入学式

  • タッチ
???「ん? なに?」

大迫「職員室に教材を取りに行ってくるからちょっと待っててな~。」
  • タッチ
???「ん? なに?」
〇〇「あっ、えっと……」
???「…………」
男子A「おい、平、どうした? 知り合いか?」
???「ううん、違う。」
〇〇「ごめんなさい、わたし――」
???「べ、べつに謝ることないよ。」
男子B「そのとき平は彼女に恋をしてしまったのです。」
???「こ、恋って、なに言ってんだよ!」
男子B「はは、図星だろう?」
???「そ、そんなことないって。」
〇〇「あの、わたし……」
???「あ、ごめん。俺たち、中等部からの友だちなんだ。君は受験組だよね?」
〇〇「うん。」
平「俺は平 健太。よろしく。」
〇〇「あ、わたしは〇〇。よろしくね。」
大迫「コラァ! このクラスが一番うるさいぞ。先生、また怒られるじゃないかぁ!」
大迫「元気なのは大変結構だけどな? まぁいい、誰か教材を運ぶの手伝ってくれ。」
大迫「……タイラー。目が合ったな?」
平「えっ、俺ですか?」
大迫「来い、タイラー! 大迫クラスで一番最初の任務をおまえに与える!」
平「はーい。」
〇〇(平くんか……なんかほっとする感じの人だな)

1年目体育祭

平「〇〇さん、これ。落としたよ。」
〇〇「あ、わたしの髪留め。ありがとう。」
平「あれ……? それ壊れちゃってるな。」
〇〇「本当だ……」
大迫「タイラー! 女子と手を繋ぎたいのはわかるけど、もう終わりだぞ!」
平「ち、違いますよ、俺はただ――」
大迫「往生際が悪い男はだめだ! 解散ー!」
平「はーい。」
〇〇(ありがとう、平くん)

1年目12月 期末試験

〇〇(期末テスト初日。やっぱり緊張するな……)
???「あれ、おかしいな……」
〇〇「平くん、おはよう、どうかしたの?」
平「〇〇さん、おはよう。なんか俺、筆記用具を忘れちゃったみたいなんだ。期末テストなのにさ。」
〇〇「えっ? わたしのでよかったら貸そうか?」
平「いいの? 助かるよ!」
〇〇「えっと……、これでいいかな?」
平「うん、ありがとう! たまには忘れ物するのもいいな。」
〇〇「え?」
平「ううん、なんでもないんだ。」
平「よっし、頑張るぞ!」
〇〇(ふふっ、平くん気合い入ってるな。 わたしも頑張ろう)
  • テスト翌週
〇〇(さてと。花椿さんと宇賀神さんで屋上ランチ。そろそろ行こう)
平「〇〇さん。」
〇〇「あ、平くん。どうしたの?」
平「これ、テストの時に借りたペン。ありがとう。」
〇〇「うん。平くん、テストはどうだった?」
平「俺はいつも通り。ちゃんと真ん中あたりをキープ出来たよ。」
〇〇「え?ちゃんと真ん中?」
平「ちょうどいい感じってこと。上過ぎても、下過ぎても居心地悪いんだよね。」
〇〇「上もダメなの?」
平「ダメだよ。なんかムズムズして、気持ち悪い……と思う。」
平「実際、上位の成績なんてとったことないから、想像だけどさ。」
〇〇「ふふっ、平くんって面白いね。」
平「面白い? 俺が?それ、なんか嬉しいな。」
花椿「バンビー、早くぅ!いい場所なくなっちゃうよー。」
〇〇「ごめんね、今行くから!」
平「あっ、それと、君が筆記用具を忘れたときは俺に言ってよ。これからは予備を持っておくから。」
〇〇「うん、わかった――」
花椿「お腹すいた〜……バンビ〜!」
平「引き留めてごめん。みんな、お腹空かせて待ってるよ。じゃあ。」
〇〇(ふふっ、平くん、ありがとう)

1年目 バレンタインデー

〇〇(ちょっと、帰るの遅くなっちゃったな……)
男子A「平、お前、今、下駄箱開けるとき、期待してただろう?」
平「き、期待なんかしてないよ。毎年のことだろ、もう慣れてる。」
男子A「ああ、そうだな。俺たちには無縁の行事だからな。」
〇〇(なんのことだろう?)
  • タッチ
〇〇「平くん。」
平「君!まさか、俺に……」
平「…………」
〇〇「…………ん?平くん、どうしたの?」
平「え?ど、どうもしないよ。」
男子A「平、おまえ今、完全に期待してたよな。諦めの悪いヤツだな〜。」
平「ははっ、そ、そんなわけないよ。」
〇〇「?」
平「〇〇さん、俺たち用があるから。先に帰るよ。じゃあね。」
〇〇「え? うん、じゃあね。」
〇〇(平くん、どうしたのかな?)

2年目 始業式


大迫「それじゃ、職員室まで教材取りに行ってくる。大人しく待ってろよー。」

〇〇「平くん!今年も同じクラスだね。」
平「すごいな2年続けて同じクラスなんて!」
〇〇「ほんとうに。担任も大迫先生だしね。今年もよろしくね。」
平「うん、俺の方こそ、よろしく!」
大迫「コラァ!ちゃんと席に着いてろって!」
平「はーい。」

大迫「……タイラー、今年も目が合ったな?大迫クラス2年目最初の任務を与える!」
平「え?また俺ですか〜。」
大迫「さあ来い、タイラー!」
平「はーい。」
〇〇(ふふっ、今年も楽しい一年になりそうだな)

2年目 体育祭

  • タッチ
平「だめだったか……」
〇〇「平くん、どうしたの?」
平「今年は期待してたんだけどな……」
大迫「タイラー、列に戻れぇ!去年と同じこと言わせるんじゃないぞー!」
大迫「〇〇。あとでちょーっとだけタイラーと踊ってやるか?」
平「え! 本当に!」
〇〇「え?」
男子A「大迫ちゃん、平だけなんてずるいよ。」
〇〇「ええ⁉」
大迫「ハッハッハ! 冗談だ。タイラー、あきらめろ〜!」
平「そんなぁ。」

2年目 修学旅行

  • タッチ
平「〇〇さん、おはよう!」
〇〇「平くん、おはよう。楽しい修学旅行にしようね。」
平「うん、2年最大のイベントだからね。」
平「まずは……」
〇〇「なに?」
平「記念撮影から。一緒に写真撮ってもいいかな?」
〇〇「うん、もちろん。」
平「よし!じゃあ、誰かにシャッターをたのもう――」
花椿「バンビ、見っけ!修学旅行ってさ、やっぱり超ワクワクしない?」
〇〇「あ、花椿さん。テンション高いね?」
花椿「あったりまえじゃん!2年生最大のイベントだよ?」
〇〇「ふふっ、平くんと同じこと言ってる。」
平「あの、花椿さん、シャッター押してもらっていいかな。」
花椿「……バンビとアンタ?うーん、写真くらいならいっか。それじゃ並んで?」
〇〇「ありがとう、花椿さん。」
花椿「ねえねえ。次はアタシとバンビで並んで撮ってもらおうよ?」
〇〇「うん、もちろん!」
平「じゃあ、先に撮ってあげるよ。シャッター押すから、カメラかして。」
花椿「えっ、いいの?割り込んじゃったみたいでゴメンね?」
平「別にいいんだよ。じゃあ、撮るからね。」
花椿「ちょっと待って。ミヨ〜! こっちこっち!バンビと一緒に撮影会だよー!」
宇賀神「大きな声で呼ばないで。……バンビ、お待たせ。」
〇〇(ふふっ、宇賀神さんも、なんだか楽しそう)
平「じゃあ、撮るよ。」
宇賀神「……待って。カレン、この並びはヘン。」
花椿「なんで?やっぱアタシが真ん中でしょ?」
宇賀神「画的にバランスが気持ち悪い……」
花椿「いいじゃん!両手に花したいんだから!」
平「あの、そろそろ、撮ってもいいかな〜。」
花椿「どうぞどうぞー。はい、2人とも満面の笑みで!」
平「はい、チーズ!」

平「じゃあ、次は俺。」
花椿「オッケー、任せて♪イイ写真撮ったげるよ。」
男子生徒「おい、平、自分だけずるいぞ。俺たちも入れろ〜!」
〇〇「えっ?」
平「お、おい。押すなよ。」
平「ど、どうして 俺が、すみっこに――」
花椿「はいはい、みんないいかな〜?それじゃあ、撮りまーす。」
花椿「ハイ、チーズ♪」

大迫「おーい、そろそろ出るぞー。バスの前に集合!」
花椿「あちゃ〜、ゴメン。時間切れだ……カメラ返すね。」
平「ああ、どうも……」
花椿「そんじゃバンビ、また後でね。チャオ!」
宇賀神「またね、バンビ。」
〇〇「わたしたちも行かないと、平くん。」
平「あ、うん。そうだね、行こう。」

下校イベント

1回目

〇〇(だんだん秋って感じになってきたな……夕方はちょっと肌寒いくらい)
平「〇〇さん。」
〇〇「あ、平くん。」
平「あのさ、もし良かったら、一緒に帰らないか。」
  • うん。一緒に帰ろう
平「やった!」
〇〇「ふふっ 平くんと一緒に帰るの、初めてだね?」
平「そうなんだ。入学してから、1年半、やっとだよ。」
〇〇「え?」
平「だってさ、君の周りには、いつもたくさん人がいるから、声掛けるの、結構大変なんだよ。」
〇〇「そんなこと……」
平「でも、今日は大成功だ。これからも、誘っていいかな?」
〇〇「うん、もちろん。」

平「わっ!」
〇〇「えっ、どうしたの?」
平「植え込みの中に人が……」
???「…………」
〇〇「琉夏くん!? どうしたの!?」
琉夏「〇〇。いま、帰り?」
平「な、なんで、桜井琉夏が……」
〇〇「琉夏くん、具合悪いの? 大丈夫?」
琉夏「ヒーロー最大のピンチ。ハァ――」
〇〇「?」
平「?」
琉夏「エネルギーがもう、ない。」
〇〇「……え? お腹空いたってこと?」
琉夏「そうとも言う。なんか持ってない?」
平「あ、俺、購買のパンなら、持ってるけど。」
琉夏「……マジ? 救世主発見!」

琉夏「ごちそうさま。タイラ、本当にいい人だね。じゃあ、バイバイ。」
〇〇「バイバイ、琉夏くん! ……大丈夫かな。」
平「君は桜井君と知り合いなんだね。」
〇〇「うん、幼なじみみたいなものかな?」
平「へぇ、君と一緒にいると、なんかすごいな。」
〇〇「どうして?」
平「だってさ、行き倒れの桜井琉夏に遭遇するなんて、予想も出来なかった。」
〇〇「ふふっ、わたしだって。」
平「俺、クラスメイト以外の友だちって少ないから。なんかこういうの嬉しいよ。」
〇〇(平くんと琉夏くんが友だちになったら、どんな感じかな……意外に仲良しになるかも?)

2回目

〇〇(外は寒いな……もう12月だもんね)
平「〇〇さん。」
〇〇「あ、平くん。」
平「君も今帰り? 偶然、俺もなんだ。一緒に帰らないか?」
  • うん。一緒に帰ろう
平「やった!」
〇〇「でも……偶然ってなんか変だよ?」
平「え?」
〇〇「だって、同じクラスなんだから。」
平「そりゃそうだよね。必然ていうか故意っていうか……」
〇〇(ひょっとして、平くん、待っててくれたのかな)

琥一「おう。」
〇〇「あ、琥一くん。」
平「えっ、桜井琥一。」
琥一「もしかしてオマエが――」
平「えっ、俺?」
〇〇「クラスメイトの平くんだよ。こっちは桜井琥一くん。」
平「うん、知ってる。」
琥一「タイラか?」
平「え? そうだけど……」
琥一「ルカが命を救われたって言っててよ……マジでオマエなのかよ?」
平「命……? この前、購買のパンをあげただけだよ。」
琥一「ハァ? なんだそりゃ。」
〇〇「琉夏くん、すごくお腹空いてたみたい。」
琥一「チッ、そういうことかよ……」
琥一「ま、何にせよ世話んなった。礼は言っとく。」
平「はあ……、大したことじゃないよ。」
大迫「コラア琥一~! どこだぁ!?」
琥一「やべ、大迫だ。じゃあよ!」
〇〇(琥一くん、平くんにお礼を言うために、待ってたのかな?)

平「君は、桜井琥一とも知り合いなんだ。」
〇〇「うん。琉夏くんも琥一くんも幼なじみっていうか……」
平「やっぱり、君といるとすごいことが起こるな。」
〇〇「え?」
平「だって、俺が桜井琥一にお礼を言われる展開は想像してなかったよ。」
〇〇「琉夏くんは平くんに感謝してるみたいだね。家で琥一くんに、話すくらいだから。」
平「なんかすごいな……」
〇〇「え?」
平「俺がその2人の話題になってるなんて……」
〇〇(ふふっ、今日も話題になるかもしれないね)

3回目

〇〇(あ、平くんだ。いつも誘ってくれるから今日はわたしから……)
  • 一緒に帰ろうと誘う
〇〇「あ、平くん。一緒に帰らない?」
平「えっ?」
〇〇「あ、何か用事があった?」
平「ううん、用事なんてないよ! 一緒に帰るに決まってるだろ。でも、このパターンは想定してなかったな。」
〇〇「え?」
平「君から誘われるパターンがあったか……」

平「校門を出る前、だいたいこのあたりが、危ないんだ……」
〇〇「え? どうしたの?」
平「だいたいこのあたりのタイミングで誰か現れたりするはず……」
〇〇「誰かと約束してるの?」
平「約束というか、お約束というか……あれ? 大丈夫みたいだな。」
〇〇「ふふ、変な平くん。」

平「ハイ、これ。修学旅行の写真。君に渡してなかったよね。」
〇〇「うん、あ、これ、出発前に花椿さんに撮ってもらったんだよね。」
平「そう、結局、みんなが君のところに集まって来て集合写真になっちゃったやつ。」
平「でも、君と一緒に写ってることは、変わりないしさ。俺は気に入ってるんだ。」
〇〇「うん。ありがとう。わたしも大事にするね。」

ローズクイーン候補

〇〇(えっと、次は現国の授業だったよね……)
花椿「バンビ、ニュース速報。」
〇〇「花椿さん、宇賀神さん、どうしたの?」
花椿「どうやら、アタシたちの予想が現実になりそうだよ!ね、ミヨ。」
〇〇「予想って?」
花椿「ローズクイーン。今のところはバンビが本命みたいだよ。」
〇〇「え?」
花椿「だって、バンビのこと知らないバレー部の子が言ってたんだよ。信憑性高いでしょ?」
宇賀神「バンビの星とバラの花の相性はいい。」
〇〇「宇賀神さんまで……」
花椿「おっと、戻らなきゃ! またね、クイーンバンビ。」
宇賀神「バンビは女王じゃなくて、お姫様のほうが合ってる。」
花椿「応援してるよ―!」
〇〇(もう、大きな声で……)
男子A「おい、聞いたぞ、すごいな!ローズクイーン決定だって?」
〇〇「違うよ、花椿さんと宇賀神さんが勝手に言ってるだけだから。」
平「あの2人だけじゃなくて、みんな思ってるよ。俺も、君ならなれると思う。」

大迫「コラァ! 今日はなんの騒ぎだ?さっさと席に着けー!」
〇〇(ふぅ、花椿さんと宇賀神さんのおかげで、大騒ぎになっちゃったな……)

3年目 始業式

〇〇「平くん、今年も一緒のクラスだね!」
平「〇〇さん、今年もよろしく!」
平「でも、驚いたな。3年間、君と同じクラスで大迫先生が担任なんてさ。」
〇〇「そうだね、平くんがいて、大迫先生がいつものあいさつでしょ。1,2年の時と全く同じ。」
平「うん、ここまでは全部一緒だけど……でも俺、今年は去年と同じじゃなくて、頑張ってみようって思うんだ。」
〇〇「平くん、何を頑張るの?」
平「何って……、せっかく3年間、同じクラスになれたんだ。それに君はいつも、俺に声を掛けてくれるだろ。」
〇〇「え?」
平「最後の1年だからさ。とにかく俺は、頑張ってみようかなって。」
大迫「おーい、おまえら大人しく席について待ってろよ~!」
平「はーい。」

大迫「じゃあ、タイラー、今年も頼むぞ!」
平「はーい。教材運びですよね。」
大迫「そうだ、ついて来い!タイラー。」
平「はーい。」
〇〇(来年は卒業、今年が最後か。わたしも後悔しないように、頑張ろう)

3年目 体育祭

  • タッチ
平「残念だけどさ、こればっかりは、頑張りようがなかったよ……」
〇〇「え?」
平「フォークダンス、この3年間ですっかり嫌いになった……」
大迫「おーい、タイラー! いい加減に――」
平「はーい。」
大迫「お、どうしたんだ?今年は諦めがいいな。」
〇〇(平くん、結局、一回も踊れなかったね……)

3年目 文化祭

〇〇(もう、10月もおわり。いよいよ高校生活も残り少なくなってきたな……)
大迫「〇〇。ちゃんと聞いてたかぁ?」
〇〇「……? あっ、はい! す、すみません……」
大迫「ボンヤリしてる暇はないぞ!」
〇〇「え?」
大迫「文化祭の学園演劇はおまえがヒロイン役に決まったぞ。相手はC組の鈴木だ。」
〇〇「わたしがヒロインですか!?」
大迫「そうだ。はば学女子の代表だぞ?」
〇〇(どうしよう……)
〇〇「わたし、ヒロインなんて自信ないです……」
大迫「うーん、そうか……無理強いはしないけどな?」

平「〇〇さん、君ならできるよ!絶対大丈夫、俺、協力するから。」
〇〇「平くん、みんな……」
大迫「どうだ? あとはおまえの気持ち次第だ。」
〇〇「はい……」
大迫「みんなもいいな、決めるのは、本人だ。」
〇〇「……………………」
〇〇「……わたし、頑張ってみます。よろしくお願いします。」
平「よし、クラスみんなで、ヒロインをもり立てよう!」
〇〇(平くん、ありがとう)
大迫「タイラー、気合い入ってるな。いいぞー。これが青春だぁ!」

文化祭準備期間中

〇〇(文化祭まで、あと少ししかない。学園演劇の練習、頑張らなきゃ……)
大迫「おはよう!ちょっとな、困ったことになった。」
大迫「学園演劇の主役、C組の鈴木が怪我で本番は難しそうだ。」
〇〇「えっ!」
大迫「そこで誰かに代役をやってもらいたいんだ。どうだ、立候補するやつはいないか?」
大迫「ヒロインと突貫で練習することになるから、このクラスから代役が出るのが一番なんだ。ちょっと、考えてみてくれー!」
〇〇(みんな、ここまで頑張ってきたから、なんとかやりたいけど……)
大迫「どうだー? 今から主役のセリフを全部覚えるのは厳しいけどな……」
平「あ、あの、やります。俺が代役やります!」
〇〇(!! 平くん!)
大迫「おおっ、タイラー! おまえやってみるか? ナイスガッツだ。みんな、いいか?」
平「君のヒロイン役が見られなくなるなんて、俺、絶対いやだからさ。」
〇〇「平くん……」
平「今年は頑張るって、言っただろ。」
〇〇「うん、平くん、ありがとう。」
〇〇(平くんのおかげで、演劇ができるんだ。よし、わたしも、頑張るぞ)

平「どうしてもと言うのなら、私にかけた、恋の魔法を解いていってください。」
〇〇(平くん、最初の通し稽古なのに……セリフ完璧)
平「あなたを知らなかった頃の私に戻してから――」
大迫「まさかタイラーに役者の才能があったとはな!」
〇〇「本当にすごい!」
平「君まで。俺がすごいわけないだろ。」

〇〇「12時の鐘が鳴ってしまいます……ごめんなさい、王子様。わたしは――」
〇〇「ふぅ……ごめんね、平くん……わたしが足ひっぱっちゃって。台詞が覚えきれないんだ。」
平「大丈夫。君なら絶対に上手くやれるよ。」
〇〇「わたしが、平くんの練習に付き合ってるはずだったのに……平君はすごいな。」
平「謝ることなんかないよ。それに、俺、全然、すごくない。」
〇〇「え?」
平「実は俺……君が練習しているのを、自分が主役だったらなんて思いながらずっと見てたんだ。」
〇〇「平くん……」
平「家で相手役のマネしたりさ。バカみたいだろ。そしたら、自然にセリフ覚えてた。」
平「あ、言っとくけど、主役の怪我と俺は関係ないからね。」
〇〇「ふふ、そんなこと、考えてないよ。」
平「あ、そうだ、ちょっとこっち――」
〇〇「どうしたの?」

〇〇「ここは……」
平「演劇の練習には最高のシチュエーションだと思ってさ。」
平「知ってる?¥教会の伝説。」
〇〇「うん。王子様を待つお姫様、それに鐘の音、本当にピッタリだね。」
平「よし、じゃあ、最初からいこう!!」
〇〇「うん、お願いします!」

文化祭当日

〇〇(ふう、緊張するな。もうすぐ、学園演劇の本番だ)
大迫「みんな、よくここまで頑張ったな。あとは思いっきりいけ!」
平「〇〇さん、そんな顔されると、こっちまで、緊張してきちゃうよ。」
〇〇「うん、ごめんね。でも、セリフが頭からこぼれてる気がする。」
平「大丈夫、何にも出てない。俺も、いろんなところから、漏れ出てる気がする。」
〇〇「ふふっ、大丈夫、出てないよ。」
平「ああ、良かった。じゃあ、もう着替えなきゃ。」
〇〇(ありがとう、平くん。いつも気を遣ってくれて)

〇〇(ふぅ、とうとう本番)

平「美しい姫よ。あなたはどこの国からいらしたのですか?」
〇〇「それは……それはとても遠い、小さな国からです。」
〇〇(頭の中、真っ白。気が遠くなりそう……)
平「……このまま、あなたといつまでも踊り続けていたい。」
  • タッチ
〇〇(平くん、落ち着いてるな。わたしも焦らず、練習通りにやろう)
〇〇「わたしはもう、行かなければなりません。」
平「なぜです。私は貴方と踊りたいだけ。貴方に触れたい、触れてもらいたいだけ。」
〇〇「いけません。もう、時間です。」
平「どうしてもと言うのなら、私にかけた、恋の魔法を解いていってください。」
平「あなたを知らなかった頃の私に戻してから――」
〇〇「12時の鐘が鳴ってしまいます……ごめんなさい、王子様。わたしは、もう帰らなければ……」

〇〇(はぁ……終わった。なんとか、セリフを間違えないで言えた)

平「〇〇さん、やっと、おわったね。」
〇〇「あ、平くん。わたし大丈夫だった?」
平「うん、完璧だったよ。最高のお姫様だったと思う。」
〇〇「ありがとう! うれしいな。」
大迫「2人とも良くできてたぞ!! そして、みんな、よくやった!! チームワークの勝利だ。」

〇〇(平くんは、どこにいったんだろう? 教室に戻ってるのかな)
女性客A「あれ、あの子、学園演劇のヒロインだよね。やっぱりかわいいー。」
〇〇「え?」
女性客B「うん、今年のローズクイーンもあの子なんでしょ。」
女性客A「そうそう、やっぱり輝きが違うよ。でも、王子様役はなんであの人だったのかな?」
女性客B「うん、王子様って感じじゃなかったなー。やっぱり、琉夏くんとかじゃないと、ヒロインには釣り合わないね。」
平「…………」
〇〇「あ、平くん!」
女性客A「やだ!! あの人、ほら。」
〇〇「平くん! 待って!」

〇〇「平くん!」
平「〇〇さん、俺……なんか出しゃばりすぎたみたいだな。」
〇〇「そんなことない。平くんは出しゃばってなんてない!」
平「ごめん、せっかくの演劇を台無しにしてしまって。」
〇〇(平くん……)

3年目12月1日

〇〇(文化祭から、平くん、話をしてくれない……)
大迫「オッス、さあ、今年も残すところわずかだ。そして来年になれば、受験、就職試験、待ったなしだぞ!」
男子A「大迫ちゃん、いきなりプレッシャーかけないで。緊張してきた~」
大迫「なんだぁ? もう尻込みか? 怖がってたら負けだ! 臆病になるのは年取ってから。若いうちは攻めろ!」
大迫「ハハハ! 何もしないで後悔するくらいなら、やってみて失敗する方が諦めがつくってもんだ!」
〇〇(そうだよね。悩んでたって、ダメだよね)

〇〇(あ、平くん)

  • タッチ
平「君か。もう……やめて欲しいんだ。」
〇〇「平くん、わたしちゃんと謝りたくて。いやな思いさせて、ごめんなさい。」
平「なんで、君が謝るんだ。代役になって演劇に出たのは、俺が自分で決めたことだし、君が気にする事じゃないよ。」
平「俺、もう、わかったから。君と一緒にいること自体が俺には不釣り合いなんだってこと。」
〇〇「そんな……」
平「……君は優しくて、俺にも声をかけてくれるだろ。だから、俺、勝手に勘違いしてた。俺の方こそごめん。」
〇〇「平くん……」
平「君は学園のヒロイン、俺なんかが近くに居たら、おかしいって、わかったから――」
平「だから、もう、やめて欲しいんだ。」
〇〇(そんな……もう話しかけちゃダメなの……?)



更新日時:2019/03/20 20:50:40
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最終更新:2019年03月20日 20:50