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「事故原因」(2010/07/01 (木) 22:54:57) の最新版変更点
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(6月30日、現在編集中)
事故原因の説明は、以下の流れで行おうと思います。
・井戸の掘り方の基本の説明
・事故当時、どのような作業が行われていたかの説明
・何故暴噴(Blow out)が引き起こされたかへの考察
**石油の井戸の掘り方
では、深海掘削の方法を説明する為、大型研究船「ちきゅう」を例に使いましょう。この船は、科学調査船としては世界で始めて、石油開発に使われる「ライザー掘削」を採用した船です。(ちなみに、ちきゅうは、サンプル採取などの科学調査用としては石油開発施設より優れた部分もあります)
#image(http://www.scopenet.or.jp/main/products/scopenet/vol24/wn/image/wn_g01.jpg)
(http://www.scopenet.or.jp/main/products/scopenet/vol24/wn/wn1.html 様より拝借)
噴出防止装置と書かれているものが、話題になっているBOPです。事故後に海底に横たわっていたパイプは、この図の中のライザーパイプと、ドリルパイプの事です。図では少し判り辛いですが、ライザーパイプはBOPまでしか繋がっておらず、地下には伸びていません。以降は、ケーシングという鉄の管が埋められています。
井戸を掘るときには、この二つのパイプの間を循環する、「泥水(でいすい)」というものでコントロールする事がキーとなります。
この泥水はたいした優れもので、「その重さで、地層から吹き出そうとする油やガスを抑え込む機能」「熱を持ったビット(ドリルのこと)を冷やす機能」「堀屑を船の上にまで運んで、井戸の中を綺麗に保つ機能」「井戸の壁に泥の膜(マッドケーキと言います)を形成し、井戸を内側からある程度支える機能」等、多種多様な役割を果たします。
***色々書きましたが、ここでは「井戸の中というのは、泥水というものを使って高圧を保っていなければ、ガスや油が地層から入り込んできて、暴噴してしまう」という事だけ覚えてくだされば十分です。
次は、井戸の中がどういう構造になっているかについて説明します。
数千メートルもの深さを掘る分けですから、補強をしてやらなければ井戸は壊れてしまいます。この補強に入れるのが、ケーシングとライナーと呼ばれる鉄の管です。最初は太いものを、そして段々と細いものを入れて、何重にも井戸を補強していきます。
事故を起こしたリグの持ち主で操業者でもあるトランスオーシャンの報告資料を見てみましょう。これは、事故直前の井戸の様子です。
#image(http://www35.atwiki.jp/gomdwhtragedy/pub/WellFigure.JPG )
(http://energycommerce.house.gov/documents/20100614/Transocean.DWH.Internal.Investigation.Update.Interim.Report.June.8.2010.pdf 11ページ)
参考図を見てお気づきかと思いますが、ケーシングとケーシングの間に、アニュラスという隙間が出来ています。この部分は、適宜『セメント』によって埋めます。この部分がしっかりと埋まっていなければ、何時ガスや油が隙間を通って海底へ、そして地上へ上がってもおかしくはない状況が生まれるわけです。
***ここでは、「セメントというものがしっかり入っていないと、油やガスは地上へ噴出してしまう事になりうる」という事が肝となります。
井戸の掘り方については、以上で十分かと思います。それでは、事故当時の話へと移ります。
**事故当時、何が起きていたか
事故の発生は2010年4月20、21時50分頃でした。その直前、井戸では何が行われていたのかを見ていきましょう。
この井戸は油の集積(存在)を確認する為の探掘井(Exploration Well)であり、かつ将来的に油を生産する井戸(Production Well)に転用するという、Keeperという井戸でした。無事に油の存在を確認し、井戸は一時的に閉じる(Temporally Plug and Abandonedされる)過程にありました。一番最後に入れるProduction Casingの設置も終わり、セメント作業も終了。後は、セメントがしっかり効いていて、井戸の中が地層からしっかりと隔離されているかを確認し、最後に井戸元からBOPをどかせるだけ、というところまで来ていました。
事故の5時間前の、夕方5時頃、この井戸はNegative Pressure Test(減圧テスト)というテストを開始しました。これは、井戸内の圧力を低くする事によって、地層と井戸がセメントやシールによってしっかり隔離されているかを確認するテストです。上記の図の中に、海水が入っているのが見えます。これは、井戸内を泥水より軽い海水に置き換える事によって、地層と井戸内との圧力差を大きくする為です。
テストは一見順調に進んでいたようですが、ここに問題がありました。&blanklink(2010年5月25日付けの下院エネルギー商業委員会からの報告){http://energycommerce.house.gov/documents/20100525/Memo.BP.Internal.Investigation.pdf}に寄ると、
「予想された流体のリターン量は5バーレル(約800リットル)であったのに対して、実際にはその3倍の15バーレル(約2400リットル)のリターンがあり、これは井戸の中に何かが入り込んだ(つまり油やガス)事を示唆している」
「今後のテスト計画を議論している最中、Kill Line(1)にて1400Psi(ポンド/平方インチ。100気圧弱)の圧力上昇があったが、これを圧抜きしてしまった。その間、(2)ドリルパイプ内部の圧力は1400Psiのまま(この行動が、井戸内の圧力の状況の誤判断に繋がったと推測されます)。後にBPの調査員はこれを「基本的なミス」と指摘している」
(1) KILL LineとはBOPに備え付けられている泥水等を注入する高圧に対応したライン。このような、ライザー内を循環する以外のルートがある事で、様々なテストに対応できる。Top Kill作戦ではこの部分から泥水を送り、6月下旬からはこのラインも使って油の回収を行っている)
(2)ドリルパイプとは、上図の中央、DPと書かれた細い管。先端にドリルをつけて下ろす事に使われる事からこう呼ばれている。
その後、BPは井戸の中を更に海水で置き換えるプロセスへ進むことを決定。この判断の詳細はわかりません。「テスト結果に満足した」という情報がありますから、問題なしと判断して「Sheen Test」へ移ったようです。このテストは、井戸内の流体が静止しているかどうかを確認するテストです。
しかし、井戸からの流体のリターンは続きます。井戸内が不安定である事が確認されました。この間リグでどのような対策が取られていたかの詳細は不明です。やがてガスの噴出が起こり、井戸が暴噴。この井戸の油のGOR(ガスオイルレイシオ。地底から出てきた油から、どれだけのガスが遊離するかを示す数値)はおよそ3000 scf/bbl.簡単に言えば出てきた油の500倍以上の体積のガスが拡散します。ガスはおそらくリグのディーゼルエンジンに引火し、爆発。リグは炎上しました。
**何故暴噴(Blow out)が引き起こされたか
&blanklink( 2010年6月14日付けの”5つの質問”){http://energycommerce.house.gov/documents/20100525/Memo.BP.Internal.Investigation.pdf}を参照して、事故原因に繋がったと思われる要因を考察していきます。
(この質問の関連資料を見たい方は、&blanklink(こちらからどうぞ){http://energycommerce.house.gov/index.php?option=com_content&view=article&id=2043:chairmen-send-letter-to-bp-ceo-prior-to-hearing&catid=122:media-advisories&Itemid=55
}こちらからどうぞ。
5つの質問とは、以下のようなものです。
・Q1 何故、ガスの流出に対してのバリアーが少ない井戸デザインを採用したのか
・Q2 何故、セメント作業において、セメントが不均質に入る事を防ぐための「セントラライザー(Centralizer)」を十分な数使わなかったのか。
・Q3 何故、セメント結果を検査する為の「セメントボンドログ」を行わなかったのか
・Q4 何故、ガスが含まれているかもしれない泥水を、十分に事前に循環しておかなかったのか
・Q5 何故、圧力テストを行う前に、井戸元(Wellhead)をロックダウンスリーブ(Lockdown Sleeve)で保護しておかなかったのか。
この5つの質問状は、成程事故原因として可能性のあるポイントをよく抑えていると思います。技術的な説明を細かく書くと長くなりますので、資料内の情報を簡単に纏めます。
***Q1に関して
BPは、最終的に上の図で示したように、Production Casing(井戸の底から上までを繋ぐ一連の鉄管)を挿管しました。これは、掘る前の計画通りであり、政府側の監督機関である&strong(){MMSも承認していました。}
ですが、掘ってみたところ問題が発覚、社内資料では「ライナーとタイバック」という組み合わせに変更したほうが安全性が高いので、変更すべきだ、という提案が上がっていました。
しかし、この「ライナーとタイバック案」は、ちょうどいい鉄管の在庫がないという理由で却下されました。また、この事を相談するメールには、「ケーシングを直接のほうが、時間を節約できる」という趣旨の事も書かれていました。
Q2
&counter(total)
(後々説明に使うかもしれない資料へのリンクや文章を保管しています)
http://oilgas-info.jogmec.go.jp/report_pdf.pl?pdf=1006_out_k_us_deepwater_horizon%2epdf&id=3591
http://www.theoildrum.com/node/6462
http://energycommerce.house.gov/index.php?option=com_content&view=article&id=1997:hearing-on-inquiry-into-the-deepwater-horizon-gulf-coast-oil-spill&catid=133:subcommittee-on-oversight-and-investigations&Itemid=73
6月下旬現在で判ってる事を簡単にだけ記載します。
***BPは当初予定していたケーシング(鉄管。それも、井戸の上まで繋げるもの)に代わって、ライナー(井戸の途中だけを繋ぐ鉄管)とタイバック(ライナーの上に繋げる鉄管)の組み合わせを使う事を検討していた。理由は、ライナーとタイバックにした方が、セメントを使う箇所が増え、油層と地上との間に余分にバリアーを設置出来るから。また、ケーシングの裏側に流体を回す際の圧力を制限でき、地層が割れるリスクを低減できるから。しかし、ちょうどよい鉄管の調達が困難であったため、結局は当初のケーシング案を採用。
***井戸底部、油層の直情の地層は割れやすい事がわかっていた。井戸を完成させる為には、セメントをそこに流し込み、井戸と油層・地層をしっかり隔離する事が必要であった。セメント作業を担当するハリバートン社のエンジニアは、その地層の割れ易さを考慮して、21個のセントライザーという器具をつけることを提案。しかしBP側は取り付け作業に要する時間を理由に、これを却下。セントライザーは7個になった。このセントライザーは、井戸内に挿入する鉄管(ケーシング)を中央に置くのみならず、セメントの流れる速度を制御する役割も持っていた。
(結果的にこの判断で地層が割れたかどうかの証拠は、まだ見つかっていない)
***井戸内がしっかり隔離されているかを調べる減圧テスト(Negative Pressure Test)の結果、圧力の上昇が計測された。減圧した圧力が回復するという事は、どこかから(それはつまり地層から)圧力が供給されていることを示す。そしてその圧力の供給は、油ガスが井戸に入り込んだ事を示唆する。だが、BPはこれを油ガスの進入と判断しなかった。
(致命的な判断ミスなのだが、このプロセスの詳細はまだ未確認)
***減圧テスト後、井戸上部のバルブ(おそらくBOP)を開放。井戸内に入り込んでいたガスが上昇し、地上で爆発。引火元は確定していないがリグのディーゼルエンジンではとの説がある。
***爆発直前、BOPを閉じる(中を通っているパイプを切断して締める)よう操作したが、何故かBOPはパイプを切断出来ず。BOP自体はフェイルセーフ機構になっており、リグから圧力、または信号を送って「開かせて」以内限り自動的に閉まるはずなのだが、閉まらない。
(この原因はいまだ不明。作業の仮定の中で、どうしてもBOPでも切断出来ない部分が通る事もあるが、圧力テストの最中にその部分がBOP内を通っているというのは、作業設計の大きなミスである)
以下の図はイメージです。少し古い情報ですが、ご参照ください。
http://media.nola.com/news_impact/other/oil-cause-050710.pdf
資料の山
http://www.drillscience.com/bp/
&counter(total)
(6月30日、現在編集中)
事故原因の説明は、以下の流れで行おうと思います。
・井戸の掘り方の基本の説明
・事故当時、どのような作業が行われていたかの説明
・何故暴噴(Blow out)が引き起こされたかへの考察
**石油の井戸の掘り方
では、深海掘削の方法を説明する為、大型研究船「ちきゅう」を例に使いましょう。この船は、科学調査船としては世界で始めて、石油開発に使われる「ライザー掘削」を採用した船です。(ちなみに、ちきゅうは、サンプル採取などの科学調査用としては石油開発施設より優れた部分もあります)
#image(http://www.scopenet.or.jp/main/products/scopenet/vol24/wn/image/wn_g01.jpg)
(http://www.scopenet.or.jp/main/products/scopenet/vol24/wn/wn1.html 様より拝借)
噴出防止装置と書かれているものが、話題になっているBOPです。事故後に海底に横たわっていたパイプは、この図の中のライザーパイプと、ドリルパイプの事です。図では少し判り辛いですが、ライザーパイプはBOPまでしか繋がっておらず、地下には伸びていません。以降は、ケーシングという鉄の管が埋められています。
井戸を掘るときには、この二つのパイプの間を循環する、「泥水(でいすい)」というものでコントロールする事がキーとなります。
この泥水はたいした優れもので、「その重さで、地層から吹き出そうとする油やガスを抑え込む機能」「熱を持ったビット(ドリルのこと)を冷やす機能」「堀屑を船の上にまで運んで、井戸の中を綺麗に保つ機能」「井戸の壁に泥の膜(マッドケーキと言います)を形成し、井戸を内側からある程度支える機能」等、多種多様な役割を果たします。
***色々書きましたが、ここでは「井戸の中というのは、泥水というものを使って高圧を保っていなければ、ガスや油が地層から入り込んできて、暴噴してしまう」という事だけ覚えてくだされば十分です。
次は、井戸の中がどういう構造になっているかについて説明します。
数千メートルもの深さを掘る分けですから、補強をしてやらなければ井戸は壊れてしまいます。この補強に入れるのが、ケーシングとライナーと呼ばれる鉄の管です。最初は太いものを、そして段々と細いものを入れて、何重にも井戸を補強していきます。
事故を起こしたリグの持ち主で操業者でもあるトランスオーシャンの報告資料を見てみましょう。これは、事故直前の井戸の様子です。
#image(http://www35.atwiki.jp/gomdwhtragedy/pub/WellFigure.JPG )
(http://energycommerce.house.gov/documents/20100614/Transocean.DWH.Internal.Investigation.Update.Interim.Report.June.8.2010.pdf 11ページ)
参考図を見てお気づきかと思いますが、ケーシングとケーシングの間に、アニュラスという隙間が出来ています。この部分は、適宜『セメント』によって埋めます。この部分がしっかりと埋まっていなければ、何時ガスや油が隙間を通って海底へ、そして地上へ上がってもおかしくはない状況が生まれるわけです。
***ここでは、「セメントというものがしっかり入っていないと、油やガスは地上へ噴出してしまう事になりうる」という事が肝となります。
井戸の掘り方については、以上で十分かと思います。それでは、事故当時の話へと移ります。
**事故当時、何が起きていたか
事故の発生は2010年4月20、21時50分頃でした。その直前、井戸では何が行われていたのかを見ていきましょう。
この井戸は油の集積(存在)を確認する為の探掘井(Exploration Well)であり、かつ将来的に油を生産する井戸(Production Well)に転用するという、Keeperという井戸でした。無事に油の存在を確認し、井戸は一時的に閉じる(Temporally Plug and Abandonedされる)過程にありました。一番最後に入れるProduction Casingの設置も終わり、セメント作業も終了。後は、セメントがしっかり効いていて、井戸の中が地層からしっかりと隔離されているかを確認し、最後に井戸元からBOPをどかせるだけ、というところまで来ていました。
事故の5時間前の、夕方5時頃、この井戸はNegative Pressure Test(減圧テスト)というテストを開始しました。これは、井戸内の圧力を低くする事によって、地層と井戸がセメントやシールによってしっかり隔離されているかを確認するテストです。上記の図の中に、海水が入っているのが見えます。これは、井戸内を泥水より軽い海水に置き換える事によって、地層と井戸内との圧力差を大きくする為です。
テストは一見順調に進んでいたようですが、ここに問題がありました。&blanklink(2010年5月25日付けの下院エネルギー商業委員会からの報告){http://energycommerce.house.gov/documents/20100525/Memo.BP.Internal.Investigation.pdf}に寄ると、
「予想された流体のリターン量は5バーレル(約800リットル)であったのに対して、実際にはその3倍の15バーレル(約2400リットル)のリターンがあり、これは井戸の中に何かが入り込んだ(つまり油やガス)事を示唆している」
「今後のテスト計画を議論している最中、Kill Line(1)にて1400Psi(ポンド/平方インチ。100気圧弱)の圧力上昇があったが、これを圧抜きしてしまった。その間、(2)ドリルパイプ内部の圧力は1400Psiのまま(この行動が、井戸内の圧力の状況の誤判断に繋がったと推測されます)。後にBPの調査員はこれを「基本的なミス」と指摘している」
(1) KILL LineとはBOPに備え付けられている泥水等を注入する高圧に対応したライン。このような、ライザー内を循環する以外のルートがある事で、様々なテストに対応できる。Top Kill作戦ではこの部分から泥水を送り、6月下旬からはこのラインも使って油の回収を行っている)
(2)ドリルパイプとは、上図の中央、DPと書かれた細い管。先端にドリルをつけて下ろす事に使われる事からこう呼ばれている。
その後、BPは井戸の中を更に海水で置き換えるプロセスへ進むことを決定。この判断の詳細はわかりません。「テスト結果に満足した」という情報がありますから、問題なしと判断して「Sheen Test」へ移ったようです。このテストは、井戸内の流体が静止しているかどうかを確認するテストです。
しかし、井戸からの流体のリターンは続きます。井戸内が不安定である事が確認されました。この間リグでどのような対策が取られていたかの詳細は不明です。やがてガスの噴出が起こり、井戸が暴噴。この井戸の油のGOR(ガスオイルレイシオ。地底から出てきた油から、どれだけのガスが遊離するかを示す数値)はおよそ3000 scf/bbl.簡単に言えば出てきた油の500倍以上の体積のガスが拡散します。ガスはおそらくリグのディーゼルエンジンに引火し、爆発。リグは炎上しました。
**何故暴噴(Blow out)が引き起こされたか
&blanklink( 2010年6月14日付けの”5つの質問”){http://energycommerce.house.gov/documents/20100525/Memo.BP.Internal.Investigation.pdf}を参照して、事故原因に繋がったと思われる要因を考察していきます。
(この質問の関連資料を見たい方は、&blanklink(こちらからどうぞ){http://energycommerce.house.gov/index.php?option=com_content&view=article&id=2043:chairmen-send-letter-to-bp-ceo-prior-to-hearing&catid=122:media-advisories&Itemid=55
}こちらからどうぞ。
5つの質問とは、以下のようなものです。
・Q1 何故、ガスの流出に対してのバリアーが少ない井戸デザインを採用したのか
・Q2 何故、セメント作業において、セメントが不均質に入る事を防ぐための「セントラライザー(Centralizer)」を十分な数使わなかったのか。
・Q3 何故、セメント結果を検査する為の「セメントボンドログ」を行わなかったのか
・Q4 何故、ガスが含まれているかもしれない泥水を、十分に事前に循環しておかなかったのか
・Q5 何故、圧力テストを行う前に、井戸元(Wellhead)をロックダウンスリーブ(Lockdown Sleeve)で保護しておかなかったのか。
この5つの質問状は、成程事故原因として可能性のあるポイントをよく抑えていると思います。技術的な説明を細かく書くと長くなりますので、資料内の情報を簡単に纏めます。
***Q1に関して
BPは、最終的に上の図で示したように、Production Casing(井戸の底から上までを繋ぐ一連の鉄管)を挿管しました。これは、掘る前の計画通りであり、政府側の監督機関である&strong(){MMSも承認していました。}
ですが、掘ってみたところ問題が発覚、社内資料では「ライナーとタイバック」という組み合わせに変更したほうが安全性が高いので、変更すべきだ、という提案が上がっていました。
しかし、この「ライナーとタイバック案」は、ちょうどいい鉄管の在庫がないという理由で却下されました。また、この事を相談するメールには、「ケーシングを直接のほうが、時間を節約できる」という趣旨の事も書かれていました。
Q2
&counter(total)
(後々説明に使うかもしれない資料へのリンクや文章を保管しています)
http://oilgas-info.jogmec.go.jp/report_pdf.pl?pdf=1006_out_k_us_deepwater_horizon%2epdf&id=3591
http://www.theoildrum.com/node/6462
http://energycommerce.house.gov/index.php?option=com_content&view=article&id=1997:hearing-on-inquiry-into-the-deepwater-horizon-gulf-coast-oil-spill&catid=133:subcommittee-on-oversight-and-investigations&Itemid=73
6月下旬現在で判ってる事を簡単にだけ記載します。
***BPは当初予定していたケーシング(鉄管。それも、井戸の上まで繋げるもの)に代わって、ライナー(井戸の途中だけを繋ぐ鉄管)とタイバック(ライナーの上に繋げる鉄管)の組み合わせを使う事を検討していた。理由は、ライナーとタイバックにした方が、セメントを使う箇所が増え、油層と地上との間に余分にバリアーを設置出来るから。また、ケーシングの裏側に流体を回す際の圧力を制限でき、地層が割れるリスクを低減できるから。しかし、ちょうどよい鉄管の調達が困難であったため、結局は当初のケーシング案を採用。
***井戸底部、油層の直情の地層は割れやすい事がわかっていた。井戸を完成させる為には、セメントをそこに流し込み、井戸と油層・地層をしっかり隔離する事が必要であった。セメント作業を担当するハリバートン社のエンジニアは、その地層の割れ易さを考慮して、21個のセントライザーという器具をつけることを提案。しかしBP側は取り付け作業に要する時間を理由に、これを却下。セントライザーは7個になった。このセントライザーは、井戸内に挿入する鉄管(ケーシング)を中央に置くのみならず、セメントの流れる速度を制御する役割も持っていた。
(結果的にこの判断で地層が割れたかどうかの証拠は、まだ見つかっていない)
***井戸内がしっかり隔離されているかを調べる減圧テスト(Negative Pressure Test)の結果、圧力の上昇が計測された。減圧した圧力が回復するという事は、どこかから(それはつまり地層から)圧力が供給されていることを示す。そしてその圧力の供給は、油ガスが井戸に入り込んだ事を示唆する。だが、BPはこれを油ガスの進入と判断しなかった。
(致命的な判断ミスなのだが、このプロセスの詳細はまだ未確認)
***減圧テスト後、井戸上部のバルブ(おそらくBOP)を開放。井戸内に入り込んでいたガスが上昇し、地上で爆発。引火元は確定していないがリグのディーゼルエンジンではとの説がある。
***爆発直前、BOPを閉じる(中を通っているパイプを切断して締める)よう操作したが、何故かBOPはパイプを切断出来ず。BOP自体はフェイルセーフ機構になっており、リグから圧力、または信号を送って「開かせて」以内限り自動的に閉まるはずなのだが、閉まらない。
(この原因はいまだ不明。作業の仮定の中で、どうしてもBOPでも切断出来ない部分が通る事もあるが、圧力テストの最中にその部分がBOP内を通っているというのは、作業設計の大きなミスである)
以下の図はイメージです。少し古い情報ですが、ご参照ください。
http://media.nola.com/news_impact/other/oil-cause-050710.pdf
資料の山
http://www.drillscience.com/bp/
&counter(total)