855 カンボジア王国


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カンボジア王国

Kingdom of Cambodia


1 基本情報


1.1 地理・経済情勢

  • 人口:13.4百万人(2008年政府統計)
  • 首都:プノンペン(人口133万人(2009))
  • GDP:8.3百万ドル
一人あたりGDP 578米ドル(2007)
経済成長率 6.2%(1990~2007)
■地政学的にタイとベトナムという二つの強国の間にあり、その影響を受けた政党同士の政争がすべてに影響を与えてきた。現在の政権はベトナムと近く、タイとは緊張関係にある。
■カンボジアは東南アジアの立憲君主国家で、国民の90%はクメール人、宗教は上座仏教が主である。文化的には封建的な風土が残っており人治主義で、公的機関の人事も閨閥的で決まることは珍しくなく、汚職リスクも比較的高い。 ※1)

1.2 年表

年 代 出 来 事 備 考
1950年台    
 カンボジア国は過去にフランスの植民地であり統治時の影響が色濃く残っている。インドシナ戦争を経てクメール・ルージュによる破壊の時代(1975~1979年)を経験、文明的な施設はすべてが破壊の対象となった。都市給水も、地上施設はほぼすべてこの時代に破壊されている。1979年に内戦は一応は集結したがクメール・ルージュが完全に勢力を失うまでには少し時間を要し、ほぼ安定したのは1990年台後半であった。

フランスの技術で建設された場合、高速凝集沈殿池が採用されている例が多い。Photo:BON狸

 内戦終結後は世界各国の援助が大々的に行われており、支援を受けて公営水道の拡張が勧められている。また、近年の経済成長や世銀の施策もあり、比較的小規模で公営水道がない地域を中心に、民営水道の整備も盛んである。

2 水資源と水利用


2.1 水資源

都市|河川水、湖沼水
村落|掘抜井戸(Tube Well)、浅井戸(Dug Well)
 都市水道では河川水、湖沼水を取水し、凝集沈殿処理を行っている例が多い。農村人口の6 割は井戸に依存しているが、そのほかの水源として、河川水や湖沼水等を利用している。
季節要因
取水障害|水質障害|需要要因
乾季|12月~5月|表流水水位低下、原水水質悪化、最大需要期の供給不足
雨季|6月~11月|原水濁度の上昇、需要家が雨水を使用することによる需要の減少
 顕著な乾季と雨季があり、時期によって表流水水源の水量や水質が変化する。雨季はきわめて高い濁度による沈殿池からの濁度成分の流出が問題となる。乾季においては、水源の水位が下がって取水障害が発生することと、暑いことで水需要が増加することによる処理施設能力の不足が発生する。

2.2 水利用

(農業用・工業用・家庭用の配分、廃水の再利用など、水の使われ方の特徴、等)

2.3 家庭用水需要

(水道の一人一日使用水量やその範囲、都市村落給水の間での違い、等)

3 水に関する住民意識


3.1 徴収率

 給水メーターは基本的に相当小規模な事業まで整備されており、水道料金の徴収率は極めて高い。プノンペンの水道事業が率先して体制を構築し、全国の規範となっている。
 水道料金の徴収率がきわめて高いのはプノンペンで水道の再建を行った際、「フンセン首相も水道料金を支払っている」というキャンペーンを行った効果といわれている。王を頂点として目上の者を敬い、従う風土があるのにマッチした施策である。ただし、目上の人に請求できないために、公的期間からの料金徴収が遅れ気味になる。

3.2 料金体系

 水道料金の水準は1,500(550~3,000)Riel/m3。現行の水道料金は、民間水道より公営水道の方が廉価であるが、公営水道では、水道料金は運転経費(OPEX)を賄うだけの設定になっており、施設整備は無償資金協力などで支えられているため。民間水道では、設備投資(CAPEX)の回収も含めた設定になっている。

3.3 水に対する不満・クレーム

(平均的な水ニーズ、特徴的な水に関する意識、等)

4 水関連の政策・法規制・基準


4.1 政策と計画(policy and plan)

○国家レベルの水戦略・計画

  • Rectangular Strategy(四辺形戦略):国家の開発政策の核となる戦略
  • National Strategic Development Plan (NSDP) 2006‐2010(国家戦略開発計画):四辺形戦略の具体的実施計画
この2つでは貧困削減の鍵となる施策として安全な飲料水、衛生設備へのアクセスの改善を取り上げている。*1)
  • The new National Policy on Water Supply and Sanitation (NPWSS):2004 年施行。水供給および衛生に関する基本方針。*1)

○国家開発政策***1)

 第1次国家社会経済開発計画(First Socioeconomic Development Plan: SEDP I, 1996-2000年)は初めての国家開発計画であり、最も重要な課題として貧困削減を挙げている。貧困削減の手段のひとつとして、貧困層の90%が居住する農村部のインフラ整備、とりわけ給水の拡大を重要としている。地方における水入手可能人口を65%とする目標を掲げていたが、実績は26%から29%への上昇にとどまった。第二次国家社会経済開発計画(SEDPII、2001-2005年)では、地方人口の40%、都市人口の87%に安全な水供給を実現するとしている。また、長期的な国家目標として、2015年までに水道水の供給人口を60%にするとしている。

○National Policy and Strategy of Water Sector ***2)

 MDG達成を目的として、2003年2月に策定。都市水道に関しては、以下の6項目の重要政策を掲げている。
  1. 水供給のあり方(個々の状況に応じた水供給形態)
  2. 民間セクター参入(都市水道の質の改善とサービスエリアの拡大を目的としてすべてのサービス業務について契約に基づく民間セクターの参入の推進)
  3. 水道料金(水道事業者の持続可能な財務運営に必要な適切な水道料金体系の導入と料金徴収の効率化)
  4. 貧困層の保護と補助(貧困層の安全な水へのアクセスのための水道料金補助制度)
  5. 公共ユーティリティーの自立(公共事業の財政的自立と地方分権化メカニズムの構築)
  6. 上水道監督機関(全国の公共ユーティリティーと民間セクターの監督ならびに公正な競争メカニズムの構築)

4.2 法規制

水供給及び衛生法(Water Supply and Sanitation Law)***2)

 国民の生活水準の向上を目指し、水衛生セクターに関する中央政府の監督機能の強化と各州による水衛生事業の改善を目的として策定に取り組んだが、策定を支援したWBの要求に対応できず、策定作業中に不正があったとして作業は停止している。同法では、同法に基づいて設立されるWSAC(Water and Sanitation Authority of Cambodia)が全国の上水道事業の監督機関となり、官民を問わず上水道事業のライセンスを発行することになる。MIMEはその上位機関に位置づけられる予定であった模様。
 都市水道セクターでは水衛生法の制定によって自由競争原理による都市水道の質の向上とサービスの拡大を目指しているが、制定に時間がかかる見通し。制定されても同法が現実的に効果的に運用されるためには、同国の民間セクターの育成、WSACの能力強化等の施策が不可欠。

国家飲料水質基準(案)(Draft Proposed Cambodian National Drinking Water Quality Standard Ver.5)***2)

 水道水の水質に監視、2003年12月に国家飲料水質基準(案)が策定された。WHOの飲料水質ガイドライン(2003年版)を基に策定されたもので、農薬(有機塩)に関するパラメータの基準値も規定されている。ただし、4年ごとに見直すスケジュールに間に合わず、2010年現在は失効中。

4.3 水行政機関

  • 都市給水事業:MIME-DPWS(鉱工業エネルギー省 飲料水供給局)
  • 村落給水事業:MRD(村落開発省)
  • 水資源開発および管理:MWRM(Ministry of Water Resource and Meteorology(水資源気象省)*1)
 都市部(Urban Area)を担当するMIMEとその地方支部であるDEME、村落給水を担当するMRDとその地方支部であるPDRDによって分割管理されている。水道としての管理及びライセンスはMIMEの担当であり、公営、民営とも都市部への給水はMIMEが管理している。これに対して、MRDは村落給水施設、主として井戸によるものの整備普及を担当しているが、中には簡易な水道システム(急速ろ過まで含むものもある)もある。
 公営水道の運営はMIMEの地方組織であるDIMEに部局が設置されていて、ここれ行うのが一般的だが、大規模な水道事業体は公社化されて経営的に独立する。現在、プノンペン及びシェムリアップが公社化を完了しており、シアヌークビルがこれに続きつつある。プノンペン水道公社(PPWSA)は自律的発展を遂げる段階まできており、カンボジアにとってきわめてよい目標を具現化し、また、地方の都市水道の技術指導を行って成果をあげている。
 民営水道の監督もMIMEの管轄である。事業権の審査、入札、ライセンスの付与はMIMEが直接行う。

5 上下水道事業の実施状況


5.1 上下水道の普及状況

 都市部に相当するのは通常州都周辺地域のみのわずかなエリアであるため、水道普及率でみると非常に低い。安全な飲料水を確保しているのは全世帯の31%程度。33%は不衛生な井戸水、31%は池や川の水を使用。5%は雨水を利用。首都プノンペンでは53%が水道や安全な井戸水を使える。

村落給水井戸。これは空気酸化による除鉄設備を持つタイプ。Photo:BON狸

5.2 その他パフォーマンス

(漏水率、24時間給水の実現度、その他水供給事業の水準を定量的に把握できる数字)

6 上下水道への援助・民営化


 現在さまざまな国がカンボジアに対してさまざまな援助を行っている。水分野では、世界銀行、アジア開発銀行の他JICAの援助も存在感がある。都市給水、村落給水などのウェイト付けは主体によって異なる。また、様々なNGOが村落給水への援助を行っている。ただし、各種主体の連携はよくない。

6.1 国内援助

(中央政府から地方事業への援助等)

6.2 その他の援助

日本からの援助*1)

有償 約160億円
無償 約1,156億円
技術協力約433億円(JICA)
 わが国の対カンボジア経済協力は、持続的な経済成長と貧困削減を目的に支援していくことを基本方針としている。水道事業については、「プノンペン市周辺村落給水計画(無償)」、「シムリアップ上水道整備計画(無償)」、「コンポンチャム州村落飲料水供給計画(無償)」など継続的に実施されている。また、技術協力プロジェクトとしては「水道事業人材育成プロジェクト」を行っている。 

世界各国の援助

単位:百万USD|1|2|3|4|5
上位5カ国|日 114.7|米 61.8|仏 38.2|豪 31.8|独 28.2

その他 DAC内主要援助国(2006年支援表明額)*3)

日本(114.7)、米(61.8)、仏(38.2)、豪(31.8)、独(28.2) 単位:百万ドル

NSDP(National Strategic Development Plan) 2007-2009 *1)

上下水道施設への支出は114.4百万US$、USDP予算の5.2%に相当

ADBの援助で建設された浄水場。う流式を多用している。Photo:BON狸

6.3 民営化

  • 公営水道:州都など、主要な都市の水道は公営が多い。
  • 民営水道:小都市の水道に多い。規模は大規模から小規模まで様々。
 カンボジアにおける組織的な民営水道の推進は2003年に世銀のプロジェクトで始まった。認可ベースでは4州都87事業(増加中)があり、未認可の小規模な民営水道は300事業もあると言われる。これら民営水道には世界銀行とフランス開発庁の支援による事業や現地企業が独自に始めた事業など様々である。但し、水道事業へ出資を行っている企業は国内企業が中心であり、外国資本の企業が参画したのは多くないが、徐々に増えている。(中国資本100%が1件、シンガポールと地元のJVが1件、フランスと地元のJVなど)
 公営水道で課題を質問をすれば、第一に資金、その他人材、無収水などが課題であると答える。自らリスクをとるような意識も低く、ある程度以上の大規模な事業の場合、基本的には援助を待つ(MIMEの資金提供、通常国際支援の配分)傾向がある。民営水道の場合は増収につながる拡張にはきわめて積極的であるが、一定以上の規模に達して経営が安定するまでは、供給水の品質管理がおろそかになっているケースが多い。
 利用者の満足度は公営より民営の方が良好であるとの文献あり。*1)

民営の浄水場。アメリカのNGOが技術協力していて独特な処理形態である。Photo:BON狸


7 水技術


○浄水技術

  • 濁質除去:ほぼすべてが表流水使用の凝集沈殿。
  • 消毒:大規模事業では塩素ガス、小規模事業ではサラシ粉
  • 特殊処理等:村落給水の一部で除鉄処理。ヒ素が出る場合は井戸の飲用禁止が基本。
 都市給水では表流水を処理する例が多く、ほとんどが急速ろ過である。凝集剤として使用しているのは硫酸バンドである。フランスの創設時の施設が残っている場合は高速凝集・上向流沈殿処理。990年代以降にADBの援助で更新された施設は機械撹拌、水平う流フロッキュレータ、横流式沈殿池を使用している。最新の浄水場の一部は機械式のフロッキュレータを使用しているものもある。このほか、民営水道の多くは水流による急速撹拌とう流式フロッキュレータ、浅いろ過池の組み合わせで処理を行っているが、これは米国のNGOの技術援助によるもの。
 ADBの援助で建設された浄水場では、バンドを水溶して投入量を調整し、消石灰によるアルカリ度補給と併用しておおよそ適切な凝集沈殿をを行っているが、地方の小規模な民営水道など技術レベルの低い事業では、塊状態の硫酸バンドに水をかけて使用したり、そのまま池内に投入したりしている例も少なくない。
 地下水や地下水と交換する水源においてはヒ素や鉄分による地下水汚染は普遍的に見られる。鉄分については伝統的な除去法としてかめに貯留して空気酸化を待つ方法がとられてきた。ADB等の援助による井戸の場合は木炭や砂等を利用した空気接触水槽による鉄除去が一般的。地下水のヒ素汚染については広く認知されており、PDRDが検査を行って安全性を確認している。ヒ素が高い濃度で検出された場合は飲用・炊事利用の禁止勧告がなされるが、全国統一のマニュアルなどはなく、州ごとの判断で規制が行われる。
 水質の管理は公営、民営の別なく、水質試験を全国一斉調査や事業開始時などに計測することになっているほか、三ヶ月に1回の検査結果報告が義務付けられているが、必ずしもこの頻度で実施されていない。処理の状況とデータが一致しないことは珍しくない。

○配水技術

特徴的な配水方式:ほぼすべて高架水槽による自然流下。
使用管路:援助が入っている事業においてはDCIP、PEPを使用(おおよそΦ250で区分)
 公営水道事業の無収水量(NRW)率は15%~52%だが、これは破壊の時代からの再建の進捗度合いに主として依存している模様で、要するに、配水管網の再建に補助を得た事業の漏水率が低くなっているということらしい。
 不安定な電力事情を反映してか、ほぼすべて高架水槽による方式(最初に高架水槽を設置している例が多い)。援助で建設された浄水場には自家発電機が設置されているのが普通。
 管路は、高度な水道事業においてはDCIP、PEPを使用(おおよそΦ250で区分)しているが、1990年代に整備された事業ではPVC管、しかも肉厚の薄い水道用に適しないものを使用しており、極めて高い漏水率の原因になっている。PEPの接合は熱融着で、スリーブの類は使用していない事業もある。規格は基本的にはISO規格。
 近代水道の要素として「管路による給水」に注目すると、カンボジアの管路布設は世界的に見ても依然低い水準である。ただし、安全な水へのアクセスの課題は大きいものの、多くのエリアでは平坦な地形であり、管路による給水を行うだけのポンプや電力の調達がまず大きなハードルとなる。多くの村落は自給自足の生活を営んでおり、現金収入が少ない。このため、現状では、安全な水の調達しにくい村落部については手押し井戸による給水が優先されている。

出典


※1)平成20年度 水国際貢献推進調査業務報告書 (ta)
※2)政府開発援助(ODA)国別データブック2008 (ta)
※3)外務省HP 「各国・地域情勢」 (ta)
※4)DAC援助審査 日本 開発援助委員会(DAC) OECD 2003
1) HUMAN DEVELOPMENT REPORT 2009(sk)
2) PROGRESS ON DRINKING WATER AND SANITATION SPECIAL FOCUS ON SANITATION, UNICEF and World Health Organization, 2008(sk)
★は山口が現地での経験者から聞いてきた現状。
1) JICAカンボジア王国水道事業人材育成プロジェクト実施協議報告書 2003年10月
2) JICAカンボジア国プノンペン市上水道整備計画調査(フェーズ2)事前調査報告書 2004年8月


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