(不二山くんは……あ、いた!)
「おはよう、不二山くん。」
「おはよう。」
「あれ……ちょっと顔が赤いよ?大丈夫?」
「今日が楽しみで、あんまり寝らんなかった。」
「ふふっ、不二山くん子どもみたいだよ?」
「しょうがねぇ、子どもだもん。おまえだってそうだ。」
「わたしも?」
「うん。……もういいだろ、行こ。」
「じゃあ、いったん解散。買い終わったらまたここで。」
「えっ?」
「俺、みやげの量が多いんだ。一緒には見て回れねぇ。
だからさ、おまえも自分の買い物をじっくりして来いよ。」
「そんなにたくさんあるの?」
「親父、お袋、ご近所さん。それから道場の師範に、そこのガキんちょどもと……」
「たしかに多いね……」
「普段、世話んなってる人が多いからな。」
「そっか。それなら買い物手伝うよ?」
「いい。おまえは気にすんな。どうもな。
じゃあ解散。ゆっくり買い物楽しんで来い。」
(よし、わたしもいろいろ見てみようかな)
「お待たせ。いいもの見つかったか?」
「うん……あれ?不二山くん、おみやげは?」
「全部宅配便で送った。あの量を持って帰るのは不可能だから。」
「すごいね……ね、なにを買ったの?」
「ほとんど食い物。限定ラーメン、チョコ菓子、クマとシカの缶詰とか。」
「あれ、買ったんだ。美味しいのかな?」
「うん。美味けりゃいいな。」
「そうだね。」
「あと、これ。おまえのぶん。」
「ハンドタオル?あっ、キタキツネの絵がある……カワイイ!」
「だろ?俺のも買った。こっちは普通のタオルだけど。」
「ふふっ、お揃いだね?ありがとう!」
「うん。記念に、な。」
「明日で修学旅行も終わり……あっという間だったね。」
「うん。足りねぇって感じる。」
「北海道をもっといろいろ見て回りたかった?」
「おまえと2人でいる時間。もっとほしかったなって。」
「えっ?」
「…………」
「あの、不二山くん?」
「そっか。普通の旅行で来ればいいんだ。今度は2人で。」
「!!」
「だったら時間なんか気にしなくていいし。だろ?○○。」
「えっ!?あ、うん。そうだけど……」
「この修学旅行もいい思い出になったけどな。おまえのおかげだ、きっと。」
(不二山くん……うん、いい思い出になったな)