市民権


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市民権__田村梨花

 市民権(Cidadania)とは、保健衛生、教育、住居、雇用など人間の基本的ニーズを保障される権利と、個人の自由と政治参加への権利をさす。また、それらの権利が法規上で保障されているだけでなく、現実社会において実際に実行可能なものであるかどうかが、ブラジルにおける市民権をめぐる議論の中心となる。
 所得の不平等分配と地域格差のため、富裕層と貧困層の間での激しい社会格差が問題となっているブラジルでは、人口の約1割が飢餓状態に、約4割が貧困状態に置かれている。こうした社会状況では、市民権の獲得はまず万人への基本的人権の保障を意味する。1990年代、社会経済的に排除された人々の包摂のため、社会開発、地域開発に重点をおいた非政府組織(NGO)による社会運動やキャンペーン(「ブラジル反飢餓市民運動 Acao da cidadania contra a fome, a miseria e pela vida」1993年、「公的管理と市民権プログラムPrograma Gestao Publica e Cidadania」1996年〜)などが実施されたが、市民権はそうした活動に欠かせないキーワードとなった。
 一方、政治参加の側面において、市民権は市民が政治政策の企画立案、決定、実施、評価に具体的に関わる権利を意味する。市民がそうしたプロセスに主体的に参加できるような政治的空間を自治体が保障し、政府と市民がパートナー(parceria)となり社会政策が推進されることにより、その効果が確実に地域に還元されるシステムの構築が目指されている。参加型予算(OP:orcamento participativo)は、そうした民衆参加型民主主義を予算編成の領域で実践しようという自治体政策の一例である。
 参加型予算は、1989年にリオグランデドスル州ポルトアレグレ市長に当選した労働者党(PT)のオリヴィオ・ドゥトラ(Olivia Dutra)の公約を原案に同士で実施された予算配分決定システムである。16の地区において住民の誰もが参加できるフォーラムが開かれ、予算案の優先順位が議論されたのち地区代表が選出される。次に開催される地域フォーラムにおいて、市の予算委員会に参加する2人の代表が選ばれ、住民の意思を反映した予算審議が行われる。ここで決定された予算は再度地区議会に戻され、地区代表とコミュニティの手で各プログラムに利用される。それらの多くは都市インフラ整備と貧困削減に充てられている。このように、政治支配と権力行使をはっきり区別し、財政支出の透明性を具体化した斬新な試みは、参加型民主主義の構築における興味深い事例となろう。