海底からの流出への対策


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(暫定版。BOP(Blow out preventer,暴噴防止装置)の構造や掘削手法についての詳細な解説は後日追加予定)

現場の状況については、初期に発表された以下の図が分かりやすい。


沈没当時の状況(図の説明)


  • Deepwater Horizonが沈没し、地下と海上を繋ぐ油とガスの噴出経路となっていたRiserとDrill Pipeが外れ、海底に横たわっている。

 本来、BOPはフェイルセーフ構造になっており、リグからのコントロール(電気的、圧力的な独立したライン)を失えば、自動的に井戸元を遮断するように出来ている。しかし、この事故では、それが機能していない。

  • 井戸元の周りを、ROVが取り囲んでいる。遠隔操作で動くこのROVによってBOPを直接作動させ、井戸元からの流出を止めようとしたが、これは失敗。何故かBOPは以前として機能しない。

  • 油は合計三箇所から流出を続けている。この図が正確であるとすると、Riserの上端、その手前の折れた部分、そして井戸根元付近の三箇所から流出中。BPのプレスリリースに寄れば、後にこの内の一ヶ所を、ROVによって閉じることに成功。流出箇所は二箇所へ)

  • 図中左側、別のSemi-sub型リグDevelopment Driller Ⅲが、リリーフ井(Relief Well)を掘削している。この井戸は、横川から油が噴出している油層に直接掘り込み、セメントを圧入して流出を抑えるというもの。既に掘削を開始しているが、ターゲットに到達するまでは60日から90日かかる見通し。

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流出停止作戦


  • リリーフ井戸

暴噴に対する対策としての、基本中の基本にして、もっとも信頼性の高い作戦。
暴噴中の井戸に側面から別の井戸を掘り込み、高密度の泥水(でいすい)を流し込んで、油を押さえ込む。その後、セメントを圧入し、まさに根元で「栓」をする。

欠点は、実行までにかかる時間。BPは既にリリーフ井戸の掘削を始めているが、作戦完了までには掘削開始から少なくとも2ヶ月、おそらく3ヶ月はかかってしまうこと。(なお、BPは予備として、もう一本のリリーフ井戸も計画している。これは非常に珍しい。なお、掘削にかかる費用は、井戸1本あたり1日数千万円(場合によっては1億円)である))


  • BOP作動作戦

  • 巨大「囲い」作戦

 高さ12メートル、重さ100トンの巨大な鉄とコンクリートで出来た「囲い」を、海底の油の流出箇所に被せ、箱の上部に接続したRiserから、原油を海上の貯蔵・処理タンカーまで誘導する作戦。
 しかし、箱内に原油内のメタンが水と反応して結晶化したメタンハイドレートが溜まり、排出口が詰まってしまった。更に浮力で囲いが浮き上がってしまって、失敗。
 (考察。失敗原因は、メタンハイドレートの影響を小さくみていたこと、デハイドレイターであるエチルグリコールやメタノールの注入ラインを用意するなどのハイドレート防止策を行っていなかったことと考えられる)

  • シルクハット作戦

 上述の「囲い」作戦よりも大幅に小型な(高さ1.5m、直径1.2m、重さ2トン)、シルクハット型の装置を海底に下ろし、油を海上へと誘導する作戦。今回は、デハイドレイターの注入口も備えている。内部から水を排除するシステムを備えている。
 BPのコメントによると、5月11日夜より降下作業を開始、13日には成果が分かる見込み。結果失敗。


 (考察。海水を排除するという事は、つまり海底の管から吹き出る油の圧力を、この小さなシルクハットがまともに受けることを意味している。流出地点から「吹き飛ばされる」可能性があるため、何らかの重しを追加でつける機構があるかどうか、気がかりである。)


  • パイプ挿管作戦 (riser insertion tube tool)


 漏れ出しているライザーの端から、その半分程度の直径の管を入れ、その管から海上の処理施設に油をくみ上げる作戦。圧力を完全に引き受けるわけではないのでパイプの破裂や、吹き飛ばされる心配がなく、海水との混合が制限される上にデハイドレイター(ハイドレート防止剤)のメタノールラインも備え付けている。欠点は、完全には油を抑える事は出来ない事。
 結果として、この作戦は成功。流出する油の一部分を回収出来るようになった。しかし、LMRP作戦への移行に従い、ライザーパイプは根元で切断。この作戦は廃棄された。

しかし、回収するうちに、油の流出量は当初の推定の5000バーレルを上回ることが判明。(なぜなら、回収されている油が既に5000バーレル以上になっている)


  • トップ・キル作戦(Top Kill)(Junk-Shot作戦)


 BOP内へサブラインからアクセス(圧力テスト用ライン?)し、そこからまず"Junk"(タイヤ片やゴルフボールのようなもの)を注入。
(恐らく、高粘性、高密度の流体も同時に圧入する)。これによってBOP内に栓を作り、その後セメントを注入して流出を止める方法。

(解説。リリーフ井戸の前にこの流出を止める方法としては、確かに有望。但し、リスクがある。油を井戸元で止めてしまうため、その真下の部分に圧力が集中し、もしも破損があれば、新しい流出箇所を作り出しかねない。その場合、現在行っている挿管作戦は、無意味となり、流出量はかえって増大する可能性がある)

 5月27日ごろから作業が続いていたが、5月30日時点で、BPはTop Killは失敗と発表。LMRP作戦へと移行。

  • LMRP Cap作戦(Lower Marine Riser Package Cap)

 BOPの上部でライザーを切断。洋上からそこへライザーを降ろし、接続。油を海上へ逃がす作戦。
 6月5日時点で、設置は完了。ただし、完全密閉はかなわず。油は引き続きかなりの流量が海中に放出されている。BPの報告では、日10000バーレル近くが回収されており、この流量を15000バーレル程度まで増加させるプランとのこと。
 6月14日、BPの公式発表では一日15420バーレルの油と、3320万立方フィートのガスを回収(ガスはその後海上で燃焼済)していると報告。一応の成功としている。今後汲み上げ量を増加する方法を検討・実施するとのこと。現在、流出している油の日流量(回収される油も含む)は20000バーレルから40000バーレルと推定されている。


(解説(5月末段階)。海水との混合が起こらぬように接続するため、ハイドレートの生成を抑制できる。しかし、ライザー上部を切断してしまうため、油の流出量は一時的に増大する。BPの見込みでは20%程度の増大ということであるが、多少楽観的な数値に感じる。まず、ライザーパイプとドリルパイプと油との摩擦で圧力損失が生じ、油の勢いは弱まる。それとは別に油の粘り気を示す粘性という数値があるが、これは温度が低くなるほど低下する。海底という低温環境にあったことでパイプ内の熱は奪われ、油は多少なりとも流れづらくなっていたはずである。それを取り除いてしまう為、個人的な推測では流量は2倍近くになる可能性もある。そして、もしこの作戦が失敗した場合、その流量の増大は継続することになる)




(その他、ゴシップレベルの話)

  • 核爆弾作戦

海底で核爆弾を爆発させ、井戸元を衝撃で崩壊させ、油の流出を防ぐという計画。

(解説。限りなく妄想(1)に近い話。
井戸にはケーシングという鉄管が入っている。そして、この鉄管が、推定1300気圧(2)という地下から上がってきた油(海底近くまで上がってきても、おそらく700気圧以上を保っていると思われる)から、海底近くの緩い地層を守っている。もしもこの鉄管にヒビが入って割れた場合、噴出した油の高圧力で海底近くの岩盤に裂け目が生じ、そこから流れ出た油が泥の中を通って流出。油の出口を限定できない為、リリーフ井戸以外のあらゆる作戦で油漏れを止めることが出来なくなる。)

(1):最近(7月8日)核デバイス使用についてのコメントや、ロシアでの実績が紹介されていますので、少し補足を。この作戦で流出が止まる可能性が無いから「妄想」と書いたのではなくて、この作戦がここで使われる事が現時点では「妄想」という意味で書いております。理由はシンプルで、リリーフ井戸でのアプローチが全て失敗しない限りは検討にも値しないからであり、また、リリーフ井戸は何れかの方法で、成果を出す見込みが相当に高いからです。それに加えて申しますと、上述したように、失敗時のリスクが大きすぎます。
 もう一つ気になることは、旧ソ連では確かにこの作戦での実績はある、という事ですが、現在も石油開発を極めて活発に進めているロシアが、どうしてこの核爆発による暴噴対策プロジェクトを終了させたかを考えますと、やはり現実的なオプションとは思えません。なお、ロシアが「原油の回収率を向上させる為に」核を利用した地下刺激を行ったという「噂」は、ある程度石油開発に関った人間は一度は耳にした事がある話、…というゴシップレベルの情報も追記しておきます。

(2):6月中旬に公開された資料に寄ると、油層の圧力は1000気圧弱でした。メキシコ湾の異常高圧を考慮にいれて推測しましたが、このエリアではそれほどでもなかったようです。

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