「文化とメセナ」より


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根本長兵衛著


巨大な富豪のメセナ独占時代が終わり、アメリカで企業メセナが活発に行われるようになります。それにはふたつの理由が考えられます。
①IBMはじめ多くのアメリカ多国籍企業が世界に展開し、出先国での企業定着を図るために福祉や、芸術文化を通じてその国に貢献しようという空気が強くなった、②巨利を貪る大企業に対する厳しい市民批判をかわし、ベトナム戦争が引き起こした反体制、反資本主義運動を封じ込めるためにも、メセナを含む企業の社会貢献が強調されるようになったこと。
1976年にはロンドンにABSA(ASSOCIATION FOR BUSINES SPONSORSHIP OF THE ARTS)が発足、さらにその3年後の79年にはフランスにもADMICAL(ASSOCIATION POUR LE DEVELOPPEMENT DU MECENAT INDUSTRIEL ET COMMERCIAL)が誕生します。
英仏、ことにフランスは国が税金で芸術文化振興に力を入れるのが伝統だったが、
①アメリカ多国籍企業の企業哲学が欧州に導入された、
②(ことに英国では)財政難から、文化における国家の役割が減少を余儀なくされ、政府が民間の文化への資金提供を奨励した、③ヨーロッパの企業が、メセナ(スポンサーシップ)が商業上役立つ利益、企業イメージの向上、消費者が芸術支援を歓迎する傾向が強くなったことに気づく、
などから企業メセナは欧州全域に広がり、91年には欧州各国の企業メセナの連絡機関CEREC(COMITE EUROPEEN POUR LE RAPROCHEMENT DE L'ECONOMIE ET DE LA CULTUTRE)が結成されました。
日本の企業メセナ協議会は日仏交流の結果として、ADMICALをお手本にして90年に創設され、その3年後には韓国にKOREAN BUSINESS COUNCIL FOR THE ARTSが誕生した。企業メセナ運動は比較的短期間の間に、欧米からアジアへ、急速に世界的な展開をとげたのです。
日本がお手本にしたフランスのADMICALの創設以来の指導者であるジャック・リゴー氏は現代の企業メセナの必要性とその意義についてこう語っています。

「資本主義を動かす競争の精神、あるいはそれが刺激する消費のニーズは、社会にあるすべてのものを、力関係、あるいは利害の荒っぽい対立に帰してしまう恐れがある。つまり、市場の法則のみにさらされた場合、文化は一つの商品の地位に落ちてしまう。クリエーターや芸術家、詩人たちはその住むところを失ってしまう。おカネが王様であり、全てが計算ずくであり、そして物質的な利益がすべてに優先する社会では、彼らは住むべき場所を失ってしまう。しかし、芸術・文化を尊重しない、それも過去の遺産だけでなく、作られつつある生きた芸術を尊重しない社会の将来はどうなるのか。政治や経済面で権力をもつ人々の義務は、まず私たちの持つ資金と善意の一部を文化に振り向けることである。しかも、そうすることが企業の利益になる。メセナは企業コミュニケーション戦略の一要素であり、メセナは企業イメージを豊かにし、より魅力あるものにし、かつ企業の知名度を高める。また企業がメセナに取り組めば、その活動によって企業が自分自身の社会的役割を考え直すきっかけになり、文化部門のパートナーたちと新しい建設的な関係を構築できるようになる」