紺野「緑がみずみずしくて、気持ちいいだろうな。」 設楽「そりゃ、春だからな。」
紺野「春の公園って、ワクワクしない?」 〇〇「あ、わかります。どうしてかな……」 紺野「なにか、新しいことが始まりそうな気がするからさ。なぁ、設楽。」 設楽「わからないよ。俺に聞くな。」 紺野「そう? わかりにくいかな……」
〇〇「あ、向こうでバドミントンやってる。」 紺野「ほんとだ。楽しそうだな、今度やってみる?」 〇〇「いいですね!」 設楽「俺はパスだ。まぁ審判ぐらいなら、してやるけど。」
〇〇「紺野先輩と設楽先輩は春で何を思い浮かべますか?」 紺野「月並みだけど、出会いと別れかな。」 設楽「ショパンの『春・ト短調』。」 〇〇「あ、ピアノ曲ですか?」 設楽「あぁ、元は歌曲だけど。これも月並みな回答だな。」
紺野「やっぱり桜を見ないと、日本の春っていう気がしないよな。」 設楽「まぁ、反対はしない。」
紺野「今年は綺麗に咲いたな。」 〇〇「はい。すごく綺麗!」 設楽「おまえ、ほんとボキャブラリー貧困だな。」 〇〇「じゃあ、えっと……言葉にできないくらい綺麗!」 設楽「考えてもそれか。」
設楽「わっ、つむじ風だ!」 紺野「…………」 〇〇「……どうしたんですか? 紺野先輩。」 紺野「あっ! いや、君の髪に花びらが……つい見とれちゃった。」
設楽「ヨーロッパにいたときも、桜を見て和んでた覚えがある……」 〇〇「なんか、わかる気がします。桜って特別な感じがしますもんね。」 紺野「しかし設楽もやっぱり日本人だったんだな。ちょっと安心したよ。」 設楽「おまえな……人がせっかく感傷にひたってるのに……」
設楽「セミがうるさい。」 紺野「文句言うなって。街中よりは涼しいだろ?」
〇〇「今日は過ごしやすい日ですね。」 紺野「そうだな。おかげで設楽の文句を聞かずに済む。」 設楽「文句なんて言ってないだろ。……たまにしか。」 紺野「〇〇さん。設楽のたまには、ちょっと普通とは違うみたいだな。」 〇〇「ふふっ。」
設楽「暑い……」 〇〇「今日は35度まであがるみたいですよ。」 設楽「なんでこんな日に外出してるんだよ……」 紺野「いいじゃないか。楽しみにしてたろ?」 設楽「……してない。」
紺野「今日は暑いな。噴水のおかげで、少しは涼しいけど。」 設楽「いっそ、飛び込むか。」 〇〇「えっ!?」 設楽「冗談に決まってるだろ。」 紺野「君の反応が面白いから、設楽にからかわれるんだよ。」
紺野「並木道、紅葉が見頃だよ。」 設楽「落ち葉が邪魔だ、この季節は。」
紺野「はばたき山ほどじゃないだろうけど、ここでも紅葉は楽しめるな。」 設楽「桜、紅葉の赤にイチョウの黄色。悪くないな。」 〇〇「秋って地味なイメージもありますけど、本当はカラフルな季節なんですね。」 紺野「ああ、僕は好きだな。」 設楽「俺も秋は好きだ。暑くも寒くもないからな。」
〇〇「もう、すっかり秋ですね。」 紺野「うん、すっかり秋だな。」 設楽「あぁ、すっかり……何、当たり前のこと言ってるんだよ。」 紺野「設楽だってのってきたじゃないか。」 設楽「年寄りくさいんだよ、こういうの。」
〇〇「並木だけじゃなくて、空も夏とは違いますね……」 紺野「入道雲の代わりにいわし雲が増えるからね。」 設楽「あと夜になれば、星も変わるな。」 紺野「そうそう。いい着眼点だな。」 設楽「なんだよそれ、先生か?」
設楽「寒い。」 紺野「設楽は暑いのだって苦手だろ?」
紺野「寒いな。温かいものでも食べようか。」 〇〇「いいですね、なんにしましょう。」 設楽「ラーメンだ。それしかない。」 紺野「案外、庶民派だな。」 設楽「まあな。家じゃ食べられないし。」
設楽「なんでこんな寒いのに、わざわざ何もない場所に……」 紺野「何もないことはないだろ。冬の並木道は風情あるし、空気も澄んでて気持ちいいぞ?」 設楽「そんなもののために……」 〇〇「なんか、ごめんなさい……」 設楽「おまえが謝るようなことじゃない。悪かったよ、文句言って。」
〇〇「冬の公園ってちょっと寂しいですね。」 紺野「でもその方が、隣にいる人の温かみを感じられるかも、なんてな。」 設楽「だってさ。どうなんだ?〇〇。」 〇〇「え!? ど、どうでしょう……」
設楽「無駄に疲れるだけなのに……」 紺野「来てから文句言うなよ、入るしかないだろ。」
〇〇「2人とも、泳がないんですか?」 紺野「泳ぎはちょっと苦手でね……」 設楽「人間は水の中じゃ息ができないからな。」 紺野「泳ぎ以外なら……そうだ、ビーチボールで遊ぼうか?」 設楽「……それなら、俺もやる。」
〇〇「2人ともそんなところにいないで、泳ぎましょうよ。」 紺野「はは。僕はもう少し休んでからにするよ。」 設楽「……めんどくさい。」 〇〇「……もう!」
設楽「なんでこんな所に……」 紺野「あれならどうだ?ウォータースライダー。」 〇〇「いいですね!」 紺野「ほら、設楽も行くぞ。怖くないから。」 設楽「……そういう問題じゃない。」
設楽「紺野、期待してるぞ?」 紺野「勘弁してくれ、意地が悪いな……」
〇〇「設楽先輩。スケートは得意なんですね。」 設楽「“は”ってのが気になるけど、まぁな。なんか相性がいいんだよ。」 〇〇「紺野先輩は……」 紺野「僕はダメだな。スキーだけは得意なんだけど。」 設楽「……コーチしてやろうか?」
設楽「寒いな……」 〇〇「寒くないと、氷が溶けちゃいますから。」 設楽「わかってるよ、そんなことは。まぁ、滑ってれば少しはあったかくなるか。」 紺野「滑れるだけいいよな。こっちは転びすぎてあちこち痛いよ。」 〇〇「ふふっ。ちょっと休みましょうか。」
紺野「おっ……と!」 設楽「あぶなっかしいな。」 紺野「わあっ!」 設楽「痛っ! 巻き込むなよ。」 〇〇(ふふっ、なんだかんだ言って楽しそう……)
紺野「静かな場所だけど、展示してあるものはどれもいい刺激になるんだよな。」 設楽「課外授業みたいなこと言うなよ。」
〇〇「銅鐸って何に使われてたんですか?」 設楽「そこに説明あるだろ、自分で読めよ。」 〇〇「う……紺野先輩に聞いた方がわかりやすいかなって……」 紺野「僕は構わないよ。じゃあ、簡単に。」 設楽「おまえはこいつに甘過ぎなんだよ。」
〇〇「紺野先輩は、博物館が似合いますね。」 紺野「そう? 落ち着くし好きな場所ではあるけど……変かな?」 〇〇「そんなことないですよ。」 設楽「あぁ。年寄りくさい紺野には骨董品が良く似合う。」 紺野「年寄りくさいは余計だ。」
〇〇「わぁ、綺麗! なんですか、これ?」 紺野「江戸時代の大名家の嫁入り道具だそうだよ。」 〇〇「わたしもこんなの持って、お嫁に行きたいな。」 設楽「おまえの場合、もらい手を探すのが大変そうだな。」 〇〇「もう!」
設楽「ここは変わった植物が多いんだろ?」 紺野「そうだな。近隣の植物園と比べても充実してる。」
設楽「サボテンのコーナー、結構面白かったな。」 〇〇「すごく大きいのや、花を咲かせてるのや……不思議な魅力がありますね。」 紺野「運気をあげる植物ともいわれているし、何かパワーがあるのかもな。」 〇〇「へえ~。わたしもサボテン育ててみようかな。」 設楽「やめとけって。おまえのことだから、トゲで怪我するぞ。」
〇〇「熱帯植物の温室にカフェがあるなんて、面白いですね。」 紺野「ちょっとしたリゾート気分が味わえるな。」 設楽「暑くてじめじめしてる。休憩するなら、普通のカフェでいいだろ?」 紺野「やれやれ、わかったよ。」
紺野「竹林コーナーなんてあるんだな。趣があっていいね。」 〇〇「……」 紺野「〇〇さん。どうかした?」 設楽「俺が当ててやる。タケノコ探してたんだろ。」 〇〇「……はい。」 設楽「わかりやすいヤツだな。」
紺野「ウインドウショッピング……ってやつか。」 設楽「女の買い物につきあうのも、男の役目だ。」
設楽「面白いもの、あるんだろうな?」 紺野「それを探すこと自体を楽しむんだよ。」
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