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朝焼けに間に合わない」(2011/12/18 (日) 01:31:57) の最新版変更点

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**朝焼けに間に合わない◆k7QIZZkXNs  月が沈み、太陽が昇る。夜闇は朝の光に打ち払われ、マスク越しの視界を眩しく染めていく。  ダース・ベイダーはその光を全身に浴び、手にする宝刀・獅子王を鞘へと納めた。  この地へ降り立ち指針を定めて以降ダース・ベイダーはすぐには動かず、まず自身を把握する事に努めた。  最期の瞬間を覚えている。  魔星デス・スターで。帝国の将、シスの暗黒卿として。実の息子ルーク・スカイウォーカーとの、幾度めかの、そして最後の戦い。  ルークが放った叫びは今も耳に、魂に焼き付いている。  暗黒面に堕ちたダース・ベイダーを光の下へ呼び戻した、誇るべき息子の切なる声を。  そして、ルークを排除せんとする銀河帝国皇帝ダース・シディアス――暗黒の師にして全ての元凶を、湧き上がる怒りのままに討ち果たした。  ルークを守れはしたものの、代償は己の命。ダース・ベイダーもまた、命尽きる事となった。  しかし――後悔はなかった。  己を堕落させた禍根であり、銀河を蝕む悪意を滅ぼせた、それ以上に。  自らが傷つけ、苦難の道を歩ませた息子を、何一つ父親らしい事をしてやれなかった息子を、この手で守る事ができたのだから。  強く正しく成長した息子の姿を見て、息子の手の中で、息子に看取られ、穏やかに瞳を閉じた。  銀河帝国は遠からず滅ぶだろう。最後のジェダイ騎士ルーク、惑星オルデランの女王にして実の娘レイア、そして彼らの仲間たちによって。  憂いはない。これ以上何かを望む事もない。ただ一つとして悔いはない――が、ダース・ベイダーに静かな眠りは訪れなかった。  気がつけば。そう、気がつけばダース・ベイダーは生きてまたここに在った。  肉体の傷は全て消え去ていた。ルークによって斬り落とされた右手や、皇帝の放ったフォースの電撃により破損していたはずの生命維持装置すら一切の不備なく修理されて。  一度修羅の道を歩んだ者はその業から逃れる事は出来ないと言う事か。  自らが再びの生を受けた理由。傷を癒し戦う力を取り戻させた理由。数十名の剣士たちを殺し合わせる理由。  気にならないと言えば嘘になる。だが、考えても現状で答えの出る問題ではない。  何者が修理したかはわからないが、生命維持装置の調子は良好だ。  義手・義足は共に生前と同じ強度を持ち、唯一残る生身の右手もまた生前と同じ感触を伝えている。  ルークに斬り落とされた右手。思えばこの右手はある意味では息子との繋がりと言えるかもしれない。  強く成長した息子の一撃は、今思えば痛みだけでなく誇らしさをも思い出せるものだった。  なぜ左手や両足は義肢のままで右手だけを再生したのかはわからない。だがその事についてだけはロワと名乗る女に感謝してもいた。  しかし許すと言う事ではない。彼奴を斬る事によって礼とする。正しきジェダイとして、悪を討ち正義を為す。  生きて帰る気など元よりない。ルークやレイアが生きていくこれからの世界に、もはやダース・ベイダーは必要ないのだ。  故に今――ただ一振りの刃として、歴史に名を残す事なきただのジェダイとして。  ダース・ベイダーはあらゆる悪を断つ剣となる。 『――往くか』  敵を、あるいは友となる者を求め歩み始めたダース・ベイダーの前にほどなくして現れたのは、一人の少女だった。  若い。彼の子供達より五つ六つは下だろうか。肩までもない黒い短髪、およそ戦闘に適さないであろう白く細い脚を剥き出しにした衣服。  一見無害な非戦闘員とも思えるが、手にする無骨な刀がそうではないと告げている。  ダースベイダーは少女と視線を合わせる。少女の内に滾る殺意を感じ取り、思わずダース・ベイダーの手は外套の下の刀へと伸びた。 (……いや、まだだ)  しかし、抜刀はしない。意識して強張る指を柄から引き剥がし、大きく五指を広げて少女へと翳す。  待て、という意識表明。 『わしは、殺し合うつもりはない。剣を納めよ』  ジェダイの騎士が為すべきは何か。  それは戦う術なき弱き者を守り、フォースの暗黒面に堕ちた者を倒す事。  ならば誰と相対したとて、ダース・ベイダーが先に剣を抜いてはいけない。  その者が発するフォースを感じ、理解し、もはや救えぬとわかった時こそ、剣を振るうべきなのだから。 「……っ。また、そうやって……!」  マスク越しの、機械の音声を不思議に思った風もなく。あるいはそれどころではないか。  ダース・ベイダーの言葉に、何か思い出すものでもあったか、少女は痛ましく顔を歪めると一気に刀を抜き払った。  視線を合わせた時、殺意の中に僅か感じた、迷い。  それは間違いではないはずだと、ダース・ベイダーはまだ与えられた刀を抜かない。  迷えるのなら、まだ道を選んでいないのなら。今は暗黒面に身をやつしたとて、正しきフォースの元へと引き戻す事はできるはず。  かつてルークが己にそうしてくれたように。 「刀を抜いて……本気で戦ってください! でないと、私は……!」  天秤は揺れている。戦う決意はしても、覚悟がついてきていない。他に何か、人を殺すに足る理由を求めている。ダース・ベイダーはそう見て取った。  たとえば、命令されたから。先に相手に襲われたから。身を守るために仕方なく。大事なものを取り返すため――など。  迷いを払拭するだけの強い理由。あるいは忘却するほどの。  もしダース・ベイダーが先に刀を抜いていれば、少女はダース・ベイダーを危険な人物と見做し自己の安全のために迷いを忘れられたかも知れない。  しかし、そうではない――だから、本気で戦えと懇願するのだろう。殺していいのだと、殺すべきなのだと、自分に言い聞かせるために。 『お前がどうして戦いたいのかは知らぬ。だが……今にも泣きそうな顔で剣を振るう者を斬る刃など、わしは持たぬ』 「う、うぅ……だったら!」  少女を刺激しないよう静かに諭す。が、一向に剣を抜かないダース・ベイダーに業を煮やしたか、少女は野太刀を鞘に納めたまま突進してくる。  思いの外、速い。素人ではない、訓練された戦士の動きだ。  予想される少女の能力を上方修正しつつ、素手では防げないと感じたダース・ベイダーは刀の鞘を掴み、腰の剣帯から取り外した。  少女は鞘に納めたままの野太刀を抜刀した。鞘走りの勢いを速度へと転化し斬りつけてくる。  外套を翻し刀を掲げる。甲高い金属音。少女の剣戟は、ダース・ベイダーが掲げた宝刀・獅子王の柄と鍔の間にしっかりと受け止められた。  手にする剣――刀、は使い慣れたジェダイの武器ライトセーバーとは違う実体剣である。必然、光熱線の束であるライトセーバーとは違い、質量があり、重さがある。  かつてジェダイ候補生、パダワンであった時代に実剣を扱った事はあるものの、近年久しく手にしてはおらず。  勘が鈍ったのではないかと危惧したダース・ベイダーは、殺し合いが開始してすぐの一時を修練と肉体の把握に費やしていた。  その甲斐あってか、イメージ通りに身体は動く。刀の重さに振り回される事もない。 「そ、その刀は……黄泉の!」  だが、その人間として当然の自衛行為が、迷う少女にとってこれ以上ない起爆剤でもあったらしい。  ダース・ベイダーの刀を目にした途端、揺れていた少女の瞳は据わってしまった。彼に支給された剣はどうやらこの少女に縁深きものだったらしい。 「返して……!」  迷う心への一押し。図らずも大事なものを取り返すという理由を放り投げてしまった。  銀光が幾重にも閃き、ダース・ベイダーの身を斬り刻もうと襲い来る。動揺を脇に置き、嵐のような斬撃を一つ一つ受け止めていく。  刃を抜かず、鞘に納めたままでの防御。鋼鉄の鞘は十分な硬度は備えているが、速度の乗った刃を受けては幾許も持ちはしない。  少女のそれは素人ではない、剣を心得ている者の動きだ。斬撃は重く、受けるダース・ベイダーの機械の手にも衝撃は蓄積する。  いかに熟練のジェダイとて防戦一方ではいずれ打ち破られるだろう。  ダース・ベイダーは片手で野太刀を受け止めたままもう片方の手を掲げた。空手の五指が虚空を掴む。 「あうっ!?」  少女の顔が強張る。フォースが生む力の一つ、テレキネシス。手を触れずに物体を動かす力。  直接相手に叩きつけて吹き飛ばす事もできるが、ここでダース・ベイダーが使ったのはフォース・グリップと呼ばれる技だ。  手を触れずして物体を締め上げる。シスの技ゆえあまり使いたいとは思わないが、敵を殺さず無力化するにはうってつけの技である。  少女の刀を握る腕、その手首をめがけフォースを集中させる。全力で使えば人の首を折る事すら容易い。  もちろんダース・ベイダーにそこまでする気はないが、刀は取り上げねば話もできない。フォース・グリップを強め、少女の手首にダメージを与えようとした。 「こ、の!」  握力を失うくらいの力で締め上げたつもりだったが、予想に反し少女は刀を取り落とさない。  少女は刀から添えていた片手を外し、自らの太腿へと滑らせた。  短いスカートが撥ね上がり惜しげもなく下着を晒した次の瞬間、少女の手には黒塗りの鋭い短剣が握られている。  短剣の切っ先がダース・ベイダーへと突き込まれ、瞬時に顔を反らし脅威から逃れる。間に合わず、仮面の上を鋭刃が滑り抜けていく。フォースグリップが霧散した。  流れる視界の中、少女が短刀を放り投げて野太刀を鞘に納める姿が目に映った。先ほどの、抜刀の勢いを利用した斬撃が来れば崩れた体勢で受け止めるのは難しい。  ならばとダース・ベイダーは宝刀を旋回させ、次いでフォースを凝縮させて自らの刀へと叩きつける。  剣戟によってひび割れていた鞘は中途で砕け、鉄の破片が散弾銃のように射出。とても剣で撃ち落とせる量ではない。  虚を突かれた少女は慌てて側転し難を逃れるものの、その一瞬の隙こそがダース・ベイダーが欲したものだ。  瞬間に間合いを詰めたダース・ベイダーが打ち込んだ拳が少女の腹を抉るが、しかし少女もさるもの、咄嗟に後方へ跳ばれ衝撃を逃がしていた。  ダース・ベイダーは追わず、少女が取り落とした野太刀を自らの後方へと蹴り飛ばす。 『ここまでだ』 「っあ……!」 『お前ではわしに勝てぬ事は、わかっただろう。勝てぬ相手に挑むのは愚か者のする事だ』 「それ、でも……私は! 返して……それは、獅子王は黄泉のものだから!」 『ヨミ……お前の大切な人か。そのヨミとやらがお前をそこまで駆り立てるのか』 「そう、私は、黄泉の、お姉ちゃんのため……だから、私は!」  揺れる瞳が定まらないまま、少女が短刀を拾い向かってくる。痛撃を浴びせられ武器を奪われた現状、戦力差は絶望的だと分かっているはずなのに。  眼光はいよいよ鋭さを増している。かつて暗黒卿時代に何度も見た、敵わないと知っていてなお特攻してくる者の目だ。  打ちかかってくる彼女の動きは先ほどまでの鋭さはない。ダース・ベイダーの刀に対して短刀では圧倒的にリーチが足りない。  それでもダース・ベイダーを切り裂こうと無理に踏み込んでくるのだから、迎撃も容易だ。  野太刀で短刀を弾き、つんのめった少女の足をテレキネシスで払う。さほど強い力は必要なかった。  ダース・ベイダーは、倒れた少女の首へ宝刀を突きつける。 『ここまでだ。次は腕を斬り飛ばす』  実際その気はなかったが、あえて冷徹に告げる。これでどうやっても勝てないとわかってくれればいいのだが。  自分の声が人間味を感じさせない機械の音声である事も、この時ばかりは役立ってくれるだろうとダース・ベイダーは小さく苦笑した。  冷たい刃の感触が一気に死の恐怖を思い出させたか、ひっとしゃくりあげて少女は止まる。  いくら腕が立つと言っても、やはりまだ幼い少女だ。恐怖を捻じ伏せ闘志へと変える事ができない。  さしたる被害もなく、制圧に成功。結果は上々なのだが、ダース・ベイダーは仮面の下で苦い息を吐く。  少女が生涯一番の強敵だったという訳ではない。幼い者を斬った事がない訳でもない。  それでもやはり、再びジェダイとして生きる事を決意した今となっては、子供らより幼い者を斬る事には抵抗があった。  安堵した一瞬、ダース・ベイダーはふとその場に新たなフォースの流れを感じ取る。  首を巡らせるより先に、フォースのもたらす直感に従って全力で跳躍した。  一瞬前まで彼がいた位置を、頭上から落下してきた“何か”が押し潰す。  砂塵が巻き起こる。ダース・ベイダーは回避の動きを止めぬまま、その着弾点を凝視した。  何か、ではない。それは人間だった。鎧兜を纏った大柄なシルエットが見える。  そいつはのそりと立ち上がり、こちらへと向かって――来ず、少女を抱えて飛び退る。 「いいぞ、やっちまえ!」  鎧武者は大声を張り上げる。当然ダース・ベイダーへ向けた物ではない。事態の推移についてきておらずきょとんとしている少女でもないだろう。  だとするなら残る可能性は一つ。鎧武者の仲間だ。すなわち、ダース・ベイダーを敵と看做す者。  今度は直感ではなく予測だった。再度フォースにて身を飛ばしたダース・ベイダーは、すんでのところで地面から突き出た巨大な光刃をかわす。  実剣ではない――おそらくはフォースで構成された刃。それが証拠に刃は瞬く間に解け消え、何の名残も残さない。  空中で四肢を振り、姿勢を制御。着地しつつ宝刀を構える。  鎧武者は詰めて来ない。ほどなくその傍らに、第四の人物、金髪の女騎士が現れた。  抜き身の刀を構えてこちらを睨む眼光は、当然と言えば当然だが敵意に満ちていた。そうでなければ奇襲など仕掛けては来ないだろう。 「こんなに早くあの女の甘言に乗った愚か者に遭遇するとはな。だが、間に合った……ここからは我らが相手をする!」 「え、我らって。俺も勘定に入ってるの?」 「当たり前だ! さっさと剣を抜け!」 「えー、さっきと話が違う……俺はこの娘を助けるだけでいいって言ったじゃないか」 「あれは首尾よくこいつを仕留められたらの話だ。仕損じた以上戦うしかないだろう」 「そんな事言っても、こいつすげー強そうじゃないか。完璧に不意を突いたのに倒せないって、普通ないだろ。ないって」  どうやら少女へ刀を突き付けていたところを目撃されていたらしく、完全に“殺す側”の人間だと思われている。  片方は年端もいかない少女、もう片方は漆黒の仮面と外套に身を包んだ男。どちらが怪しいと言って、間違いなくそれは自分なのだろうとダース・ベイダーは眉を顰めた。  事実は違うと抗弁するか? だが状況的に見てダース・ベイダーを信じてくれる要素はないように思えた。  むしろ往生際が悪いとさらに激昂するのではなかろうか。鎧武者を激しく叱咤する女騎士はそういうタイプに思える。  女騎士とは対照的に鎧武者はあまり好戦的ではないように見える。決してダース・ベイダーから目を離さないでいる様から見て警戒されているのは同じ。  女騎士が構える刀の切っ先を見やり、どうしたものかと仮面の裏で小さく唸る。  斬る、のは論外だ。女騎士たちがダース・ベイダーに攻撃してきた理由は、間違いなく少女を助けるためであろう。  だから善良という訳でもないが、少なくとも悪ではない。ジェダイが斬る対象ではないのだ。今のところ、だが。  ここは通じないとは分かっていても、言葉を尽くす場面だろう。 「つべこべ言うな! どの道、ここで戦わねば死ぬぞ。あの身のこなしを見ただろう」 「そりゃまあ……でもなぁ……」 『待て、わしは戦う気はない』 「ほら、向こうさんもそう言ってることだし。な? ……ん?」 「何?」 『戦う気はない、と言った。武器を納めろ』  無理だろう、と思いつつ。 『わしの名はダース・ベイダー。よければ名を聞かせてくれんか』 「あ、俺はギルガメッシュだ。こいつはアグリアス。よろしくな」 「お前は敵に何を言っている!」 「いや、だって自己紹介は人間関係の基本だし。戦う気はないって言ってるんだしさ」 「敵の言う事を簡単に信用するな! この少女が殺されかけていたのを見ただろう!」 「それは、まあ……」  やはり女騎士――アグリアスは聞く耳を持たない。鎧武者――ギルガメッシュの方はまだ話せそうだが、どうにも押しが弱い。  この二人組で主導権を握っているのはアグリアスなのだろう。 『それは誤解だ。わしにはその少女を害するつもりはなかった』 「では何故その刀を突き付けていた? 丸腰の少女相手に!」  言われ、少女を見る。野太刀も短刀も、ダース・ベイダーがすでに取り上げていた。  無力化させたのが裏目に出た。思わず舌打ちする。  少女と目が合う。こうなれば少女自身に弁解させるしかないが、 「わ、私。急に、その人に襲われて! 私の時も、最初は戦う気はないって言って、突然……!」 「何だと……!」  たった今。それも不可能になった。  いよいよ義憤に燃えたアグリアスの眼を見て、これはもう説得は無理だなと嘆息した。  少女にしてやられたと言うべきか。気がつけばダース・ベイダーが狩られる側へと追いやられていた。  もはや戦う以外に道はない。 「これで疑う余地はないな、ギルガメッシュ!」 「お、おう……ああ、くそっ! わかったよ、やってやらあ!」  ギルガメッシュが抜剣した。ダース・ベイダーの胴回りを軽く上回るほどの大剣だ。  そんな剣を、あの体格のいい男が扱うのだ。ジェダイはフォースで身体能力を強化できるとは言え、まともに受けては刀が折れる。  だが、脅威とは言えそれはまだ対処しやすいと言える。斬撃の軌跡を目で追う事は可能なのだから。  問題はアグリアスの方だ。先程の攻撃――地面から生えてきたフォースの刃。あれがまずい。  数多くのジェダイと剣を合わせてきたダース・ベイダーですら、あのようなフォースの使い方は目にした事がない。  そしておそらく、手札があの突き立つ刃だけという事はないだろう。アグリアスに切り札を失った狼狽は見て取れないからだ。  未知の攻撃をどれだけ凌げるか。一度でも直撃すればそこからギルガメッシュに押し込まれるのは目に見えている。 「私も戦います!」  少女が弾き飛ばされた短刀を拾う。野太刀は今もダース・ベイダーの後方にあるため、脅威は小さい。  が、戦闘が再開すれば。少女はおそらくダース・ベイダーの相手をアグリアスとギルガメッシュに押し付け、野太刀を回収する事だろう。  アグリアスのフォース、ギルガメッシュの大剣、少女の素早い斬撃。どれ一つとっても片手間にあしらえるものではない。  その上、誰も殺さずこの状況を切り抜けようと言うのだから、己の無茶に呆れ果てもする。 (それでも……わしは退かぬ。この程度の苦境を跳ね除けずして、ジェダイを名乗る事などできん)  胸中で呟き、宝刀を強く握り直す。少女の視線が吸い寄せられるのを感じる。  少女もダース・ベイダーからこの刀を奪うまで、どうあっても退く気はないだろう。  全身を巡るフォースの流れを意識する。不備なし、万全。誰が相手であっても後れを取りはしない――そう信じる。  アグリアスが刀を振り上げる。その切っ先にフォースが漲るのを感じ、ダース・ベイダーもまた疾走を開始するべく両脚へと力を込めて、 「止めろォォォ――――ッ!」  横っ面を叩かれたような張りのある強烈な声に押され、行動を中断せざるを得なかった。  誰もが――ダース・ベイダーやアグリアス、少女でさえもが敵手から視線を外してその声の響いた方向へ眼をやる。  そこには黒髪を逆立てた青年がいた。全身に朱色の線を引いた傷だらけの姿で、しかし痛みに屈する事なく力強く歩いてくる。   「あ……!?」 「追いついた……そして、間に合ったぞ、土宮くん!」  青年は、ダース・ベイダーでもアグリアスらもでなくただ一人、少女へ向けて言葉を放つ。  土宮と呼ばれた少女はびくりと身体を震わせるが、構わず大神は進む。  ダース・ベイダーの前を横切り、何か言わんとしたアグリアスを眼光で怯ませ、土宮の目の前に。  青年はすう、と大きく息を吸い込み―― 「今度こそ、君を止めてみせる!」  そう、高らかに宣言した。 「いや、誰だよお前。いきなり出てきたのはいいけど、せめて自己紹介くらいしろよな」 「え? あ、これは申し訳ない。俺……いえ、自分は帝国海軍所属、大神一郎少尉です」  そして即ギルガメッシュに突っ込まれ、慌てて自己紹介をした。  ダース・ベイダーは嘆息し――だが、これで勝てる“芽”が出たと、一人戦意を新たにするのだった。 【C-6 草原/一日目/黎明】 【ダース・ベイダー@スターウォーズ】 【状態】健康 【装備】宝刀・獅子王@喰霊-零- 【道具】基本支給品一式、ランダムアイテム×1 【思考】  基本:弱きを守り、暗黒面に堕ちた(殺し合いに乗った)者を倒す。  1:ジェダイ騎士として戦う。 【備考】  ※参戦時期は第二デス・スターでルークと戦い人の心を取り戻した後。  ※宝刀・獅子王で鵺の霊獣「乱紅蓮」が呼び出せるかは不明(後の書き手氏にお任せします)。  ※夕凪@魔法先生ネギま!が近くに落ちています。 【大神一郎@サクラ大戦】 【状態】疲労(小)、胸に打撲、裂傷多数 【装備】霊剣荒鷹@サクラ大戦 【道具】基本支給品、ランダムアイテム(個数、内容ともに不明) 【思考】基本:この戦いを止める。  1:殺し合いを止めさせるために動く。  2:神楽を止める。 【土宮神楽@喰霊-零-】 【状態】疲労(中)、腹部打撲 【装備】アサシンダガー@ファイナルファンタジータクティクス 【道具】基本支給品 【思考】基本:黄泉の為に優勝する  1:誰かを殺して覚悟を決めたい 【アグリアス・オークス@ファイナルファンタジータクティクス】 【状態】健康 【装備】九字兼定@空の境界 【道具】基本支給品、ランダムアイテム(個数、詳細不明) 【思考】基本:ロワを打倒して元の世界に帰還する。  1:シド、クラウドと合流する。  2:遺跡の剣が気になる。 【ギルガメッシュ@ファイナルファンタジー5】 【状態】健康 【装備】アルテマウェポン@ファイナルファンタジー7 【道具】基本支給品、ランダムアイテム(個数、詳細不明) 【思考】基本:剣はほしいが殺し合いはあまりしたくない。  1:とりあえずアグリアスに同行する。  2:バッツに会ったらどうしよう。  3:遺跡にあった剣がほしい。 【備考】  ※次元の狭間を彷徨っているときからの参加です。  ※外見はギルガメッシュチェンジ前のもの。 ※C-7の遺跡には12本の剣が封印されており、放送ごとに四本の封印が解かれます。 ※一人が持ち出せる剣は一振りのみです。 ※剣を抜くには何かしらの条件があるかもしれません。 ---- |BACK||NEXT| |045:[[仲間]]|投下順|047:[[]]| |045:[[仲間]]|時系列順|047:[[]]| |BACK|登場キャラ|NEXT| |020:[[闇に輝く光]]|ダースベイダー|000:[[]]| |021:[[封印の剣]]|アグリアス|000:[[]]| |021:[[封印の剣]]|ギルガメッシュ|000:[[]]| |023:[[願果(ねがいのはて)]]|土宮神楽|000:[[]]| |023:[[願果(ねがいのはて)]]|大神一郎|000:[[]]| ----

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