琥一「盛り上がってきたな、オイ。」 琉夏「よし、宴会の始まりだ! 行こう、〇〇ちゃん。」
琉夏「あ、〇〇ちゃん。」 〇〇「なに?」 琥一「アタマに桜の花びらだ。」 〇〇「あ、ホント……風流だねぇ……」 琥一「ガラかよ?」 〇〇「もう! たまにはいいでしょ?」 琉夏「そうだぞ、コウ。そんなだから毛虫踏むんだよ。」 琥一「ウェ!! マジかよ!!」 琉夏「ウソ。コウ、ダセェ。」 〇〇「やーい!」 琥一「なんだ、コラ?」
琉夏「桜といえばさ、桜餅についてる葉っぱって食う?」 〇〇「食べられるんでしょ? 琉夏くん食べないの?」 琉夏「なんかしょっぱいじゃん。せっかく桜餅が甘いのにさ。」 琥一「こいつ昔っから葉っぱだけ俺に食えってよこすんだよ。」 琉夏「だってコウ好きだろ?」 琥一「好き好んで喰ってんじゃねぇよ。」 〇〇「ふふっ!」
琥一「サクラか……日本人の心ってのが、わかる気がするな。」 琉夏「でもコウは、アメリカかぶれだろ?」 琥一「ウルセー。かぶれちゃいねぇよ。」 〇〇「“しずこころなく花の散るらむ”だね……」 琉夏「…………」 琥一「…………」 琉夏「わかってんのか、コウ?」 琥一「テメェもな?」
琥一「でよ、どうすんだ?」 琉夏「とりあえず……芝生広場行く?」
〇〇「う~ん。春の日差しがポカポカだね。」 琉夏「芝生の上で昼寝するか。コウ、ジュース買ってきて。」 琥一「テメェが行け。」 琉夏「俺、カネないもん。」 琥一「じゃ、なおさら行け!」 〇〇「はいはい! 買ってくるからケンカしない!」
〇〇「この花壇の花、なんだろう?」 琉夏「シャクヤク。花言葉は『恥じらい』『素直な性格』。」 〇〇「琉夏くんすごい!」 琉夏「もっと褒めて。」 琥一「花屋だからな、コイツは。」 琉夏「じゃコウは油言葉知ってんのかよ?」 琥一「あぁ……無理だ。シュールすぎてツッコミようがねぇ。」 〇〇「ふふっ!」
〇〇「春はなんだか、生命力が溢れてる感じがするよね?」 琥一「たしかにな。妙なのがうろつくのもそのせいかも知れねぇな。」 〇〇「妙なの?」 琥一「ほら、よくいんだろ。例えば……」 琉夏「見てて、俺、バクテンやる!」 琥一「こういうのだ……」 〇〇「…………」
琉夏「噴水、見に行こう。気持ちいいよ?」 琥一「ハァ?なんで見て気持ちいいんだよ。」
〇〇「見て、入道雲!夏だねぇ……」 琉夏「だねぇ……ほら、コウも言って。」 琥一「はしゃぐな、暑苦しいんだよ……」 琉夏「しょうがねーなぁ、コウはじじいなんだから。」 〇〇「あんなこと言ってるよ?」 琥一「ウルセー。なんでもいいから、日陰さがせ日陰……」
琉夏「ジャーン!」 〇〇「なに?」 琉夏「セミ捕まえた。」 琥一「……こっち来んなよ?」 〇〇「かわいそうだから、放してあげなよ。」 琉夏「チェッ、ほら、コウの方に飛んでけ。」 琥一「あ、バカ、オマエ――あぁ!これだから夏はよ!」
〇〇「はぁ……今日も暑いね?」 琥一「なこたぁ、出る時にわかってただろーが……」 琉夏「カリカリすんなよ。もっとこうさ、夏を楽しめばいいんだ。」 〇〇「うん、そうそう!琉夏くん、いいこと言うね!」 琥一「どうやって。」 琉夏「暑いとこ我慢して我慢して、そんで、アイス喰うとか。」 〇〇「あ、それいいかも!」 琥一「ガマンしねぇで喰う。アイス買って来い。」
琉夏「セピア色の世界ってさ……センチメンタルになる。」 琥一「クッ、そういうガラかよ。」
琥一「おい、この辺によ、栗の木があったろ?」 〇〇「栗の木? さあ……」 琉夏「違う。あれはここじゃなくて、はばたき山だ。」 琥一「そうか。ルカ、昔栗拾いしたな?」 琉夏「したした。焼いた栗から虫が出てきてさ。コウの虫嫌い、あれからだっけ?」 琥一「それもある。つーか、あぁ! 思い出させんな……」 〇〇「へぇ、そうなんだ……」
〇〇「公園の木が紅葉してる。秋だなぁ……2人はどんな時に秋だなって思う?」 琉夏「サンマ喰った時。」 〇〇「ふふっ、そうだよね? 琥一くんは?」 琥一「俺は、そうだな……」 琥一「単車乗ってて、手がかじかんだ時だな。」 〇〇「あ、なんかカッコいいね。」 琉夏「コウ、ズルいぞ。俺もなんかカッコいいこと言おう。」
琉夏「ハァ……」 〇〇「琉夏くん、どうしたの?」 琉夏「ちょっとね、秋だから……」 〇〇「そうか……」 琥一「サンマか?」 琉夏「当たり。夕ご飯サンマにしよう。」 琥一「悪かねぇな。」 〇〇「食欲の秋だなぁ……」
琉夏「……寒い。」 琥一「〇〇、歩くぞ。ルカが冬眠する。」
〇〇「寒いと思ったら……池が凍ってる。」 琉夏「ほんとだ。コウ、氷の上に乗って。」 琥一「なんでだよ。」 琉夏「〇〇ちゃん、乗って。」 〇〇「えぇ!? 危ないよ!」 琉夏「あぁ……寒くなきゃ自分で乗るのに……」
琉夏「〇〇ちゃん、編み物する?」 〇〇「え? どうして?」 琉夏「べつに……」 琥一「しねぇのか。」 〇〇「だから、どうして?」 琥一「べつに……」 〇〇「……そう。」 琉夏「寒いな、コウ。」 琥一「あぁ、寒ぃ。」
〇〇「今日も寒いね。」 琥一「ま、冬だからな。」 琉夏「わかってんならさ、なんでこんなとこ来んの……」 琥一「いいじゃねぇか? 気持ちいいもんだ。」 琉夏「わかんない。意味わかんない……ホットケーキ……」 琥一「どっか入るか。そろそろルカが限界だ。」 〇〇「え? そうなの!?」
琥一「同じ泳ぐなら、断然海の方がいいんだけどな。」 琉夏「ここは年中常夏だぜ? ほら、早く入ろう!」
琉夏「コウ、流れるプール逆走するぞ!」 琥一「上等!」 〇〇「ダメ、他の人の迷惑だよ?」 琉夏「じゃあ、3連でスライダー滑ろう。」 琥一「それだ。」 〇〇「……危なくない?」 琉夏「他のヤツの迷惑じゃないよ?」 〇〇「わたしは!?」 琥一「いくぞ!」 〇〇「ちょ、ちょっと! なんか2人ともテンション高いよ!?」
〇〇「ねぇ、琉夏くんと琥一くんって、泳いだらどっちが速い?」 琥一「そりゃオマエ、こいつに泳ぎ教えたのは、俺だ。」 琉夏「そうそう。あの頃はコウのが速かったな。」 琥一「コラ、そんじゃ今はテメェのが速ぇみてぇじゃねぇか。」 琉夏「だろ?」 琥一「はぁ?」 〇〇「じゃあ、競争しよう!」 琥一「なに賭けるよ?」 琉夏「ツーショットでジャグジー。」 〇〇「え?」 琥一「乗った。」 〇〇「えぇ!?」
○○「お待たせ!」 琉夏「おぉ……」 琥一「へぇ……」 ○○「えっと、水着? ……似合う?」 琥一「あ? あぁ……悪かねぇぞ? ルカ、俺は前だ。」 琉夏「あいよ。じゃ、後ろ見とく。」 ○○「なに?」 琉夏「なんでも? ……あ、コウ、今あそこのボウズがチラ見してた!」 琥一「あぁ? どいつだ?」 ○○「(なんか、ちょっときゅうくつ……)」
琉夏「今日は俺のターンだな。」 琥一「あぁそうかよ。ハァ……」
琥一「チッ、もうやめだ。俺はスナックコーナーに行く。」 琉夏「すねんなってコウ。」 〇〇「琉夏くんに教えてもらおうよ?」 琉夏「あ、それは――」 琥一「ウルセー。滑りたくねぇんだよ、俺は。」 琉夏「禁句だったのに……」 〇〇「ゴメン……」 琉夏「やれやれだ。」
〇〇「わっ、琥一くんどいて! ぶつかる!」 琥一「わっ!? おい、危ねぇ!!」 : 〇〇「ありがとう、琉夏くん! 琥一くん大丈夫?」 琥一「まあな?」 琉夏「ゴメン、コウ。レディーファーストだから。次転んだら助ける。」 琥一「ウルセー。転ばねぇよ……おぉッ!?」 琉夏「あらら。ちょっと助けて来る。」 〇〇(やっぱり2人は仲良し兄弟だね)
琉夏「じゃ、ちょっと回ってくる。」 〇〇「わぁ……琉夏くんって、スケート、すごく上手だね?」 琥一「まあな。情けねぇけど、こればっかりは勝ち目ねぇな。」 〇〇「琥一くん、なんか嬉しそうだよ?」 琥一「そうか?そんなこともねぇだろ。」 〇〇「自慢の弟だもんね?」 琥一「バーカ、そんなんじゃねぇよ。」 琉夏「コソコソ楽しそうだな。くっつくの禁止!」 琥一「へぇへぇ。」
琉夏「じゃ、入ろっか。」 琥一「あぁ。」
〇〇「ほら、よく見るといろいろあるよ?」 琉夏「そう言われても、なぁ?」 琥一「ガキの頃から、なんかっつーとここに連れて来られたからよ。」 〇〇「そっか、小学校の社会科見学とか?」 琉夏「まあね。もうミイラごっこしかすることない。じゃ、コウがミイラね。」 琥一「バカ、ジャンケンだそこは。な?」 〇〇「"な"って言われても……」
琥一「おいルカ、あれ高ぇのか?」 琉夏「あれ? あぁ、高そうだけどさ、重くて持てないって。」 〇〇「ん? ちょっと、なんの話!?」 琉夏「怪盗シミュレーション。」 琥一「暇だからよ。」 〇〇(やっぱり2人とも退屈そうな感じ……)
琉夏「コウ、モノマネやって。」 琥一「やんねーよ。なんでだよ?」 琉夏「暇だからさ。じゃあ、大迫ちゃんでいいや。」 琥一「はぁ? どうやんだ?」 琉夏「コラァー、コウイチー!」 琥一「オマエ、ぜんぜん似てねぇぞ?」 〇〇「シーッ! 静かに!」
琥一「んじゃ入るべぇ。」 琉夏「果物の試食コーナー何があるかな……」
〇〇「へぇ……あの花の蜜、食用になるんだって。」 琉夏「吸うと甘いよ、きっと。」 琥一「おい。」 〇〇「やだ、吸わないよ!」 琥一「オマエはな。」 琉夏「えっ? 吸わないの?」 琥一「な?」
琥一「ハァ……温室ってのは、どうも蒸し暑くてよ……」 〇〇「琥一くん、疲れちゃった?」 琉夏「じゃあバナナやる。」 琥一「オイ、ルカ! オマエどっから持ってきた?」 琉夏「あっちの試食コーナー。」 〇〇「ビックリした……」 琉夏「え? なに俺……そんな?」
琉夏「白いハイビスカスだ。」 〇〇「あ、本当だ……」 琉夏「白いハイビスカスを持ってる子は、幸せな花嫁になる。」 〇〇「へぇ……いいな。」 琉夏「ほら、コウ。いいなって。」 琥一「あ?」 琉夏「ダメだな、コウは……じゃあオレが――」 〇〇「え!? ダメダメ、いらないから!」
琥一「ハァ……ウインドウショッピングつってもよ……」 琉夏「コウ、散歩だと思えばいいよ。」
琥一「……よし。まずは電化製品からだな。」 琉夏「宝探しはコウに任せた。」
タグ:
このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー と 利用規約 が適用されます。