〇〇(あ、紺野先輩だ)
紺野「おはようございます! おはようございます!」
〇〇「……紺野先輩?」
紺野「〇〇さん、おはようございます!」
〇〇「あ、おはようございます!」
紺野「今週は“あいさつ運動”週間なんだ。」
〇〇「あいさつ運動?」
紺野「うん。僕の前の代から始めたんじゃなかったかな。」
紺野「やれやれ……やっと大声を出し続けるのに慣れてきたところだよ。」
紺野「朝は声が出なくてさ。」
女子生徒「おはようございまーす。」
紺野「おはようございます!」
〇〇(あいさつ運動か……わたしにもそのうち順番がまわってくるんだろうなぁ)※部活動が生徒会の場合
〇〇(あいさつ運動か……生徒会執行部っていろんなことに取り組んでるんだなぁ)※部活動が生徒会以外の場合
〇〇(あ、紺野先輩だ)
紺野「見た目より安定重視で! 絶対落ちないように!」
男子生徒「了解!」
〇〇「紺野先輩、おはようございます。何やってるんですか?」
紺野「ああ、おはよう。昇降口の内側に鳥が巣を作っちゃったんだ。」
〇〇「はぁ、こんなところに……」
紺野「うん。それでまぁ、苦情があまりにも多くて、対策に乗り出したというわけ。」
〇〇「あ……」
紺野「そう、鳥のフン。このへん真っ白だろ?」
男子生徒「紺野、クギ~!」
紺野「ああ、悪い。それじゃ。」
〇〇(あれも生徒会執行部の仕事になるのかな?)
〇〇(ん? 下駄箱前に人だかりが……)
〇〇(……そういえば今日は服装チェックの日だっけ。今日の担当は……)※部活動が生徒会の場合
〇〇(わっ、服装チェックやってる! わたし、大丈夫だよね?)※部活動が生徒会以外の場合
紺野「〇〇さん。」
〇〇「わっ!」
紺野「ごめん。驚かすつもりはなかったんだ」
〇〇「紺野先輩……」
〇〇「あの、わたしどこか違反してますか?」
紺野「はは、それで声をかけたわけじゃない。あいつら見なかった?」
〇〇「あいつらってもしかして……」
紺野「桜井兄弟」
〇〇「……何かしちゃいました?」
紺野「まだ何もしてないよ。ここを通ったら捕まえるつもりだけど」
紺野「ブラックリストのトップなんだ。もうすぐ予鈴が鳴るのに、遅いな……」
〇〇(2人ともとっくに逃げちゃったんじゃないかなぁ……)
紺野「えっ、本当に? 一度も?」
設楽「悪かったな。」
紺野「悪くないけど……少なくとも人生の30パーセントは損してると思うよ。」
設楽「多いだろ!?」
〇〇「あの……何の話ですか?」
設楽「……なんだおまえ、いきなり。」
紺野「そういう言い方はないだろ、大人げない。」
設楽「たった一年違いで大人も何もあるか。」
〇〇「あの……」
紺野「あ、ごめん。そうだ、いいところに。」
〇〇「?」
紺野「“レッドサーキット”って見たことある?お笑い番組の。」
〇〇「はぁ、聞いたことは……」
設楽「ほら、見てないじゃないか。」
紺野「見てなくたって番組名は知ってる。常識だと思うけどなぁ。」
設楽「どこがだ。おまえの常識はあてにならない。」
紺野「それ、設楽に言われたくない。」
〇〇(……なんだか2人がお笑いコンビみたい)
〇〇(あ、紺野先輩と設楽先輩だ)
紺野「だから、そういうのをツッコミって言うんだよ。」
設楽「どれだよ。」
紺野「それだよ。」
〇〇(……またお笑いの話をしてるみたい)
設楽「……〇〇。」
紺野「ああ、こんにちは。」
〇〇「こんにちは。」
設楽「おまえ、今すぐボケてみろ。紺野がツッコミやるから。」
〇〇「ええっ!?」
紺野「いきなりできるわけないだろ。」
紺野「僕だって無理だ。見るのとやるのとじゃ全然違うんだから……」
設楽「そんなの知るか。」
設楽「ボケとかツッコミとか言われてもわからないから、見てみようと思ったんだろ。」
紺野「お笑い番組教えただろ、“レッドサーキット”。 毎週やってるんだから一度くらい見てみなよ。」
設楽「俺にはテレビをみる習慣がない。」
紺野「一度だけでいいから。面白いって、絶対。」
設楽「嫌だ。」
紺野「なんでそこでそう頑固なんだよ。」
設楽「嫌なものは嫌だ。」
〇〇(紺野先輩がツッコミで設楽先輩がボケ……かな?)
〇〇(あ、紺野先輩と設楽先輩だ)
設楽「しょうがないだろ、全然理解できなかったんだから。」
紺野「なんでかなぁ……あんなに面白いのに……」
〇〇「お笑いの話、ですか?」
紺野「〇〇さん、そうなんだよ。設楽がちっともわかってくれなくてさ。」
設楽「“レッドサーキット”とかいうお笑い番組を見てやったんだ。」
設楽「わざわざその時間に電話で知らせてくるから……」
〇〇「どうでした?」
設楽「……バカバカしいだけだった。」
〇〇「お笑いですから……」
紺野「まぁ、芸人にもいろんなタイプがいるからなぁ。たまたま設楽の好みを外したのかな。」
紺野「それなら今度、“ソーメンズ” のDVD貸すよ。これは絶対面白いから。」
設楽「いい。」
紺野「遠慮しなくていいから。」
設楽「遠慮してるように見えるか? 全然してないよ、むしろ嫌がってる。」
設楽「そんなに言うなら俺だって”ショパン全曲集”全6巻貸すぞ。」
紺野「……いい。」
設楽「遠慮するな。」
〇〇(……2人のお笑いなら見てみたいかも……)
〇〇「本を返却っと……」
設楽「別にいいだろ、どういう読み方したって」
紺野「良くないよ。面白さが半減するだろ」
〇〇(あ、設楽先輩と紺野先輩だ)
〇〇「どうしたんですか?」
設楽「……なんだ、おまえか」
設楽「どうもしない、本を返しに来ただけだ」
紺野「設楽、後輩にそういう言い方はよくない」
設楽「何先輩面してんだよ」
紺野「設楽だって威張った様な態度で……」
〇〇「あのー……」
紺野「ああ、ごめん」
設楽「………………」
紺野「それがさ、設楽が本はあとがきから読むって言うんだ」
〇〇「はぁ……」
設楽「それのどこが悪いんだ。おまえに迷惑かけてるわけじゃないだろ」
紺野「だって結末を先に読むようなもんじゃないか。信じられない」
〇〇「ミステリーなんかだと犯人が書かれてることも……」
紺野「だよなぁ。その通りだよ」
設楽「おまえは関係ないだろ。なんで紺野の味方するんだ」
〇〇「そ、そんなつもりは……」
紺野「設楽、後輩にそういう言い方はよくない」
設楽「何先輩面してんだよ」
〇〇(ループだ……)
〇〇(あ、紺野先輩と設楽先輩だ)
設楽「………………」
紺野「………………」
〇〇(2人一緒のわりに何もしゃべらない……)
〇〇「こんにちは」
紺野「やあ」
設楽「………………」
〇〇「……あの、静かですね?」
設楽「図書館で静かにしてるのがおかしいのか?」
〇〇「おかしくはないですけど……」
紺野「設楽、そういう態度良くない」
設楽「そういうってどんなだよ」
紺野「そういう態度だよ」
紺野「後輩の女の子にくらいもう少し柔らかい態度でも……」
設楽「俺は誰にでも平等なんだ」
紺野「また屁理屈を……」
設楽「屁ってなんだ。ただの理屈だ」
紺野「だからそれが……」
司書「しーっ! そこ、さっきからうるさいと言ってるでしょう!」
設楽「………………」
紺野「………………」
〇〇(なるほど、さっきも怒られたんだ……)
〇〇(あ、紺野先輩と設楽先輩だ)
設楽「……あ」
〇〇「こんにちは」
紺野「やあ、君も図書室で勉強?」
〇〇「そんなところです。紺野先輩たちは何を?」
紺野「僕は受験勉強、彼は宿題。たまたま会ったんだ」
〇〇「たまたまなんですか。それにしては、よくここで2人を見かけるような……」
紺野「まぁ、確かによく会うよ。偶然」
〇〇「偶然……」
設楽「………………」
設楽「……終わった」
紺野「あれ、もう? 全部埋められた?」
設楽「半分くらいわからないんだよ。悪かったな」
紺野「悪いなんて言ってないだろ。どれ?」
設楽「これとこれとこれ」
紺野「ああ、定積分の計算か。ちょっと待って、教科書出すから」
〇〇「………………」
設楽「……なんだよ」
〇〇「いえ、別に……」
〇〇(……偶然?)
〇〇(さて、今日も頑張ろう)
琉夏「〇〇ちゃん。」
〇〇「あ、琉夏くん。おはよう」
琉夏「行ってきます。」
〇〇「琉夏くん、まさかまた……どこ行くの!? もうすぐチャイム鳴るよ!」
琉夏「ちょっと野暮用。またな!」
〇〇「もう……」
紺野「〇〇さん。」
〇〇「あ、紺野先輩。おはようございます」
紺野「おはよう。桜井見なかった? 弟のほう」
〇〇「琉夏くんですか? あの……えーと……」
紺野「ハァ……いいよ。君に聞いても無駄だ。また逃げられたか……」
〇〇「……何かしちゃいました?」
紺野「彼は歩く校則違反だから。あの髪……」
〇〇「なるほど……」
紺野「いい加減なんとかしたいんだけど、注意どころか捕まえることすらできないんだ」
紺野「さっきはあと1メートルってとこまでいったのになぁ、やれやれ……」
〇〇(……猫か何かを追いかけてるみたい……)
〇〇(さてと、今日も一日がんばろっと)
琥一「〇〇。」
〇〇「あ、琥一くん。おはよう。」
琥一「おう。まだ風紀委員立ってたか?」
〇〇「校門に? もういないと思うけど……」
琥一「なら正面から出るか。」
〇〇「えっ、どこ行くの!? もうチャイム鳴るよ!」
紺野「待てっ!」
〇〇「わっ!?」
紺野「君、止めなきゃ駄目じゃないか! あれはどう見てもサボりだろ。」
〇〇「す、すみません!」
紺野「……あっ、ごめん。3階からずっと追いかけて来たから、気が急いてて……君が悪いわけじゃないよ。」
〇〇「……追いかけてたんですか?」
紺野「逃げられたけどね。今日こそ違反の数々を問い詰めようと、教室の近くで張ってたのに……」
〇〇「お疲れ様です……」
〇〇(琥一くん、追いかけられてたんだ。落ち着きすぎだよ……)
紺野「そして、その頭だ。頼むから何とかしてくれ。僕が伝えたいことは以上だ。君たちは?」
〇〇(あ、紺野先輩だ。それと……)
〇〇(琉夏くんと琥一くん! 2人とも、捕まっちゃったんだ……)」
琉夏「コウ、やっぱそのアタマダセェって。」
琥一「バーカ、テメェだ、言われてんのは。ククッ……」
紺野「……はぁ。もう、行って。次から気をつけるように。」
琉夏「はーい。」
琥一「………………」
紺野「〇〇さん。」
〇〇「あっ、えーと、お疲れ様です……」
紺野「やれやれ、ようやく彼らを捕まえたよ。できるだけの注意はした。」
〇〇「どうでした?」
紺野「どうかな……正直成果はまったく期待してないよ。僕の言うことなんて聞くような2人じゃないのはわかってる。」
紺野「だからって見過ごすわけにはいかないし……」
〇〇「……生徒会長として?」
紺野「それもあるけど、でも、それだけじゃない。服装違反くらいならまだしも危ない噂も聞くから、」
紺野「顔見知りとして心配というか……はは、彼らにしてみれば大きなお世話だろうな。」
〇〇(紺野先輩……やっぱり優しいんだな)
〇〇(新名くんと紺野先輩だ)
新名「オレ、勉強しているとすぐ飽きるほうなんすけど、アレ使うと持つんすよ。」
新名「プラシーボかもだけど実際、順位上がったんで案外、侮れねぇなと。」
紺野「そっか。じゃあ僕も暗示にかかろうかな。」
新名「ハハッ、かかんなくても玉緒さん常にトップ3に入ってんじゃん。」
新名「てか、すげー……あの位置をキープできる勉強法、知りてぇ~。」
紺野「僕のほうこそ聞きたいよ。 前に、忘れたころに復習するって言ってたよね。」
新名「忘れかけのころ、が正解ッスね。記憶の強化に最適なのは。」
新名「脳のメカニズム知ってから勉強すると、面白いッスよ。いろいろ。」
紺野「へぇ……じゃあ今度、お互いの勉強法を披露してみようか。」
新名「押忍!」
〇〇(二人が勉強の話で盛り上がってる……なんだか意外なような)
〇〇(新名くんと紺野先輩だ)
新名「え! 全部!?」
紺野「うん。かなりアレ、気に入ったみたいで……詳細を聞いてきてくれって頼まれたんだけど、いいかな。」
新名「全然いいっすよ。てか、玉緒さん姉ちゃんいたんだ。」
紺野「紹介はしないよ?」
新名「や、カンベンしてください。玉緒さんのお姉さまなんて、恐れ多いッス。」
紺野「…………言い出しておいてなんだけど、ごめん。僕もムリだ。」
新名「え。……怖いんすか?お姉さん。」
紺野「うん、まあ……怒ると、ちょっとね。」
新名「あ~……その。なんつーか、お疲れッス。」
紺野「ハハハ……ありがとう……」
〇〇(そういえば、前にもアレがどうのって……何のことだろう?)
〇〇(新名くんと紺野先輩だ)
新名「これ、約束してた例のヤツっす。使い方のメモも入れといたんで。」
紺野「ありがとう、助かるよ。」
新名「あ、お姉さんのとは別に玉緒さんのも入れといたんで使ってください。バレないように。」
紺野「ハハ、がんばるよ。っと、ごめん。次は移動教室だからこれで。」
新名「押忍、お疲れっす!」
〇〇「新名くん。」
新名「〇〇さん。ちょりーっす。」
〇〇「ちょりっす。紺野先輩、忙しそうだね。」
新名「いっつもあんな感じじゃね?常に悩んでるっつーか。で、アロマオイルを渡したわけ。」
〇〇「アロマオイル?」
新名「うん。オレ入浴剤集めんの割と好きでさ。いいのあったから。」
〇〇「そっか。でもどうして新名くんが?」
新名「あ~……そこは、ホラ。疲れさせてる原因の一つにオレが含まれてるような気がしないでもないかな?みたいな?苦労かけてんだからこれくらいは。なあ?」
〇〇(校則違反を正したほうが喜びそう……って言ったら元も子もないかな?)
紺野「〇〇さん。」
〇〇「紺野先輩、卒業おめでとうございます。」
紺野「ありがとう。」
紺野「やれやれ、ここまで来るのにずいぶん時間がかかった。」
〇〇「モテモテでしたね?」
紺野「やめてくれよ……生徒会長だったからってこんなときばかり持ち上げるんだ。」
紺野「……でも、そう呼ばれるのも最後だと思うと、やっぱり寂しいな。」
〇〇「紺野先輩……」
女子生徒「紺野くん!先生囲んで写真撮るからおいでよ~!
紺野「……あ、クラスメイトが呼んでるから行ってくる。最後だしね。」
紺野「また連絡するよ。卒業してからも、よろしく。」
〇〇「はい!」
〇〇(紺野先輩、とうとう卒業しちゃうんだ……)
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