琉夏「なぁ! ちょっと寄り道していい?」
〇〇「寄り道? いいよ!」
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〇〇「教会……久しぶりだね。」
琉夏「クリスマスだからね、ちょっと、イエス様に挨拶。」
(画面タッチ)
琉夏「寒くない?」
琉夏「雪、降るかもな……」
〇〇「そっか……琉夏くんは、クリスチャンなの?」
琉夏「どうだろう……小さい頃は、クリスマスに、家族でミサに行ったよ。」
琉夏「前の母さんが、クリスチャンだったから。」
〇〇「前のお母さんって……」
琉夏「前の父さんと母さん、事故で死んじゃって、俺はコウの家に引き取られたんだ。」
〇〇「!!」
琉夏「黙ってて、ゴメン。」
〇〇「ううん、わたしこそ、何にも知らなくて……そうだったんだ……」
琉夏「もう、昔のことだ。最近じゃ、写真を見ないと二人の顔も忘れそうになる。」
琉夏「時間って不思議だ。子供のころはさ、いつも二人のこと考えてて、思い出すたびに、重たい石みたいな塊が込み上げて、苦しかった。」
琉夏「今もその石は無くならないけどいつか自分の一部になってちゃんと、胸の奥にしまえるんだと思う。」
(画面タッチ)
琉夏「平気。もう、昔のことだ。」
〇〇「琉夏くん……」
琉夏「どうしてだろうな。オマエが笑うの見るたび、そんな気がするんだ。」
〇〇「琉夏くん……」
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〇〇「送ってくれてありがとう。帰り、気をつけてね?」
琉夏「このままあなたをさらってしまいたい……」
〇〇「……え?」
琉夏「忘れちゃった、ジュリエット?」
〇〇「あ、文化祭の! えぇと、……そうして欲しいけど、今は我慢してください。」
琉夏「おやすみ、ジュリエット。また明日。」
〇〇「待って、恋人同士のお別れの言葉を思い出せない……」
琉夏「それでは、思い出すまでここに居ましょう。」
〇〇「じゃあ、思い出さない。……ああ、意地悪をして、ずっとあなたを帰したくない。」
琉夏「いつかさ……ずっと帰らなくてよくなればいいな。」
〇〇「琉夏くん……」
琉夏「メリークリスマス。ジュリエット。おやすみ。」