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後編 ぼーさんが助けに来る

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目次



「ナウマクサンマンダバザラダンカン」
赤い閃光と共に、聞き覚えのある真言が麻衣の耳に届く。
(――――ぼーさんが戻ってきたんだ――――――――)
安堵感から体の力が抜ける。怪物は一瞬のうちに麻衣の身体を覆っていた触手を引っ込めると、暗闇の中に姿を消した。

近所のスーパーから戻ってきた滝川は驚いた。暗い庭の片隅で彼が妹のように思っている少女が「何か」に襲われているのを発見したからだ。
(どうして麻衣が此処に!?―――)疑問に思うより早く、真言を唱え麻衣の下に駆け付ける。
「大丈夫か!?麻衣!!!」
少女は滝川の顔を見ると安心したのか、火がついた様に泣き出した。可哀想に――余程怖かったのだろう――震えている。
「怖かったな、もう大丈夫だ。」
そう言って頭を撫でてやる。そして麻衣を助け起こし家の中に連れて行こうとした滝川だが、少女の脚に血が伝っているのを見て仰天する。

心の中の動揺を隠し、方向を変え、通りに出てタクシーを拾う。
「千代田区の○○まで」
運転手に行き先を告げると、隣に座って泣きじゃくっている麻衣の肩を抱き寄せ、黙って頭を撫で続ける。
そうしている内に、泣き疲れたのか麻衣は眠ってしまった。

コーヒーのいい香りで麻衣は目を覚ました。
(………あれ……ここ、何処だろう………………)
ベッドから身を起こして辺りを見回してみると、広々とした部屋の一角に滝川が立っているのを見つけた。
「ぼーさん、ここどこ?」
声をかけると、滝川が振り返る。
「――麻衣、起きたのか。ここは俺んち。お前さん、眠っちまうから運んで来んの大変だったんだぞ。」
何だか分からずキョトンとした顔をしていた麻衣だったが、すぐに自分の身に起きた事を思い出しハッとする。俯いて身を強張らせる麻衣の所に滝川がコーヒーを持って来る。
「………ぼーさん…………あたし……………」
「とりあえずこれでも飲んで、気を落ち着けろ………な?」
「………………うん」
麻衣は差し出されたマグカップを受け取った。そんな麻衣に、滝川はポツリポツリと今回の事件について語り始めた。

二日前、SPRに訪ねて来た男が言うにはこうだ。半年程前からおかしな夢を見るのだ、と。夢の中で彼は、かつて思いを寄せていた女性に誘惑され身体を重ねる。しかしその夢を見た次の日は決まって体が疲れているそうだ。これだけなら欲求不満による願望だろうと片付けるのだが、問題はそれだけではない。大学生になる彼の娘が自宅の居間で裸で意識を失って倒れていた。娘が「何者かにレイプされた」と言うので、病院に連れて行ったが、医者はそんな痕跡は無いと言う。その事で精神に変調をきたし、家に篭りきりになった彼女を大学の友人が何度か見舞いに来たのだが、その中の一人が同じように玄関に倒れていた。その後の経過も彼の娘と全く同じである。友人の親は男に強姦されたのではないかと家に怒鳴り込んできて、ホトホト困り果てている。最近では彼自身おかしな夢のせいで目に見える程やつれて仕事に行くのもやっとだという。

「夢魔の仕業じゃないか、って話してたんだが……」
「夢魔?」
「…ああ、でも、さっき麻衣を襲った奴を見ると猫又みたいな感じだったな……」

「襲った」という単語を聞いて、先程の陵辱を思い出し、麻衣は青い顔をして自分の体をきつく抱き締める。
黙りこくってしまった麻衣を見て、滝川は罪悪感を感じる。依頼者があまり大勢の人間――特に女性――には知られたくないと言うので話を伏せていたのだが、こんな事になるのなら麻衣にきちんと事情を説明しておくのだった。麻衣は書類を届けに来たのだという。きっとそれ程の危険は無いと考えていたのだろう。
真っ青な顔をしている麻衣に滝川はなんと声をかけてやればいいのか戸惑う。

「風呂を貸してほしい」と言うので、滝川は麻衣を窓際のバスタブまで案内する。この部屋は何処も間仕切りなどは無く、風呂もシャワーカーテンで遮るだけの物となっている。
「悪いな、こんなんで。」
「ううん、ありがと」
力無く笑う麻衣の表情に滝川の心は痛む。

カーテンを閉めると、麻衣はのろのろと身に着けていた衣服を脱ぐ。身体中が震えて上手く力が入らない。漸く服を脱いで、シャワーを浴びようとバスタブに足をかけた途端、滑って転んでしまう。
「キャアアッ!!」
「っ、どうしたっっ!?」
「あ………大丈夫……転んだだけだから……」
「そうか…気を付けろよ」
気を取り直して、お湯の蛇口をひねろうとするが、どうにも力が入らない。浴槽に寄り掛かったまま、泣きたくなる。
(――あいつにされた事、全部洗い流して消してしまいたいのに――――)

何時まで経っても水音が聞こえてこないのを不審に思い、滝川は仕切りの向こうに声を掛ける。
「――麻衣、どうしたんだ?……何かあったのか?」
「なんか力入らなくって………腰抜けちゃって…………」
しばしの沈黙の後、麻衣は躊躇いがちに言った。
「ぼーさん…体洗うの……手伝ってもらっちゃ駄目………………?」

「………麻衣、入るぞ………」
「…うん…………」
流石にそれはちょっと、と思った滝川だったが、麻衣がどうしても体を洗いたいとせがむので渋々承知した。
Tシャツの袖とジーンズの裾だけ巻くって、滝川は布切れ一枚隔てた向こう側へと足を踏み入れる。
浴槽に凭れ掛かってこちらに背中を向けている麻衣の華奢な身体に少しドキリとする。
(何考えてるんだ!落ち着け………これは“麻衣”だぞ)
深く息を吸って邪念を追い払う。―――滅多な事を考えるな。彼女は傷ついているのだ、おかしな感情を持ってはいけない。状況を取り違えるな―――と気を取り直してシャワーのお湯を出すと、ぐったりしている麻衣の体を背後から洗い流し始める。


全身が暖かいお湯に包まれていくのに、麻衣はホゥッと溜息をついた。
(…………あったかい…………………)
心の底まで凍るようだった体に熱が戻ってくる。肩の力を抜きリラックスして水の流れに身を浸らせていたが、麻衣はそのうち体が必要以上に熱くなっていく気がしてきた。体が温まったと思ったら、お腹の奥がむずむずする。
(……あれ………なんだか…………)
麻衣は自分の体の変化に戸惑う。達く直前まで高められた身体の熱がぶり返してきたかのようだ。
(やだ…………あたしってば……)
そのまま何もないようにじっとしていたが、不意に滝川が麻衣の手を持ち上げるように掴んだ瞬間、甘い声を上げてしまう。
「あんっ」
「??!!!―――馬鹿、変な声出すなよ!」
滝川が焦った様子で言う。
「ごめん………なんか……あたし…変だ…………」
「……………………………」
そんな麻衣に滝川は何も言わず黙々と作業を続けていたが、突然
「ちょっと、前に回るぞ」
「え!!―――ぼ、ぼーさん!」
浴槽の中に入って麻衣の正面にかがみ込む。
「…あ………いや…………………」
滝川の視線に麻衣は恥ずかしそうに両手で胸を隠し、震える声で弱々しく抗議する。
(うう……ぼーさんに見られちゃった……………)
シャワーのお湯が、身を硬くしている麻衣の体を今度は正面から洗い流していく。麻衣は顔を伏せて黙っている。すると滝川が麻衣の両脚を割り開いた。
「!!!――やだっ、ぼーさん――――」
「こっちも洗ってやるよ」
泣きそうな声の麻衣に対し、滝川の声からは感情が読み取れない。立て膝の体勢で開脚され、身体が真っ赤になる。麻衣は恥ずかしさで死にたくなった。


滝川は湯気の中でほんのりと赤く色づいた麻衣の身体を眺める。開かれた足の間で、陵辱の跡の血が固くなって内股にこびり付いている。その痛々しさに顔をしかめ、滝川はシャワーのお湯で丁寧にその跡を清めていく。
太腿を撫でる滝川の手の動きに麻衣はどうにかなりそうになる。必死で声を上げそうになるのを耐え、身体の奥から湧き上がる衝動と闘う。しばらくそうされていた後、滝川の手が麻衣の秘部に伸びた。
「!!!???!!」
「ちゃんと綺麗にしないとな」

「ちょっ!!――ぼーさん、そんなのいいから―」
そんな麻衣の言葉を無視し、滝川は優しく割れ目をなぞり上げ、シャワーの勢いを抑えお湯を当てる。
「あう………やだって……………」
麻衣の体がびくんと跳ね上がる。そのまま指で秘唇を押し開き、内側からもなぞるようにしてやる。
「ああ………あ…あ………ぼーさん…………」
麻衣の秘所からはだらだらと愛液が流れていて、滝川はその淫らな光景から目が離せなくなる。
「………そんな…じろじろ見ないで……………」
消え入りそうな声で麻衣は訴えた。
「ああぁぁぁあん!!」
急にシャワーの水圧が強まり、麻衣は白い喉を仰け反らせる。強い快感に気を失いそうになる。
「――あっ!!―――あああ………あっ……あっ………」
ハァハァと荒い息をしている麻衣の秘口を弄っていた滝川の指が蜜壺の中に入り込む。
「中も綺麗にしてやるから…………」


麻衣はもう何が何だか分からなくなった。―――滝川は何を考えているのだろう、自分の身体は一体どうなってしまったのか―――強い波に攫われる様な感覚に正常な思考が働かない。
(あたし……変になっちゃったんだ…………あの化物にあんなことされて……………)
切れ切れに呼吸を繰り返しながら、麻衣はただ喘ぐことしか出来ない。
滝川の指が麻衣の中を探るように侵入する。
「んっ………くぅぅ―――――」
麻衣は苦しげに肩で息をして、滝川の腕を掴む。滝川は内部を慣らしながら指を増やし、陵辱の残滓を掻き出す。そして指で中を広げると痕跡を全て洗い流そうとするかのように、シャワーの水を送り込んだ。
「やぁぁ………駄目…………んぅ――――」
膣の中にぬるま湯が入ってくる感覚に麻衣はたまらず声を上げる。
切なげな吐息を漏らす麻衣を横目に滝川は人差し指と中指で秘口を広げたまま、親指でぷっくりと膨れ上がったクリトリスを転がすようにしてやる。
「ひっ…………あ………駄目だって…………」
高揚感から自然と目の端に涙を浮かぶ。麻衣はこのまま自分がどこかに連れて行かれそうな思いに捉われて必死でとどまろうとしたが、シャワーと親指の絶妙な愛撫により程無く絶頂に達してしまった。
「――――――んぅぅぅんっ!!」
両足で滝川を挟み込むようにしてしまい、彼の指をおびただしい量の愛液が濡らした。滝川が支えなければ麻衣の体はずり落ちていただろう。


滝川は涙目でがくがくと足を震わせている少女を見て良心の呵責を覚える。
(やりすぎたよな、流石に………)
こんな事をするつもりなどなかったのだ。だが儚げな麻衣の姿を見ている内に滝川の中に嗜虐心が沸き起こり、歯止めがきかなくなってしまった。必死で快感を堪え、恥らう姿がまた欲望をそそられた。
元々滝川はスタジオミュージシャンなぞしている職業上モテはするものの、女性に対してはどこか冷めた目で見ていて一線を引いた付き合いしかして来なかった。しかし目の前の少女に対しては珍しく明確な好意を感じていた。
それは麻衣がまだ幼くて女性特有のしたたかさを身に付けていないという事もあるだろうが、その持ち前の人懐こさと眩しい笑顔に心惹かれていた。明るく元気で、しかしとても淋しがり屋な部分のある彼女を可愛い妹のように思っていた。
いや、「保護者」という名目を掲げる事で自分の気持ちにブレーキをかけていた部分もある。十も年の離れている少女に本気になる訳にはいかない。
(こんな事しちまって……保護者失格だな、これじゃ俺もあのバケモンと大差ない………)
弱っているところに付け込むような真似をしてしまった。滝川は激しい罪悪感に駆られる。
「麻衣、悪かった。本当に済まん……」
この事は忘れて……と言おうとした滝川をキッと睨み付け、麻衣が発した言葉は意外なものだった。
「ひどいよ、ぼーさん。こんなんで放っておかれたら、たまんない………………ちゃんとして」

滝川は麻衣の身体を拭くと抱き上げてベッドに連れて行き、自分も服を脱いで少女の上に覆い被さった。
濡れて額に貼りついた麻衣の前髪が、男の熱い手でぬぐわれる。
触れるだけの優しいキスが繰り返され、目を閉じてそれに身を任せていると突然滝川の舌が口の中に入り込んできた。驚いて目を開けると滝川が真剣な目で見つめているので、麻衣は思わずどうしていいのか分からず目を瞑る。
舌を絡ませてくる滝川に対し、力を抜いてその動きに応える。重なった二人の身体が炎のように熱くて、麻衣は火傷してしまうんじゃないかと思った。
長い口付けの後に、滝川の腕が胸へと下りてきた。浅い膨らみの上で、二つの突起がピンと立って自己主張をしている。滝川は掌全体で乳房を揉み込むようにしながら指先で先端を玩ぶ。
「はあぁぁぁん…………」
「可愛いよ、麻衣……」
「ん……恥ずかしい………」
麻衣は恥ずかしそうに顔を背ける。そのまま滝川の腕が麻衣の全身を愛撫していく。麻衣の中で再び官能が燃え上がり始める。
仄暗いスタンドの灯りが滝川と麻衣の身体を照らし、二人の間を恋人同士のような甘い臭気が包み込む。


「本当にいいのか?」
「今更何言ってんの。それに………………ぼーさんならいいよ…あたし」
最終確認をする滝川に、ちょっと照れたように言うと麻衣は心の中で友人に詫びる。
(タカ、ごめんね……今だけだから……今だけぼーさんに縋らせて…………全部忘れさせて欲しい)
滝川がもう一度麻衣に口付ける。
「麻衣…………好きだ」
滝川は呪文のように呟くと、ゆっくり自分自身の欲望を麻衣の中に埋め込んでいった。


「―――――ん………んん………」
麻衣は異物感に慣れようと大きく呼吸を整えている。少女の花弁に男の赤黒い肉茎が突き刺さっている様子は痛ましげだ。痛くないか、と問う滝川に、麻衣は大丈夫だと片目をつぶって笑ってみせる。それでも、しばらくそのまま繋がっていた後、滝川はゆっくりと抽送を開始した。
ぎりぎりまで引き抜かれそうになって物足りなさを感じると、また奥まで入れられて圧迫感に息を詰まらせる。緩やかな動きに麻衣は体の力を抜いてその身を任せる。行為の最中も滝川の優しさが感じられ、麻衣は熱を孕んだ身体とは裏腹に何だか心がくすぐったくなった。
徐々に滝川のピストン運動が早くなっていく。それに応えるように麻衣は腰を動かす。
「…あっ、あっ……ぼーさん……気持ちいいよぉ…………」
快感で麻衣の意識が朦朧としてくる。

もどかしげに体の下で身をくねらせる少女を、滝川は高まる熱とは逆に、冷めたような虚しいような複雑な気持ちで見ていた。
(まだまだガキだと思ってたのに………)
快活な少女の変わりように、どこか悲しくなる。先程まで男を知らなかったはずの少女は、まるで娼婦のような喘ぎ声を上げている。
(これは麻衣じゃない―――――――俺の知らない“女”だ)
「…………ハァッ……ぼーさん……」
「こんな時にその呼び方は止せ………『ノリオ』って呼べよ」
「んっ、変だよ………そんなの………」
「今だけだから……………」
その言葉に納得したのか麻衣の口から「ノリオ」という単語が紡ぎ出される。
「麻衣…………麻衣……………」
滝川が切羽詰ったように少女の名前を呼ぶ。
ベッドが二人分の体重で激しく軋む。静かな部屋に荒い息遣いと繋がった部分からの水音が響いた。
滝川の腰のペースが抜き差しならないものになって、麻衣の声も上擦って来る。
「あたし、もう………もう…………」
「麻衣、俺もイキそうだ………」
「――――――んっ!!―――」
「!!―――――――麻衣っ!!!!」
麻衣の膣が達したと同時にギュっと締まる。滝川は低く呻くと、射精する直前で引き抜いて麻衣の腹の上にぶちまけた。
「…………… ーン…………」
その時麻衣が小さく呟いた名前を滝川は聞き逃さなかった。

「…………ぼーさん、ごめんね……」
「気にすんなって…………悪い夢だったんだ、皆忘れちまいな」
横たわったまま顔を覆って荒い息をついている麻衣に背を向け、滝川は胸の奥に一抹の寂しさを感じながらそう言った。



エピローグ

「おーす、麻衣ちゃん、少年。アイスコーヒー頼むわ」
「もー、ぼーさん!ここを喫茶店代わりにするなって何度言ったら分かるんだ」
「全くですよね。あ、さてはノリオったらあたしに会いに来たのね、嬉しいっ!」
「だー、やめんか。気色悪い」
事務所で安原さんに勉強を見てもらっていたところに、いつものようにぼーさんがやって来た。あたしは文句を言いながらも、作り置きのぼーさん専用アイスコーヒーを淹れに席を立つ。

あの後、所長様のPKで見事、怪物はぶっ飛ばされ、件の事件は解決を見せた。そしてあたしとぼーさんは何も無かった様な日常を過ごしている。
――――いや、本当は時々ぼーさんが何か言いたげな視線を向けてくるのを知っているが、あたしは何も知らない振りをする。
ずるいのは分かっている。でも今はもう少しだけこのままでいたいのだ。


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