オーストラリア連邦
Commonwealth of Australia
1 基本情報
1.1 地理・経済情勢
- 人口:約2,207万人(2009年9月)
- 首都:キャンベラ
- GDP: 9248億 US$ (2009年)
(その他、基本情報は後日一覧表から一括で転記)
1.2 年表
年代 |
出来事 |
備考 |
1901年 |
イギリスから独立。 |
|
1972年 |
Ordダム完成 |
西オーストラリア州の大型ダム。 |
1980年代 |
白豪主義の撤廃、多文化主義へ。 |
世界中から移民の受入を開始。 |
1981年 |
ダム建設に関する住民投票が行われる。 |
反対運動が広まり、これをきっかけに水の問題が認知されるようになった。 |
1983年 |
Water2000の公刊。 |
※1 |
1987年 |
Burdekinダム完成 |
最後の大型ダムといわれている。 |
1990年代 |
Salinity Programの導入。 |
ヴィクトリア州の塩害対策。「ランドケア」という用語が一般化。 |
1990年代 |
水機関が法人化の方向に動き出す。 |
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1993年 |
COAG(※2)による「戦略的水資源政策」の骨子公表。 |
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1995年 |
NSWでMurray Irrigation Limitedが設立。 |
灌漑業者組合に公的資産が売却された、つまりは民営化が行われたことを示す。 |
1995年 |
水利用に関するCAP制度の導入。 |
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1998年 |
River Murray Waterが法人化され、MDBC(※3)から独立。 |
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1998年 |
トレンチと呼ばれる補助金制度がスタート。 |
「6 上下水道への援助・民営化」ご参照。 |
2004年 |
COAGがNational Water Initiativeを発表。 |
連邦政府の水改革の基本的文書。 |
オーストラリアの水改革(近藤学)等を元に作成。
※1 Water2000:1990年代の水需要などの変化を先取り的に明らかにし、塩害、水価格変化、監視体制、水資源開発が環境にどのような変化を与えるかなどを検討したもの。それまで、オーストラリアでは、将来の水需要を評価したり、水資源を効率的に利用するなどという考え方は無かった。
※2 COAG:Council of Australian Governmentsの略で、オーストラリア政府評議会を指す。
※3 MDBC:Murray-Darling Basin. Commissionの略で、マレー・. ダーリング川流域委員会の略。オーストラリアの水改革において主導的な水管理組織。
(当該国の歴史的経緯と水に関連する主要なイベントの発生時期を記述)
2 水資源と水利用
2.1 水資源
(水資源の豊富さ、雨期と乾期、どのような水源が使われているか、等)
オーストラリアの降水量は少なく、不安定である。年平均降水量は472mm。最北部、南西部、東武沿岸地域は、適度な降水量があるが、その他の地域では、比較的降水量が少ない。河川の流量変化が大きいことから、降水量の季節性も見て取れる。また、月単位の変動だけではなく、年単位でも降水量は大きく変動する。特に、エルニーニョ現象の影響を受けると、何年にもわたる少雨に見舞われる。
また、蒸発散量が非常に大きく、北部や内陸部は3000mm/年以上である。(日本は、597mm/年)
2.2 水利用
(農業用・工業用・家庭用の配分、廃水の再利用など、水の使われ方の特徴、等)
- 部門別水利用:生活用15%、農業用75%、産業用10%(2000年)
用途別水使用量(GL)
用途 |
1996-1997年度 |
2000-2001年度 |
2004-2005年度 |
農業 |
15,503 |
14,989 |
12,191 |
林水産業 |
19 |
44 |
51 |
鉱業 |
570 |
321 |
413 |
製造業 |
727 |
549 |
589 |
電気・ガス |
1,308 |
255 |
271 |
下排水等 |
1,707 |
2,165 |
2,083 |
その他産業 |
523 |
1,102 |
1,059 |
生活用水 |
1,829 |
2,278 |
2,108 |
総消費量 |
22,186 |
21,703 |
18,767 |
出典:ABS(2000)、ABS(2004)、ABS(2006c)
注:下排水等には、漏水による逸失を含む。
2.3 家庭用水需要
(水道の一人一日使用水量やその範囲、都市村落給水の間での違い、等)
- 一人当たり水利用量(㎥):生活用184、農業用941、産業用125(2000年)
家庭用水の使用内訳
用途 |
アウトドア |
台所 |
洗濯 |
トイレ |
風呂 |
割合(%) |
44 |
8 |
13 |
15 |
20 |
出典:オーストラリアの水資源管理に関する調査報告 水資源研究室 安田、多田
元データ:ABS
3 水に関する住民意識
3.1 徴収率
(水道料金の徴収率、あるいは水供給に対してお金を払う気持ちや文化があるかどうか、等)
3.2 料金体系
(平均的な水量あたり料金、料金の決め方、等)
2010年オーストラリア統計局(ABS)の統計数字によると、2006年に比べて、国民世帯の水使用量は減っているが、水道料金は倍近くになっている。2004年度の平均的な水道料金は1キロリットルあたり40セントだったが、2008年度には1キロリットルあたり78セントに上がっている。また、値上がり分を負担しているのは一般世帯で1キロリットルあたり約$1.93払っているが、農業では1キロリットルあたりの料金は12セントとなっている。水道料金が水の価値以下に設定されていることが課題となっている。
3.3 水に対する不満・クレーム
(平均的な水ニーズ、特徴的な水に関する意識、等)
1980年代末までは、人々は以下のような意識を持っていたといわれる。(出典※4)より抜粋)
①水は天与の恵みである。
②水を自然と切り離して管理することは可能である。
③砂漠を花園に変えることは可能である。
④社会的価値(水消費の生活スタイルなど)というものは不変である。
⑤水管理とは主として技術的な問題である。
4 水関連の政策・法規制・基準
4.1 政策と計画(policy and plan)
(国の開発計画、水セクターのマスタープラン、等)
州政府が水利権に関する権限を持ち、灌漑用水については、「水利権(最大限取水可能な量)」を持っていても、州の権限で当該年の水資源量を考慮し、「配分量(実際に取水可能な量)」が決められる。(配分量は、年度中でも随時見直される。)利水者間の渇水調整は無く、水取引が行われている。(水利用の合理化・効率化のため水利権市場(Water Market)が存在する。)灌漑利水者は、配分された水量を元に、当該年の水使用方法を考えることができる。例えば、自らは低収益作物の生産を断念し、高収益作物の生産者に、水利権を売ることもできる。これは、複数の作物を生産しているので、農業は継続できるというオーストラリアの農業事情による。
4.2 法規制
(上水下水などの水関連の個別法、基準のうち環境基準や水質基準)
4.3 水行政機関
(法規制を執行する機関)
- COAG:Council of Australian Governmentsの略で、オーストラリア政府評議会を指す。
- Minister for Water:各州に存在する、水を担当する大臣。
- Catchment Management Authorities 、Catchment Board:統合的流域管理のための法制度と課税権を持つ機関。
- MDBC:Murray-Darling Basin. Commissionの略で、マレー・. ダーリング川流域委員会の略。オーストラリアの水改革において主導的な水管理組織。
- National Water Commission:水利権取引の発展による水利用の一層の合理化、効率化、環境との両立、管理の効率化などの計画を実行するための期間で、2004年に設立された。
5 上下水道事業の実施状況
5.1 上下水道の普及状況
(上下事業の数、当該国における分布状況、普及率、安全な水アクセス率、等)
国土交通省「平成16年版 日本の水資源」によると、オーストラリアにおいては、91-100%の人々が安全な水にアクセス可能となっている。
また、公共下水道への接続は、2004年調査時点で88.9%(統計局HP)である。
5.2 その他パフォーマンス
(漏水率、24時間給水の実現度、その他水供給事業の水準を定量的に把握できる数字)
6 上下水道への援助・民営化
6.1 国内援助
(中央政府から地方事業への援助等)
- トレンチ(tranche payments):
- 家庭での雨水貯留施設設置への助成制度。
6.2 その他の援助
(外国からの援助等)
6.3 民営化
(民営化、公民連携の進行状況)
都市部では「法人化」、農村部では「民営化」が見て取れる。
法人化としては、フランチャイズ方式が挙げられる。資産は公的な所有であるが、その運営・管理は、設定された期間において、民間企業に委託される。例としては、アデレード市が、海外のコンソーシアムである、United Water Internationalに1996年から15年間、その管理権を譲渡したものがある。
農村部では多くの州政府機関が、水資源ダムを除いて、灌漑用のインフラの所有権を地域の灌漑組織に売却した。こちらは、民間が資産を所有しているため、「民営化」とみなすことができる。
7 水技術
(どんな技術が使われているか、現場の技術レベルはどうか、技術基準は、その国発祥の技術は、その他おもしろネタ等)
出典
最終更新:2012年04月12日 19:32