不可解極まりない。
 バーンはカイザーフェニックスと言う、あれよりも遥かに強大な火炎呪文を放てるはずなのだ。

「何故カイザーフェニックスが出ない? 余はメラゾーマを放ったはず……、何故メラしか放てぬ!?」

 ダイ以上にバーン自身が狼狽していた。
 バーンはカイザーフェニックスを放ったつもりが、何の変哲も無いただのメラ。
 しかも普通の魔法使い以下の威力の物しか出ないのだ。

「…今のはメラでは無い…メラゾーマだ…」

 デボネアが冷たく言い放つ。
 バーンはそれを聞き、とても信じられないと言う態度もあからさまに激昂した。

「バ、バカな!! 余のメラゾーマが、あの程度の威力であるはずが無い!!」

 たしかにあれがバーンのメラゾーマなら、バーンは並の魔法使いほどの魔法力も無いことになる。

「余の魔力が抑制されているのか!? しかしそのような真似は、天界の神々にも為し得ぬことだ!」
「今度は――こっちから行くよ!」

 ノヴァが一足飛びでバーンとの間合いを詰め、手から伸びた光の剣でバーンの右腕を切り落とした。
 痛みよりも驚きで動きの止まったバーンの左腕もあっさり刎ね飛ばす。
 そしてノヴァは更にバーンの胴体を光の剣で貫き、そのまま片手でバーンを身体毎持ち上げる。
 僅か数瞬の内に、バーンは反抗する力も残らぬ虫の息となっていた。

「アハハハハ! つまんない奴。これじゃ、遊び相手にもならないよ!」

 ダイには最早、目の前の出来事をどう受け止めて良いかも分からなかった。

 あの絶大な力で魔王軍を率いてきたバーンが
 自分やその仲間が死力を尽くし戦い抜いてなお未だ届かなかったバーンが
 まるで凡百の雑魚モンスターのようにあしらわれている。

「さて……あのバーンだが、実は殺し合いの参加者として呼んだのでは無い。
剣士ならぬあの者を呼んだのは、見せしめとするためだ」

 デボネアが話し始めると、ノヴァはさらにバーンの身体を高く掲げる。

「バーンの首に嵌っている物を良く見るのだ。あれと全く、同じ物がお前達の首にも嵌っている。
その首輪はどれもこちらの任意で――――爆発する」

 ボン、と言う軽い音と共にバーンの首から煙が上がった。
 そしてバーンの頭が、足下に転がり落ちる。
 頭の無くなったバーンの身体は、玩具のように力なく倒れ伏した。
 この場に集まった者は皆、大なり小なり人の死に縁のある者ばかりだからだろうか大きく騒ぐ者は居なかったが
 それでも場に漂っていた不穏な空気が一気に重くなる。
 平然としている者も少なくないが。
 ダイ自身は平然などと言う言葉から程遠い心境だ。

 バーンが死んだ? こんなにあっさりと?

 今のダイにはバーンの死に、喜びも怒りも無い。
 ただそのバーンを殺した者の底知れなさと、そいつが自分の命を握っている事実への戦慄きがあるだけだ。
 どちらもダイが初めて覚える想いである。

「先ほども言ったようにお前達には殺し合いをして貰う。最後の1人になるまでな。
そして最後の1人となった者には、褒美としていかなる望みも叶えてやろう。
物であろうと心であろうと命であろうと、望むままにしてやる。なお、殺し合いにはルールが定められている。
殺し合いのルールに背いたり我らに逆らう者の命は、いつでも刈り取れる物と心しておけ」

 その時ダイは自分の身体が、足下から徐々に”闇へ溶けていく”のが見えた。
 それはダイだけではない。全ての参加者が、足下から闇に消えていっているのだ。

「案ずるな。殺し合いの会場に送られているだけだ。再び闇が晴れた時、殺し合いの会場に着いている。
そしてそれが殺し合いの開始だ。会場に着けばデイパックに入った、支給品が配られている。
その中には地図やルールブックなどもある。細かいルールなど必要な情報は、それで確認するがいい。
それとお前達の武器――剣も支給してあるから、存分に殺し合え」

 全てが闇に消えていく。
 恐れも、怒りも、喜びも。
 その中でデボネアの声だけが、確かな物として聞こえていた。

「それではこれより殺し合いを開始する。剣士達よ、己の命を繋ぎたくば剣で勝ち取れ。……剣士らしく、な。
フフフ、フハハハハハハハハハハハハハ!!!」


【バーン@DRAGON QUEST-ダイの大冒険- 死亡】
【バトルロワイアル 開始】

【主催者 デボネア@魔法騎士レイアース】