キックは倍音を多く含む音なので、処理には少しコツが要ります。
倍音とは、聴覚で認識出来る以外の細かな音や帯域を総称した呼称です。
一概に倍音が多い=扱いにくいと言う事ではないのですが、
キックの倍音は削り過ぎるとキャラクターを損なう可能性があります。
なので、EQで追い込むならそれは後回しにした方が良いです。
出来るだけ、シンセのパラメーターとコンプだけで追い込むようにしてください。
更に付け加えれば、キックに低音を任せるのは完全な間違いです。
聞いていて目立つので低音を担っていると思いがちですが、
キックのピークは大体80~100Hz、ベースは40~60Hz程度です。
飽くまでも目安ですので状況によりけりですが、最終はベースと一緒に調整しましょう。
◆コンプ
キックにも種類があります。太いキック、柔らかいキックなど、好みはそれぞれ。
その質感を決定的にするのは、やはりコンプのアタックとリリースです。
アタック・・・コンプが掛かり始めるまでの時間
リリース・・・コンプが掛かってから解除されるまでの時間
・太いキック
キックが太いと認識されるときはどんなときなのか?
それは、勢いとスピード感のあるキックです。
それをコンプで表現する場合だと、アタックがやや遅め、リリース短めです。
コンプがかかる時間をキックの発音タイミングより少しずらすことで、
キックのアタックは圧縮されずに勢いが残る事になります。
・柔らかいキック
ミニマルテクノでよく聞くような、包みこむキックです。
これは低い位置で控えめに鳴るキックです。
同じくコンプで処理する場合は、アタックが最速かやや速い、リリース最長です。
要はコンプが掛かりっぱなしって事です。
レシオやスレッショルドも潰れない程度に深く掛けてください。
スレッショルド・・・圧縮を開始するレベル
レシオ・・・スレッショルドレベルを超えた音に対して、どれくらいの割合で圧縮するかを設定する
この2つは少し分かりにくいため、説明します。
スレッショルドを6dbに設定したとすると、
入力信号が6dbを超えたときにレシオが同時に反応します。
ここで設定するレシオが∞:1だと完全に圧縮し、1:1だと全く圧縮されません。
3:1だと圧縮比率が3となり、2dbに圧縮され、通過します。
つまりこのレシオの、X:1という独特の表記の意味は・・・
1に対する圧縮比率=X:1=スレッショルドレベルであり、更に言えば
スレッショルドレベル÷1に対する圧縮比率=圧縮後に通貨するレベルとなります。
分かりにくいですが、数字を当てはめてみて実際に触ると理解出来ると思います。
それからどちらのキックも、そもそもの音作りの時点で、無論ですが気を配りましょう。
◆EQ
上の追い込みが終わったら、一度EQを触ってみてください。
どうでしょうか、調整を本当に行う必要があるかどうか、考えてみてください。
必要であれば、不要な部分のみ削りましょう。
◆リミッター
上記の処理で減少したレベルを底上げします。
ではまずインプットを上げて、リダクションメーターを確認してください。
-5db以上を記録している場合、原音を損なっている可能性があります。
リダクションメーター・・・何db抑えたか、逆に言うとどれだけ効いているかを視認できるメーター
上の写真ではGRというのがその役割を果たすメーターで、その下が値です。
現在は-2db程圧縮されているということですが、ここが効きすぎていると音が潰れます。
どうしてももっと効かせたい場合は、前段のコンプなどを更に追い込みましょう。
では、以上の操作で大体出来上がったと思います。
不満があれば更に何か足すか、音色の再調整などを好みで行ってもらえれば良いです。
最終更新:2010年08月02日 09:27